第34号:大気汚染対策
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中国大気汚染物質排出リストの発展と挑戦

2009年7月27日

王書肖

王書肖(WANG Shuxiao):
清華大学環境科学工学部副教授、大気汚染抑制研究所副所長

 1974年6月生まれ。2001年清華大学環境工学博士学位取得。前後して国家科学技術難関攻略計画、部委員会基金、国際合作など20余のプロジェクトのリーダーおよび主要研究員を歴任。政府のプロジェクト973「中国の酸性沈下関連物質排出の特徴と強度の研究」、プロジェクト863「地域大気汚染源の識別と動態源リスト技術および応用」のサブプロジェクトを担当、固定源粒状物質・揮発性有機物・無機炭素/有機炭素・水銀などの大気汚染物質排出の特徴の測定、地域的大気汚染物質排出リスト、地域的複合大気汚染の伝播・変化・抑制などの分野で研究を推進。中国内外の定期刊行物や国際会議での発表論文は40余編、単独著書出版3冊、省部級以上の奨励賞受賞3回。

 酸性雨や光化学スモッグなどに代表される地域的な大気汚染現象は、現在全世界で注目を集めている大気環境問題の一つである。研究が深まるにつれ、地域における大気汚染物質排出の特徴が地域的大気汚染現象の発生、伝播、変化、抑制を研究する際の重要な情報であることが徐々に知られるようになってきた。そこで、国家・地域レベルでの大気汚染物質排出状況を確実に把握し大気汚染抑制戦略制定の参考とするために、1980年代から国家大気汚染源排出リスト作成に関して海外で多くの詳細な研究が行われてきた。科学や基準の観点を取り入れたリスト作成方法がこれらの排出リスト作成過程に応用されてきたのは、例えばアメリカの国家排出リスト(National Emission Inventory)において応用されている基準やツール、それにヨーロッパのEMEP/CORINAIR大気排出リストガイドブック(EMEP/CORINAIR Atmosphetic Emission Inventory Guidebook)などに見られる通りである。これら基準などに基づいて作成された排出リストは、大気汚染抑制政策の効果を分析する際に用いられ、米国州間大気浄化規則(Clean Air Interstate Rule)や欧州大気清浄計画(Clean Air for Europe program)などの法規を制定するための科学的根拠を提供しいる。

1 地域的排出リスト作成の基本方法

 多くの人々が排出源となって排出される大気汚染物質について地域排出リストが作成される際は、しばしば下記公式(1)によって排出量が計算される。

   (1)

 公式中のiは地域、jは大気汚染物質の種類、mは汚染源の種類である。Ai,mは燃料消耗量、製品生産量、溶剤使用料などi地域のm類の汚染源に対応する活動レベルである。efm,jはm類の汚染源が排出する汚染物質jの排出因子である。

 排出因子の確定は、排出リスト作成の最重要要素である。人々を排出源とする地域レベルでの排出リストにおいて、排出因子は主に質量平衡法と数理統計法の二つによって確定される。そのうちの質量平衡法は主に原料または燃料の性質の影響を受ける排出に適用される。また、排出過程の生産条件に敏感でない汚染物質排出過程、例えば燃焼過程におけるSO2排出や塗料VOCs排出にも適用される。数理統計法は主に多くの要因の影響を受ける汚染物質排出過程に適合したものである。多くの同種類の排出源に対して行われた排出測定によって得られたデータをもとに、数理統計法を用いてその排出源のなかで最も可能性の高い排出因子に到達する。

 大気汚染物質排出測定技術の発展と排出メカニズム研究の深化にともない、海外での排出リスト作成過程にも多様な方法が用いられるようになった。アメリカでは、発電所などが大規模に排出する多様な大気汚染物質に対して、データのオンラインモニタリング(CEM)において整合を取りつつ、かつ連続的に排出量の計算を進める技術が開発された。また、移動源および非特定汚染源に対しては、排出量を計算するモデルツールが開発された。例えば流動源に対してのMOBILE6・NONROAD・MOVESなどのモデル、生物排出に対してのBEIS・GloBEIS・BEIGISなどのモデル、石油貯蔵缶のVOCs排出に対するTANKSモデルなどである。これらの技術は最新科学の研究成果を応用したものであり、排出リストの正確性を高めるものである。

