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窒素沈着が森林生態系の土壌含有炭素に与える影響

2009年8月28日

韓士杰

韓士杰(Han Shijie):中国科学院二級研究員、
博士研究生指導教授、
吉林長白山森林生態系国家野外科学観測研究展チームリーダー

1956年5月生、東北林業大学生態学博士。

1978-1997、東北林業大学物理学科において助教授、講師、副教授を歴任。1990-、主に森林生態系界面生態学と炭素循環科学の研究に従事。1998-2001、中国科学院百人計画(A)選定者。国 家百千万人材プロジェクト第1期選定者。国務院政府手当獲得者。

専門書は葉面界面生態学、単著、東北林業大学出版社、1996。中国の陸上生態系における炭素循環の生物地球化学過程、共著、中国科学出版社、2008。ここ10年に発表した論文は百余編、その内SCI 20余編。多くの国家級科学研究プロジェクトを主宰。

概要

 森林の土壌含有炭素は陸上生態系の含有炭素の重要構成部分であり、地球の炭素バランスを保つのに重要な意義を持っている。しかし、常 に深刻化している地球の窒素沈着は森林生態系中の炭素元素の地球的化学循環の過程を改変し、森林の土壌含有炭素量の変化を引き起こす可能性がある。本文では、森林の土壌炭素収支の観点から、窒 素沈着が森林生態系の土壌含有炭素に与える影響の複雑な過程を、落下物分解、細根サイクル、土壌呼吸、土壌可溶性有機炭素の消失の4つの相対的に独立した過程に分類した。さらに中国内外の研究状況を総合し、こ れに関して簡単な論評を加えて現在の研究の不足を指摘し、本研究領域の発展方向を検討した。

共著:鄧小文

1. 序言

 土壌は陸上の生態系の含有炭素の最大構成部分であり、地球の土壌が有機質と植物残滓の形で貯蔵している炭素量は植生が貯蔵している炭素量の2倍以上である。さらに森林の土壌は陸上の土壌含有炭素の45%を 占めることから、森林の土壌含有炭素は地球の炭素バランス研究において重要な意味を持つ。その森林の土壌含有炭素の変化に影響を与える数多くの要素の中で、窒素が徐々に幅広い関心を集め始めている。窒 素は植物が必ず必要とする大量元素の一つであり、植物体内の多くの重要な有機化合物の組成元素である。その他の栄養元素とともに主に母質の風化によってさまざまなものを提供し、自 然状態では植物の大気窒素固定過程において土壌の窒素が主な供給源となる。温帯森林の生物の窒素需要量は通常土壌有機窒素鉱化速度よりも多いため、温帯森林の生態系は一般的に窒素欠乏型と表現される。しかし、過 去1世紀の化石燃料の使用のため化学肥料生産工業や農牧業が急速に発展し、人類の活動が大気に排出する含窒素化合物が日に日に増大した結果、大 気の乾湿によって陸上生態系に進入沈着する含窒素化合物も大量に増加した。統計によると地球の窒素沈着量は1990年には103Tg·a~、すなわち1860年の31.6Tg·aの3倍であり、2 050年には195Tg·aになることが予想されているという。また、アメリカ東部や西ヨーロッパの工業地域では、大気中の窒素の沈着量は工業革命前の10倍以上にもなるという。人 間が原因となって引き起こされる窒素の流入は、すでに生態系の窒素の重要供給源となっているのである。そして、大気から森林生態系に進入沈着した外来窒素はそのごく一部分が植物によって利用されるだけであり、大 部分は土壌に固定される。この窒素は主にNO、NO‐、NHなどの形で存在し、土壌微生物によってきわめて利用されやすくまた土壌中の有機物・塩基のイオンときわめて結びつきやすいため、直接・間 接的に土壌炭素の流入流出過程、すなわち森林の土壌含有炭素生産に影響を与えることになる。窒素沈着の有無またはその程度が土壌含有炭素生産に影響を与えるということは、す でに地球の変化と窒素沈着の研究において避けることのできない問題なのである。

