第30号:日中の再生可能エネルギー
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中国における風力発電技術とその市場

2009年3月31日

姚興佳

姚興佳(Yao xingjia):風力エネルギー技術研究所 所長

1948年生まれ。
1982年瀋陽工業大学電機学部卒業。現在、風力エネルギー技術研究所所長・教授。中国風力エネルギー協会副主任、遼寧省太陽エネルギー学会副理事長などの職務を兼任。国家「863計画(ハイテク技術研究発展計画)」専門家グループ首席専門家。プロジェクト責任者として、国家「863計画」のプロジェクトを3件、国家科学技術重要問題プロジェクトを2件、省・市の重要問題および産業化プロジェクトを多数担当。風力発電国家標準を4冊編集。科学技術分野での成果物は34件に及び、13の政府科学技術進歩賞を受賞。中国で初めて独自の知的財産権を有する大型風力発電ユニットを研究開発し産業化。

共著:祁和生(中国農業機械工業協会風力機械分会)、王士栄(中国瀋陽工業大学)

 中国は広大な国土と長い海岸線を持つため、比較的豊富な風力エネルギー資源を擁している。中国気象局風力・太陽エネルギー資源評価センターは最近コンピュータシミュレーションを採用し次のような結果を明らかにした。それによると、中国の地上から高度50m上空における風力エネルギー密度が300W/m2に達する面積は、およそ54万平方キロメートルにのぼり、1平方キロメートルあたり5MWの設備容量で見積もった場合、風力エネルギー資源の技術的開発可能量はおよそ26.8億kWにのぼり、また、海岸から20Kmの海域内における技術的開発可能面積はおよそ3.7万km2で、海面から高度50m上空の大気層における風力エネルギー資源の技術的開発可能量はおよそ1.8億kWにのぼると推測している。中国における風力エネルギー資源の技術的開発可能量は総計で28.6億kWにのぼり、近海に比べ陸地での開発可能量が大きい。風力発電は将来的なエネルギー構造において重要な構成部分となる資源ソースを有しており、中国の豊富な風力エネルギー資源は風力発電産業の発展を支えるのに十分な条件を備えている。

 2006年《中華人民共和国再生可能エネルギー法》実施以来、中国の再生可能エネルギー、特に風力エネルギーの開発利用が急速に高度成長期に入った。設置量は毎年倍増する。風力発電市場の発展は電機ユニット製造業の発展をもたらした。2008年12月末まで70社近くの企業が発電用電機ユニットの製造業界に入った。その中、国有および国有の持株会社は29社、民営製造企業は23社、合弁企業は8社、外資企業は10社である。

1.中国における風力発電の技術的特徴

 現在中国で製造および生産が進められている風力発電ユニットの主な技術は、概ね次の3タイプである。

  1. 技術的特徴1
    ストール(失速)式固定ピッチ定速タイプ。ブレード自体の失速特性を利用したもので、風速が定格以上になった場合に、気流に対するブレードの迎え角を失速条件まで増して、ブレード表面に渦巻きを発生させ、効率を低下させることで、出力パワーを抑制するというものである。長所としては調節精度が高く、制御が簡便であることが挙げられるが、欠点としてはブレードなどの主要部品が受ける力が大きいため、出力パワーが風速の変化を受けやすいことである。この種の技術は主に数百キロワットの中小型風力発電ユニットに採用されているものであり、現在の市場において主流となる技術ではないが、技術が成熟すれば、運用・メンテナンスにおける実績が相対的に豊富になるため、設備性能や生産能力が比較的安定する。例として金風科技と浙江運達の600kWユニットと750kWユニット、浙江華儀の780kWユニット、保定恵徳の1MW風力発電ユニットなどが挙げられる。
  2. 技術的特徴2
    二重給電式可変ピッチ可変速タイプ。変速運転する風力発電ユニットであり一般的に二重非同期発電機あるいは多極同期発電機が採用されている。 二重給電式発電機の回転子側がパワーコンバータ(一般的にはデュアルPWM AC/DCコンバータ)を通じて電力網へ接続される。 このパワーコンバータの容量は発電機容量のわずか1/3に過ぎず、エネルギーが双方向に流動するという点がこのタイプの長所である。可変ピッチの変位はピッチ調節装置で調節を行い、風車ブレードの取り付けピッチ角を風速の変化に応じて変位させることで、風力エネルギーの吸収を制御することが可能である。定格風速以下の場合は、ブレードのピッチ角を風力エネルギー利用係数が最大になる位置に調整し、定格風速以上の場合は、可変ピッチのメカニズムによりブレードの迎え角を発電機の出力パワーが許容範囲以内に収まるよう調節する。可変ピッチ式風力発電機の起動風速は固定ピッチ式風力発電機に比べて低いため、停止時に伝わる衝撃応力が相対的に緩和される。このため、二重給電式可変ピッチ可変速型ユニットは現在、大半の企業が採用する風力発電技術となっており、技術が成熟していることから、風力発電業界において主流な技術となっている。 GE、ガメサ、ヴェスタス、スズロン、シノベル、東方汽輪機、上海電気、北重、沈陽華創などの企業もこのタイプの技術を採用している。
  3. 技術的特徴3
    直接駆動式永久磁石可変ピッチ可変速タイプ。このシステムは主に風力機、発電機、コンバータと制御器の4つから構成されている。非直接駆動式と比較すると、直接駆動式風力発電機タイプはギヤボックス(増速機)を省いているため、メンテナンスが容易で、風力発電機のノイズが軽減されるうえ、運転時の信頼性と発電効率が高くなっている。この数年で発展し、すでに成熟期に入った技術であり、今後の風力発電技術の主な方向となっている。金風科技や湘電風能、江蘇新誉、上海万徳的、中鋼西重、広西銀河、江西麦徳などの企業が採用しているのはこのタイプの技術である。

