第33号:水資源
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中国における飲用水処理の応用の現状と発展

2009年6月26日

劉文君(LIU WENJUN):清華大学飲用水安全研究所所長

教授、博士課程指導教官、中国土木学会水工業分会秘書長、全国紫外線消毒基準化技術委員会主任、国際紫外線協会(IUVA)常務理事。

1968年8月生まれ。1999年、清華大学卒、工学博士学位取得。
全国優秀博士論文及び教育部新世紀優秀人材サポート計画認定者。専門定期刊行物に文章70余編発表、専門著書3冊、訳書2冊を上梓し、設計マニュアル、専門書4冊の編集に参加。省・部レベル科学技術進歩賞受賞4件。

主な研究方向

微汚染水源の飲用水処理、現代の水消毒技術及び理論、給水管路網の水質安定性の制御原理及び技術、飲用水の水質安全性評価技術及び理論。

1. 生活飲用水水質基準の発展状況

 中国の元々の国家水質基準は1985年に制定され、その際に35の水質項目が定められた。

 中国衛生部は2001年、『生活飲用水衛生規範』という名称で水質検査項目を公布し、そのうち通常検査項目は34、特別検査項目は62であった。この96の水質項目には多数の有機汚染物質制限濃度が定められ、先進国のスタンダードにも合致していたが、ただし「水質監測」には、「水源水、工場から出る水、一部の代表性を有する管路網末端水については、少なくとも半年に1回、通常検査項目の全分析を行う。特別検査項目については、現地の水質状況と存在する問題に応じて、必要時に検査項目と頻度を具体的に決定すればよい」と定められていた。これは中国の国情"多くの検査項目は高精度の計器がなければ分析測定ができないが、大多数の地区・都市にはまだそれらの条件が備わっていなかった"に適っていたが、実際には、特別項目(数多くの有機汚染物質)の検査を放棄していたのだった。さいわい通常検査の中に酸素要求量という有機物の総合的指標を定め、有機物の取込総量を規制していたのが、85年の目標に比べれば大きな前進であった。

 中国建設部は2005年6月、『都市給水水質基準』(CJ/T206-2005)を公布し、衛生部の規範を下回らず、かつできるだけこれと協調するという原則に従って、同基準の中の、濁度は「特殊な状況下でも5度を超えない」を「3度を超えない」に改め、酸素要求量は「特殊な状況下でも5mg/Lを超えない」を「原水の酸素要求量が>6mg/Lの時、5mg/Lを超えない」と明記し直した。これは水源水が<6mg/Lの時には必ず3mg/Lに達しなければならないことを明確に規定し、衛生部の規範よりもいっそう厳しいものとなった。建設部は通常検査42項目余り、特別検査61項目余りを定めた。

 旧建設部は管路網水の基準到達のための水質項目として、濁度、残存塩素、細菌総数、総大腸菌の4項目しか設けず、他方、ユーザーが最も敏感で、最も紛争にもなる臭い、色や、最も心配な酸素要求量を避けて通っていた。『市町給水水質基準』は管路網水の基準到達のための水質項目として7項目を定め、色、臭い、酸素要求量等をすべて組み入れ、飲用水の水質が要求に達しているかどうかをより完全かつ全般的に評価し、各給水単位に対しより厳格な要求を提示し、「人を根本とする」という原則をより具体的に体現した。

 2001年の衛生部規範、2005年の建設部業界基準の公布は、中国の新しい生活飲用水水質国家基準の制定のための基礎を築いた。

 中国の新しい『生活飲用水衛生基準』(GB5749-2006)がついに公布され、2007年7月より実施された。新しい強制的な国の『生活飲用水衛生基準』は、有機物、微生物、消毒等方面に対する要求を強化した。新基準の飲用水水質指標は旧基準の35項目から106項目に増え、71項目が追加された。内訳は、微生物指標が2項目から6項目に、消毒剤指標が1項目から4項目に増え、毒理学指標の中の無機化合物が10項目から21項目に、有機化合物が5項目から53項目に、感覚器官性状と一般的な理化学的指標が15項目から20項目に増え、放射能指標が従来通りの2項目となっている。新基準は市町と農村の飲用水衛生基準を統一するとともに、国際基準にも合わせている。

