第32号:食糧の持続的生産に関する研究
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主要農作物の品種選抜育種の現状および課題

2009年5月25日

袁奎明(Yuan Kuiming): 山東省農業持続可能な発展研究所、
農業遠隔計測研究室主任、研究員(教授)、
山東登録科学技術コンサルタント、
国家登録コンサルタントエンジニア(投資)

 1966年5月生まれ、1989年7月莱陽農学院牧畜専攻を卒業。1989年8月から山東農業科学院にて科学研究管理とマクロ戦略研究に従事。主催・参加した政府の特別プロジェクト計画と戦略研究は20余り、省の科学技術進歩賞は3つ獲得。

 農作物の優良品種は優良な生物学的、遺伝子学的特性を持つだけでなく、優良な生産性と商品特性を持ち、農業生産上特徴があって、他にとって変わることのできない、最も基本的な生産財である。また、農業科学技術と各種の農業生産財は農業の発展にとって重要な」役割を果たすものであり、とくに現代バイオテクノロジーは優良品種と植物保護や、除草、肥料用の土などの技術と有効に結びついて、多くの農業技術のうちの有効な技術となっている。世界各国は、優良品種選抜育種の普及を農業技術改造の主な内容としている。優良品種の中国農業成長への貢献度は、既に第八次五カ年計画期末の29%から現在の38%前後に上がり、山東省は1995年に率先して"優良品種プロジェクト"を始め、1996年9月、国も正式に種子プロジェクトを始めた。相次いで22の農作物国家改良センターと69の改良サテライトセンターを建設し、育種理論、技術と方法の研究においてかなりの進展があり、スーパー稲、耐虫性綿花、「矮敗小麦」と交雑したアブラナなど新品種の栽培は、既に世界をリードするレベルになっている。重要な応用価値のある育種母材一万余りを新たに作り、育種効力を増強した。国や省レベルの認定を得た780品種を選抜育種し、うちいくつかは主産地の主な品種となっている。改良センターや改良サテライトセンター、地方育種普及機関が有効に結びついて全国品種改良体系の第一歩となった。

1. 中国の主要農産物品種選抜育種政策メカニズムについて

 国家「種子法」の施行後、種子法律制度は少しずつ健全になった。国の農業省は相次いで9つの附帯規則を施行し、各省(自治区、直轄市)も「種子法」に則り、一連の地域に合わせた規則を制定し、種子産業の発展を法制面から保証した。2006年5月、国務院弁公庁が「種子管理体制改革推進のために市場の管理監督を強化することに関する意見」(国弁 [2006]40号)を通知し、現在と当面の種子産業発展を指導する綱領的な文献となっている。最近、農業省が優勢農産品と特色ある農産品に対しての計画を進め、優良品種の選抜育種と技術の普及を保証するための重要な措置としている。主な政策メカニズムは以下の通り。

(1) 改良センターとサテライトセンターの運営は、"開放式運営"メカニズムを採用する。わが国の農作物育種能力とレベル目標を持続的に高めるため、"開放式運営"の原則に基づき、関連した科学研究機関と育種企業が改良センターとサテライトセンターの施設を使用し、育種の基礎的研究と新品種の選抜育種業務を行なうことを許可する。改良センターとサテライトセンターは、実際の状況に応じて適切な施設使用と消耗費を徴収できるが、営利目的であってはならない。運営管理上、国の科学研究への資金投入増大を積極的に図り、科学研究の力を統合し、規則制度を改善し、基礎および、ハイテク分野の研究プロジェクトや一般の育種活動が順調に行なわれ、成果の公益性と社会性を保証する。また、企業の応用研究開発への資金投入を支持し、経済効果と利益が見込まれる育種プロジェクトに対し、企業の自主開発を主とした状況が少しずつ出来上がってきている。

