トップ >第35号:生態系保全技術> 中国の水土流失及び水土保持の研究と実践

中国の水土流失及び水土保持の研究と実践

2009年8月26日

雷廷武

雷廷武 (Lei Tingwu):中国科学院水利部水土保持研究所、
黄土高原土壌浸食・乾燥地農業国家重点実験室 主任、研究員

 1958年生まれ。1988年、北京農業技術大学、農業水土工学専攻、工学博士。1998.年より中国農業大学教授、博士課程院生指導教官。2007年より黄土高原土壌浸食・乾燥地農業国家重点実験室主任、中国科学院水土保持研究所「知識革新プロジェクト」研究員。この間、豪ビクトリア州、持続的灌漑農業研究所、米ミシガン州立大学、農業・生物システム工学部、米Purdue universityのUSDA-ARS国家土壌浸食研究実験室、英HAPPER ADAMS UNIVERSITY COLLEDGE及びOXFORD UNIVERSITYなど訪問して研究。 国際定期刊行物に40編近くの論文を含む計約200編の論文を発表。12件の発明特許、13件の実用新案特許を取得。著作に「細溝浸食物理モデル」。「中国科教基金会」青年科学技術(茅以昇)賞、農業部科学技術進歩2等賞、中国土壌学会「第2回土壌学会賞」、「第9回銭寧土砂科学技術賞」を受賞。中国農業工程学会常務理事、中国水土保持学会理事を兼務。「水土保持研究」、「水土保持学報」の編集長、「農業工程学報」、「農業機械学報」、「水土保持科学」、「生態環境学報」、「CATENA」、「International Journal of Agricultural and Biological Engineering」等の中国内外学術定期刊行物の編集委員を歴任。


寧堆虎(Ning Dui Hu):中国水利部水土保持司の教授クラス高級技師

 1963年8月生まれ。1989年、中国農業大学農地水利工学修士。主に水土保持管理業務に従事。


屈麗琴(Qu Li Qin):北京林業大学水土保持学院研究助手

 1980年3月生まれ。2008年、中国農業大学農業水土工学博士。土壌浸食及び水文過程分野の研究に主に従事。

1. 中国の水土流失の概況

 中国は北緯3°52′~53°33′、東経135°05′~73°40′に位置する。中国の地勢は西高東低で、山地、丘陵、高原が全国総面積の約2/3を占める。また、国土全体の中で利用の難しい砂漠、氷河、岩山及び荒涼たる高緯度寒冷地帯等が35%を占めている。地質と地形が複雑で、山地・丘陵が国土の2/3を占め、大陸性モンスーン気候の影響で洪水と渇水の年間差が大きく、これが水土流失の自然条件となっている。特殊な地理的条件と社会的・経済的条件により、水土流失は大きな環境問題となっている。特に人口増加が食物と繊維の生産に対する需要増大を招き、水土流失を激化させた。中国国内では様々な水土流失のタイプを見ることができる。水土流失は今や人々の生産・生活及び国の生態と環境の安全に影響を及ぼし、社会の持続可能な発展を制約する要因となり、これは中国の重大な環境問題である。水土保持は農業の生産条件と生態環境を改善し、河川を整備するための根本的措置であり、各級政府からますます重視され、人々の関心を集めている。中国の水土流失は以下の特徴を持つ。

 中国の水土流失は分布範囲が広く、面積が大きい。第2回リモートセンシング調査によれば、中国の水土流失面積は356万km2に達し、国土全体の37%を占める。そのうち水の作用による浸食が165万km2、風の作用による浸食が191万km2で、26万km2は水食と風食が交錯している。長江、黄河、珠江、海河、松遼河など7大流域の上・中流地域に主に分布しており、長江と黄河の上・中流域が特に深刻である。