2.中国における風力発電産業パターン

 現在中国で製造および生産が進められている風力発電ユニットについての調査分析によると、その主な産業パターンは概ね次の5種類である。

  1. 海外から設計図と技術を導入する方法、または海外の設計技術企業と共同で設計し、中国で製造と生産を行う方法。金風科技の導入した1.2MW、1.5MW直接駆動式ユニットの例では、現在すでに中国での量産と供給が行われている。さらに、浙江華儀や広東明陽、国動聯合動力の1.5MW二重給電式風力発電ユニット、重慶海装、上海電気の2MW二重給電式風力発電ユニットなどはいずれもこの方法で導入されている。現在これらの企業では製品のプロトタイプが完成しており、すでに量産に入っているものもある。
  2. 海外から成熟した風力発電技術を購入し、中国でライセンス生産する方法。金風科技の600kW・750kW、浙江運達の750kW、シノベル風電と東方汽輪機の1.5MW二重給電式風力発電ユニットは、いずれも中国での生産に成功して産業化を果たしており、これらのユニットが中国における主力タイプになっている。さらに重慶海装の850kW、保定恵徳や武漢国測、呉忠儀表の1MW、上海電気の1.25MW、北重の2MWなど、いずれもこの方法で導入しており、現在これらの企業ではすでに量産に入っている。このうち保定恵徳ではすでに1MWの固定ピッチ式風力発電ユニットを小量生産しており、アメリカに10基を輸出している。
  3. 海外企業との共同出資により、海外の成熟技術を導入して中国で生産を行う方法。航天安迅能と恩徳風電の1.5MWは、中国ですでに生産化に成功し産業化を果たしている。また、湖南電風能と瑞能北方の2MWなどはいずれもこの方法により導入したもので、プロトタイプの試作を完成させ、現在すでに量産に入っている。
  4. 海外の風力発電ユニットメーカーが中国で独自資本による企業を立ち上げ、その成熟した設計・製造技術により中国で生産を行う方法。ガメサの850kWや、スズロンの1.25MW、GEの1.5MW、ヴェスタスの850kW、2MWユニットはいずれもこの方法を採用して生産を行っており、現在では徐々に量産が始まっている。
  5. 中国の大学と科学技術企業が独自に開発した設計・製造技術を採用して、中国で風力発電ユニットを生産する方法。例えば、沈陽華創および大慶漢維、江蘇新誉、浙江運達、三一重工が開発した1.5MWユニット、および上海万徳の1.2MWユニット、無錫宝南などはいずれもこの方法により生産を行っている。現在、沈陽華創および大慶漢維、江蘇新誉、浙江運達が開発した1.5MWの二重給電式風力発電ユニットはすでに小量生産に入っており、風力発電所で試運転が行なわれている。

3.中国における風力発電技術の動向

 風力発電産業の持続的な発展に伴い、その技術もシステムも着実に発展し続けており、技術基準を満たして、風速の変化やコスト、環境、安定的な運転など様々な要求に応えている。中国における風力発電技術には主に次のような傾向がある。

