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特集巻頭言:世界の最先端を行く日中の超伝導研究

中国科学技術月報2009年2月号(第28号)  2009.2.2発行

はじめに

 独立行政法人 科学技術振興機構/中国総合研究センターは毎月発行する中国科学技術月報(2008年12月からマンスリーレポートを中国科学技術月報に改称)において科学技術の注目分野を特集して、読者の皆様にお届けしている。中国科学技術月報第28号では、超伝導研究の最先端を行く日中両国の専門家の方々に執筆していただく日中超伝導研究の最新動向及び将来展望を伝える特集号を皆様にお届けすることとした。

 特定の物質が超低温に冷やされた時に、電気抵抗がゼロになったり、物質内部から磁力線が排除されたりする現象を超伝導という。今からちょうど百年前の1908年、オランダの物理学者ヘイケ・カメルリング・オンネスが低温における物性の研究で液体ヘリウムの生成に成功し、その3年後の1911年に自らが生成した液体ヘリウムを用いて純金属の水銀を絶対温度4K(摂氏マイナス269度)にまで冷却し、超伝導現象を初めて発見した。その功績でオンネスは1913年にノーベル物理学賞を授与された。

 その後、水銀以外の金属系超伝導体も発見された。水銀の持つ超伝導になる臨界温度(Tc)4Kよりは上昇したものの、30Kを超えることはなかった。30Kで超伝導を示す、金属系の物質とは全く異なる銅酸化物系超伝導体を最初に発見したのはIBMチューリッヒ研究所のベドノルツとミューラーであり、1986年である。最初の金属系超伝導体の発見から75年の歳月を要した。それ以降、数年間にわたり「超伝導フィーバー」とも呼ばれる世界的な超伝導研究開発競争が続き、銅酸化物系超伝導体の持つTcはつぎつぎと更新された。銅水銀系酸化物において高圧条件下での164Kが1994年現在の最高記録とされている。

 銅酸化物系超伝導体が発見されてから22年後の2008年に、これまでの金属系、銅を主成分とする酸化物系とは全く異なる「第3の超伝導物質」を、東京工業大学フロンティア研究センターの細野秀雄教授らが発見した。鉄を主成分とする特徴を持つこの鉄系超伝導体の発見は内外の研究者による研究開発競争を激しくしている。細野教授が鉄系超伝導体で最高となるTc=26Kを達成したと発表したのは2008年2月である。その発表からわずか2ヶ月も経たないうちに、中国科学院物理研究所などの超伝導研究者グループは高圧合成を用いて鉄系超伝導体でのTcの最高記録を43K、52K、55Kと3度更新している。中国科学院物理研究所の趙忠賢教授は日本の科学雑誌「Newton」社の取材を受けて、「日本に留学した学生に細野教授の論文を送ってもらってから1週間のうちに、研究所の王楠林教授、聞海虎教授、そして自分のグループは、細野教授の研究結果をほぼ同時に再現した」と説明、「この意味で、細野教授の研究は、私達の原点である」と話している。正しく、日中科学技術分野における研究交流・協力がもたらした成果の一つである。

 今や、アジア勢が世界をリードしている鉄系超伝導体研究分野でノーベル物理学賞の受賞に値する更なる研究成果の樹立に大きな期待がかかっている。いつかこのような壮挙が実現できたらどんなに素晴らしいことかとの思いを馳せながら、本特集に寄稿してくださった中国科学技術大学教授陳仙輝、清華大学教授韓征和、中国科学院物理研究所・超?国家重点??室主任聞海虎、研究?王楠林、東京工業大学教授細野秀雄、東海大学教授太刀川恭治、独立行政法人物質・材料研究機構超伝導材料センター長熊倉浩明に謝意を表すると同時に温かいエールを送りたい。

 本特集が日中両国の超伝導研究交流の更なる発展のきっかけとなり、読者の皆様の超伝導研究への理解を深める一助となれば幸いである。

中国総合研究センター

記事一覧

はじめに-世界の最先端を行く日中の超伝導研究

 

鉄系高温超伝導材料研究の最新動向

・・・ 陳 仙輝(中国科学技術大学物理学部、合肥微尺度物質科学国家重点実験室)

鉄砒素系新超伝導体の合成手法に関する研究

・・・ 聞 海虎(中国科学院物理研究所・超伝導国家重点実験室および北京凝縮態物理国家実験室)

FeAs系超伝導体の研究状況

・・・ 王 楠林(中国科学院物理研究所極端条件物理重点実験室主任)

中国における高温超伝導技術応用の将来

・・・ 韓 征和(清華大学応用超伝導研究センター長)

超伝導材料研究開発の概要と金属系超伝導線材

・・・ 太刀川 恭治(東海大学工学部教授)

鉄系高温超伝導体の発見とその後の進展

・・・ 細野 秀雄(東京工業大学フロンティア研究センター&応用セラミックス研究所教授)

先進超伝導線材の開発とその応用

・・・ 熊倉 浩明(独立行政法人物質・材料研究機構超伝導材料センター長)


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