 中国の水土流失には様々なタイプがあり、水食、風食、凍結融解浸食、重力浸食(地滑り、土石流、洞穴浸食)等を含む。重力浸食は常に水食又は風食と共に発生する。また、中国の農牧交錯地帯は水食と風食が交錯しながら発生する水土流失地帯であり、両者の相互作用により、その浸食の激しさは単一の水食地域又は風食地域を上回る。

 土壌流失量が大きい。推算によれば、全国で年平均約50億tの土壌が流失し、そのうち長江流域は24億t、黄河流域が16億tである。黄河の河口から竜門に至る区間の7.86万km2は水土流失が最も深刻な地域で、土壌浸食係数は5,000t/km2・a以上となり、一部の地域では30,000余t/km2・aに達する。

 人口圧力と生存圧力及び伝統的な農業生産方式、例えば過度な森林伐採、急斜面での荒れ地開墾、草原の開墾・耕作、過度な重放牧等が植生の破壊、防風・砂地固定機能と貯水・土壌保全機能の低下をもたらし、水土流失が激化している。例えば、長江流域内の12の省では過去50年間に傾斜耕地面積が増え続け、林地面積が年々減少している。これらの傾斜耕地の多くは林地や草地を開墾して得られたものである。黄河、長江、淮河、珠江等の中・上流域には風砂地域が含まれるが、近年、草地はひどい過放牧が行われ、年々劣化し、その面積が減少している。

 深刻な水土流失は多くの生態・環境問題を引き起こすとともに、経済の発展と人の生産・生活に深い影響を及ぼしている。水土流失は地形にダメージを与え、土地資源が破壊され、農地は日増しに荒廃し、面積が徐々に減少している。例えば、黄土高原地域では細溝の形成、洗掘、拡張により、良田がデコボコの荒れ地に変わってしまった。中国東北部の黒土地帯では黄土が現れ始め、浸食溝が発達し、徐々に幅と深さを増している。水土流失のために大量の耕地が失われた。岩石の多い山間部、特に降雨量の多い南方地区では基岩が露出し、土地が岩石砂漠化している。傾斜耕地は土壌の肥沃度が低下し、土地がやせ細り、劣化している。水土流失はさらに水体汚染を引き起こした。推算によれば、全国で毎年流失するアンモニア、リン、カリウムの総量は1億t近くに達する。水土流失は草地の砂漠化、塩性化をもたらし、劣化した牧草地は全国の草原面積の約半分を占める。土地の劣化はしばしば砂塵を引き起こし、環境に重大な影響を与えている。

 水土流失は下流に深い影響を及ぼしており、大量の土砂が河川・湖沼・ダムに堆積し、水利施設の洪水調節・貯留能力が低下し、河道の洪水疎通能力が落ち、下流地域では洪水災害の脅威が増した。黄河の土砂流送能力は年平均約16億tで、そのうち約4億tが下流に堆積し、河床が毎年8~10cm上昇し、天井川が形成された。長江流域は水土流失が深刻で、毎年約3.5億tがダムや中小河川に堆積し、洪水の調節・貯留能力と流下能力を低下させ、豪雨流出時の集水過程が加速している。大まかな統計によれば、全国の大中小ダムに堆積した土砂は既に累計で200億t以上に達し、総貯水容量の10%以上を占める。大量の土砂の排出により、水資源の総合開発と有効利用が制約を受けている。水土流失が深刻な地域では、土砂の堆積による貯水容量への影響を軽減するため、「蓄清排渾」(清水を蓄え、泥水を排す」のダム稼働方式を採用するケースが多い。黄河下流では河床の上昇ペースを遅らせるため、土砂を海へ押し流すのに年平均200~300億m3の水を必要としている。

 水土流失は貧困の根源であり、生態と環境を悪化させる主な原因である。水土流失がもたらす土地生産力の低下で、人々はより多くの開墾を必要とし、これが深刻な水土流失を引き起こしており、貧しいほど開墾し、開墾するほど貧しくなるという悪循環を生んでいる。