2 中国の排出リストの現状と主な問題

 諸報道によると中国の大気汚染物質排出リストの研究は1990年代に始められたのだが、最初に取り組まれたのは温室ガスについての研究であった。1993年に王明星らは中国の水田や家畜など6種源のCH4排出量を試算したが、これが中国で最初の全国的大気汚染物質排出リストに関する報道である。1994年、Akimotoらは東アジアのSO2・NOx排出リストを作成したが、その中には中国の排出量が含まれている。2003年の報道によると、David Streetsらは省を単位として中国の SO2・NOx・CO2・CO・CH4・NMVOC・BC・OC・NH3など多種類の大気汚染物質の排出リストを計算したが、これは中国に関する最初の多種汚染物質総合排出リストである。中国の研究者も地域での排出に関して研究と作業を進めてきたが、その多くは独立的・分散的であり、総合的・全面的・動態的な地域における排出情報は極めて不足している。その結果、汚染源の排出状況と時空的特徴を全面的に反映することができず、また予報警報、地域コントロール、地域コントロール効果に関する評価の諸要求を満たすことができないでいる。現在、中国は基準となる排出リストの枠組みとその作成方法を欠き、実測に基づく排出因子が不足しており、大気汚染源の排出情報はシステムと基準に導入するには不十分である。このことは現在の中国の大気汚染研究および抑制政策の解決課題の一つとなっている。また、排出リストの信頼性について評価および検証を進める基準となる方法が欠けているために、排出リストの応用が困難になっている。

2.1 排出リストの枠組みと作成方法

 合理的な排出リストの枠組みは相対的に正確な排出リストの必要条件であり、その中でも最も主要な部分は排出源の分類方式である。RAINS-PMモデルは、排出予測要求を満たす排出リスト中のすべての種類の排出源が必ず備えている5条件を提案している。第一に排出源の重要性、第二に統一的に定義可能な活動レベルと排出因子、第三に将来の活動レベルの予測可能性、第四に汚染抑制措置の実現可能性と適用性、第五に活動レベルに関連するデータの取得可能性がそれである。アメリカの国家排出リストで使用される排出源分類コード(Source Classification Codes, SCC)は排出源を9760種類に分類している。SCCコードは全部で4段階に分けられる。第一段階は排出源の基本類型であり、特定汚染源・非特定汚染源・生物源・道路源・非道路源などの5種類がある。第二段階は部門で分けられる。第三段階は業種で分けられるものであり、主に主要製品・原料・燃料の品種で分類される。第四段階は排出場所または排出の過程で分類される。

 先進国の大気汚染物質排出リストと中国の排出リストは、排出源分類の系統性および全般性において非常に大きな格差がある。まず、中国の現在の排出源分類はほとんどが業種一般にとどまっていて、具体的な排出ポイントや排出生産過程での排出量計算に欠けている。中国の非常に多くの業種では進んだ生産工程と遅れた生産工程が並存しているという現象が見られるが、これらの異なる工程のためにしばしば排出の特徴が大きく異なるのである。セメント工業を例にとってみると、シャフトキルンのCOとNOxの排出濃度はそれぞれプレヒーター付きキルンの0.116倍および22.9倍である。業種一般に基づいて分類作成された排出リストは異なる工程では排出特徴が異なるという事実を見逃してしまい、排出量計算に大きな誤差が生じてしまうのである。次に、中国の現在の排出リストには多種類の重要排出源が抜け落ちてしまっている。ある種の汚染源の活動情報が相対的に欠如しているため、中国の現在の排出リストの情報は主に固定燃焼源だけを扱っており、塗料使用や生物源などの汚染源についてふれたものは非常に少ないのである。

