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産業の発展を猛スピードで推し進めた中国の淡水漁業

2009年5月15日

邴旭文(BING XUWEN):
現在中国水産科学研究院淡水漁業研究センター副主任、研究員

1968年生まれ。
2006年12月南京農業大学修士の学位を取得。現在中国水産学会エキスパート会員、中国観賞魚研究会員、中国水産専業標準化技術委員会淡水技術分会員。主に淡水魚類の健康養殖および大規模水域における増養殖技術事業に従事。国家重点科学技術の難題プロジェクト、科学技術部成果転換プロジェクト、省院プロジェクト等20以上のプロジェクトに相次いで主宰もしくは担当する。主宰した『タウナギの養殖集約化および大量繁殖技術のパイロット試験』は2004年江蘇省科学技術2等賞を受賞、2005年農業部豊作3等賞(全てco-first author)、その他省の部科学技術賞7件。『水産学報』『中国水産科学』等主な刊行物に発表した論文は30篇以上。

 改革開放以降、中国における淡水漁業は著しい発展を遂げ、淡水水産品の生産量およびその規模は世界第一位となった。2006年の淡水総生産量は2544万トンに達し、その内、養殖生産量は2148万トンを達成、中国漁業総生産量の40.7%を占めた。中国の淡水漁業は世界で非常に重要な地位を占めているだけでなく、農業輸出における外貨獲得の主な産業であり、大口輸出品目の第一位になっている。中国の漁業は改革開放にあって、政府の適切な政策指導により、積極的に農民や漁民を支援し、市場経済を発展させ、都市と農村の水産品需要に対する問題を解決することに成功した。また、食糧の安全保障、水産品の安定供給、水産品貿易の拡大および雇用創出の拡大等の分野で重要な役目を果たし、世界が注目する漁業大国となったのである。

 中国の漁業がこのような著しい成功を収めた理由は、改革開放の恩恵を受け適切な漁業発展方針と政策が施行されたためである。主に科学技術面で輝かしい成果を上げたことで漁業が著しく発展し、一連の重要な科学技術的成果が漁業経済を絶えず新しい段階へとリードし続けたためである。

 中国科学技術体系の絶え間ない発展と整備に伴い、漁業資源の開発利用と、水産養殖、水産品加工および漁業設備の現代化において一連の重要な成果を上げた。国家レベルの表彰を受けた水産科学技術の成果は合計で100件以上あり、閣僚レベルの表彰を受けた成果は565件、その内、1980年以降、合計で国家自然科学賞5件、国家発明賞8件、国家科学技術進歩賞52件を受賞した。漁業におけるたゆみない科学技術の進歩によって、2001年から2005年までの魚業の増産率は50%を超えた。漁業の際立った発展によって、一部の水産養殖に重要な新しい技術が開発されたため、漁業生産に著しい変化が生まれたのである。

1. 淡水優良の育成に大きな飛躍

 現在、中国における淡水水産養殖の種類は極めて多く、50種類以上にも上るが、水産養殖で基幹的な役割を果たし、主導的な立場にある淡水養殖品種(主力品種)は実に少なく、わずか10種類以上(即ちエビ類、貝類、シナモクズガニ、ティラピア、ソウギョ、ハクレン、コイ、フナ等)しかない。これらの主力品種は養殖が容易で、生産量、普及率とも高く、市場需要も大きい。それらの中には中国の輸出における外貨獲得の優勢製品、例えばバナメイ、貝類、シナモクズガニ、ティラピア、ウナギ等)もあり、一般貿易輸出の約50%を占めている。2004年の統計によると、以上の主力品種の養殖生産量は1633万トンに達し、水産養殖総生産量の51%を占め、既に水産養殖の半分を占めた。主力品種は国内市場の消費需要を安定させただけでなく、中国輸出において外貨獲得の優勢水産品でもある。