 中国の代々の人は「水土を平治する」、「溝洫(こうきょく)で黄河を治める」、「治水は先ず源を治める」、「天下の人々に田を治めさせ、河を治める」という貴重な経験と理論を早くから生み出し、これが今日に受け継がれ、一層充実したものになった。中国の水土保持は基本的に水系流域を単位とし、大河川の整備と統一的に計画され、同時に実施されている。

2. 中国の土壌浸食と水土保持の研究

 半世紀余りこのかた、中国では土壌浸食と水土保持に関する研究・実用事業が絶えず前進し、国家級、省(市)級、地区・県級の水土保持科学技術研究システムが次第に構築された。各部門、各機関が水土保持の基礎研究と応用基礎研究及び利用技術の普及、モデル化、推進活動に従事している。人々が資源と環境を重視するのに伴い、水土流失はますます注目を浴びるホットな話題となり、水土保持に関心が集まっている。各関係大学と研究院では水土保持専攻の博士・修士課程院生、本科生と専科生及び職業技術の教育体系が徐々に築かれた。特にこの10年余りで水土保持の教育事業は急速な発展を遂げ、各レベルの研究・管理人材が大量に養成された。土壌浸食と水土保持の科学技術研究・教育体系が次第に確立され、完備しつつある。現在、全国には各級の水土保持科学研究院・研究所が200余り、技術普及・試験ステーションが600余りある。また、全国の20余りの大学・高等専門学校が水土保持学科を設け、土壌浸食と水土保持の科学・応用研究、人材育成を行っている。

 長年の努力の末、水土保持の理論体系、技術体系と規範が一応作り上げられた。半世紀余りに及ぶ土壌浸食整備の実践と技術面の探究を通じ、それぞれの地域、地理的環境、浸食タイプに適した土壌浸食防止の方法、モデル、技術的措置が確立された。中国の特色を持つ科学研究活動の道が開かれた。黄土高原の小流域における急斜面耕地の水土流失予測・予報モデル、ダムを築いて土砂を食い止め、耕地を作るためのSoil-retaining dam工法、乾燥、半乾燥地域における流出調節・制御技術と蓄積利用技術、傾斜耕地における水土保持耕作技術と食糧・牧草帯状浸食防止栽培技術等を広めた。また、幾つかの基幹設備を研究開発し、ハイテク技術が大いに普及・応用され、研究レベルが高まった。近年、中国科学院水利部水土保持研究所は法面流出土砂・流量オンラインリアルタイム自動測量システム、γ線水土流失自動モニター等を自主開発し、科学研究に応用して、わが国の水土保持研究レベルを高めた。リモートセンシング監視測定技術、情報管理技術及び生物化学技術の普及・応用が進み、作業の質と効率が向上した。水土保持科学技術は実践の中で重要な役割を発揮している。検定と確認検査に合格した科学技術成果は3,000余件あり、省・部級以上の科学技術賞を300件余り受賞した。

 土壌浸食と水土保持に関する科学研究と技術開発の普及・応用が各レベルの学術機関で進められている。

 中国科学院水利部水土保持研究所は土壌浸食と水土保持の専門研究機関である。その主な任務は黄土高原地域を重点とし、水土保持研究を中心に据え、黄土高原の生態環境改善、農業・林業・牧畜業の総合的発展及び黄河の治水に役立てることだ。同時に、中国のその他地方の水土流失が非常に深刻であることを考慮し、水土保持研究所は他地域の水土保持研究も引き受けている。

 黄土高原土壌浸食・乾燥地農業国家重点実験室は中国の土壌浸食・乾燥地農業分野における基礎研究及び応用基礎研究の重要な拠点であり、中国科学院水利部水土保持研究所に依拠して設立された国家重点実験室である。実験室の主な研究は土壌浸食過程及びその調節・制御、土壌浸食モデル及び予報、水土保持の新しい方法と技術である。実験室は水土保持研究所の4カ所の野外生態網試験ステーションを利用し、野外研究と実験観測を行っている。土壌浸食研究を進めるのに必要な屋内シミュレーション設備もある。例えば人工降雨シミュレーションホール、リモートセンシングシステム、GISシステム等である。実験室は関連分野の基礎研究と応用基礎研究を主に引き受けている。また、国際共同研究を幅広く繰り広げており、米国、オーストラリア、日本、カナダ、イスラエル、ドイツ、英国、オーストリア、韓国など20余カ国・地域の科学者と良好な協力関係を築いた。実験室は国内外の関連分野の科学研究者がここで共同研究を行うのを歓迎し、また、研究者が自ら課題を持ち込み、ここの機器設備を利用して科学研究を進めることも歓迎している。

