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中国海洋生物資源の持続利用に関する研究

2009年9月29日

李新正

李新正:中国科学院海洋研究所研究員

1963年10月生まれ。
1991年南開大学動物学専攻、理学博士。
発表論文130以上、専門書3部、科学普及専門書1部。現在、中国甲殻類動物学会秘書長等をつとめる。

1. 前言

 現在人類は「人口激増、資源欠乏、環境悪化」という三大問題に直面している。陸地の資源は日に日に減少しており、地球表面積の71%を占める海洋に対する開発は、人類にとって、21世紀の社会発展と資源の持続可能な利用のための重要課題となっている。豊かな海洋資源には、人類社会が今後も発展を続けていくための可能性がある。海洋資源には、海水水力、金属・非金属鉱床、石油・天然ガス等の資源のほかに海洋生物がある。これは、現在そして将来、人類が期待できる最も重要で最も直接的な資源である。海洋生物を利用した食品は、人類のたんぱく質需要の大部分を満たし、また多様な海洋生物は、新薬の重要な原材料にもなる。海洋生物の多様性によって人々はさまざまな景観を楽しむことができ、また海洋植物の光合成と発光生物は、二酸化炭素を吸収して地球温暖化を緩和している。

 しかし、テクノロジーや国際貿易の発展に伴い、人類の影響力はすでに遠く遠洋にまで及んでいる。農業とは何の縁もない南極大陸のペンギンの体内にさえDDTが存在しているし、海岸線は流出油で汚染され、シロナガスクジラは絶滅の危機に瀕している。しかし生物種と生態系が最も被害を受けているのは、やはり人類の居住地域に最も近い海域、つまり海岸地帯と近海である。海洋の遺伝、生物種、生態系の多様性が失われることそのものが、地球全体にとっての危機である。人類はほとんどが陸地に居住しており、多様な海洋生物資源の喪失に対する人々の注意は、陸地にはるかに及ばない。

 陸地と比較すると、海洋生物の研究が始まったのは比較的遅く、説明されている海洋生物種も少ない。しかし海は生命のゆりかごだと言うように、海洋生物は陸地に比べて豊かで多彩である。動物界を例にとると、海には世界中に現存する32の動物門のうち31門が生息しており、そのうち14門は完全に海洋生息している(それに対して完全に陸生なのは1門のみ)。ほか5門のうち90%以上の種が、主に海洋に生息している。海洋の生命財産は生物種の数だけにとどまらない。地球上で観測される、生産力が最も大きい地域は北太平洋の海藻床である。サンゴ礁は、熱帯雨林と同じように生物種が多様なことで知られており、地球生物の遺伝子ライブラリである。最近の調査によれば、深海にも非常に多様な生物種が存在する可能性があり、海底の熱水泉口群が発見されてから30数年の間に、科と亜科が新たに20以上、族が50、新種が100ほど発見されている。入り組んだマングローブ林の海岸から、何も特徴がないように見える大洋の中心水域まで、海洋生態系の多様性は、少なくとも陸地生態系に引けはとらない。しかし、海洋生物の多様性に対する人類の理解は、非常に限られたものである。例えば、生命進化の過程でも重要な生物と考えられているシーラカンスは、1938年になってやっとインド洋にまだ生息していることが発見された。以前は化石として知られるだけであった。1977年には東太平洋で初めて熱水泉口が発見され、同時に熱水泉口にはこれまで人類がまったく知らなかった特殊な動物群系が存在しており、そこには複雑な生態系と独特な物質エネルギー循環システムが備わっていることも発見された。深海海底部にはまだ説明されていない生物種が100万以上存在すると、科学者たちは予想している。海を知ること、海洋生物の多様性と生物資源について詳しく研究することは、海洋の開発利用の過程で、人類にとって長期的で欠くことができない任務である。

