トップ >第31号:原子力の開発及び利用> 原子力利用の展望と課題

原子力利用の展望と課題

2009年4月7日

近藤 駿介

近藤 駿介(こんどう しゅんすけ):原子力委員会委員長

昭和17年生まれ。
東京大学大学院工学系研究科博士課程(原子力工学専攻)修了。工学博士。東京大学工学部助教授、教授、東京大学大学院工学系研究科教授を経て平成16年より原子力委員会委員長に就任。専門は原子炉システム工学、原子力安全工学、ヒューマンインターフェース工学、脳工学、原子力研究開発利用政策、国際協力政策評価などに関する政策科学。 主な著書:「人はなぜ失敗するのか」、「原子力発電所で働く人々」、「私はなぜ原子力を選択するのか」、「エネルゲイア」、「やさしい原子力教室Q&A」、「原子力の安全性」、「やさしい原子力Q&A」、「巨大技術の安全性」。 所属学会:米国原子力学会、日本原子力学会。

1.はじめに

 世界の原子力発電規模は、1970年代に入って年間18GW程度のペースで急速に増大したが、1980年代の末に330GWを超えたところで変曲点を迎えた。1979年に米国で発生したスリーマイルアイランド原子力発電所の事故の前後から米国において安全性、経済性の面から原子力発電に対する興味が失われて新規の建設計画がなくなり、1986年に当時のソ連邦ウクライナにあるチェルノブイリ原子力発電所で大きな事故が発生して、欧州でも人々の原子力に対する不安感が著しく増大し、さらに、石油危機によって活発化した資源開発活動の結果、石炭・天然ガス価格が低下し、多くの国において火力発電所に対する原子力発電の経済的競争力が失われたためである。

 しかしながら、人口あたりの化石燃料資源の賦存量が小さく経済成長が続くアジアではその後も原子力発電所の建設が継続した。その結果、2007年末には世界の31ヶ国で合計435基、392GWの原子力発電所が運転中であり、これが世界の電力の約15%、一次エネルギーの6%を供給している。そして、これがLNG火力を置換しているとして計算すれば、二酸化炭素排出量を約11億トン(全世界の排出量の4%)削減するのに貢献している。

 日本は、1960年代後半に原子力発電を開始して以来、着実にその規模を増大させてきて、2007年末には55基、49GWの設備が稼働中で、総発電電力量の約1/3を分担し、海外情勢に左右されずに発電を継続できることからこれを国産エネルギーにカウントすると、エネルギー自給率を4%から18%に引き上げ、火力を置換しているとして計算すれば、年間の二酸化炭素排出量を2億トン、約15%削減するのに貢献している。

 本稿では、このような原子力発電の展望とこれの実現を目指すために取り組むべき課題について概観する。なお、以下に言及する見解は原子力委員会としてのものではなく、著者個人のものであることをお断りする。

2.我々は今後何をしなければならないか

 最近、インド、中国、ロシア等で原子力発電所の建設活動が活発化してきている。また、現在、約12の国が新しく原子力発電を導入する計画に取組んでいる。国際原子力機関(IAEA)の最近の展望では、この状況を踏まえて、2030年の世界の原子力発電設備規模を高位推定で748GW程度とし、世界の総発電量に占める割合も現状の14%を維持しているとしている 。(1)

 こうした原子力発電所建設意欲は次の3点に起因する。第1は、経済成長が高い各国でエネルギー需要、とりわけ電力需要が高まり、エネルギー安全保障が重視されるようになってきたこと、第2は、エネルギー資源価格が上昇して、原子力発電の経済性が高まったこと、そして、第3は、大気中温室効果ガス濃度を現在よりあまり高くない水準に安定化させるべきとの国際世論に応えて、温室効果ガスの排出量が小さい低炭素エネルギー源の採用が求められているところ、大規模な供給力を確保できる低炭素エネルギー源としてすでに実績のある原子力発電が高く評価されるようになってきたことである。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、増大しつつある温室効果ガス濃度を将来において気候変動の影響が小さく止まる水準に安定化するためには、2050年の温室効果ガス排出量を2000年の半分以下にすることが必要とした。これを受けて、これを実現する経済的に合理的な方策を検討した国際エネルギー機関(IEA)のエネルギー技術展望2008は、同年の世界の電力の46%を再生可能エネルギー、25%を原子力発電により供給することを目指す案を掲げている。これは、この年に現在の3倍強の1400GWの原子力発電所が運転していること、あるいは、今後40年間にわたって、毎年25-35基のプラントを新たに運転開始させることを意味する。過去、世界はピーク時にはこの程度の規模の原子力発電所の着工に着手したことがあるから、この数字の実現は不可能ではないが、容易なことではないとされている。