2. 窒素沈着が土壌含有炭素に与える影響に関する研究史および研究の現状

 1980年代初め、ヨーロッパと北アメリカの工業地域で窒素沈着により引き起こされる陸上生態系の退化と水系富栄養化などの生態系「窒素飽和」問題が現れたことにより、研 究者は窒素沈着が引き起こす生態系の退化の問題について研究を開始することになった。そして80年代末から90年代初期にかけて観測レベルが高まり観測範囲が常に拡大するなかで、研究者はしだいに「窒素飽和」は 限定された一地域の問題ではなく地球規模の環境問題であることを認識するようになった。このような状況で長期的な定位研究が開始され、ま た研究ネットワークが形成されていくとともに組織的で大規模な国家や地域を超えた合同研究も開始されて徐々に盛んになっていった。例 えばヨーロッパ共同体の資金援助の下に1980年代末から1990年代中ごろにかけて、ヨーロッパでは窒素沈着が森林生態系に与える影響に関する国際的な研究計画が2回にわたって行われた。NITREX(Ni.t rogen Saturation Experiments)とEXMAN(Experiment~Manipulation of Forest Ecosystems in Europe)がそれである。ア メリカでは1988年にマサチューセッツ(Massachusetts)のハーバード・フォレスト(Harvard Forest)が創設した窒素沈着長期模擬窒素沈着(外加窒)試 験場がすでに20年近い歴史を持っており、アメリカ全土を覆う窒素沈着観測ネットワークを設立し、さらに完璧を期している。ロッキー山脈(Rocky Mountains)、ア パラチア山地(Appalachian Highland)、アラスカツンドラ(Alaskan tundra)など窒素沈着に敏感な山地やツンドラの生態系は、すでに窒素沈着研究の重点区域になっている。& lt; /p>

 地球の変化と研究の深化にともない、研究者は窒素沈着の環境効果について研究する際にはその生態系の含有炭素に対する影響について検討し始め、生 態系の含有炭素評価のなかで不確定な土壌含有炭素を徐々に研究の重点とするようになっていった。現在まで窒素沈着が土壌含有炭素に与える影響について本格的に扱った研究は現れていないが、多 くの先行研究が等しく項目を割いて窒素沈着の土壌含有炭素の何らかの過程について言及している。例えば、Hagedornらはオープンコンテナ技術を応用してブナ(Fagus sylvatica L.) とオウシュウトウヒ(Piceaabies Karst)の2種類の森林類型の土壌含有炭素状態をシュミレーションしたのであるが、そ の異なる窒素沈着レベルの変化の過程において窒素沈着が土壌の腐植質の分解速度を落とし土壌含有炭素量を増加させることを発見した。M akipaaらはモデルを利用してフィンランド南部のヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)林が気候の変化と窒素沈着という条件の下で含有炭素を変化させる状況をシュミレーションし、窒 素沈着という条件のみを考慮した場合、内部に土壌含有炭素を含む生態系の含有炭素は11%増加することを発見した。N efらは同位素技術を用いてコロラド(Colorado)高原ツンドラ地帯の土壌含有炭素を研究し、窒 素流入は土壌の軽組炭素(周期10年前後)の分解過程を加速し重組炭素(周期数十年から1世紀)の分解過程を抑制することから、総合的には窒素沈着が土壌含有炭素に与える影響は大きくないということを発見した。し かし、20年の長期にもわたって行われてきたアラスカツンドラの窒素増加研究は、窒素増加は地表の生物量を2倍に増加させるが、土 壌含有炭素の変化だけを考慮した場合長期的な窒素増加はツンドラの生態系を2kgC·m損失させるということを明らかにした。総 じてこれらの研究は単に土壌炭素の流出過程や比較的静態的な土壌含有炭素について検討したにすぎず、窒 素が土壌含有炭素に与える影響として作用するメカニズムについて不明確に指摘したにすぎないといえるかもしれない。これらの研究成果はさらに一歩確認を進める必要があるのである。

3. 窒素沈着が森林生態系の土壌含有炭素に与える影響の過程

3.1 森林土壌含有炭素に影響を与える主な過程

 土壌は多様で複雑な一つのシステムであり、土壌含有炭素の変化は落下物分解、細根サイクル、土壌呼吸などさまざまな要因が相互に関係し影響しあっている生物化学過程である。既 存の文献を総合してみると窒素沈着が土壌含有炭素に与える影響の研究には理論上、技術上のあいまいさがあり、ほとんどの研究はわずかに土壌含有炭素に影響を与える何らかの過程、ま たは何らかの複数の過程について言及しているのみであるため、土壌含有炭素の変化の真の過程を客観的に描写することは難しい。いかにして窒素沈着が土壌含有炭素に与える影響を全面的に分析するか、そ していかに複雑な過程のメカニズムに関わり過ぎないかということが、目下解決の急がれる問題なのである。