2. 中国の海洋生物の多様性

2.1. 中国の海洋環境と生物多様性の一般特性

 中国海域は、黄海(渤海を含む)、東海、南海で、中国が管轄する海域は緯度にして38度(遼東湾先端から曾母暗沙まで)にわたり、約300万平方キロである。世界にある49の大海洋生態系のうち、中国海域には黄海大海洋生態系、東海大海洋生態系、南海大海洋生態系、黒潮流域大海洋生態系の4つがある。この4つの生態系は、水文、生物区系、生産力それぞれに特徴がある。中国の海岸線は全長約18000キロで、岩岸、砂岸、泥岸がある。干潟の面積は2.07万平方キロで、各岸にはそれぞれ独特の海岸生物群と生態系がある。中国海域の潮汐には、半日潮、1日潮、混合潮の3種類があり、福建沿海で潮位差は最大8メートル以上になるのに対し、西沙群島ではわずか0.8メートルである。潮間帯の生態系は潮汐と密接な関係があり、中潮帯(つまり本当の意味の潮間帯)では生物の種類が最も多く、数も最大である。水温は海洋生物種の性質を制約する最大要素の一つだが、2月には南北端で水温差が33℃になる。中国近海の海流は、主に黒潮とその分枝、現地で生成される沿岸流、モンスーン海流であり、そのほかに低塩を特徴とする河口流、低温と高栄養塩を特徴とする湧昇流がある。湧昇流の生態系は生産力が高く、漁場の所在地であることが多い。中国沿岸の1500本の河川が海に流れ込んでおり、大量の有機質と栄養塩を海に注ぎ、海洋生物の繁殖にとってよい条件となっている。河口は海水・淡水の入れ替わりと軟弱な底質を特徴とし、長江河口(崇明)や遼河河口等、北方の干潟ではアシが繁茂している。珠江河口、九龍江河口、南渡河河口等、南方や台湾の一部河口の干潟ではマングローブ林が発達している。河流河口の干潟は、多くの渡り鳥の生息地でもある。中国沿岸には6000個以上の島があり、島の効果によって島周辺の海域は生物種が最も豊かになっており、島の生物区系には非常に特色がある。旅順口の先にある蛇島がその好例である。

 広大な海域面積、複雑な地形、変化に富む多様な理化学的条件に恵まれている中国海域の生物は、非常に多様である。中国の海洋生物には、特有の門の種類が多い、生物種が淡水環境よりも多く陸地環境より少ない、北から南下するにつれて生物種の分布が増加する、暖水種が多く、ほかに広域分布種と温暖種、さらに少数の冷温種がある、といった特徴がある(劉瑞玉等、1986年。黄宗国、1994年a)。

 これまでに、中国の海洋生物類別のほとんどについては分類学的研究がなされ、これらの生物種について説明されている。しかし多くの単細胞生物、小型生物、微生物、採集や発見が難しい生物については、今後の研究が待たれる。サンゴ礁の生育環境、深海の生育環境、熱帯海域の生物種についても、調査と分類学研究がさらに必要である。

2.2. 中国の海洋生物群系と生物種資源

 中国はアジア太平洋地区でも生物種が最も豊富な国であり、海洋生物の生物種も非常に豊かである。すでに発見・説明がなされている海洋生物は、黄宗国(1994年b)の統計によれば約20,278種、劉瑞玉(2008年)は22629種と統計している。後者の統計で扱った門の種類数は前者より少ない。前者について後者と同分類で統計をとると、合計17511種になる。つまり中国海域では、黄宗国(1994年b)と劉瑞玉(2008年)がともに統計をとっている同じ門の種類の中で、14年間に5118種、29%増加したということになる。しかし、中国海洋生物の生物種はこの数字にとどまらない。調査能力の向上、調査設備の改善、海洋環境、特に深海・遠洋・特殊環境に対する認識、小型・微生物研究器具の更新や研究手段の進歩にともない、中国の海洋生物科学技術の担当者は、海洋生物種を常に記録しており、新たな海洋生物資源とその生物学上の特徴を発見している。