 水利部中国水利水電科学研究院、水利部黄河水利委員会黄河水利科学研究院、水利部長江水利委員会長江水利科学研究院及び関係省の水利科学研究院が水土保持研究所を設立し、関連の基礎研究と応用基礎研究及び技術の開発・普及・応用に従事している。

 中国の科学関係者の長期にわたる水土流失理論研究と試験研究により、豊かな研究成果が得られ、貴重な科学データと実践経験が蓄積された。中国の土壌浸食分類システムが完成し、その分布と法則を基本的につかみ、土壌浸食のメカニズムと進行・変化の傾向についてかなり系統的な認識が得られ、関連の理論が打ち出された。工学技術、林業技術、農業技術を主体とした水土保持技術体系、行政、立法、監督/管理、法執行を主体とした管理体系が築かれ、水土保持の学問体系が徐々に整いつつある。

 水土保持科学技術者の数十年に及ぶたゆまぬ努力を通じ、様々な条件に適した水土流失防止の方法、モデル、技術的措置が探究された。例えば、段畑技術、Soil-retaining dam技術、生物道路浸食防止技術、植生回復技術、雨水利用技術、地滑り・土石流早期警報技術、都市建設水土流失予防等である。

 一連の国家技術規格の研究・公布・実施は、中国の水土保持の技術規格システムが整いつつあることを示す。

 土壌浸食と水土保持の科学研究の発展及び研究過程で得られた成果により、水土流失に対する認識が高まり、その整備モデルを科学的・合理的に構築し、関連政策を提起・実施するための基礎が定められた。

3. 水土保持の重大プロジェクトとその成果

(1)8つの整備区

 1982年の第4回全国水土保持対策会議で、水土流失重点整備区を設けることが決まった。国務院の承認を経て、無定河、三川河、皇甫川、甘粛省定西県、海河流域の永定河上流、遼河流域の柳河上流、長江流域の葛洲壩ダム区、江西省興国県という水土流失の深刻な8つの地域が重点整備区に指定された。第1期工事は1983年に始まり、1992年末に完了して国の確認検査に合格した。10年間で完成した水土流失総合整備面積は19,925km2となる。第2期工事は2段階に分けて進められた。第1段階が1993年~1997年、第2段階が1998年~2002年で、2002年に確認検査に合格した。実施範囲には永定河、湫水河、大凌河、柳河、無定河、皇甫川、贛江、定西が含まれ、陜西、甘粛、山西、内蒙古、江西、遼寧、河北、北京8省(自治区・直轄市)の56県(市・区・旗)に及んだ。2004年にスタートした第3期の整備は集中・広域、大規模な整備、水土保持の大型モデル区建設という構想に従い、42のプロジェクト区域の359カ所の小流域で計画的に実施され、陜西、甘粛、山西、内蒙古、江西、遼寧、河北、北京8省(自治区・直轄市)の42県(市・区・旗)に及んだ。