(1) 淡水養殖の主力品種の遺伝資源研究面において著しい成果を上げた。

 国家自然科学技術資源プラットホーム構築の全体目標に基づき、本研究は2008年までに第一段階の構築目標を達成し、正常に遂行された。現在、省レベルの水産科学研究所26ヶ所と大学等の部門が合意という形で水産遺伝資源共有プラットホームの構築に参加し、合計で国家レベルの水産原良種場および一部の省に属する水産研究所を含む資源保存に加盟する61部門を整理統合し、全国の主な水産科学研究教育部門のネットワークを網羅する共有サービスプラットホームの基盤を作った。プロジェクトは各種水産遺伝資源の説明基準および技術規定123項目を制定し、合計で生体資源情報612種、遺伝資源標本情報3377種、DNA430種、精子116種および5314本の細胞系資源情報を標準化し、整理・デジタル化を行うことでバーチャルネットワーク標本館を開発し、情報と実物資源の共有を実現した。『中国水産遺伝資源と利用』第1巻および『長江河口の魚類』等、水産遺伝資源に関する重要な専門書が出版され、『中国水産遺伝資源と利用』第2巻および『水産遺伝資源の説明基準および技術規定』が間もなく出版される。

 2007年9月、FishBase Consortiumは中国水産科学研究院を正式に承認し、現在9機関あるメンバーの一つとして受け入れた。これは水産遺伝資源の共有プラットホーム事業が世界の同業者から認められた証である。

(2) 主力品種の遺伝生化学研究分野では著しい進展が見られたが、分子遺伝学、量的遺伝 分野では外国との差は依然大きい。

 遺伝生化学研究の分野では、中国は既にアオウオ、ソウギョ、ハクレン、コクレン、団頭魴(ダントウホウ)、コイ、フナ、ティラピア等、数十種類の主な養殖魚類に対して、アイソザイム、タンパク質の電気泳動ザイモグラム分析を行い、更にある魚類の多型マーカーについて対立遺伝子頻度の研究を行った。エステラーゼ・アイソザイムを遺伝マーカーとし、ギンブナと長江ハクレンの生化学的類型および成長の関連性研究をそれぞれ行い、成長が早い生化学的な類型を突き止めた。これは生化学的な遺伝マーカーにおける選抜育成の基盤となった。科学技術の発展に伴い、mtDNAの物理地図 の分析技術、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、RAPD法は既に中国において魚類の遺伝子鑑定および分子生物学研究で広く応用されている。コイのミトコンドリアURFA6L遺伝子とtRNALys遺伝子のDNA配列および構造に対して分析を行った。また、コイ、シロブナ、フナ、カムルチー等、魚のmtDNAに物理地図の分析を行った。そして、アオウオ、ソウギョ、ハクレン、コクレン、コイ、フナ、ヒラウオ等、淡水の主なコイ科の魚類数種類の精子冷凍庫を作った。特にこの2年、mtDNA、RAPDおよびRFLP等、最新の分子生物学技術の応用により、コイ、フナ、ハクレン、コクレン、カラチョウザメ等の魚類の遺伝構造研究を繰り広げ、意義のある重要なデータをかなり得ることができた。但し、研究を行った種類はまだ不足しているので、併行精度は高くなく、研究レベルを更にアップさせる必要がある。

(3) 交雑育種法は中国水産育種において最も早く応用された技術の一つであり、交雑によりかなりの良種を飼育することで、水産養殖の発展を促進した。

 中国におけるコイの交雑育種の研究は比較的早くに始まった。70年代末から80年代にかけて、中国における魚類の育種は新段階に入り、全国で40以上の魚類に交雑組合せを行い、魚類の交雑強勢利用および新しい遺伝子の培養を模索する中、コイの種内交雑および新品種の選抜育成に飛躍的な成果が得られた。例えば、興国紅鯉と散鱗鏡鯉の雑種F1(豊鯉)、荷包紅鯉と元江鯉の雑種F1(荷元鯉)等、コイの雑種組合せ全てに雑種強勢が強く現れており、一般的には10%~30%の増産が可能である。70年代末から90年代にかけて、全国で普及した交雑品種には豊鯉、荷包紅鯉、頴鯉の三種交配コイがあり、地方で普及したものには有岳鯉、芙蓉鯉等がある。交雑の選抜育成技術により、荷包紅鯉と黒竜江野鯉の雑種F2から分離した耐寒能力を有する紅鯉の内、4代にわたって選抜育成を行い、安定した遺伝子の荷包紅鯉耐寒品種を育成した。