2.2.1. 海洋植物

 海洋植物については通常、大型藻類、単細胞藻類(微藻類)、高等海洋植物に分類して研究を行う。大型藻類には藍色植物門、紅色植物門、褐色植物門、緑藻植物門があり、単細胞藻類には珪藻植物門、炎色植物門、黄金色植物門がある。うち珪藻植物門は単細胞藻の中でも代表的な存在で、海中の単子葉植物である海藻や、熱帯・亜熱帯の浅瀬に特有の木本植物であるマングローブと同様に、高等植物である。統計によれば、中国でこれまでに把握されている大型藻類は約1200種、海草は13種、マングローブは約30種である。海草には重要な経済的価値がある。食用できる藻類には、紅色植物門のノリ、テングサ、褐色植物門のコンブ、ワカメ、藍色植物門のスピルリナ等があり、工業原料としてアガロース、カラギーナン、アルギン酸等を抽出することができる。紅色植物門のテングサ、オゴノリ、褐色植物門のヒジキ等、多くの種には抗癌性物質や、血管疾病・ヨウ素欠乏症に有効な活性物質が含まれており、海洋薬品開発のための広い可能性がある。施普瑞、PPS、ヨウ素錠剤等一部の薬品はすでに開発に成功している。単細胞藻類は、海洋浮遊植物のなかでも主要な存在であり、海の第一段階の生産力に最も貢献し、他の海洋生物に大量の食料を提供している。マングローブは広西、広東、台湾、福建、海南島に分布しており、海岸でさまざまな高さのマングローブ林を形成して、海岸や干潟を保護する役割を果たしている。また魚、エビ、カニ等が繁殖しやすい場所を作り、海岸に生物多様性の高い区域を形成している。

2.2.2. 海洋無脊椎生物

 海洋動物の門の種類は非常に多いが、無脊椎動物はさらに複雑多岐にわたる。中国では主な分類上すでに分類学と区系の研究が行われている。統計によれば、中国海洋でこれまでに記録されている原生動物は約2700種、海綿動物190種、腔腸動物約1000種、多毛類環形動物1000種あまり、軟体動物3900種あまり、甲殻類動物4000種あまり、棘皮動物580種あまり、苔虫動物470種あまりである。

 これらは多くが人類の生活と深いかかわりを持っている。有孔虫、放散虫等の原生動物は、地層年代を判別するための指標生物であり、腔腸動物である大型のヒドラは漁場の目印になる。造礁サンゴはサンゴ礁を形成する主要な海洋生物であり、中国熱帯海洋にあるサンゴ礁は、各種海洋生物が成長繁殖するための豊かな環境を生み出している。そこには多種多様の生物種が生息し、海の中でも生物種が最も多様な区域になっている。中国南海海域の水深50-100メートルにある暗礁には、水草に形が似たシロガヤが広範囲にわたって分布しており、「擬似草原」と呼ばれて、これも海洋生物の多様性が高い区域になっている。苔虫動物もサンゴ礁を形成する主要な海洋生物の一つである。

 多毛類環形動物、軟体動物、節足動物、棘皮動物は、海底生物の主要群系である。多毛類動物は隠れ住む性質があり、体が柔らかく脆いため、発見・採集が困難であり、実際の種類と数量は私たちの想像をはるかに超えると考えられる。海洋食物連鎖の上できわめて重要な存在である。甲殻類動物は水層、海底、深淵、浅海、潮間帯、泥砂底、岩礁、サンゴ礁、マングローブ林、海草床等の各種海洋環境に生息し、海洋生態系の中でも非常に重要な地位を占めている。底生生物の重要群系であるだけでなく、遊泳生物と浮遊生物の主な群系でもある。種類も多く、「海の昆虫」とも呼ばれる。居住環境が複雑多様なため、まだ知られていない種類も大量にある。甲殻類動物は海洋でも種類が最も多い生物群系であると見られている。軟体動物門は、海洋で現在知られているうち種類が最も多く、経済価値が最大の無脊椎動物門の一つであり、海洋生態系、特に底生生物の中で重要な群系であるとともに、生物量の主要な貢献者である。棘皮動物は底生生物の中でもよく見られる群系で、海洋生態系、特に底生生物の中で重要な地位を占める。