(2) 種子産業の基礎性、公益性、ハイテク研究開発プロジェクトに続けて力を入れ、種子産業の科学技術革新と技術の普及を早める。遺伝資源の機能発掘と利用を重視し、種子産業の国際競争力の基礎を固める。ハイテク育種研究を重点的に支持し、わが国の農作物品種の国際競争力を更に高める。種子検査技術の開発を急ぎ、種子貿易のグローバル化のニーズに対応する。新品種の普及を強化し、優良品種の商品率とカバー率を上げる。

(3) 優遇政策を実行し、種子企業が育種の科学研究システムを作るのを援助する。種子企業が応用研究開発プロジェクトに資金投入し、改良センターのプロジェクトを利用して育種研究などのプロジェクトを行うことを奨励する。応用技術分野において、企業を主体とする種子科学技術の創造体系を少しずつ作る。市場メカニズムと国の支援措置を利用して、種子産業関連企業の技術改造を奨励し、種子の加工と、貯蔵、保護膜付与包装の新技術の研究、開発、普及を促進する。

(4) 優良品種普及補助制度を更に改善し、補助品種と補助範囲を少しずつ拡大し、多く栽培しているのに育種がうまくいっていない問題を解決して、優勢農産品地域の形成を進める。種子企業に対する政策上の支持を強め、税収減免政策を実行し、種子企業が科学技術の創造体系を発展させることを奨励する。買付資金を適切に管理し、国の備蓄している災害、不作対策の種子に対する貸出利息、消耗と管理費用を補助する。

2. 山東省農作物品種選抜育種の現状

 山東省は農業の大省で、食糧、綿花、油、野菜を生産している省である。小麦、とうもろこし、綿花、落花生など主要農作物の作付面積と総生産量は、何年も全国で上位にある。2006年小麦、とうもろこし、綿花、落花生の生産量はそれぞれ1889.8、1761.3、102.3、355万トンで、すべて全国第二位であった。山東省は1979年以来、農作物品種の更新と入れ替えを三度行ない、農村経済の安定した成長を強力に推し進めた。20世紀80年代に魯棉1号を育成し普及させ、わが国の綿花生産の更なる発展に重要な役割を果たした。20世紀90年代、掖単号とうもろこし品種は、28の省、市、自治区に広められた。1995年初め、国内投入規模最大の省レベルの農業新品種総合開発プロジェクトが始まった。優良品種プロジェクトの実施以来、選抜育種された小麦、とうもろこし、綿花、落花生、果樹、野菜など取り扱いの多い農作物の新品種(系)は2500余りになった。主要農産品は段階的な更新と入れ替えを行ない、農作物の優良品種の普及率は96%以上、モデル地域の統一品種供給率は99%以上に達した。新たに選抜育種された小麦、とうもろこし、綿花、落花生などの農作物の新品種の単位面積当たりの生産水準は、それぞれ600kg、750kg、150kgと600kgであった。現在、国レベルの作物育種改良サテライトセンターは6ヵ所、国レベルの農業技術地域の技術創造センターは2ヵ所、農業省野外科学観測試験ステーション2ヵ所、国レベルの新品種選抜育種の基礎材料を栽培する植物園1ヵ所、省レベルの農業生物資源センター1ヵ所、農業省検測センター13ヵ所、農業省繁育基地10ヵ所がある。

(1) とうもろこし

 山東省は比較的早くからとうもろこしの交雑育種を行ない、成績も突出した省のうちの一つである。50年余りの間、山東の交雑とうもろこし育種活動は、品種間の交雑育種及び自家受粉の子孫間の二種類の自家受粉交雑育種株を掛け合わせる交雑育種、三種の異なる株を二度交配させる交雑育種、二種類の自家受粉株の交雑育種、二種類の自家受粉株の小型化交雑育種などを経験した。一般の育種以外に、放射線照射育種、バイオテクノロジーによる育種なども行なっている。栽培し、広い面積で普及し採用された80あまりの優良自家受粉の子孫と交雑種は、全省と全国のとうもろこし生産の発展に大きな役割を果たした。山東省でとうもろこし育種に携わる農業科学研究機関は、主に山東省農業科学院など17ヵ所、市レベルの農業科学研究所、山東大学、山東農業大学、青島農業大学などがある。十年間で認定した品種は82あり、うち農業科学研究機関が育成した品種は39で、すべての品種の46%を占める。掖単号系列の交雑とうもろこし種は、わが国で先頭を切って小型のとうもろこし育種の方向を確立し、採用された小型とうもろこし交雑種がわが国のとうもろこしの単位面積当たりの生産量を高めるのに有効な道を切り開いた。単位面積当たりの生産量が1096.29kgという夏とうもろこしの世界記録を作り、これは国や省レベルの30余りの賞を獲得した。相次いで育成した"掖単系列"、"登海系列"のとうもろこし交雑種は、省レベルの認定を20品種余り、国レベルの認定を6品種が獲得し、作付面積は全国の40%以上で、山東省の80%以上を占める。