(4) 水産における選抜育種技術、雌性発生法の研究分野に特色があり、著しい効果を上げた。

 水産における選抜育種技術は、遺伝規則および量的遺伝学の理論に基づき、数百年の実践を経て発展した典型的な新品種育成技術である。その主な目的はある一つの起源材料もしくはある一つの群体から人が必要とする最も優れた固体もしくは類型に合致するものをスクリーニングすることである。興国鯉と荷包紅鯉は中国の民間で選抜育成されたものである。彭沢鯉に対して選抜育成を行い、7年間で6代の系統に選抜育成を行った結果、彭沢鯉の成長速度は選抜育成前より50%以上速くなり、フナの成長より200%以上も速くなった。また、その他の性状にも改善が見られた。

図1:建鯉

 従来の育種と雌性発生を組合せた技術で、コイの新品種建鯉と松浦鯉 の2種類を育成した。そして、それら全ての増産率は30%以上ある。建鯉の全国普及面積は100万ムー 以上に達し、松浦鯉の北方地区での普及面積は20万ムーに達しており、共に比較的顕著な経済効果をもたらし、中国におけるコイ養殖業の発展を推し進めた。養殖の団頭魴に見られる成長速度の落ち込み、性成熟の早期化、体形が長く薄くなる等の退化現象を対象に系統の選抜育成とバイオテクノロジーを組合せた方法で、団頭魴に選択育種を行った結果、成長速度が淤泥湖原種より30%速く、体長/体高の比率が2.1~2.2という美しい体型の品種である団頭魴浦江1号を育成することができ、全国各地に向けて養殖が普及していった。現在、雌性発生を人工的に誘発させる技術を用いて商品価値が比較的高い全てメスの魚類を既に20種類以上生産している。人工的に誘発させた雄性発生二倍体は雄性のホモ接合体を作るためである。

(5) バイオテクノロジーによる育種は水産育種の新たな道を切り開き、一定の成績を収めたが、先進国と比べてその差は明らかである。

 遺伝子工学による育種、細胞工学による育種、染色体操作によって誘発した倍数性育種、性別制御技術と雌性発生法による育種、分子マーカーを利用した育種等を含む、バイオテクノロジーの応用による水産養殖の新品種育成研究が現在世界中で盛んに行われている。遺伝子工学による育種の分野では、中国における魚類の遺伝子組換えの技術研究は世界トップレベルにあり、朱作言氏(中国科学院会員)が育成した遺伝子組換えコイは世界中から大きな関心を集めた。中国の科学研究者は既に遺伝子組換えによるマダイを育成しており、これらの遺伝子を組換えられた魚は成長速度が速く、病気に対する抵抗力が高いという優勢が既に明らかになっている。成長ホルモン遺伝子を組換えたナマズの養殖周期は18ヶ月から12ヶ月まで短縮した。遺伝子工学技術はナマコ、アワビ等の高級海産品の養殖において、その成長速度を高める重要な作用を発揮することができる。70年代中ごろから、中国は魚類の多倍体を誘発させる技術研究を開始している。1998年に報道された湖南師範大学の湘雲鯉とフナは四倍体と二倍体の交雑により生まれた三倍体である。1999年、中国バイオテクノロジーセンターの検査に合格した。この新品種は成長が早く、性腺が発育せず、食欲が旺盛で、病気に対する抵抗力が高く、低温低酸素にも耐え、体形が美しく、柔らかで円やかな肉質等の特徴を持っており、早くも2000年に国家ハイテク産業パイロットプラントプロジェクトに組み込まれ普及が進められてきた。