 新基準は「水質監測」の中で、「都市集中式給水単位の水質検査のサンプリング点選定、検査項目及び頻度、合格率の計算はCJ/T206にしたがって執行する」と明確に定めている。これは建設部の都市給水水質基準が定めた管路網水についての7項目の検査を是認したものである。この中では、臭いと酸素要求量が比較的基準に到達しにくい。

 水質項目の酸素要求量は、中国の原水の有機物汚染がかなり普遍的で深刻であるという現状に焦点を合わせて総量規制を行う上で、必須のものだが、それは数多い単一有機物を検出することは今なお難しいにもかかわらず、有機汚染物質は微量でも、健康に対する潜在的脅威となり、時間の推移とともに、人体中に一定程度蓄積すると、病気を引き起こす可能性があるからである。しかも人々には有機汚染物質の害について、まだまだ長く果てしのない認識のプロセスが待っており、今後、有機汚染物質に関する水質項目はさらに増え、厳しくなる可能性があり、したがって、少なく取り込むほうが、どう考えても、多く取り込むよりもいいからである。伝統的な地表水処理プロセスは有機汚染物質の除去に対して限界があり、飲用水のCODMn<3mg/Lという要求を保証するためには、間違いなく徐々に高度処理を採用することになるだろう。

 水質項目中の臭いは揮発性有機物質によってもたらされる。水体中の臭いを引き起こす物質は、自然界の中の浮遊生物、放線菌、藍藻の分泌物、それに工業廃水や都市汚水の中に存在する人工的に合成された揮発しやすい有機物である。良い水は無味無臭でなければならず、水に臭いがあることを感じたとき、人は水がちゃんと浄化されていないと考える。日々の向上を追求する21世紀という「生活の質」重視の時代に、水に臭いのあることが受け入れられるはずはない。

2. 水質前処理

化学的酸化

 水質前処理には塩素酸化がよく用いられ、有機汚染物質がまだ取り除かれていない場合には、かなり多くの有害な消毒副生成物を生じることになる。現在、KMnO4とその複合剤(一種の専門商品)を採用した応用がしだいに広がり、有機物の酸化、凝固の改善に対して比較的高い効果を上げている。ただし、MnO2の堆積が濾過池を詰まらせ、配水システムを詰まらせるのを防ぐ必要がある。現地の水質によってKMnO4の採用が有害酸化物を生み出さないか、Ames法による突然変異誘発活性は低減するのかということについては、報告が極めて少ないため、的を絞った研究、テストを行うことが今なお必要である。

 オゾン前酸化は有機物の生分解性を高めることができ、さらに臭いを取り除き、脱色し、鉄、マンガンを除去することができるが、往々にして後続のオゾン―活性炭による高度処理と結びつけてしか採用されない。

吸着剤粉末炭の添加

 一般に衝撃的汚染を取り除く場合にのみ採用されるが、それは添加量が10~20mg/L必要で、費用がかなり高い(約0.05元/m3)ためである。

pH調節

 酸とアルカリを添加するため、運用コストが増し、さらに原水中に無機イオンが増えるので、中国ではほとんど採用していない。

凝集剤の添加

 凝集剤は少ない添加量(1mg/L未満)でしばしば良い効果が得られるが、中国では依然として一種類の凝固剤だけを添加するのが習慣となっている。

生物的前処理

 水中のアンモニア態窒素の除去にとっては生分解が最も有効で、同時にいくつかの有機物、鉄、マンガンも取り除くことができ、現在、上海及び浙江嘉興地区においてすでに応用されている。

2.1.1 生物接触酸化

 一般的な状況下において、NH4+-Nは80%前後取り除くことができ、CODMnの除去は安定しておらず、溶解性CODMnは約5~10%除去することができる。多くの場合、弾性材料を採用し、コンクリート骨組みを利用してくくりつけるが、値段が安く、粤港公司の400万m3/d工事に使用され、上海と嘉興桐郷でも採用されている。弾性充填材の運用における主要な問題は、充填材の上に積もった泥が自然には脱落しないこと、充填材の上の生物膜が更新しにくいことである。

 流動化充填材はプラスチック片から成るボールで、比重が0.96~0.98に抑えられ、水中で浮遊転動する。多孔管を採用して曝気し、ボールの上下反転を流動化状態に置くと、ボール上の膜が蓄積せず、更新がしやすく、脱落した膜は水流とともに運び出されるので、管理が簡単である。嘉興地区の5つの市・県が採用し、すでに効果を上げている。当該充填材は充填槽の半分の容積しか必要とせず、充填材1m3当たり1,000元である。