(2)長江整備工事

 長江流域は山岳・丘陵面積が広く、山が高く斜面が険しく、雨量が集中し、浸食されやすい岩層と土壌が広く分布し、人為的活動が活発で、水土流失が非常に深刻である。長江流域の水土流失の深刻さ、及び三峡ダム建設の必要に基づき、1987年7月、全国水土保持工作協調小組は長江上流を国の水土保持重点整備区とするよう提案した。1989年~2001年、金沙江下流及び華節地区、隴南(甘粛省南部)陜南(陜西省南部)地区、嘉陵江中・下流、三峡ダム地区の4カ所で長江上流水土流失重点防止工事が実施された。これは「長江整備工事」と呼ばれる。10年余りの間に、整備範囲は長江上流の雲南、貴州、四川、甘粛、陜西、重慶、湖北、湖南、江西、河南10省(直轄市)の194県を含むようになり、水土流失整備は行政区域と分類区域の枠を越え、新たな突破口が開かれた。

 2001~2005年、「長江整備工事」は大衆の生産・生活上の現実問題の解決を主要目標とし、小流域を単位とし、斜面流出の調節・制御を中心に据え、斜面水系工事に力を入れ、小型ダム整備、渓谷整備及び植生法面保護工、作業用通路設置等を進めた。また、メタンガス発生タンク、薪節約かまど等を普及させ、芝刈りによる植生の破壊を軽減した。

(3)世銀水土保持プロジェクト

 世界銀行の融資による黄土高原水土保持プロジェクト(世銀水土保持プロジェクト)は、中国の外資利用による水土流失整備プロジェクトであり、1994年10月3日に認可を得て実施された。

 プロジェクト区域は黄河中流の粗砂の多い地域であり、山西省、内蒙古自治区、陜西省、甘粛省を含み、7つの地区(市・盟)に及ぶ。この地域は水土流失が深刻であり、年間の土砂流出係数は最低でも5,638t/km2(内蒙古伊克昭盟)、最高は26,400t/km2(陜西省佳蘆河)となる。農民の生活が貧しい。

 人口増加、貧困、生産力低下がもたらす傾斜地の開墾・耕作はこの地域の水土流失の大きな原因となっている。水害、干害、砂嵐等の自然災害はこの百年来、増える傾向にある。これは過度な伐採、開墾、過放牧及び過度な採掘等と関係があり、開墾が特に大きなウエートを占めている。急斜面の開墾は人為的な水土流失を引き起こす大きな原因である。

(4)「退耕還林還草」実験プロジェクト

 1980年代中期から90年代初期にかけて、国連食糧計画(WFP)と中央政府の支援の下、寧夏・西吉県、貴州省西部及びその他の一部地方で「退耕還林還草」(耕地を森林や草原に戻すこと)の実験が進められ、幾つかの成果と経験を得た。国の経済発展と西部大開発戦略の実施に伴い、それに当時の食糧事情から、また、1998年に長江、嫩江、松花江流域で大洪水が発生したため、朱鎔基首相は1999年に西部地区を視察した際、「退耕還林還草」を再び政府の重要な議事日程に上らせた。

 1998年~1999年の十分な準備を経て、「退耕還林還草」の実験プロジェクトが2000年3月9日に正式にスタートした。このプロジェクトは長江上流(三峡ダム地区より上流の地域)及び黄河中・下流(小浪底ダム地区を境とする)の13省(自治区・直轄市)の174県に及び、6月には湖南、河北、吉林、黒竜江4省の14県でも始まった。

 「退耕還林還草」プロジェクトは25°以上の急斜面耕地及び水土流失が深刻なその他耕地で優先的に実施された。国は協力農家に食糧補助と現金補助を行い、種苗を提供した。補助期間は一般に5年~8年とした。

 2000年9月、国は実験状況のフィードバックに基づき、各政策・規定及び運営方式について整備と細分化を進め、このプロジェクトを効果的に導いた。

(5)北京・天津風砂発生源プロジェクト

 砂塵天気は中国北方地区で春季に比較的よく見られる災害性天気である。砂塵嵐は北方地区の生産・生活、社会・経済の発展及び生存環境に大きな影響を及ぼしている。1993年5月5日と1988年4月16日の強烈な砂塵嵐はこの百年間でまれに見るものであり、甚大な損失をもたらした。2000年3月~5月に、北京地区では浮遊塵が12回発生し、住民の生産・生活に大きな影響を与えた。2002年3月18日から21日にかけて発生した砂塵天気は中国北方の140万km2余りの地域を襲い、影響を受けた人口は1.3億に達する。