 もとより、世界がどのような温室効果ガス濃度の安定化シナリオを選択するかは今後の議論にゆだねられており、したがって、上のシナリオが唯一の選択肢ではない。しかしながら、志のある国の原子力発電技術の供給者・利用者は、このような規模の原子力発電に対する需要が国際社会にあり得ることを認識して、原子力発電技術が市場において他のエネルギー供給技術に競争し続けることができるように絶えず性能を向上させ、優れた運転実績を維持することに努力する一方、原子力発電の恩恵を享受したいとする国に対して、国際社会の福祉向上を支援する観点から、それが確実に実現できるように協力していくべきである。

 日本においては、低炭素社会の実現を目指すシナリオを探索した総合資源エネルギー調査会が2008年に公表した超長期エネルギー需給見通しにおいて、2030年の原子力発電の設備容量が現在規模の9基増にあたる約62GWであっても、エネルギー利用効率の改善努力が大胆に行なわれるならば、発電量の40%以上を原子力発電が供給していることになるとしている。

 このこともあわせ考えれば、我が国における原子力政策の主要課題は、第1に、既存の原子力発電所を、現在低迷している原子力発電所の稼働率を国際水準にまで回復させて、安全・安定に運転し、これに必要な放射性廃棄物の処理処分の取組を含む核燃料サイクルの取組を着実に前進させること、第2に、2030年頃から多数のプラントが寿命の到来により引退していくとしても発電設備規模が漸増を継続していくよう、原子力発電所の新設を着実に推進していくこと、そして、第3に、原子力先進国として、国際社会の原子力発電のもたらす利益を享受したいとしている国を応援する国際社会の取組に積極的に参加し、我が国の蓄積した知見・経験をこれらの国との密接なコミュニケーションを通じて生かしていくことである。

3.原子力発電の推進に必要な機能、制度等からなる基盤

 原子力発電の推進には、エネルギー行政および原子力安全・放射線防護・保障措置・原子力防護・環境保護などに関する規制行政、これらに係る意思決定への国民・施設立地地域等の利害関係者の参加の仕組み、原子力発電事業推進のための適切な経営能力、大規模発電施設である原子力発電所のもたらす利益を享受するのに適した電力系統、回収に長い期間を要する大規模な投資を可能にする資金調達メカニズム、核燃料を供給し、使用済燃料や放射性廃棄物の安全な管理を行う活動を含む核燃料サイクル事業、これらに機器・サービスを提供する機器製造業を含むサプライチェーン、これらの機能を維持・充実していくのに必要な人材の育成、これらの活動の基本となる技術を生み出し、それを利用する知識を創造・管理する組織とその活動が必要である。原子力発電のもたらす利益を享受していくためには、原子力インフラストラクチャと総称されるこのような機能・制度等からなる基盤を整備し、それを健全に維持していく必要がある。以下では、そのうち最も重要ないくつかについて、関係者が心すべきことを述べる。