2. 淡水生態に優しい養殖技術はモデル普及段階

(1) 水産養殖の汚染物質発生と排出係数測定研究において著しい進展を遂げた。

 水産養殖における汚染物質の発生と排出係数の測定は中国で初めて組織的に展開された水産養殖の汚染物質発生基本状況調査研究プロジェクトである。プロジェクトチームは検討を通じて『水産養殖における汚染物質の発生と排出係数の測定に特化した技術の規範』を制定した。そして、42のメンバーと部門は共同で農業部漁業生態環境モニタリングセンターを完成させた。養殖により発生した汚染状況の野外システムモニタリングを通して、水質、底泥、生物体および土壌の実測データ3万以上を採取し、中国のさまざまな品種と養殖パターンから水を採取し、水質、養殖水域の水質と廃水を排出した水質の状況および各地に分布する養殖場の水質分布法則の基本的な把握が可能となった。中国の水産養殖におけるさまざまな品種とパターンによる汚染物質の発生(排出)係数を得ることができ、プロジェクトに規定された任務と指標を期日までに完成させることに一定程度成功した。プロジェクトチームはデータベース機能を持つプログラムの作成をするとともに、データ分析計算ソフトを編集することで、データモニタリングのチェック機能および分析作業の効率をアップさせた。

(2) 養殖池におけるバイオレメディエーションおよび水環境保全技術は養殖産業技術を向上させた。

 水環境の総合的な保全および原位置バイオレメディエーション分野において、ソウギョおよびティラピアに適した有益菌3種(バチルス属細菌、光合成細菌、乳酸菌)を篩い分け、淡水高密度養殖の微生物固定化による完璧な汚染処理技術を確立したことで、嫌気条件では酸化鉄(Ⅲ)および腐植土にアゾ還元を促進させる作用があることを発見した。このことは水産養殖の底泥汚染処理における嫌気性バイオレメディエーション技術応用の理論的基盤となった。バイオ池の標準化養殖、高密度養殖の微生物固定化による汚染処理、いけすの溶存酸素量管理 等の動態的な管理技術を一定程度確立したことで、リサイクル水は『漁業水質基準』の要求を満たし、養殖廃水のゼロ排出をまず実現した。

図2:生態養殖池

(3) 水産集約化養殖のデジタル化システムインテグレーション研究は技術の集積とモデル化段階に移行した。

 集約化養殖水域の総合水質指数移動勾配および分布法則を把握することで、総合水質指数の三次元分布図を構築、養殖水域におけるトータルなモニタリング方法の確立と合理化を行い、溶存酸素、pH、温度、酸化還元電位、電気伝導、アンモニア態窒素等6つの重要な環境因子ファジー判断および早期警戒研究実験プラットホームの構築を完成した。CANバスのDCS監視ノード のハードシステム設計およびグレードアップ改造に基づいて水質高度監視システムプラットホームを完成した。GPRS技術および画像監視技術の応用により水質と養殖状態に対して遠隔監視および施設の自動制御方法を確立した。以上の研究を通して水産集約化養殖におけるデジタル化インテグレーション技術体系を一定程度構築し、水産集約化養殖のより効率の良いデジタル化に向けて、インテリジェントマネジメント推進への技術的根拠と設備のサポートを提供した。

3. 環境微量元素“指紋”情報判別法の技術研究は水生生物資源保護評価法を開拓

 環境微量元素“指紋”情報判別法の技術研究は、最先端の電子をプローブとする分析技術を利用して、重要な漁業種の環境元素“指紋”情報ファイルの構築を研究し、その生活史を“復元”するとともに、回遊履歴および環境背景の元素情報を追跡し、個体群動態を有効的に評価する新たな根拠となるものである。この技術を利用して太湖および洪澤湖水域にいるオオシラウオの個体群の中から生物蓄積特徴の主要成分12種類の元素に対して分析を行った。両水域にいるオオシラウオの固体群における個体の多元素全体 の“指紋”は地理的な差異があるということが明確に認められた。これをベースとして元素“指紋”から両水域の異なった水産品オオシラウオの品質個体の判別関数を導き出すと、正確率は100%に達した。この技術原理および方法を利用して淡水“ドブガイ観察”方法を確立し、自然水域と養殖水域ではドブガイの軟組織の元素蓄積に差異があることを初めて確認した。これは大規模な移植モニタリング研究に理論的根拠を提供することになった。

 この研究は有効的な開拓、豊かな生物資源の保護、生態環境評価、研究方法を進展させることになり、資源環境モニタリングおよび評価水準を有効的に向上させ、更には中国の重要な経済である魚類の保護および資源管理事業に技術的なサポートを提供するであろう。