(1) 主流は水平軸型風力発電ユニット

 水平軸型風力発電ユニット技術は、風力エネルギー転換効率が高く、回転軸が比較的短いため、大型風力発電ユニット上で経済性などの利点がより高く発揮される。このため、水平軸型風力発電ユニットは世界の風力発電の発展において主流タイプとなっており、95%以上の市場シェアを占めている。同時期に発展した垂直軸型風力発電ユニットは回転軸が長過ぎるため、風力エネルギー転換効率が低く、起動や停止、ピッチ角の調節が難しいなどの問題がある。このため現在の市場シェアは非常に低く、利用数もわずかでしかないが、全ての風向に対応できるうえ、変速装置と発電機を風車の下方ないし地上に設置できるなどの利点があるため依然として使用されている。

(2) 風力発電ユニットの1台当たり容量の連続的な増加

 ここ数年、風力発電市場における風力発電ユニットの1台当たり容量は連続的に増加しており、現在ではMW級の風力発電ユニットが中国内外の風力発電市場における主流タイプになっている。MW級風力発電ユニットの市場シェアは1997年以前は10%にも及ばなかったが、2001年に50%を超過し、2005、2006、2007年にはそれぞれ81%、87.5%、95.7%とシェアを伸ばしてきた。ここ数年、洋上風力発電所の開発により大容量風力発電ユニットが一層加速して発展している。これにより、風力発電ユニットの1台当たり容量は増加し続けており、中国内外の風力発電技術の進展の1つの流れになっている。

(3) 可変ピッチ可変速パワー調節技術と二重給電式発電機技術の広範な採用

 可変ピッチパワー調節方式は負荷制御が安定しており、安全かつ高効率などの利点を備えているため、近年大型風力発電ユニットに広範に採用されている。可変ピッチ技術を採用した電子技術の発展により、大多数の風力発電ユニットメーカーで可変速定周波技術が用いられるようになった。さらに、可変ピッチ可変速風力発電ユニットの開発により、風力エネルギーの転換がより一層改善され機能が向上している。中国で2007年に設置されたMW級の風力発電ユニットは、いずれも可変ピッチ式ユニットである。2MW以上の風力発電ユニットのうち大多数が3つの独立したピッチ角電動制御メカニズムを採用しており、3組の可変速発電機とギヤボックス(減速機)によりブレードに対してそれぞれ閉ループ制御を行うものである。

(4) 直接駆動式、フルパワー変換技術の急速な発展

 ギヤレス型の直接駆動式はギヤボックスがもたらすユニット故障を効果的に低減することができ、システムの運転の信頼性と寿命を効果的に高められ、メンテナンスコストを削減できるため、市場で高い支持を得ている。中国の新疆金風科技有限公司とドイツのヴェンシス社との共同開発による1.5MW直接駆動式風力発電ユニットは、これまでに100基近くが風力発電所に設置されている。2008年に新規に設置された風力発電ユニットのうち、直接駆動式風力発電ユニットが占める割合は15%にのぼっている。直接駆動式風力発電システムの登場により、フルパワー変換技術が発展し応用されている。フルパワー変換の関連技術により、風車と発電機の速度調節範囲が0~150%までの定格回転速度に広げられ、風力エネルギーの利用範囲が高まった。フルパワー変換技術は低電圧ライドスルー(LVRT)特性に対し、良好かつ簡便な解決方法であることから、今後の発展で優位である。

(5) インテリジェント制御技術の応用による風力発電ユニットの信頼性と寿命の急速な向上

 風力発電ユニットの極限負荷と疲労負荷は風力発電ユニットおよび部品の信頼性と寿命に影響を及ぼす主因の1つである。ここ数年、風力発電ユニットメーカーと関連研究機関が風力発電ユニットの最適な運転と制御ルールについて積極的に研究を進めており、インテリジェント制御技術を採用して、ユニットの技術と結び付けることで、風力発電ユニットを極限負荷あるいは疲労負荷のかかった状況下での運転をできる限り回避しているが、これがしだいに風力発電の制御技術の主要な方向となっている。

(6) 近海の風力発電の重要性の向上

 洋上風力発電の発展は静かに進んでおり今後の重要なエネルギーとなる見通しである。海上には豊富な風力エネルギー資源が存在し広大で平坦であることから、洋上風力発電技術は最近の研究の焦点となっている。中国の海上における風力エネルギー資源は陸地における風力エネルギー資源を遥かに上回っており、風力発電が発展する一方、陸地における風力発電機の総数は飽和状態に近づいている。このため新たなエネルギー資源を開発する必要から、洋上風力発電所は重要なエネルギー開発のプロジェクトとなり、風力発電の開発重点項目となったのは自然の成り行きといえよう。この傾向は近年中国ばかりではなく、世界の風力発電産業においても新たな分野となっている。現在、中国最初の洋上風力発電所は上海東海大橋で建設を始めて、3MWのユニットはすでに着工し始まっている。