3.1 安全確保の取組

 原子力施設の操業は、その存在により公衆及び従業員が放射線・放射性物質による災害に遭遇する可能性を十分に小さくして行われるべきである。このため原子力施設の設計、建設、運転に当たっては、1)通常操業時の原子力施設内での放射線被ばく及び施設から放出される放射性物質による放射線被ばくを、定められた制限値以下にすることは勿論、合理的に達成可能な限り低くすること、2)自然現象、人の過誤、機械の故障による異常の発生を防止する工夫を行う一方、「人は誤り、機械は故障することあるべし」として、それにより発生する異常・事故のもたらす放射線影響が重大なものにならないよう、影響緩和の工夫もあらかじめ行うこと、3)こうした機能の信頼性を高く維持するために、保守的な設計を行い、人の過誤をふせぐためのヒューマンファクターへの適切な配慮を行うと共に、施設の安定した運転の継続を可能にする保全活動、これらの取組に間違いのないことを確かにする品質マネジメント活動、そして、安全をすべてに優先させ、事ごとにその安全に対する重要度に応じた気配りを行う安全文化を運転管理組織に醸成する活動を行い、さらに、実効性ある事故管理策及び防災対策を整備すること、4)こうして設計され、維持管理される事故防止策、事故影響緩和策等の存在により、深刻な放射線影響を伴う事態の発生可能性が極めて小さくなっていることを、最新の知見を反映した確率論的リスク評価を実施して定期的に確認し、この結果が安全目標を満足していないときには直ちに改善することが肝要とされている。

 こうした取組を行う第一義的責任は原子力施設の設置者にあり、政府はそうした能力のある者が上に述べた性能を満足する可能性が十分に高い設備を用いてこれを行うとする場合に限って例外的にこの取組の実施を許可するのである。そして、取組の許可申請者が上の考え方から適切と判断できる技術的要件を満足する設備を用いていること、その保全活動の行い方を含む操業規定(保安規定)がこれによる災害リスクが十分小さくなるように定めてあることを事前評価・審査により確認した後に、活動を許可する。さらに、操業段階においては、この操業規定の遵守状況を“trust but verify”の考え方に立って、随時の立ち入りを含む検査によって確認する。

 ところで、こうした判断に政府が使用する技術要件は最新の知見を反映したものに維持しなければならない。実際、最高裁は、規制行政当局がこの取組を怠っているときにはそれに基づく行政処分は無効と判示している。この点に係る最近の主な取組は耐震安全性の見なおしである。

 原子力施設には、自然現象である地震の発生を考慮しても周辺公衆に過大なリスクを与えないこと、つまり安全目標を満足することが求められている。このため、原子力施設の建設に当たっては、立地地域周辺の活断層調査を行い、それぞれの断層で周期的に地震が発生するとしてその周期やそれにより立地施設が経験する地震動を予測し、敷地においてまれに経験するとしか考えられない大きな地震動を求める。その上で、念のため、施設の直下に見つかっていないがM=6.5の地震を発生する断層があると想定してそれによる地震動も算定し、それらの総合的な評価に基づき設計基準地震動を決定し、これが発生しても止める、冷やす、閉じ込めるといった原子力施設の安全確保に重要な機能が損なわれないように設計することにしてきている。

 しかしながら、1995年に兵庫県南部地震を経験して地震学の研究に大きな資源が投じられた結果、地震に関する知見が急速に増大し、各地における大きな地震の発生頻度が見直され、また、調査を行っても見いだされない活断層を震源としてM=6.8程度の地震が起きる可能性も指摘されるようになった。そこで、国は、これらの新知見を評価して2006年に新しい耐震安全設計審査指針を定め、各原子力施設に対してこれに基づく耐震安全性の確認を求めた。2007年に新潟県中越沖地震が発生し、柏崎・刈羽原子力発電所で設計基準地震動を超える地震動を経験してこの確認作業は急務となり、現在、すべての原子力施設において、周辺の活断層の調査をより念入りに行い、新指針に適合させて施設敷地の地下特性も考慮に入れて新しい設計基準地震動を定め、これに基づき耐震安全性の再評価を実施し、必要に応じて補強工事を実施している。

3.2 核不拡散の取組

 世界は、核兵器のない世界の実現を目指して、1968年に、当時核兵器を保有していた5カ国以外の国には原子力の平和利用の権利を認める一方、核兵器を持つことを禁じ、核兵器保有国には核軍縮に誠実に取り組むことを求めることを主な内容とする核兵器不拡散条約(NPT)を成立させた。原子力発電に使われる核燃料や核燃料を生産、処理する技術は核兵器の材料になる高濃縮ウランやプルトニウムを生み出すことができることから、この条約は、各国に対してIAEAと包括的保障措置協定を締結して、全ての機微な物質等をIAEAの保障措置活動、すなわち、それらの在庫量の計量管理活動及び封じ込め状態の確認等の査察によって核兵器の製造活動に転用されている可能性がないことをIAEAが検認する活動の下におく義務を課している。また、核物質や原子力技術をIAEA保障措置を受けない場所に移転することも制限している。