2.1.2 バイオセラミックス粒子濾過池

 粒子充填材は粒径が小さく、比表面積が大きく、生物膜量が大きく、生物凝集・吸着・分解作用を有しているほか、濾過作用も具えており、そのためその他の充填材と比べてアンモニア態窒素の除去効率が高めである。有機物を生分解するほか、懸濁・コロイド状態の有機物を効果的に除去することかでき、逆洗するので、濾材の上の生物膜が更新しやすく、CODMnを約10~20%除去する。

 生物濾過池の問題は水頭損失があることで、定期的に(週1回前後)逆洗し、水を消費しなければならない。普通セラミックス粒子(粉末状)は約500元/トン、円形粒子は約800元/トンで、堆積容重は約0.8である。

2.1.3 栗石充填材

 粒径20~40mm、層厚6m、濾過速度2.5m/h、曝気量2.5:1、上向流で、逆洗の必要がないが、栗石層上部の水頭を利用して泥を排出しなければならない。アメリカSeven Trent Servicesと中国市政工程西北設計院浙江分院は、嘉興乍浦浄水場と平湖古横橋浄水場において試験を行い、さらに乍浦浄水場で10か月間の運用を行った。その結果、NH4+-Nを分解して10mg/Lから0.5mg/Lにまで減らし、除去率は95%に達し、冬季でも80%の効率を上げた。

 この研究によって思考の道筋が開かれ、汚水処理技術を給水の生物的前処理に導入する試みは一応の結果を収めた。

 汚水処理における曝気生物濾過池は水中のNH4+-Nを20~30mg/Lから<1mg/Lに減らすことができるが、問題は給水処理がNH4+-Nの除去のために、これほど大きな代価を支払わねばならないのか、ということにある。

 本技術について給水処理の特徴と結びつけて長期間の試験を行い、コストパフォーマンスの観点からその応用の可能性が論証できることを望んでいる。

3. 高度処理

 高度処理技術がよく用いるのはオゾン-生物活性炭(O3-BAC)である。現在、深圳、広州、杭州、嘉興地区ですでに実施されている。その発展の趨勢から見ると、今後は水源水質がⅡ類を超えている場合、必ずこれを採用しなければ、水質基準のCODMnの要求を満たすことができないだろう。

3.1 オゾン酸化とオゾン発生器

 オゾンは強酸化剤であり、臭いを取り除き、脱色し、有機物を除去し、有機汚染物質の生分解性を高めることができ、給水処理に広く応用されている。だが、オゾン発生装置は中国ではまだ発展段階にあり、大型オゾン発生器はほとんど外国の企業(アメリカOZONIA、ITT、日本三菱、富士等)によって独占されている。この2年間、オゾン設備と酸素製造装置の製造において、中国企業は突破口を開いてトップレベルに追いつこうと努力し、青島国林公司がすでに6kg、10kg、さらには20kgO3/hの管式(エナメル管)オゾン発生器を生産した。同方股份有限公司は1kgO3/hを単元として組み合わせの可能なパネル式オゾン発生器を開発、生産しているところである。品質面ではまだ世界と隔たりがあるとはいえ、肝心なことは中国が自力で製造した発生器がすでに10kgO3/hの壁を突破し、基本的に給水事業発展の需要を満たすことができるということである。価格面で優位を占め(外国製は1kgO3/hで20~30万元かかるが、中国は<20万元)、アフターサービスの面でも外国の会社に比べてメリットがあり、生産・使用の中で絶えず品質を向上させ、中国でのニーズを満たしていくことが期待できる。

 酸素製造装置は多数生産されており、原理はみな同じである。設備、部品・組立部品の供給が外国にかなわなくとも、必要な空気弁、分子篩等を外国から導入して品質を高めれば、オゾン生産の需要に応えることが可能である。

3.2 活性炭と生物活性炭

 活性炭市場には粉砕炭、柱状炭、塊成した粉砕炭があるが、価格はまちまちで、粉砕炭は多くが4,500元~5,000元/トン、柱状炭は約5,500元/トン、塊成炭は6,500元/トン前後である。

 粉砕炭は石炭を直接粉砕し、篩い分けし、焼成溶解し、活性化させたものである。塊成炭は石炭を挽いて粉(50μm)にし、石油系粘着剤を加え、圧縮して塊にし、再び粉砕した後、必要に応じ425℃で有機物を取り除き、厳格に1,000℃近くにコントロールして活性化させたものである。塊成炭は吸着性能が大きく向上し、密度が高く、磨耗に耐え、5~6回再生させることができる。