 北京・天津地区は中国の政治、経済、文化の中心である。環北京・天津地区の環境を改善し、砂塵嵐の襲撃を阻止することは重大な意義を持つ。

 環北京・天津地区の砂塵発生源は主に内蒙古自治区のフンサンダク砂地、ホルチン砂地、内蒙古北部の劣化草原及び山西、陜西両省境界周辺の農牧交錯(半乾燥)地帯に分布している。このため、北京・天津地区の防砂治砂プロジェクト建設は内蒙古北部乾燥平原砂漠化整備区、フンサンダク砂地整備区、農牧交錯地帯砂漠化土地整備区、燕山丘陵・山地水源保護区の4つのタイプに分けて進められた。

(6)黄河水土保持生態プロジェクト

 黄土高原は水土流失が世界で最も深刻な地域である。黄河の土砂流送量は年平均16億tに達し、その65%は黄河中流の粗砂が多い7.86万km2の地域から流入したものである。このプロジェクトは黄河への土砂流入を減らすために実施された、粗砂の多い地域を対象とする水土保持生態プロジェクトである。

 プロジェクト区域の面積は2.39万km2である。そのうち陜西、内蒙古両省(自治区)が境界を接する地域の皇甫川、孤山川、窟野河、禿尾河の流域面積は1.66万km2であり、ここは黄河の粗い土砂の主な発生源地域だ。残りは「十大孔兌」(10本の小さな支流を指す)の流域面積0.73万km2となる。

(7)東北黒土地帯の水土流失防止実験

 東北は大規模な土地の開墾を経て、中国の食糧生産基地となった。東北黒土地帯の食糧総生産量は全国の16.35%を占め、食糧の商品化率は55%に近い。東北黒土地帯の総面積は103万km2だが、水土流失面積は27.59万km2に達し、その26.79%を占める。黒土地帯は緩やかな傾斜が長く続き、土質が軟らかく、耐浸食能力が弱く、降雨の集中及び過度な開墾・耕作、過放牧、乱伐、みだりな芝刈り等の人間の活動により、深刻な水土流失が引き起こされた。

 2003年9月、東北黒土地帯の水土流失総合防止実験プロジェクトがスタートした。このプロジェクトは東北4省(自治区)の黒土地帯で水土流失面積1,804.17km2を整備するものであり、内蒙古、遼寧、吉林、黒竜江4省(自治区)の6地区(市)に及んだ。実施期間は2003年~2005年。

(8)農業発展水土保持プロジェクト

 国家農業総合開発水土保持プロジェクトは、国が最も早く実施した生態系整備プロジェクトの1つである。1989年に長江上流で実施され始め、プロジェクト区域は貴州、雲南、四川、陜西、甘粛、湖北6省に及んだ。1999年、農業総合開発水土保持プロジェクトは黄河中流の水土流失が深刻な地域まで拡大され、山西、陜西、甘粛、青海、寧夏の5つの黄河流域省(自治区)が新たに加わった。その後、プロジェクト区域は寧夏、陜西、山西、四川、重慶、江西、湖南の7省(自治区・直轄市)に縮小された。

 実施後、成功した技術路線と整備モデルが総括され、顕著な経済効果、生態効果、社会的効果を得た。

(9)珠江上流の南盤江と北盤江の石灰岩地域における水土保持総合整備実験

 珠江上流の南盤江と北盤江の石灰岩地域における水土保持総合整備実験工事は雲南省、貴州省、広西チワン族自治区の17県(市)で行われた。プロジェクト区域は雲貴高原から広西と広東の低山・丘陵・盆地へ漸移するカルスト地帯であり、土地の岩石砂漠化が深刻である。