 さらに、1997年からは、IAEAに対して原子力活動以外の関連活動についても情報を提供するとともに、それらに対する臨機の立ち入り検査や任意の場所におけるサンプリング検査をも認める「追加議定書」をIAEAと締結することを各国に推奨している。しかしながら、これを締結しているのは190のNPT締約国のうち90(及び1国際機関(ユーラトム))に過ぎない。

 なお、核兵器保有国に対しては、核軍縮に対する誠実な取組以外にも、国防に係る原子力活動以外については非核兵器保有国における活動と同等の保障措置活動の下におくことが公平性の観点から求められている。日本は二国間協定の交渉の場をはじめとしていろいろなところでこのことの重要性を強く指摘してきたが、最近に至り、核兵器国は全てこれを受け入れ、追加議定書も含めてIAEAと協定を締結する運びになっている。

3.3 核セキュリティ確保の取組

 核拡散の観点から対処するべきもう一つの可能性は、非国家主体によって核物質や機微な情報が盗取されるなどにより核拡散に至る可能性である。これに対しては、原子力施設において核物質に対する防護を強化すること、機微な物質の貿易を制限することである。原子力施設の防護に関しては、IAEAにより各国が遵守するべき取組の勧告が1974年に発表されて、各国の尊重するところとなっている。なお、この勧告は、以来、4回にわたって改定されてきており、現在も改定作業が実施中である。

 核物質防護条約は、国際間の核物質の輸送時における防護に係る各国の義務を定めたものであるが、その内容は最近の改正により、国内における核物質も対象にして、その防護のあり方を定めたものに拡張されている。

 貿易制限については、その内容についてのコンセンサスを形成する場として核供給国グループ(NSG)が設立され、NPT加盟国以外への核物質等の受け入れ国の条件をガイドラインとして定め、これを各国が尊重してきている。1992年以降、このガイドラインはNPTを超える条件を受け入れ国に求めるようになってきている。

3.4 核燃料サイクルに係る取組

 原子力発電所を運転するためには、ウラン資源を入手し、精錬した天然ウランを濃縮し、燃料に成形加工する核燃料サイクルの上流部門の取組と、原子炉の炉心で数年間使用された後に取り出された燃料(使用済燃料)を高レベル放射性廃棄物として管理貯蔵後、深地層に処分する直接処分方式か、それを再処理工場で再処理して、ウラン・プルトニウムを回収し、これを燃料に加工して再び原子力発電所で利用する一方、この工程の廃棄物を高レベル放射性廃棄物として地層処分するリサイクル利用方式のいずれかに依拠する下流部門の取組を整備する必要がある。

 ウラン資源は米国、カナダ、オーストラリア、アフリカ諸国、ロシア及びその周辺諸国で産出するので、これを産しない国は、これをこれらから輸入するのが基本である。また、下流部門における使用済燃料の取り扱いについては、フランス、イギリスにある商業用の再処理工場を利用する国もあるが、多くの国では方針を定めず、とりあえず貯蔵している状況にある。ただし、フィンランドやスウェーデン、米国等は使用済燃料を直接地層処分することにして、そのための取組を行っている。

 日本は、当初、使用済燃料の再処理を欧州の再処理事業者に委託しつつ、東海再処理試験施設を建設運転し、続いて六ヶ所村に非核兵器国では唯一の商業用再処理工場を建設してきた。現在この工場は、建設の最終段階である使用前検査を受検中であり、高レベル廃液のガラス固化装置の運転習熟に時間が掛かっている。当面の課題は、1)この取組を着実に進めて本格操業に移行させること、2)この工場の製品であるプルトニウム・ウラン混合物を原料に軽水炉の燃料を製造する、MOX燃料工場の建設を進めること、3)我が国で発生する使用済燃料の量はこの工場の再処理能力を上回るので、このはみ出し分を次に建設するべき再処理工場が稼働して処理できるようになるまでの間、一時貯蔵しておく施設(中間貯蔵施設)の整備を進めることである。