 炭素収支(carbon budget)法とは地球の生態系の含有炭素を研究する主な方法であり、主 に地球の各類型の生態系の源状況と集合状況に依存して総合的に地球の含有炭素の動態的変化状況を導き出すものである。森林土壌含有炭素は一つの動態的な変化の過程であるが、地 球規模の土壌含有炭素に関する研究方法を参考にし土壌炭素収支状況に基づいて、窒素沈着が森林生態系土壌含有炭素に与える影響についての複雑な過程を4つの相対的に独立した過程に分けることができる(図1)。落 下物分解と細根サイクル(土壌炭素の流入)、土壌呼吸と土壌可溶性有機炭素(DOC)の減少(土壌炭素流出)である。窒素沈着が森林土壌含有炭素に与える影響は、こ れら4つの過程の研究を通して総合的に導き出すことができる。

図 3.8.3 1995-2006年中国における高等教育機関と研究機構数の推移

図1 土壌含有炭素の変化に影響を与える主な径路

3.2 窒素沈着が落下物分解過程に与える影響

 森林の落下物分解は森林の土壌の性質と植物・微生物への養分供給に重要な影響を与える。落下物分解過程の腐植化過程は森林の土壌含有炭素の重要な流入過程の一つである。窒素沈着は落下物の性質、分解過程、2 2 落下量によって土壌含有炭素に影響を与える可能性がある。窒素沈着が落下物の落下量に与える影響の程度は、主に樹木の種類と養分条件によって決定される。窒 素が不足しているところでは窒素流入は植物の生長を促進し、落下量を増加させる。しかし、す でに窒素が飽和状態となっているところでは長期的な窒素の流入は森林の退化と森林落下量の減少を引き起こす可能性があるのである。Magillらの研究は、外 源窒素の流入が比較的高い条件の下では針葉樹の落下量ははっきりと増加するが、広葉樹にははっきりとした変化が現れないということを明らかにした。E rilssonらの窒素が不足した状態のオウシュウトウヒモデル地域に関する研究は、長期的な窒素沈着は流入地表の落下物を増加させることを明らかにした。Zakらの北方広葉樹林に関する研究は、窒 素沈着が森林落下物の生産量に与える影響は大きくないとみなした。

 落下物の化学成分分析により、長期的に窒素沈着または窒素肥料の施用を受けた森林の凋落物の窒素含有量は、妨害を受けなかった生態系に比べはっきりと高いことが明らかになった。例えば、B ergkyistとFolkesonがスウェーデン南部のブナ林実験地で行った研究は、窒素施肥強度を66kgN·hm·a強度と198kgN·hm~·a強度に分けた実験地での落下物の窒素含有量は12.5 mg·gと13.3mg·g~に分かれ、コントロールモデル地域(1 1.5mg·g)とは顕著な差異が生じるということを発見した。Vestgardenのヨーロッパアカマツ落下物の早期段階に関する研究は、内 源窒素であれ外源窒素であれ窒素はすべて落下物の分解を促進しうるということを発見した。Bergらの研究は、落下物分解の初期段階では分解速度と窒素含有量は線形相関的であり、こ の段階は落下物中の総流出物質が26%~36%にいたるまで持続するということを発見した。この段階では主に水溶性物質と分解しやすい非木質性繊維素が分解され、窒 素元素含有量はその分解過程を刺激し加速したものとBergらは考えている。分解過程の進行にともなって落下物中比較的分解しにくい木質素の含有量がしだいに増加し、落下物分解は後期段階に入る。こ の段階では窒素元素は落下物分解に抑制作用を現すが、これは主に窒素元素と木質素が合体反応を進め、さらに分解しにくい腐植質を生成するためである。小 分子窒素の豊富な環境においては白腐菌は木質素を分解する酵素を合成できず、落下物分解過程を抑制した。落下物後期分解は落下物分解過程において決定的な作用を及ぼすため、窒 素沈着が土壌の腐植質の分解速度を落とし、それゆえに土壌炭素の流入を増加させると考える研究者もいる。しかし、実験時間が短いことと観測モデル地間の差異から、この点は現在学会で承認を得るには至っていない。& lt; /p>