 排出源分類のほかに、中国の現在の排出リストがカバーしている汚染物の種類も十分ではない。現在の排出リストは主にSO2・NOx・CO・NH3などの気体汚染物質や煤塵・粉塵に関するもので、地域における複合大気汚染研究を支える一次粒状物質( PM2.5・PM10)やVOC、特にその化学成分の情報を欠いている。

 そのほかに、中国の現在の排出リストは基準年・方法論・排出源分類方式・データの由来などが統一されていない。このため異なる結果同士での比較の可能性が低く、また不確定性が非常に高くなり、地域的複合大気汚染において重要な役割を果たすカーボンブラックと有機炭素排出量の不確定性が500%近くになるほどである。

2.2 排出因子の測定

 排出リストの作成過程において、排出源の測定によって得られた排出因子は非常に重要な情報である。排出源測定データを比較可能にするために、各種排出源測定方法を調査研究する基礎として、米国環境保護庁は各種標準汚染物質・重金属・揮発性有機気体についての測定方法を推奨した。この測定方法の対象汚染物質は5種の標準気体汚染物質(CO2・CO・NOx・SO2・TVOC)・粒状物質(PM・PM10・PM2.5)・15種の重金属・VOC・有害大気汚染物質(Hazardous Air Pollutants, HAPs)・その他の無機気体汚染物質(H2S・F-・HCl)である。これに比べ、中国の排出因子測定基準は非常に不完全なものであり、現在は工業固定源排煙・煤塵・CO・NOx・SO2など汚染物質の採集および測定基準と自動車のベンチ測定の基準が頒布されたに過ぎない。これによってカバーされる汚染源と汚染物質は非常に少なく、表1の通りである。特にPM2.5・PM10・VOCs・重金属の排出測定基準が欠けており、地域的排出リストの要求を満たすにはほど遠いものである。

表 1 中国とアメリカの排出源測定方法の比較

汚染物質

EPA測定方法

中国の測定方法

二酸化炭素・酸素

3, 3A, 3B, 3C

 

亜硫酸ガス

6, 6A-6C, 8

HJ/T 56~57-2000

窒素酸化物

7, 7A-7E, 20

HJ/T 42~43-1999

一酸化炭素

10, 10A, 10B

HJ/T 44-1999

粒状物質

5, 5A, B, D, E, F, G,H, 5I, 17, 201, 201A,202, 315

GBT16157-1996

PM2.5・PM10

201, 201A, 202

 

揮発性有機物

18, 21, 25D, 204A-F,305, 307

 

水銀など15種の重金属

29

 

Table 1 Comparison of test method on emission sources between China and U.S

 大量の汚染物質排出調査および排出測定に基づいて、アメリカは固定排出源の排出因子ハンドブックAP-42を制定した。AP-42はほぼすべての固定排出源と地域的汚染に関連するすべての大気汚染物質をカバーしている。ヨーロッパも排出測定の基礎としてCEPMEIP内のPM排出因子データベースのような排出因子ハンドブックを制定した。そのほかに、VOCsと粒状物質内の複雑な化学成分について、アメリカはさまざまな排出源から排出されるVOCsと粒状物質の成分一覧をまとめ、成分ライブラリSPECIATEを制定した。これに比べて、中国の測定によって蓄積された排出因子はSO2・煤塵・粉塵に集中しており、カバーされる汚染源は主に固定源であって、総合排出リストの要求にはほど遠いものである。近年中国の研究者は、民間排出源や自動車源の測定方法および粒状物質のサンプリング選別、成分分析およびVOCsのサンプリング分析に探索的研究を進めているが、排出因子の確定にはまだ大量の系統的測定、特に従来のコーキング・セメントのシャフトキルン・れんが窯など中国特有の汚染源の測定作業が必要である。