4. 水産における重大な病害制御技術の研究に進展

(1) 水産では薬物動態学研究および検出技術方法により系統結果を得て、それを生産に応用することが制限されている。

 スズキ、ヒラメ、クロダイ等の水産品の体内におけるノルフロキサシン、複合スルファメトキサゾール、テラマイシンの薬物動態学および残留メカニズムを初めて把握し、魚体内におけるクロロマイセチン、ニトロフラン類、キプロフロキサシン、エンロフロキサシンの代謝、除去メカニズムを得て、除去サイクルを出した。抗菌薬物のテラマイシン、複合スルファメトキサゾール、ノルフロキサシン、オキソリニック酸、フロルフェニコール、ネオマイシン6種類の安全使用技術を確立し、魚とエビ体内のテラマイシン、複合スルファメトキサゾール、ノルフロキサシン、オキソリニック酸、フロルフェニコールの休薬期を確立し、水産品におけるニトロフラン類、ポリ塩化ビフェニル、チアンフェニコール、フロルフェニコール、プラジカンテル、スルファンアミド類およびヒスタミン等の薬物測定方法を確立した。

 以上の研究は水産薬物残留検出、主な水産品の品質監督および安全調査、漁業用薬物残留監督、ニトロフラン類等の使用を禁止されている薬物の専門処理等の作業の進展に重要な役割を果たした。

(2) 水産における病害のワクチン研究開発の成果に変化が見られた。

 『養殖魚類のビブリオ病に対する遺伝子工学によるワクチン実用化の技術研究』、『ケツギョ、シナモクズガニ等のクリーンな養殖技術の研究』、『スギの抗ビブリオ病サブユニットワクチンの応用』、『魚類のエロモナス・ハイドロフィラに対する浸漬ワクチン産業の基幹技術の研究およびデモストレーション』等の研究プロジェクトにおいて、スギの粘膜免疫メカニズム等の研究、ビブリオの細胞外産物(タンパク質)を大量に抽出濃縮および腸炎ビブリオの外膜タンパク質 の抽出、遺伝子工学菌の大量培養および発現誘導等の技術研究を行い、ある程度のレベルのナノ粒子ワクチンの調整技術を開発した。一連のケツギョワクチン、シナモクズガニと淡水エビの免疫増強剤、生簀の環境改良製剤が研究開発された。良好な生物相容性を持つもの、吸収性および集中性と免疫効果のあるもの、浸漬免疫に使用できるアジュバント材料であるものをスクリーニングし、調製した抗ビブリオ・ハーベイ服用粒子ワクチンの効果は免疫注射とほとんど同じであった。エロモナス・ハイドロフィラ発酵用培養基の合理化と大量培養を実現し、深水網箱で飼育されているスギのビブリオ病に対するワクチンの試験を完成させた。養殖魚類のワクチン実用化において技術研究分野に着実な進展を見せた。

5. ティラピアの高付加価値化を図る加工研究が産業化応用段階に突入

図3:“夏奥1号”ブルーティラピア

 ティラピア切り身への発色技術の導入と開発を行った結果、分子レベルでの切り身のメカニズムおよびその影響要素を解明することができた。ティラピア切り身への発色技術のテスト生産を通じて確立した技術を用い、発色合格率 は90%以上に達したことから、生産モデル基地を構築するとともに産業化生産を開始した。ティラピア魚肉のエクストルージョン・クッキング技術の導入と開発を行った結果、ティラピアの利用価値を引き上げることができた。液燻法を用いたティラピア切り身の冷凍過程での組織、微生物、脂肪酸、揮発性成分変化の研究を行い、液燻ティラピア切り身の品質と消費期限を向上させるための理論的な基盤を作った。先進的な技術を用いて酵素加水分解物ペプチドホルモン および魚肉タンパク加水分解物氷晶防止剤の生産を行い、ティラピア切り身の氷晶防止機能を高めた。ティラピア養殖製品においてプロセスの調査研究および分析、トレーサビリティ技術のプロセス処理およびデータバンクの構築、ティラピア養殖製品における管理システムの開発および品質追跡システムの開発を繰り広げたのである。

 この分野の研究システムで開発されたティラピアの高付加価値化を図る加工技術は中国のティラピア加工レベルを大幅に引き上げ、共に開発した加工製品品質管理システムおよび品質追跡システムの技術プランは、中国水産品加工の技術プロセスから品質管理に至るまで、全プロセスを制御し、優れた推進作用を発揮することになるであろう。