3.2.1 活性炭の選択とO3-BAC

 塊成炭(泰興)と柱状炭(ZJ-15)の原水のCODMnに対する塊成炭(泰興)と柱状炭(ZJ-15)の吸着性能について吸着等温線試験を行ったところ、結果は表1の通りだった。

表1 活性炭の吸着等温線試験結果
活性炭重量(M、g) 0.05 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
平衡濃度
(Ce、mg/L)
塊成炭 3.24 2.64 1.62 1.02 0.72  
ZJ-15   4.33 3.68 3.07 2.45 2.07
注:塊成炭試験の原水のCODMn 5.52mg/L
ZJ-15炭試験の原水のCODMn 5.66mg/L

 吸着等温線試験結果の分析処理後、Freundrichの公式に代入すると

塊成炭:

(1) q=14.7Ce0.82

(2) q=4.0Ce0.76

式中:q―吸着容量、mg/g
Ce―平衡濃度、CODMn、mg/L

 表1の公式(1)、(2)から、塊成炭は吸着性能の優位性を具えていることがわかる。

 塊成炭を用いてO3-BAC試験を行うと、この時、活性炭は生物活性炭となり、取水の平均CODMn 1.34mg/Lは、O3酸化により1.14mg/Lに、活性炭添加後は0.51mg/Lになり、8か月間にわたる試験の平均除去率は62.2%、運用初期の活性炭の吸着率の高い分を入れなければ、平均除去率は約55%となる。当該試験の取水水質は比較的良好で、オゾン投入量は3~4mg/Lとやや高いが、全体的な吸着効果は、その他の試験ポイントのO3-BAC(柱状炭使用)を長期間運用した時の平均除去率30~40%に比べると高い。

 通常処理がCODMnを35%除去するものとして計算し、さらに高度処理のO3-BAC(粉砕炭)がCODMnを40%除去し、O3-BAC(塊成炭)が50%除去すると、原水のCODMnが6、7、8、9mg/Lの時の総合プロセス出水の推算されるCOD値は、表2の通りとなる。

表2 総合プロセス出水のCOD値(mg/L)
原水 通常処理出水 O3-BAC(粉砕炭) O3-BAC(塊成炭)
6 3.90 2.34 1.95
7 4.55 2.73 2.28
8 5.20 3.12 2.60
9 5.85 3.51 2.93

 表2からわかるように、粉砕炭採用時の原水のCODMnが8mg/Lの時の総合プロセス出水のCODMnは3.12mg/Lで、水質基準の3mg/Lを超えてしまっているが、一方、塊成炭を採用し、原水のCODMnが9mg/Lである時、総合プロセス出水のCODMnは2.93mg/Lで、依然として<3mg/Lである。

 以上は推算結果なので、さらに粉砕炭、塊成炭、柱状炭について同一の原水を用いて長期間の比較試験を行い、マクロ指標からCODMnを比較して、処理効果を確定し、それにより、O3-BACプロセスにおいては廉価な粉砕炭(現在、大多数の浄水場で採用)を採用するのか、それとも価格が高めの塊成炭(外国の浄水場で採用)を採用するのかという問題を解決しなければならない。同時に、単一の微量有機物の添加回収試験を行い、それぞれの活性炭の除去効果を比較していく。塊成炭のCODMn除去値が高く、微量有機物を取り除く効果が優れている場合は、性能・価格面から全般的に比較することにより、塊成炭の採用可能性を証明する。

 嘉興地区の運用経験によれば、O3-BAC高度処理技術の採用により、プロセス全体のCODMn除去率を50~60%に維持することができる(長期間運用の場合)。

3.2.2 二段階のO3-BAC

 寧波水道公司はかつて二段階のO3-BACプロセス試験を行った。取水のCODMnが5.6mg/Lの時、第一段のO3-BAC(O3投入量3.0mg/L)により43%が除去され、出水のCODMnは32.mg/lとなり、第二段のO3投入量は1.5mg/Lで、取水のCODMnが3.2mg/Lの時のO3-BACによる除去率は47%に達し、出水のCODMnは 1.7mg/Lとなった。二段階のO3-BACにより合わせて約70%のCODMnが除去され、第一段のO3-BACだけを行った場合よりも大きく向上した。通常処理で35%のCODMnが除去されるものとして計算すると、二段階のO3-BACがさらに70%を除去するので、総合プロセスの総除去率は約80%となり、原水のCODMnが15mg/Lに達していても、出水は依然として基準に達するものと推算できる。確認する価値があるのは、第二段のO3-BACは有効な除去率を長期間維持できるのか、試験が採用した活性炭は新しいものか古いものか、試験はどのくらい続けたのかということであり、本当に二段階のO3-BACを採用することで70%前後の効果が得られたのだとすれば、O3-BACの突破口を開いたものだと言うことができる。