2.3 排出リストの応用

 排出リスト確立以後、科学研究者や政策決定管理者は排出データの更新・排出の予測および背景の分析・排出特徴の分析・データ処理モデルの輸入・情報相互の可視化など一連の課題に直面することとなった。これらの課題に対して内外の研究者は一連のモデル、ツールおよび技術を開発したが、これらの研究開発ではアメリカのそれが最も成熟している。アメリカのノースキャロライナ・マイクロエレクトロニクスセンターが開発したSMOKE(Sparse Matrix Operator Kernel Emissions Modeling System)モデルは、最も幅広く用いられる排出源データ処理モデルの一つである。その主な機能は一年を時間単位、行政区を空間単位とした排出リストが空間的時間的分配を進め、同時にモデルが選択的に使用する化学メカニズムに基づいて排出リストの最初の汚染物質に化学物質の種類と質量の比例分配を進めることによって、空気質量モデルが時空解像度と化学物質の種類の面で排出リストの高精度の要求を満たすというものである。SMOKEにはMOBILEモデルとBEISモデルが組み込まれており、リアルタイムで流動源と天然源の排出を高精度に計算することができる。そのほかに、このモデルは将来の排出について予測と背景分析を行うことができる。アメリカのミシガン湖大気監視連盟が開発したCONsolidated Community Emissions Processing Tool (CONCEPT)モデルはSMOKE類似の機能を持つもう一つのモデルである。SMOKEと比べてCONCEPTは排出予測と背景分析により優れた機能を持ち、簡単な排出抑制コストの分析も行うことができる。現在アメリカ環境保護庁が開発中のEmission Modeling Framework (EMF)は、排出源データの分析および処理の統一的なプラットフォームを確立することを目指したものである。このプラットフォームは排出源データ処理モデルであるSMOKEを核心とし、統一的なフレームで分析・管理・可視化のツールを開発したものである。このプラットフォームによって研究者は排出源データに関する各種の課題を実現することが可能となった。

 これに比べて中国の排出リスト応用ツール研究は遅れており、しかも都市汚染源の管理に集中している。地域レベルの研究に関する報道は、張強基がGIS技術とクロスプラットフォームのプログラミング技術において開発した地域的多基準排出源モデルのみである。既存の排出データプラットフォームでは主に次の二点が欠けている。第一に排出情報のグリッド解像度が不十分である。既存の全国排出リストの研究のグリッド解像度は1°前後であり、東アジア地域の汚染物質の伝播など大地域レベルのシミュレーション研究に多用されているが、地域-都市レベルの多重グリッドネストシミュレーションにおいては精度不足なのである。第二にリアルタイムで排出源排出の変化を反映することができていない。中国の経済は急速に発展しているため、造成される各都市および地域の汚染源の排出変化は非常に大きく、すばやく確実にこれを掌握することは困難である。そこで、主要汚染物質の地域動態源排出リストおよびデータベース管理システムを確立し、地域の排出源の排出情報を動態的に更新していくことが求められるのである。

2.4 排出リストの検証

 大気環境中の物質としての汚染物質の種類はきわめて多く、直接物質量または排出量を観測することは非常に困難である。数多くの化学物質の物質量観測にはいまだ効果的な技術手段が乏しく、直接的な実験観測を用いてすべての汚染源排出状況に対して検証を行うことは不可能である。このため汚染濃度観測結果から汚染源を逆検証する技術が研究されている。これが汚染源リストを間接検証する有効な手段となる。

 逆検証は従来の排出リストを検証する方法として近年急速に発展してきた。東アジアで最も早くに作成された大気汚染物質排出リストであるTRACE-Pに対して、海外では観測情報に基づいた多様な逆検証研究が展開されてきた。COに関して、アメリカのハーバード大学とアイオワ大学などは前後して航空測量・衛星リモートセンシング・地上観測情報を利用して東アジア地域の部分燃焼源排出総量について逆検証を行った。Streetsはリストの逆検証の結果に基づき排出リストを向上させた。すなわち中国特有の燃焼排出源についてはっきりと識別し、同時に技術に基づいた排出源分類方法を確立して、CO排出源漏れと特有排出源の排出因子の問題の基礎的解決に至り、中国CO排出リストの正確性を大きく向上させた。