 一方、再処理工程で発生する高レベル放射性廃棄物はガラス固化し、この固化体を発熱量が地層処分に適した水準になるまで地上で保管した後に、地下300メートルより深いところに地層処分する。我が国では、2001年に、この処分は安全に実施可能であることがこれまでの研究開発で示されたので、この処分の実施主体として原子力発電環境整備機構(NUMO)を整備した。現在は、このNUMOを中心に、この処分の安全性及びこの処分施設の立地は全国民に利益をもたらすので、利益の衡平の観点からこれを立地する地域の持続的発展に対して全国民の協力が得られることを全国の自治体に伝えて、本施設の立地を受け入れる自治体を公募している。

 この取組は順調に進捗しているとはいえないが、廃棄物処分は現世代が実施の道筋を確立するべき課題であるから、国、NUMO及び電気事業者には、処分の安全確保の仕組み、処分場立地の公益性、立地を受け入れた自治体の持続的発展に対する国民の協力等に関する各自治体や国民各層との相互理解活動を格段に強化するべきである。

3.5 研究開発の取組

 中期的視点から重要なのは、現在建設運転されている軽水炉に代わって20-30年後の世界市場に登場させるべき優れた特性を有する次世代軽水炉を開発することであり、長期的視点から重要なのは、燃料の利用効率を軽水炉に比べてはるかに高くでき、高レベル放射性廃棄物の性状を改善できる可能性のある高速増殖炉とその燃料サイクル技術システムの研究開発を、これを2050年ごろから導入することを可能にするよう、着実に推進することである。

 原子炉熱により高温のガスを作り、これを使用して水を熱分解して水素を得ると、電気分解を用いるより高い効率で原子炉を利用しての水素製造を行える可能性がある。すでにそうした方法が見いだされ、実験室規模で水素の連続生成に成功しているので、現在は、このプロセスの工業プロセス化を目指した研究開発が推進されている。

 また、核融合反応を利用したエネルギー生産を行う核融合炉の研究開発も進められている。これはなお、使える原理の実証過程にあり、実用化までには長い時間が掛かりそうなので、磁場閉じ込め方式についての大型施設の建設運転は国際社会が共同して一つのプロジェクトとして推進していくことが合意され、現在そのためのITERプロジェクトが推進されている。他方、レーザーを用いる方式についてはなお各国が独自の計画を推進している。

4.原子力インフラの整備・維持

 以上に述べた取組を推進していくためには、この分野に関する健全な科学技術基盤と人材育成機能の存在が不可欠である。このため、これらの取組に関連する分野の科学技術の知見を生み出すのに必要な研究開発施設群とこれを用いて基礎・基盤的な知識創造活動に取組む組織が整備・維持されるべきである。また、人材を供給する大学等の原子力科学技術教育機能も整備・維持されてきている。現在は、これらを将来にわたってどの程度の規模で維持していくべきかについて議論が続けられているところである。

 新興国が原子力発電に着手するためには、計画的に原子力インフラを整備していくことが不可欠である。IAEAは、これから原子力発電を行う国が原子力インフラの整備を行う手順の基本を示したマイルストーン文書を発行し、そうした国々がこれに則ってこれを整備していくことを推奨している。

 一方、2008年に日本で開催された洞爺湖G8サミットは、原子力発電が地球温暖化対策の一つの重要な手段であることを踏まえ、こうした国々における原子力安全、核セキュリティ及び核不拡散の確保の仕組みをはじめ、所要の人材育成に至るまでの原子力インフラの整備に向けた活動を国際的に推進すること、IAEAはこれに重要な役割を果たすべきとした 。(2)
日本は、このことを踏まえ、原子力を化石燃料への依存を減らし、温室効果ガスの排出量を減少させる手段としたいとする原子力新興国に対して、今後ともIAEAやアジア原子力協力フォーラム(FNCA)を通じて積極的に協力するとともに、留学生受け入れ環境の整備、世銀等に原子力発電やこれに基づく安全な水を確保する取組に対する投資枠を設けることを促すこと、燃料供給保証システムの構築の議論等に積極的に参加していくことに取り組むべきである。なお、規制行政実務者やプラントの建設・運転担当者の育成への協力等の個別具体的な取組については、二国間の担当者間のコミュニケーションを良くしての共同作業として実施していくことが適切であるから、このための二国間協力の枠組みの整備も促進するべきである。