 平湖河浄水場はすでに二段階のO3-BACを採用し、実際の運用におけるプロセス全体のCODMn除去率は70%前後となっている。

3.3 活性炭の再生

 活性炭は吸着飽和後、再生処理すべきであり、捨てるべきではない。再生後、吸着能力は低下しないだけでなく、やや増すことができる。再生時の損失(輸送過程のロスと昇温ロスを含む)は約10%で、再生1トン当たり約2,000元、新炭補充500元の計2,500元がかかる。

 嘉興地区の統計によれば、活性炭は1年間使用した場合、交換に水1m3当たり0.09元かかるが、2年間だと0.06元、3年間では0.03元しかかからないので、使用後に再生すれば、運用費はさらに得になる。

 広州、浙江、杭州、嘉興地区は、O3-BACプロセスを大規模に採用するようになるまでは、現地での再生補充のため、各地区に活性炭再生工場を設置し、住民の生活飲用水の水質向上のために勤めるべきである。

 O3-BACプロセスは今後広く応用されるであろう。工事投資は約250元/m3/d、運用費は0.2元~0.3元/m3だが、水1m3当たりの価格水準が1元~2元である現在、0.2元~0.3元の増加は受け入れられるはずである。

3.4 膜技術の応用

 各種膜技術...マイクロ濾過、限外濾過、ナノ濾過、逆浸透は、水質別給水システムの純浄水及び飲用浄水製造においてすでに効果的に応用されている。汚水再利用、工業給水にも応用の実例があるが、市政給水にはまだ報告は見られない。広東東莞虎門は10,000m3/dのマイクロ濾過工事を完成させ、汚染された東江の水を浄化しているが、溶解性有機物の除去が思うようにいかず、まだ成功していない。

3.4.1 マイクロ濾過、限外濾過

 原水水質が良好で、かつ濁りがあり、細菌除去の必要がある場合、清潔なダム水、泉水ならば、その時はマイクロ濾過、限外濾過がともに高い浄化効果を上げるだろう。

 地下水中の硬度、硝酸塩が基準を超えている時は、ナノ濾過膜を採用して無機塩及び有機汚染物質をうまく除去することができる。これについては北京の水源第三浄水場がかつて有効な試験を行った。天津近郊地区はナノ濾過を利用して地下水中のフッ素を除去し、大きな成果を上げている。

 付近に他の水源がなく、長距離引水はコストが高すぎ、取水水源もかなり深刻な汚染を受けていて、O3-BACプロセスを追加しても基準に達することができないという場合は、ナノ濾過技術の応用が不可避となる。

 マイクロ濾過、限外濾過を利用した地表水の直接浄化と、凝固―マイクロ濾過、凝固―濾過―マイクロ濾過(または限外濾過)に関してはすでに試験結果がある。微汚染水源に対する凝固―沈殿―粉末炭添加―マイクロ濾過の採用についても、すでに試験が行われている。

 清華大学、上海荏原環保公司、嘉源給水排水公司は、共同で嘉興南門浄水場においてかなり長期間にわたる試験を行った。当初、膜生物反応器を利用し、粉末炭を入れてCODMnを効果的に除去しようとしたが、試験結果はあまり思わしくなかった。膜反応器に入れた粉末炭は吸着効果しかなく、生物炭の役割を果たせないため、先に粒子活性炭濾過池に進んでからマイクロ濾過に進んだほうがよい。粉末炭と膜技術の組み合せの応用についてはさらに引き続き研究が必要である。

3.4.2 ナノ濾過

 ナノ濾過技術は濾過池を経て一般にCODMnを60~70%除去でき、さらに前処理による除去35%を加えると、総除去率は75~80%にも達し、通常処理にO3-BACを加えたCODMnの総除去率55~65%よりも高い。したがって、O3-BACプロセスでもなお要求に達することができない場合、CODMnを効率よく除去する技術はナノ濾過だということになる。無機イオン濃度が高くなく、主に有機物を除去する場合は、それに適したナノ濾過膜を採用すればよい。