6. 水産品品質安全追跡システム技術の研究は産業チェーンの全プロセスを網羅するとともに試行段階に移行

 追跡システムは水産品品質安全管理と法律を執行する重要な技術サポート体制である。2007年、中国水産科学研究院品質および標準研究センターが既に研究された成果をベースに、業界内で科学的で標準化され、有効且つ実用的な追跡体系の構築を目指し、水産品の全プロセス追跡体系に重要な技術研究を行った。このプロジェクトは水産品サプライチェーンの全プロセスにおける生産、流通、販売のそれぞれ主な部分まで網羅しており、生産企業内部の品質安全管理、サプライチェーンの全プロセスにおける追跡体系のオペレーションとサプライチェーンの全プロセスに対して政府が効果的に監督できるように配慮している。水産養殖製品の全プロセス追跡管理システムにおける共通基盤技術研究を通じて、水産養殖製品の全プロセス追跡体系操作システムおよび関連製品を開発し、体系オペレーションに必要なトレーサビリティ標準モデルを作り、研究を通して水産養殖製品における全プロセスの追跡管理システムオペレーションメカニズムを打ち出した。同時に、農業部漁業局の取り決めに基づき追跡体系の構築を広東省水産品質安全管理事業計画に盛り込み、広東省当局および水産技術推進ステーションと協力を進め、先ず広東省で試験的に検証を行った。プロジェクトの必要に応じて、試験を行った企業は生産、経営管理および監視プラットホームの基礎資料と基礎データを提出し、特別に調査研究および研修を行った。初の試験と検証を通して、研究結果の実現可能性を証明した。よりいっそうの修正と改善を行うことで実用化段階に向けて確かな礎を築いたのである。

 中国における水産科学技術事業は比較的優秀な成績を収めたが、水産発展の要求と比較すると、依然として相当大きな格差と問題が存在しており、それによって漁業生産および経済発展が制限されている。これらの主な問題は、① 科学技術の導入が不十分なため、科学研究の深さと広さに大きな影響を与えており、漁業生産において迅速に解決するべき科学技術問題および漁業における経済発展の政策決定に対して有効的措置を取るのが難しくなっている。水産学科学体系が不健全なため、生産量向上に関する研究はやや飽和状態であるが、一方、生産前後の技術は遅れており、生産型漁業から品質、高収益型漁業に際しての技術要求に応えることは容易ではない。② 科学研究における新旧体制の交替が未だに不完全で、研究主体の転換にはなお時間が必要である。地方では科学チームの立ち上げ制度が改正され、科学研究プロジェクトへの支援が減らされた結果、科学技術者が流失し、そのことが科学チームの立ち上げに深刻な影響をもたらしている。③ 科学技術と推進、科学技術と生産、推進と生産は体制上“ギャップ“がそれぞれに存在しており、これらの矛盾は抜本的には解決されておらず、それによって科学技術成果の転換が遅く、転化率も低いという問題が存在している。技術推進プロジェクトにおいては、技術の占める割合は高くない。④ 漁業における基礎研究は相当薄弱で、生産発展の技術問題に深刻な制約となっており、長い間解決することができず、企業生産の積極性を萎えさせている。公益性技術研究事業の展開が盛んではないため、多くの一般的かつ基礎的な技術事業が有効的に展開できず、ソフトサイエンスの研究が極めて立ち遅れている。⑤ 特に、中小企業では、生産の主体となる技術水準が低く、技術改良および設備の更新が遅く、品質も悪いため、効率が高く、安全且つ衛生的で、経済的な品質要求に対応することが難しい。⑥ 先進的な技術および高科学技術の蓄積が不足しており、ひどい場合は空白になっている。高度先端技術が不足しているため、従来型漁業の改善に対応することが難しく、漁業の生産技術および中国における漁業の現代化を目指してリードして行くことが難しくなっている。⑦ 農村で漁業に従事する人材の学歴が低いため、生産者の科学的な質がそれに伴って低下する傾向があり、技術の推進事業を難しくする要因にもなっている。


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