5.終わりに

 原子力は、その生い立ちの歴史から、社会との関わり合いが深い技術であり、国民の信頼なくてしてはいかなる取組もなし得ない。そこで、取組の公開性・透明性を確保し、広聴に基づく国民との相互理解活動を絶えず推進し、様々な取組の決定や決定した政策の実施に係る評価の過程への国民の参加を求めていくべきである。

 世界における原子力利用の推進は100年の計に係る課題である。人口の減少という未踏領域に入り込みつつある日本は、世界で有数の原子力大国として、引き続きこれの利用を通じて公益を確保していくのみならず、国際社会とも共同してこの技術を持続可能なものにしていくことによって、国際社会の持続的発展に貢献していくことが大切である。

 世界が現在陥っている経済不況は、人類がエネルギー・環境制約に直面して方向感覚を失ったが故に発生したとの意見があるが、これが正鵠を得ているかどうかは措くとしても、経済社会の運営にパラダイムシフトが求められていること、これを克服するためにはイノベーションが必要であることは確かである。この要請は原子力利用の部門においても例外ではない。今後政府と民間が如何なる役割分担でそのための取組を進めていくべきか、真剣な検討がなされねばならない。

注:

  1. ENERGY, ELECTRICITY AND NUCLEAR POWER ESTIMATES FOR THE PERIOD UP TO 2030, 2008 Edition, IAEA-RDS-1/28, IAEA, VIENNA, 2008.
  2. 洞爺湖G8サミット首脳宣言は、「我々は、気候変動とエネルギー安全保障上の懸念に取り組むための手段として、原子力計画への関心を示す国が増大していることを目の当たりにしている。これらの国々は、原子力を、化石燃料への依存を減らし、したがって温室効果ガスの排出量を減少させる不可欠の手段と見なしている。我々は、保障措置(核不拡散)、原子力安全、核セキュリティ(3S)が、原子力エネルギーの平和的利用のための根本原則であることを改めて表明する。このような背景の下、日本の提案により3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブが開始される。我々は、このプロセスにおいて、国際原子力機関(IAEA)が役割を果たすことを確認する。」としている。

さくらサイエンスプランウェブサイト

さくらサイエンスプランウェブサイト

 

中国関連ニュース 関連リンク

オリジナルコンテンツ

柯隆が読み解く

2014/2/18更新
「中国の歴史問題」

富坂聰が斬る!

2013/12/27更新
「中国賃金事情」

和中清の日中論壇

2014/2/3更新
「失望」に潜む米国のメッセージと日本の「積み木崩し」

田中修の中国経済分析

2014/2/7 新コーナー開設
「中央経済工作会議のポイント」

服部健治の追跡!中国動向

2014/2/27 新コーナー開設 「安倍総理の靖国神社参拝に想う(上)」

川島真の歴史と現在

気鋭の研究者が日中関係を歴史から説き起こす。幅広い視点から新しい時代の関係を探る。

科学技術トピック

New

2014/3/5更新
「赤外線カメラと簡牘資料の日中共同研究」
工藤 元男

取材リポート

New

日中関連、科学技術関連のシンポジウム・講演等を取材し、新鮮なリポートをお伝えします。

中国の法律事情

New

2014/3/7更新
「百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末」朱根全

日中交流の過去・現在・未来

日中交流のこれまでの歩みとこれから

日中の教育最前線

日中の教育現場の今をレポート

中国国家重点大学一覧

 

中国関連書籍紹介

New

2014/3/12 書評追加掲載

文化の交差点

New

2014/3/18更新
「日本における中国古代絵画」朱新林

中国実感

日本人が実感した中国をレポート

印象日本

中国が日本に滞在して感じたことをレポート

CRCC研究会

過去の講演資料、講演レポート

CRCC中国研究サロン

過去の講演資料、講演レポート

最新イベント情報

アクセス数:31043468