 ナノ濾過膜は中国ではまだ生産できないが、国際的に膜の価格はすでに徐々に下がっている。現在、ナノ濾過装置(逆浸透とほぼ同じ)の投資額は約600元/m3/dである。限外濾過膜は中国で生産でき、品質も劣らない。限外濾過装置の投資額は約300元/m3/dだが、外国の限外濾過装置だとやはり600元/m3/dかかる。

 ナノ濾過技術の水1m3当たりの運用費は、原水水質、膜洗浄の薬品代、水道代、0.8~1.0MPaの昇圧に要する電気代、主な割合を占める膜価格、それに使用寿命によって決まる。普通の正常な状況下で、ナノ濾過膜は2~3年間、限外濾過膜は約3~5年間使用できる。

 ナノ濾過膜技術の問題点は、膜の価格が高い、電力消費が大きい、水生産率が低い、濃縮水には処置が必要だということである。

3.5 浄化プロセスにおけるアンモニア態窒素の除去について

 前処理、通常処理、高度処理(O3-BAC)を具えた総合プロセスの中で、水中のNH4+-Nは以下の段階において除去される可能性がある。

  1. 事前の塩素添加過程での塩素とアンモニアの化合、または生物的前処理の中で除去される。
  2. 凝固沈殿の過程で、懸濁粒子・コロイドの状態で存在する有機態窒素及びアンモニア態窒素が除去される。
  3. 濾過池濾過層の中で生物膜が成長付着した砂粒層の生分解作用
  4. O3酸化により酸素の飽和した水が再び生物炭層を通過し、生分解される。
  5. 最後の塩素添加消毒の際にアンモニアの一部が化合される。

 原水中のアンモニア態窒素は上記の多段階の障壁によって除去され、そこにはNO2--Nが生物によって酸化されNO3--Nになる作用が伴っている。したがって、生物的前処理のアンモニア態窒素除去率を過大に強調し、濾過速度の低下、接触時間の増加、気水比の増大等といった無駄の多すぎる代価を支払ってまで、高いアンモニア態窒素除去率を得る必要はない。各技術段階の生物的作用(例えば傾斜板上の生物膜等)を十分に発揮させさえすれば、かなりしっかりと、全面的に除去することができる。

 生物的前処理はアンモニア態窒素を効果的に減らし(70%~90%)、CODMnの一部を除去する(充填材の違いにより5%~10%)ことができ、生物凝集を生じて凝固材を減らす(約1/3)ことができる。ただし、停留時間が1~1.5hあり、構築物の体積が大きく、占有面積が大きく、適当な資金(100~120元/m3/d)の投入が必要とされる。したがって、生物的前処理は、通常処理プロセスしか持たず、原水のアンモニア態窒素がかなり高く、CODMnがかなり高く、生物的前処理を採用するとプロセス全体がアンモニア態窒素とCODMnをかなりよく除去でき、出水を基準に到達させることができるという場合に使用するのに適している。

 高度処理のO3-BACを有している場合、アンモニア態窒素がそれほど高くなければ(3mg/L未満)、生物的前処理を設けなくとも、事前のO3酸化を採用し(例えば上海周家渡浄水場)、後続の凝固沈殿過程、濾過濾材層、BACに生分解作用を発揮させて、効果的にアンモニア態窒素を除去することができる。