3.3 窒素沈着が細根サイクル過程に与える影響

 細根サイクルは土壌含有炭素の重要な供給源の一つであり、細根サイクルによって温帯森林土壌に入る有機炭素は土壌炭素総流入量の14.0%~86.8%を占め、それ以外の状況でもほとんどの場合40%を 占める。窒素沈着は細根化学成分、生長量、サイクル速度の相違によって細根サイクル過程に影響を与える可能性がある。外源窒素流入は細根の化学成分を変化させる可能性があるが、あ る研究は窒素沈着強度の比較的高いモデル地では細根の窒素元素含有量と酸溶性有機質含有量は増加することを発見した。しかし、窒素沈着が細根生長量とサイクル速度に与える影響に関する研究では、技 法が制限されているため研究結果の不確定性はいまだ比較的大きい。伝統的な生物量連続サンプリング法(sequential sampling of fine.root biomass)が現在細根研究で最も一般的に使われている方法であるが、この方法には統計学上比較的大きな欠陥がある。一方では細根を重複してサンプリングするため時間と空間の差異を混合してしまい、細 根の生長量を高く評価しがちであり、他方ではこの方法は細根の生長と死亡のシンクロニーを軽視してしまい、細根の生長量を低く評価してしまう可能性があるのである。そこで、こ の方法を利用して窒素沈着が細根サイクルに与える影響に関して研究を進めると、その結果として不確定性に行き着いてしまう。ある研究は細根の生長量と生物量は窒素流入量の上昇に比例して増加するといい、同 じ方法を利用した別の研究は正反対の結果を導き出すのである。Pregitzerらの生物量を利用した研究は、外源窒素流入は細根のサイクル速度を低下させることを発見した。さて、炭素・窒素収支法(C/N budget)は細根サイクルを研究する差異によく用いられるもう一つの方法であるが、これもまた同様に多くの不確定性を備えている。窒 素平衡法は細根の生長が消耗する窒素は土壌の窒素鉱化総量と植物の地上部分の窒素を吸収量との差であると考えるが、これは雨水流出によって流出する窒素量と大気窒素の流入を軽視したものである。窒 素沈着が森林生態系の土壌含有炭素に与える影響について、1625炭素平衡法は仮設土壌の含有炭素は変わらず、土壌落下物炭素流入と土壌呼吸炭素流出のデータを利用して細根生長と呼吸が消耗する炭素を計算する。炭 素・窒素平衡法による研究は外源窒素の流入は土壌の現存細根生物量を低下させるにもかかわらず、細根総生長量をはっきりと高め、細根のサイクル速度を加速させると考えている。以上をまとめると、細 根サイクルの炭素流入過程に関する研究は土壌含有炭素の変化に影響を与える4つの独立した過程のなかの比較的弱い部分であり、理論であれ研究方法であれ足りないところが多く、さ らなる研究の発展が必要であると言える。

3.4 窒素沈着が土壌呼吸に与える影響

 土壌呼吸とは土壌含有炭素中の炭素の主な流出形式であり、土壌、表層落下物、土壌根系を含むすべての地下部分での呼吸を指す。落下物呼吸とは落下物が分解する速度を表す指標の一つであり、窒 素沈着が落下物呼吸に与える影響は基本的にそれが落下物分解に与える影響と一致する。すなわち、落下物分解初期には窒素流入は落下物呼吸速度を促進し、分 解後期には窒素は落下物呼吸に対して抑制作用を起こすのである。窒素流入が土壌呼吸に対し抑制作用を持つことは明白である。F ranklinらがスウェーデン北部の樹齢40年の針葉樹林モデル地に20年窒素を施肥した研究は、窒素施肥モデル地の土壌呼吸総量は対照地と比べ40%低いことを明らかにした。M ichelとMatznerが行った窒素沈着強度の異なる15の地区のオウシュウトウヒ林の土壌に関する実験室研究と、Bowdenらがハーバード窒素実感モデル地で行った研究も類似の結果にいたった。こ れらの研究は、細根呼吸は土壌呼吸の10%~90%を占め、窒素流入が細根呼吸に対して明白な促進作用を持つことを明らかにしている。B urtonらは北アメリカ大陸を横断して気候の異なる10個のさまざまな林型のモデル地を研究し、細根呼吸と大気窒素流入量ははっきりと正の相関関係を示すことを発見した。Z oggらはミシガン州の温度と窒素地若レベルの異なる4つのサトウカエデ(Acer saccharum)モデル地に関して研究を行い、窒素流入は細根の呼吸速度を速めることを発見した。事 実上窒素沈着が林地地下の成分の呼吸過程に与える影響は同時進行的であるため、もっとも適合した方法をいかに探し出し、窒 素沈着が地下の各部分の呼吸に与える影響をその総呼吸量への影響から分離するかということが、土壌呼吸炭素流出過程に関する研究の鍵となるであろう。