(2) 小麦

 20世紀の6、70年代、山東農業科学院の育成した"泰山号"系列小麦が、黄淮海冬小麦地区の主な栽培品種として、累計で0.23億ha近くの面積に広められ、増産された小麦は88億kgで、"泰山が頭の上にのしかかるほどの大きな影響力のある成果"と言われる名誉に預かった。ここ数年、"済麦"系列の小麦品種が全省の良質小麦の面積の80%をカバーしている。山東は1986年から小麦品質育種研究を始め、相次いで優良品種を育成し、認定、普及させてきた。そのうち、硬質品種は煙農15号、PH82-2-2、済南17号、煙農19号、淄麦12号、済麦20号がある。中間質品種は済麦19号、莱州95021、山農優麦2号、泰山1号などがあり、特に山東小麦品質改良は、1ムー(1/15ha)あたり500kgの高生産レベルで行なわれてきた。山融3号系は、山東大学生命科学院が細胞融合(体細胞交雑)を利用して穂の長いヒメカモジグサの染色体の小片を済南17号系統に入れ、選抜育種してできたもので、この育種手段は山東省が認定した小麦品種のなかで最初のものである。

(3) 綿花

 20世紀の80年代初め、山東農業科学院が作った綿花品種の"魯棉1号"は、累計0.08億haに広がり、57億元の社会経済効果を生み出し、黄淮海流域の綿花生産の歴史を塗り換えた。建国以来、山東省は六度にわたる綿花品種入れ替えに成功し、そのうち山東省が自ら育てる品種は後の四度の品種入れ替えの中で、主導的、あるいは重要な役割を発揮した。特に魯棉1号、魯棉6号に続き、山東省はここ数年、遺伝子組み換え耐虫綿花育種において、再び輝かしい成果を上げた。山東省は合わせて13の認定を受けた遺伝子組み換え耐虫綿花品種を栽培し、これは同時期に認定された耐虫品種の半分以上を占める。そして、山東省綿花栽培生理重点実験室と国家綿花改良センターを設立した。

(4) 落花生

 山東の落花生は長期にわたる生産栽培、科学研究の中で、海花系列、魯花系列など二百余りの品種が形成された。"第七次五カ年計画"以来、山東が国と省レベルの認定を受けた落花生品種は約23あり、そのうち殻つき落花生は13ある。省の種子管理部門の統計によると、現在山東落花生の播種面積が6.6万haを超えているのは3品種のみであり、それは海花1号、濰花6号と魯花11号であり、面積はそれぞれ10.08万ha、9.03万haと8.97万haである。山東落花生研究所は現在国内唯一の落花生専門研究機関であり、主に伏花生、白沙1016、徐州68-4、花37、魯花9号、魯花14号、8130など20余りの落花生新品種を選抜育種し、品質を確認し、普及させている。これらの品種は長江以北の各落花生産地で生産されており、普及した累計面積は、全国の良質品種落花生の普及した面積の45%前後を占める。国内外で落花生の1ムー(1/15ha)あたりの生産量が相次いで500、700kgの高生産記録を突破しており、国内外の単位面積当たりの生産量の最高水準に達している。