4. 消毒

 消毒は給水処理プロセスの重要な構成部分である。塩素消毒は国内外の最も主要な消毒技術で、アメリカの浄水場の約94.5%が塩素消毒を採用しており、中国では推計によると、99.5%以上の浄水場が塩素消毒を採用している。だが、塩素消毒にはこの20年間、大きな疑念が投げかけられており、その主な理由は次の三点にある。1)消毒副生成物の問題。トリハロメタン、ハロ酢酸、ハロニトリル、ハロアルデヒド等といった、ますます多くの消毒副生成物が飲用水中に発見されている。トリハロメタンとハロ酢酸はその強い発がん性から、すでに規制の主な対象となっており、またそれぞれ揮発性と非揮発性の二種類の消毒副生成物を代表するものである。アメリカは特に消毒剤及び消毒副生成物規則(D/DBPs RULE)を設け、塩素消毒剤と消毒副生成物について規定を行っており、中国の『生活飲用水衛生基準』(GB5749-2006)と建設部の業界基準『都市給水水質基準』もともに消毒副生成物を水質基準に追加している。したがって塩素消毒副生成物の規制は非常に重要である。2)ジアルジアとクリプトスポリジウムの問題。この二つの原虫には耐塩素性があり、特にクリプトスポリジウムは塩素消毒がほとんど役に立たないため、新しい有効な消毒方法を採用して飲用水の安全性を保証することが極めて必要である。3)飲用水の生物学的安定性の問題。飲用水中の生物同化可能有機炭素の存在により、細菌は管路網内で成長して生物膜を形成することができ、管路網内の残存塩素量が高くても、細菌の再成長を完全に抑えることは非常に難しく、また水質と送水管に対しても不利な影響を及ぼす。

 飲用水の安全性を保証するために、微生物及び消毒副生成物を含めた指標はますます厳しくなると見られるため、消毒技術の改善を行うことが必要である。

4.1 塩素消毒の最適化

 塩素消毒は現段階での中心的消毒技術であり、しかも近い将来に根本的変化が起こることはないと予想されるため、塩素消毒の技術的最適化を行うことは極めて必要である。その手段には次のものがある。①清水池の設計を改善し、Ct10を設計と運用の拠り所とする。②塩素とクロラミン消毒を有機的に組み合わせる方法。③多ポイントでの塩素添加。3)統合型IDDFモデルを採用して塩素消毒の設計枠組み(Integrated Disinfection Design Frameworks)とする。

4.2 紫外線消毒の採用

 紫外線とは電磁波の波長が200~380nmの光波を指し、一般に、UVA(315~380nm)、UVB(315~280nm)、UVC(200~280nm)の三つの領域に分けられる。200nmより短い遠紫外線領域は真空紫外線といい、極めて水に吸収されやすく、そのため消毒に用いることができない。消毒に用いる紫外線はUVC領域、すなわち波長が200~280nmの領域、特に254nm付近のものである。紫外線消毒のメカニズムは前記の酸化剤とは異なり、波長254nmとその付近の波長領域の微生物DNAに対する破壊力を利用し、たんぱく質の合成を阻止して、細菌を繁殖できなくさせるというものである。紫外線はクリプトスポリジウムに対して高い殺滅作用を有し、副生成物を生じないため、紫外線消毒は給水処理において大きな市場潜在力を示している。

 紫外線の滅菌作用は最も早くは20世紀初頭、イギリスの学者バーナードとモカによって報告されたが、本当の意味で応用が始まったのは20世紀60年代であった。初期は主に低圧水銀ランプ(LP)だったが、90年代には中圧水銀ランプ(MP)とパルス紫外線水銀ランプ(P-UV)の研究、応用が行われた。

 紫外線消毒技術の飲用水処理における応用は、1993年のアメリカ ミルウォーキー市でのクリプトスポリジウム症の爆発的流行以後、注目を浴びるようになったが、それは塩素消毒がクリプトスポリジウムのオーシストを殺すことができないのに対し、研究の結果、紫外線はクリプトスポリジウムのオーシストに対してすぐれた殺滅効果を持っていることがわかったからである。しかも、通常消毒剤量の範囲内(40mJ/cm2)では紫外線消毒は有害副生成物を生じないため、西側先進諸国では応用の実例がここ数年、特に小型浄水場において急速に増加している。そのため、国際紫外線協会(IUVA)が1999年に設立された。

 アメリカは新技術の飲用水処理への応用については一貫してかなり腰が重く、保守的だったが、紫外線技術の応用に関しては予想外にすばやい行動をとった。アメリカ環境保護局は、紫外線消毒がクリプトスポリジウムの不活性化に対して有効であることを実験室で実証した後、わずか5年で紫外線消毒の飲用水への応用を認可した。大型浄水場、たとえばシアトルの浄水場は今年、紫外線消毒システムを完成させようとしており、ニューヨークの浄水場は2006年に紫外線消毒システムを完成させる予定である(Water21、2004年第8号19~20ページ参照)。

 紫外線消毒のメリットは次の通りである。①病原性微生物に対して広スペクトルの消毒効果を有し、消毒効果が高い。②クリプトスポリジウムのオーシストに対して特効的消毒作用がある。③有毒・有害副生成物を生じない。④AOC、BDOC等、管路網水質の生物学的安定性を損なう副生成物を増やさない。⑤臭い、味を低減し、微量有機汚染物質を分解することができる。⑥占有面積が小さく、消毒効果が水温、pHの影響をほとんど受けない。