 無脊椎動物の多くは重要な経済種である。例えば甲殻類動物のエビ、カニ、軟体動物のホタテガイ、アワビ、棘皮動物のナマコ、ウニ等は重要な海産物である。小型のものは魚やエビにとって天然の飼料となり、キチン質は工業用や医薬原料として使われる。一部は、薬品、工芸品、飼料等としての価値をもつ。

近年、海洋活性物質の研究開発が進んでおり、特に海綿動物、腔腸動物であるサンゴ、イソギンチャク、棘皮動物であるヒトデ、尾索動物であるタコ等の動物活性物質に対する研究・選別は非常に活発である。海洋無脊椎動物は、将来重要な薬品原材料となると考えられる。

 一部の無脊椎動物は人類の生活に危害を及ぼす。例えば、ある種の原生動物は過度に繁殖すると赤潮を形成したり、魚やエビなど大型動物の体に寄生・付着して病害を招く。甲殻類動物のフジツボ、苔虫動物、軟体動物の二枚貝類等は、危害の大きい汚染生物であり、軟体動物のフナクイムシは、漁船や海岸の木製施設を壊すことがある。ヒトデは肉食性の棘皮動物で、サンゴ、貝類、藻類等に大きな危害を与える。

 海洋無脊椎動物にはほかに、動吻動物門、線形動物門、鈎頭動物門、有鬚動物門、被嚢動物門、星口動物門、ユムシ動物門、鰓曳動物門、内肛動物門、箒虫動物門、腕足動物門、紐形動物門、扁形動物門、毛顎動物門、半索動物門、尾索動物門等の群系があり、これらは種類が少なかったり分布地域が狭いために軽視されやすいが、中国の海域には基本的に全種類分布している。このように多種多様な動物門類によって、海洋生物には高い多様性が現れ、海洋生態系の安定性が保たれ、人類に重要な海洋資源が提供されている。

2.2.3. 海洋脊椎動物

 海洋の脊椎動物は主に魚類である。統計によれば、中国でこれまでに知られている海洋魚類は3000種を超え、世界の海洋魚類の約4分の1を占めている。海洋魚類は最も重要な海洋生物で、種類が多く数量も大きい海洋の支配者であり、海洋の食物連鎖の中では頂点にある。そればかりか、海洋漁業全体を左右する地位にあり、重要な海洋生物資源である。薬用することができる有毒種もある。

 魚類のほかに、海洋脊椎動物には爬虫類(ウミガメ等)、鳥類(カモメ、ペンギン等)、哺乳類(クジラ、アザラシ、イルカ等)があり、いずれも生態系面、経済面で一定の価値をもつ。

 このほか海洋には、従属栄養菌類や炭化水素分解菌等の細菌、各種微生物がある。これらは数量が非常に大きい場合もあり、海洋生態系の中でも欠かせない部分を構成している。

3. 海洋生物の多様性に関する研究と保護

 海水環境は、人類が海洋に進出する際の天然の障壁となっている。海洋についての研究と開発には困難が伴い、海洋生物の多様性に関する研究と保護も複雑である(MAB中国委員会、1988年)。しかし海洋生態系は、陸地の廃棄物排出の最終地点であり、大部分の廃棄物は最終的にここに集まる。地球の気候変化と人類の活動の活発化にともなって、海に対する人類の活動の影響はますます重大になっている。海洋生物の生存環境・生存条件はますます厳しくなり、海洋生物の多様化はより一層の脅威にさらされている。河口湾、塩沼、マングローブ林、海草床等、都市部に近い生態系には、ほぼ世界的範囲で深刻な退化が起きている。船隻はバラストタンクの中に海洋生物の卵や幼虫を大量につけているため、混み合う港では外来種は珍しいものではない。多い場合は半数を超える生物種が外部から侵入したもので、これらの生物種は土着種に甚大な衝撃を与え、ひどい場合には絶滅させてしまう。農業用水系を受け入れている多くの港湾は、農薬汚染や農林業による土砂沖積のつまりに見舞われている。世界的に増加しているサンゴの白化は、おそらくサンゴ礁とその他の海洋生態系に大規模な生態変化が現れる前兆であろう。地球の気候変化と人類の活動が、遠く離れた地域にまで影響を与えている。