3. 問題点

 世界の育種研究は、既に伝統的な通常育種の技術から、バイオテクノロジーによる育種の段階に入った。世界中で既に6000項目余りの農作物のバイオテクノロジー研究成果が既に農地試験に入っており、一部の新技術は既に国外の数百万ヘクタールの土地で試用されている。国のレベルから見ると、全国で400余りの科学研究員、研究所が種子研究開発に携わっているが、国の新品種研究開発に対する資金投入は充分ではなく、その上分散使用されているため、それぞれの力を合わせるのが難しい。一部の種子企業は商業化研究開発条件に適合した農作物の育種を手がけ始めているが、資金投入比率は2%-3%に過ぎない。基礎研究から見ると、"短期、安く、速く"を求めるものが多く、新品種選抜育種の基礎材料の利用など公益性基礎研究はひどく遅れている。応用研究から見ると、研究開発への資金投入は少なく、資金は分散され、統一した配分を考えず、まとまりに欠け、そのために多くのプロジェクトが低いレベルのままで重複し、目標がぼやけている。多く育てているが関連性に欠けるために、科学研究成果の実用化効率は低い。山東省の主要な農作物の育種状況から見ると、以下の遅れが見られる。

(1) 認定された品種は多いが、抜きんでた品種は少ない。綿花を例に取ると、これまで国や省レベルの認定は山東省が広めてきた国産耐虫綿品種が9つあるが、栽培面積が3.3万haに達する品種は2種類にすぎず、アメリカの耐虫綿の新綿33Bは2000年から本格的に広められて以来、毎年の栽培面積はずっと省内一位となっている。

(2) とうもろこし品種の多様化に対するニーズと格差がある。とうもろこし生態の区分によると、山東省は黄淮海夏とうもろこし区に属しており、通年でとうもろこしの栽培面積は約246.6万ha、毎年のとうもろこし種子の使用量は約1億kgで、全国とうもろこし種子総量の約1/10を占めている。現在必要な品種が多様化しており、特に蛋白とうもろこし、高脂肪とうもろこし、飼料兼用とうもろこし、高でんぷん質とうもろこし、青刈りとうもろこし、生食用とうもろこしを含む良質とうもろこし品種が求められている。

(3) 小麦育種はまだ一般の育種の段階にあり、交雑育種の技術はまだ不十分である。報道によれば、北京交雑小麦工学技術研究センターが担っている国の863計画"良質で超高生産の農作物新品種選抜育種" 重要プロジェクト"小麦雑種強勢利用技術研究と応用"課題は、小麦雑種強勢利用の基礎研究と応用研究において、重要な進展があった。これによって、小麦雑種強勢利用が近い将来広く生産の場に広まるであろうということを示している。

4. 目標

 高生産で安定に生産でき、良質で、広く採用して効率よく収穫できるスーパー小麦新品種の栽培を重点的に強化する。"単位面積当たりの生産量を増やし、品質を改善して耐性を増強する"ことを目標として、超高生産で、食糧飼料兼用型の、良質の青刈りとうもろこしの新品種選抜育成に特に力を入れる。"高生産かつ良質で、総合的な耐性を高める"という方針を堅持し、良質で中長繊維綿と超高生産で良質な中繊維交雑綿の新品種選抜育種に主に取組む。良質で高生産で、耐性も高い殻つき落花生、輸出専用型の落花生新品種の栽培など、良質で専用のスーパー高効率新品種の選抜育種をしっかり行なう。細胞工学、遺伝子工学、分子記号、細胞融合、核技術などのハイテク技術と通常の交雑技術を用いて、新種質を作り、新品種を栽培する。

(1) 小麦

 生産量、品質、耐性と関係のある機能遺伝子の分子記号の解明と補助育種技術研究を重点的に進め、分子記号での遺伝子系譜を作製する。生産量、品質、耐性に関する機能遺伝子を特定して、優れた性質を持つ種質材料を作り、遺伝力、配合力及び優れた性質の機能遺伝子に関する研究を進める。