4.風力発電所の建設状況

 2008年までに、中国(台湾を除く)における風力発電ユニットは累計で11600基あまりにのぼり、設備容量はおよそ1215.3万kWにのぼる。24の省(市、区)に分布しており、前年と比較すると重慶と江西、雲南の3つの省・市で増加が見られ、設備容量が100万kWを上回るユニットは内モンゴルや遼寧、河北、吉林の4つの省・区で増加が見られる。2007年における累計設備容量の590.6万kWと比較すると、2008年の増加率は106%にのぼる。2008年における風力発電の電力網への送電量は推定でおよそ120億kW・hにのぼる。2008年における省別に見た風力発電設備の新規設置状況および累計については表1を参照されたい。

表1  2008年における省別に見た風力発電設備の新規設置状況および累計

 2008年に中国(台湾を除く)で新規に設置された風力発電ユニットは5130基あまりで、設備容量はおよそ624.6万kWにのぼる。2007年に新規に設置された設備容量は330.4万kWで、これと比較すると2008年の新規設置容量の増加率は89%にのぼる。

図1 中国における風力発電設備容量の増加状況

 2008年の新設市場シェアのうち、中国資本と合弁企業の製品が占める割合は75.6%にのぼる。このうち、シノベル風電のシェアが最大で、新規設置総設備容量のうち22.5%を、中国資本と合弁企業の製品のうち29.7%を占めている。2008年における中国資本と合弁メーカーの新設市場シェアについては表2を参照されたい。また、外資企業製品のシェアは24.4%にのぼり、このうちデンマークのVestas社が最大シェアで、新規設置総設備容量のうち9.6%を、外資企業製品のうち39.3%を占めている。2008年における中国の外資メーカーの新設市場シェアについては表3を参照されたい。

表2 2008年における中国資本と合弁メーカーの新設市場シェア
表3 2008年における中国の外資メーカーの新設市場シェア
表4 2008年における中国資本と合弁メーカーの市場シェア

 2008年の累計市場シェアのうち、中国資本と合弁企業の製品が61.8%を占め、初めて外資企業のシェアを上回った。このうち金風科技のシェアが最大で、累計総設備容量のうち21.6%を、中国資本と合弁企業の製品のうち35.0%を占めている。2008年における累計中国資本と合弁メーカーの市場シェアについては表4を参照されたい。また、外資企業の製品は38.2%を占めており、このうちスペインのGamesaのシェアが最大で、累計総設備容量のうち12.8%を、外資企業の製品のうち33.4%を占めている。2008年における累計外資メーカーの市場シェアについては表5を参照されたい。

 現在中国で風力発電を開発している省は24省にまで拡大したが、主な風力発電はやはり資源が豊富な「東北・西北・華北」地区や沿海、干潟の地域に集中している。特に100万キロワットの超大型風力発電所や風力発電基地の計画がある内モンゴルや吉林、甘粛、新疆、江蘇などの省に集中している。

表5 2008年における外資メーカーの市場シェア

 近年中国の風力発電建設は陸地に大・中型風力発電所の建設が集中し近海における風力発電の開発も急速に進んでいる。2007年には上海市近海にある東海大橋洋上風力発電プロジェクトの入札募集が終了し、事前準備作業が開始された。さらに、2009年1月15日にはプロトタイプの試験段階に入っている。東海大橋風力発電プロジェクトなど近海の風力発電プロジェクトが始動したことは、中国における洋上風力発電の発展の幕開けを意味する。

 現在の中国における風力発電の動向を見ると、政府の掲げる2010年までに500万kWを達成するという目標は2007年末にすでに達成している。風力発電への積極的な支援政策を継続的に整備し、風力発電設備の生産能力と技術・品質レベルが着実に向上した場合、中国では今後数年間にわたり毎年およそ400万kWの設備容量を新規に増設し続けられる見通しで、2010年には風力発電の累計設備容量を1400~1500万kWまで達成できると予測される。また、2010年以降に毎年700~800万kWを新規に増設し続けた場合、現在のヨーロッパ並みのレベルに達成することができ、2020年には最低でも8000万~1億kWの設備容量を達成できると予測する。強力な政策支援があれば、風力発電は2015年以降、毎年新規に増設される設備容量の中でも重要な構成部分の一部となり、20%~30%の規模にまで達成すると見られ、2020年までに風力エネルギーは1.2~1.5億kWの設備容量を達成することが予想される。2020年以降、中国の風力発電は原子力発電を上回り、発電電源構成において3番目に大きな主要電源になる見通しで、2050年には水力発電をも上回り、2番目に大きな主要電源になる見通しである。将来的に、風力発電は中国の主要な戦略エネルギーの1つになると思われる。つまり、中国の風力発電は大いに発展する見通しである。