 しかしNOxのリスト逆検証については、大気物理化学の仮説を用いることによって、COの逆検証と比べて、かえってその逆方向数値シミュレーションの計算の複雑さが増加した。ハーバード大学は衛星リモートセンシングのデータを用いて、NOxの逆検証結果について次のような事実を明らかにした。すなわち、NOxの排出時空分布と趨勢には90年代後期から大きな変化が見られるというのである。また、Zhangはリストの逆検証の結果に基づいて中国の主なNOxの排出源の活動レベル・排出因子・季節変化の特徴について分析を進めた。そして、技術に基づく動態的方法を用いて中国の1995~2004年のNOx排出リストを確立し、さらに中国のNOx排出量の変化趨勢を正確に描き出した。

 ただし、逆検証研究は排出リストの検証と改善に方向性を示したが、中国の地域的COおよびNOxリストに対する海外の逆検証研究にはほとんどの場合、以下のような問題が含まれている。まず、逆検証が用いる前提のリストはTRACE-P・EDGAR・CORPなどのような全世界規模の超巨大レベルのリストであり、精度が不十分である。次に逆検証の制約条件はすべて衛星リモートセンシング・航空観測・点在する地上観測サイトなどに基づいており、対応する高精度の観測情報が不足している。そのほかに以上二つの原因に限定され、逆検証は排出源排出種類と地域での検証を完全にはカバーしておらず、時空分布と趨勢の検証解像度が少し低い。

 また、中国国内に衛星リモートセンシングのデータを利用して大気汚染物質濃度を逆検証した研究があるが、衛星リモートセンシングのデータのリストに基づいた逆検証研究はまだ存在しない。

3 中国排出リスト技術の改善と完成

 中国の排出リストを改善し、地域的大気汚染研究および政策決定の要求を満たすためには、排出因子測定と排出リスト作成の関連技術には依然として課題がある。

 上述したように、現在中国の排出因子測定基準方法は主に工業固定源の排煙・煤塵・ CO・NOx・SO2などの汚染物質測定と自動車のベンチテストに集中している。そのため固定源については、海外の既存の研究に基づいて固定源PMとVOC、そしてその成分の正確な測定方法を研究開発するだけでなく、中国特有の従来からのコーキング・セメントのシャフトキルン・れんが窯などの稼働状況の劣悪さや排出濃度の高い排出源測定技術に関して特に開発を進める必要がある。移動源については、中国製自動車の走行状況に適用する車載測定技術を開発する必要がある。そのほかに、非特定汚染源と生物源の排出測定技術を発展させる必要がある。

 排出リスト作成技術に関しては、主に中国の排出源部門の分布特徴に適用される分類方法を制定する必要があり、また現在の社会経済的統計に基づいて動態的活動レベルの情報を獲得してその処理技術を確立する必要がある。さらに道路源・非道路流動源・生物源などについては中国の自動車および非道路移動源排出レベル・植生分布・農業および牧畜業の発展状況に適用される排出モデルを確立する必要がある。

 このほかに、汚染物質抑制政策に用いられる排出リストは規格性・適用性・信頼性を備えるべきであるという要求に応える必要がある。その規格性を保証するためには、政府部門は早急に排出源分類方法・排出因子測定方法・活動レベルの獲得と処理手続きに関して国家または業界の基準・ガイドラインを確立する必要がある。そして排出リスト確立過程で一致して使用される方法論を保証し、排出リストの動態的更新の方法的基礎を提供するのである。その適用性を保証するためには、使いやすいインターフェイスを備えた排出リストソフトウェアを開発し、活動レベルのデータ収集と処理機能および排出リストの動態的更新を行わなければならない。そして同時に空気質量モデルの排出データフォームが必要とする多元的排出量データを抽出し、基本的な照会機能と可視化機能を満たさなければならない。また、その信頼性を保証するためには、排出リスト作成過程の質量抑制/質量保障の手続きを制定する必要があり、排出リストの不確定性分析技術や地上観測・衛星リモートセンシングなどのデータに基づく排出リスト逆検証技術を発展させる必要がある。

 以上の研究上の課題について、中国科学技術部の支援のもとに清華大学はプロジェクト863「地域的大気汚染源の識別と動態源リスト技術および応用」の研究を進めているが、2010年にはブレイクスルー的な研究の進展を期待している。