 紫外線消毒の主なデメリットは次の通りである。①持続的消毒効果がなく、塩素と組み合わせて使用することが必要。②石英管壁に結垢しやすく、消毒効果が低減する。③消毒効果が水中のSSと濁度の影響をかなり大きく受ける。④殺された細菌が復活する可能性がある。⑤国内での使用経験が比較的少ない。

4.3 二酸化塩素及びオゾン消毒の採用

 二つの原虫を不活性化し、塩素化消毒副生成物を減らすために、二酸化塩素及びオゾン消毒を採用することは、新しい選択の一つとなっている。二酸化塩素には以下のいくつかのメリットがある。①殺菌効果が優れ、用量が少なく、作用が速く、消毒作用の持続時間が長く、剰余消毒剤量が維持できる。②酸化性が強く、細胞構造を分解し、さらに胞子を殺すことができる。③水中の鉄、マンガン、色、味、臭いを同時に抑制できる。④温度とpHの影響をほとんど受けない。⑤トリハロメタンやハロ酢酸等の副生成物を生じない。

 オゾン消毒には以下のメリットがある。①殺菌効果が優れ、用量が少なく、作用が速い。②水中の鉄、マンガン、色、味、臭いを同時に抑制できる。③ハロゲン化消毒副生成物を生じない。したがって、二酸化塩素消毒は中国の一部の浄水場ですでに応用され始めており、オゾン消毒も中水の再利用に応用されている。

 しかしながら、二酸化塩素及びオゾン消毒にはそれぞれのデメリットがある。二酸化塩素消毒のデメリットは、次の通りである。①二酸化塩素消毒は無機消毒副生成物である亜塩素酸イオン(ClO2-)と塩素酸イオン(ClO3-)を生成し、二酸化塩素自身も、特に高濃度の場合には有害であり、そのためアメリカEPAの消毒剤及び消毒副生成物規則と中国の新しい『生活飲用水衛生基準』はいずれもこれについて規定を行っている。②このほか、二酸化塩素の調合、使用にもいくつかの技術的問題が存在し、二酸化塩素は発生過程の操作が複雑で、試薬の価格が高く、あるいは純度が低く、輸送、貯蔵の安全性がかなり劣っている。そのため国内では現在小規模な給水場で応用されているが、大型浄水場についてはまだ使用の報告がない。

 オゾン消毒のデメリットは、オゾンが不安定な分子で、自ら分解しやすく、水中に留まっている時間が短く、30分に満たないため、管路網の持続的な消毒効率が維持できないということである。さらに、オゾン消毒は臭素酸塩、アルデヒド、ケトン、カルボン酸類副生成物を生じ、うち臭素酸塩については水質基準に規定があり、アルデヒド、ケトン、カルボン酸類副生成物の一部は健康に有害な化合物で、管路網水の生物学的安定性を部分的に低下させるため、オゾン消毒は使用において一定の制限を受けている。大・中型管路網システムにオゾン消毒を採用する場合は、必ず塩素によって管路網内の持続的消毒効果を維持しなければならない。

 したがって、発展という観点から見ると、塩素、紫外線、二酸化塩素、オゾン等の主要な消毒技術の中では、紫外線及びそれを組み合わせた消毒技術が、消毒効率が高い、消毒副生成物を生じない、または生じる消毒副生成物が少ない等のメリットゆえに、給水処理において非常に大きな将来性を有している。

5. 結語

 中国では現在、工業廃水と都市汚水の処理がまだ思うように行われず、水源水質が様々な汚染を受け、また一方では、飲用水水質に対する水質基準の要求がますます高くなっている。この両者の間の矛盾はぜひとも浄化技術の向上によって解決すべきであり、給水の高度処理プロセスにすでにその萌芽が現れている。それは試験・研究の進展、既存の工事についての真摯な総括、さらには外国の技術の導入に伴い、今後5年間で大きな発展を遂げるに違いない。様々な困難は浄水従事者にプレッシャーをもたらしているが、プレッシャーはまた原動力でもあり、それは広範な給水従事者を激励して安全な飲用水の提供のために奮闘させ、給水事業の絶え間ない進歩を促すであろう。