3.5 窒素沈着が土壌の可能溶性有機炭(DOC)消失に与える影響

 DOCは土壌炭素元素の重要な存在形態であり、主に落下物・腐植質分解と細根分泌によって生産され、土壌微生物代謝の主なエネルギー供給源であると考えられている。一 定の条件の下で土壌中のDOCの一部は地下または地表雨水流出によって流出し、地表水に流入する可能性がある。この部分は炭素総量に比べて小さく安定性も劣っているため、土 壌含有炭素の計算において通常軽視され広く注意されることはない。最近の研究の報道によるとある地区を長期的に観測した結果水中DOC含有量が増加の趨勢にあることを発見したというが、F indlayはこれは窒素沈着が土壌のDOCを大量に流出させたためである可能性があると考えている。つまり、窒素沈着が土壌のDOC生産および消失に与える影響に関する研究はいまだ多くなく、理 論と実験結果の両面で多くの論争が存在しているのである。ある研究者の仮説では窒素沈着が土壌の木質素を不完全分解に導き、土壌のDOC含有量を増加させている可能性があるとなっており、一 群の研究もこの点を裏付けているようである。しかし、窒素元素は土壌腐植質の安定性の増加と細菌生長の促進という2つのルートによって土壌のDOC含有量を低下させると考える別の研究者もいて、こ の論法を支持する一群の研究結果もある。しかし、窒素沈着が土壌のDOCを消失させる過程とDOCが土壌の転移転化規律に与える影響について相互に関連させた研究は今のところ報道されていない。過 量のDOC消失が土壌含有炭素と水系環境に及ぼしうる負の影響はいかなるものか、窒素沈着が消失の主導要因なのか、そしてこれは消失過程にいかなる影響を及ぼすのか。これらの問題は現在は明らかにされていない。& lt; /p>

4. 結語

 以上の内容をまとめると、窒素沈着が森林土壌の含有炭素の流入(出)過程に与える影響に関する研究はバランスを欠きながら進展してきたということが言えるであろう。そ の中で落下物流入と土壌呼吸流出の過程に関する研究は比較的深まり、ある程度の共通理解がすでに形成されている。しかし、細根流出と土壌有機炭素消失の2つの過程に対する研究はいまだ模索段階であり、理論上、方 法上のさらなる進展が求められている。システムの角度から窒素沈着が引き起こす各炭素過程間の物質とエネルギーの流動変化に関しては、それらの間の結合モデル研究がいまだ初歩段階にとどまっている。以 下の問題に対する総合分析もさらなる研究が求められている。まず窒素沈着が落下物流入過程に与える長期的な影響に関してであるが、落下物分解は一つの長期的な過程であり、窒 素沈着は落下物分解に影響を与えるだけでなく植物生長と落下量にも影響を与えることから、窒素が落下物流入過程に与える影響に関しても長期的な観測が求められる。次 に細根は土壌含有炭素流入形態として公認されているが、現有の細根サイクル研究の方法の限界により窒素沈着が細根輸入過程に与える影響を正確に評価することは困難である。窒 素沈着が細根流入過程に与える影響に関する研究については、方法的刷新に重点を置かねばならないであろう。また、ある研究は窒素流入が細根と落下物分解の初期呼吸を促進し、土 壌と落下物分解の後期呼吸を抑制しうることを明らかにしている。このような抑制・促進作用は同時進行のものであり、窒素沈着が土壌呼吸に与える影響をこのような複雑な過程から分離する方法は、土 壌呼吸炭素流出過程において解決が急がれる問題である。最後に窒素沈着が森林土壌のDOC生産・消失過程に何らかの影響を与えうる可能性に関しては、この影響はどのように引き起こされるのか、土 壌の類型や森林の水文とはどのような特徴を持った関係にあるのかなども現在の研究目標である。


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