5.政府による風力発電への政策支援

 ここ数年で、中国における風力発電の設備製造業はすでに産業化の初期段階に入った。中国における風力発電の製造業が急速な発展を遂げ多大な恩恵に与ってきたのは政府の風力発電関連の政策支援によるものである。

 中国では2005年に「再生可能エネルギー法」が公布されて以降、風力発電を含めた「再生可能エネルギー発電に関する管理規定」や「電力網企業の再生可能エネルギー電気量全額買取監督管理規則」、「再生可能エネルギー電力価格付加収入配分暫定規則」、「再生可能エネルギー特定項目資金管理暫定規則」、「風力発電の建設管理関連要求に関する通知」、「風力発電産業発展促進の実施意見」などの法規や法令が次々に公布、制定された。風力発電などの再生可能エネルギーの電力網への援助や、競争によらない固定電力価格、費用分担、風力発電の割当額制度を早急に確立させ、風力発電コンセッションプロジェクトについては引き続き実施し改善を図ることで、中国における風力発電の建設と技術産業の発展の推進に向け積極的に政策環境が整えられている。

 2007年9月に、中国は「再生可能エネルギー中長期計画」を公布した。これにより、風力発電などの再生可能エネルギー発電産業の発展を早急に推進し、良質でクリーンな再生可能エネルギーの占める割合を徐々に高める。また、「ハイテク産業発展『第11次5ヶ年計画』」では、先進的な大型風力発電ユニットおよびそのキーとなる部品の開発と産業化、大型風力発電ユニットのビジネスモデルの展開を積極的に推進することを明確化している。「当面優先的に発展させるハイテク産業化の重点分野に関するガイドライン(2007年度)」では風力発電を重点分野に組み入れ、1MW級以上の風力発電ユニットおよびキーとなる部品の研究開発を支援する。

 2003年以降、風力発電コンセッションプロジェクトの入札募集が5回にわたって実施された。第1期プロジェクトは広東恵来と江蘇如東第1期の2つのプロジェクトで、総設備容量は20万キロワットである。第2期プロジェクトは江蘇如東第2期と吉林通楡と内モンゴル輝騰錫勒の3つのプロジェクトで、総設備容量は40万kWである。第3期風力発電コンセッションプロジェクトは江蘇東台と山東即墨、甘粛安西の3つのプロジェクトがあり、総設備容量は45万kWである。第4期風力発電コンセッションプロジェクトは内モンゴル錫盟輝騰梁の300MW風力発電所、内モンゴル包頭巴音の200 MW風力発電所および河北省張北単晶河の200 MW風力発電所の3つのプロジェクトがあり、総設備容量は700 MWである。第5期風力発電コンセッションプロジェクトは4つで、これには内モンゴル通遼市北清河の30万kW風力発電所、内モンゴル古巴彦淖爾烏蘭伊力更の30万kW風力発電所、河北省承徳パドックの15万kW風力発電所、甘粛省酒泉玉門(昌馬)の20万kWの風力発電所がある。

 国家発展改革委員会は第1期および第2期の風力発電コンセッションプロジェクトの入札において、電力価格の最安値を提示した業者を選定する旨を明言したが、第3期では電力価格の重み付けを40%に引き下げ、第4期では価格以外の要素をより一層勘案して、電力価格の重み付けを25%まで引き下げた。さらに、第5期風力発電コンセッションの入札では入札基準の大幅な改正を行い、風力発電卸売価格の合理化を推進した。国家発展改革委員会などの関連機関では風力発電資源の全面調査とプロジェクト計画、風力発電機の研究開発と技術プラットフォームの建設、風力発電所の建設と電力網による風力発電の吸収などの問題についての研究を支援する意見などを打ち出しており、政府支援と企業投資または経済刺激要因と市場牽引要因、風力発電所の建設と風力発電設備の製造とを連携させ、風力発電産業の一層の健全な発展を希望している。

 まとめていえば、中国政府は再生可能エネルギー、特に風力発電技術の発展に対し多大な政策支援をしており、風力発電は再生可能エネルギー発展の中でも短・中期的に政府が早急に推進する最も重要な分野の1つであるといえる。