 1998年に計画が完成。2003年6月、中国国際工程咨詢公司の評価に合格した。実験工事は小流域を単位とし、水を主軸に据え、斜面水系工事、水路整備工事、傾斜耕地改造を重点として、大規模な伐採禁止・造林を実施し、水土保持防護林、薪炭林、経済果樹林を適度に増やし、水土流失を効果的に抑え、土地の岩石砂漠化を食い止めた。実験工事期間は5年であった。

 実験工事の際に打ち出された「科学技術に依拠し、仕組みを刷新し、重点を際立たせ、質・規格・効率の高い精選モデル工事を行う」との要求に従い、入念に手配・実施し、工事は順調に進んだ。

 このプロジェクトでは石灰岩地域における水土流失総合防止のモデルと技術路線が総括され、実行可能な工事建設管理メカニズムを探究した。整備の効果が徐々に現れている。

(10)国債水土保持プロジェクト

 1998年以降、国は大河川の上・中流地域の水土流失整備を生態環境作りと河川整備の重要な任務とし、債券発行によって資金を調達し、水土保持の生態環境作りに充てた。そのため、このプロジェクトは「国債水土保持プロジェクト」と呼ばれる。プロジェクトは黄河、長江、海河、松遼、淮河、太湖、珠江7大流域の上・中流にある25省(自治区・直轄市)の700余県(市・区・旗)、6,000近くの小流域に及び、山西、陜西、内蒙古3省(自治区)の砒砂岩地帯における沙棘(Hippophae rhamnoides、グミの一種)生態工事も含む。面積7.94万km2。

 工事は長江上・中流及び黄河中・上流を重点とし、小流域を単位とし、集中・広域の方針に従って実施された。山・水・田・林・道を統一的に計画し、総合整備を行い、生態の自己修復能力を生かし、閉鎖・伐採禁止・造林に力を入れた。

 プロジェクトは投資の度合いが大きく、整備の進度が速く、生態効果、経済効果、社会的効果が著しく、水土保持の生態環境作りに参加しようという民間の意欲が引き出された。国債水土保持プロジェクトは生態環境悪化を効果的に食い止めることに加え、対象区域内の農村インフラを改善し、産業構造の調整を後押しし、大衆が貧困から脱して豊かになり、調和社会を築くための強固な基礎を築いた。


さくらサイエンスプランウェブサイト

さくらサイエンスプランウェブサイト

 

中国関連ニュース 関連リンク

オリジナルコンテンツ

柯隆が読み解く

2014/2/18更新
「中国の歴史問題」

富坂聰が斬る!

2013/12/27更新
「中国賃金事情」

和中清の日中論壇

2014/2/3更新
「失望」に潜む米国のメッセージと日本の「積み木崩し」

田中修の中国経済分析

2014/2/7 新コーナー開設
「中央経済工作会議のポイント」

服部健治の追跡!中国動向

2014/2/27 新コーナー開設 「安倍総理の靖国神社参拝に想う(上)」

川島真の歴史と現在

気鋭の研究者が日中関係を歴史から説き起こす。幅広い視点から新しい時代の関係を探る。

科学技術トピック

New

2014/3/5更新
「赤外線カメラと簡牘資料の日中共同研究」
工藤 元男

取材リポート

New

日中関連、科学技術関連のシンポジウム・講演等を取材し、新鮮なリポートをお伝えします。

中国の法律事情

New

2014/3/7更新
「百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末」朱根全

日中交流の過去・現在・未来

日中交流のこれまでの歩みとこれから

日中の教育最前線

日中の教育現場の今をレポート

中国国家重点大学一覧

 

中国関連書籍紹介

New

2014/3/12 書評追加掲載

文化の交差点

New

2014/3/18更新
「日本における中国古代絵画」朱新林

中国実感

日本人が実感した中国をレポート

印象日本

中国が日本に滞在して感じたことをレポート

CRCC研究会

過去の講演資料、講演レポート

CRCC中国研究サロン

過去の講演資料、講演レポート

最新イベント情報

アクセス数:31043468