 第一に灌漑地の新品種中質小麦を選抜育種する。この中質小麦は1ムー(1/15ha)あたり700kgの生産潜在能力があり、省あるいは国の地域試験の中で従来品種に比べ、5%以上増産する。硬質小麦は1ムー(1/15ha)あたり650kgの生産潜在能力があり、省や国の地域試験で、生産量は従来品種を下回らなかった。その品質は、GB/T 17320--1998基準を達成した。

 第二に灌漑のできない乾燥地の新品種小麦を選抜育種する。この新品種は1ムー(1/15ha)あたり500kgの生産潜在能力があり、省や国の地域試験で従来品種に比べ5%以上増産する。

 第三に耐アルカリ性の小麦の新品種を栽培する。この新品種は1ムー(1/15ha)あたり450kgの生産潜在能力と、土壌の含塩量3‰前後に対する耐塩性があり、省や国の地域試験で対照品種より8%以上増産した。

(2) とうもろこし

 良質で、高生産で、高い耐性をもつ飼料専用とうもろこしの新品種選抜育種に重点的に取組む。良質で、高生産で、高い耐性をもつでんぷん加工専用とうもろこしの新品種選抜育種を強化し、良質で、高生産で、高い耐性をもつ生食専用とうもろこしの新品種選抜育種も同時に行なう。

 第一に飼料専用新品種を選抜育種する。新たに育成する品種は、生育期が90~110日、耐倒性や、耐病性をもち、悪環境に強く、適応範囲が広く、1ムー(1/15ha)あたりの粒の生産量が対照種よりも10%以上増産し、1ムー(1/15ha)当たりの生産潜在能力は750~900kgで、粒の品質は国際二級以上の基準(容量685g/L,粗たんぱく質9%)を満たす。

 第二に専用の青刈りとうもろこし新品種を選抜育種する。新たに育成する品種は、生育期が90~110日で、耐倒性と耐病性をもち、悪環境に強く、老化が遅く、耐虫性もよいものとする。適応範囲が広く、粒は良質で、茎汁の含糖量は6%、全株の粗たんぱく質含有量は7%以上、粗繊維素は30%以下、水分を除いたとうもろこしの生産品量は1ムー(1/15ha)あたり1000kg以上で、口当たりがよく、消化率が高く、乳牛や肉牛専用の飼料に適しているものとする。

 第三は良質のたんぱく質とうもろこしの新品種選抜育種である。新たに育成する品種は、生育期が90~110日で、耐倒性、耐病性、悪環境に強く、適応範囲が広く、1ムー(1/15ha)あたりの生産量が普通のとうもろこしより5%~10%多く、粒は全硬質あるいは半硬質の胚乳で、全粒のアルカリ性必須アミノ酸、トリプトファンの含有量が通常のとうもろこしよりも60%~70%高く、養豚、養鶏専用に適しているものとする。

 第四は高脂肪とうもろこし新品種の選抜育種である。新たに育成される品種は、生育期が90~110日で、耐倒性や、耐病性をもち、悪環境に強く、適応範囲が広く、1ムー(1/15ha)あたりの生産量が普通のとうもろこしより5%~10%多く、1ムー(1/15ha)あたりの生産潜在能力は750kg以上、粒の脂肪含有量7%以上の高脂肪とうもろこし新品種である。

 第五は高でんぷんとうもろこし新品種の選抜育種である。新たに育成される品種は、生育期が90~110日で、耐倒性、耐病性、悪環境に強く、適応範囲が広く、1ムー(1/15ha)あたりの生産量が普通のとうもろこしより5%~10%多く、1ムー(1/15ha)あたりの生産潜在能力は750kg以上、粒のでんぷん含有量72%以上で、でんぷん加工専用に適しているものとする。

 第六は生食専用とうもろこしの新品種を選抜育種する。新たに育成される、うるちとうもろこしやスイートコーンの新品種は、生育期が85~95日で、耐倒性や、耐病性をもち、悪環境に強く、適応範囲が広く、1ムー(1/15ha)あたりの生産量が400~600kgである。品質、味が良く、口当たりも良く、商品性にも優れ、果穂商品率は90%以上で、生食専用に適しているものとする。

(3) 綿花

 第一に一般綿花と交雑綿花による、高生産の中繊維綿の新品種を栽培する。一般綿花の生育期は130日前後で、原綿生産量は地域試験で従来品種(99B)よりも10%以上多く、耐枯萎病(病気指数10以下)や、耐黄萎病(病気指数30以下)、耐綿鈴虫(防虫効果80%以上)があるものとする。上半分の繊維の平均長さは28mm以上、強さは29cN/tex以上、マイクロネア(micronaire)の值は3.7~4.9である。交雑綿花の新品種の生育期は130日前後で、原綿の生産量は、地域試験の対照品種(魯棉研15)よりも5%以上多く、育種効率は品種間の交雑種よりも30%以上高いか、あるいは明らかな性質の違い示す遺伝子特性を持つものとする。耐抗、耐虫や品質の性質は、一般の高生産の中繊維綿の新品種と同等なものとする。

 第二に一般中長繊維綿と交雑中長繊維綿による良質中長繊維綿の新品種を栽培する。一般綿新品種では中長繊維綿の生育期は130日前後で、原綿の生産量は中繊維綿の地域試験で従来品種(99B)を下回らないものとする。上半分の繊維の平均長さは31mm以上で、強さは33cN/tex以上で、マイクロネア値は3.7~4.2あり、純紡60本以上の綿糸、あるいは混紡良質補助綿に適しているものとする。耐枯萎病(病気指数10以下)や、耐黄萎病(病気指数30以下)、耐綿鈴虫(防虫効果80%以上)があるものとする。交雑綿新品種では生育期は130日前後で、原綿の生産量は、地域試験で従来の交雑品種(魯棉研15)より高く、耐病、耐虫性をもち、品質の性質は、一般の中長繊維綿新品種に相当するものとする。

(4) 落花生

 第一に高生産、良質で耐性の高い殻付き落花生の新品種を栽培する。春播きの高生産潜在能力は、1ムー(1/15ha)あたり600kg以上で、夏播きは500kg以上、省の地域試験での対象品種よりも8%以上増産できるものとする。葉斑病や銹病に対する耐性が1~2级上がり、耐瘠節肥があり鉄分不足に強く、耐倒伏性があり、全体的によく実がなるものとする。含脂肪量は50%以上ある。輸出専用の落花生品種(系)を栽培する。輸出する殻付き落花生はO/L比率が1.5~2.2で、伝統的な輸出用殻付き落花生の基準に合い、春播きの高生産潜在能力は、1ムー(1/15ha)あたりの生産量が600kg以上で、夏播きは500kg以上、省の地域試験で対照品種よりも8%以上増産した。輸出用殻無し落花生のO/L比率は1.4前後で、真珠豆型の伝統的な輸出落花生の条件を満たしており、種子の外観と品質は朝日型の基準を満たし、春播きの高生産潜在能力は1ムー(1/15ha)あたり500kg以上で、夏播きは1ムー(1/15ha)あたり400kg以上、省の地域試験で従来品種よりも8%以上増産できるものとする。

 第二は良質専用落花生の新品種(系)を栽培することである。省の地域試験で生産量は従来品種と同等で、農芸的性質と耐性は、現在の同類の主栽培品種に相当するものとする。高脂肪類の品種ではO/L比率が7.0以上で、低脂肪品種では脂肪含有量は42%以下、高脂肪品種では脂肪含有量は55%以上で、実の特大品種では実は重さ260g以上あり、耐病品種では耐性の高いレベルに達しているものとする。

袁奎明、山東省農業持続可能な発展研究所、農業遠隔計測研究室主任、研究員(教授)。山東登録科学技術コンサルタント、国家登録コンサルタントエンジニア(投資)。1966年5月生まれ、1989年7月莱陽農学院牧畜専攻を卒業。1989年8月から山東農業科学院にて科学研究管理とマクロ戦略研究に従事。主催・参加した政府の特別プロジェクト計画と戦略研究は20余り、省の科学技術進歩賞は3つ獲得。