 海洋の全体的バランスと海洋資源の持続生産・機能を維持するため、海洋生態系の組成生物種を研究・保護するだけでなく、生態系全体に注目し、海洋生物の多様性に関する現状と変化の規則性を研究する必要がある。海洋生物の多様性保護については、この30年でようやく重視されるようになってきた。以前そして現在も、地域によっては海洋は人々の生活に関わる要素ではないため、それが受けている危害について注意が払われてこなかった。海に捨てられた廃棄物は簡単に消えてしまうかに見えて、ほとんど警戒されていなかった。また人類にはこれまで、海を守る目的で管理するという伝統がなかったが、陸地の保護区は設けられてからすでに1世紀以上たっている。そして大部分の海洋区域は法定の領海外にあり、たとえ「排他的経済水域」であってもすべて共有の財産である。なぜなら海は、各国がその開発を競い合っている一種の「開放的資源」だからである。

 しかし、海洋資源は取り尽くせない、使い終わらないものではない。巨大に見えて実は限りある海洋生物資源に対して必要な保護をせず、統括的で合理的な開発利用ができないのなら、陸地ですでに発生している森林面積の大規模な減少、深刻さを増す砂漠化、害虫の猖獗といった現象が海でも発生するだろう。人類が海洋生物資源を永遠に利用し続けることは不可能である。実際、海洋生物資源がすでに取り返しのつかない破壊を受けている海域もある。開発と保護、発展と環境のメリットとデメリットの全体的なバランスをとることが、生物資源の持続利用の鍵である。安定的な生態系があってこそ生物資源を安定的に提供できる。通常、ある生物群系に含まれる生物種が豊富であればあるほど、生物どうしの関係が理にかなったものになる。すなわち生物の多様性レベルが高いほど、そのシステムは安定的になる。

 海洋生態のバランスに影響を与える要素は多い。近年は、特に汚染によって引き起こされる水質悪化で生物の生息環境が損なわれ、また乱獲によって経済種の個体群が減少、消滅している。

中国では近年来、海洋環境保護に関する研究や政策法規の制定を強化している。しかし多くの場面でまだ法規制定の遅れや不備が見られ、適用できる法規がない、あるいは法規があっても期限が切れているという事態が発生している。一部の地区では海水汚染がひどくなる一方で、生物種の消滅や個体群数量の低下が起きており、その生態系にある生物の多様性が薄れ、生物種どうしの相互依頼関係が破壊されている。それによって生態系自体が非常に敏感になり、バランスが弱まって崩壊しやすくなるとともに資源の著しい衰退が起こる。海藻等浮遊生物が爆発的に繁殖して赤潮を起こすと、大量の海藻が海面を覆って海水を空気から遮るため、海水が激しい酸欠状態になって多くの海洋生物が死滅する。1998年の3月から4月にかけて、中国珠江河口地区では激しい赤潮が相次いで発生した。これはギムノディニウムの爆発的繁殖によって起きたもので、漁業が1000万元に上る損失を受けた。

 乱獲も海洋生物資源の減少を招く根本原因の一つである。中国では漁船の船舶数とトン数が急速に増加し、漁具も進歩して漁獲能力が大幅に上がっている。このことは、中国経済の発展と人々の生活レベルの向上に貢献しているものの、過度な漁獲も避けられない。中国の四大海産物として挙げられる大黄魚(大キグチ)と小黄魚(小キグチ)は、1950年代から1970年代初めにかけては、資源量と漁獲量がまだ大きく、市場への供給も豊かであった。小黄魚の1957年の漁獲量は16.3万トン、大黄魚の1974年の漁獲量も19.7万トンに達している。しかし1970年代中期に漁船のトン数が大幅に増え、大・小黄魚に対して略奪的な捕獲が行われたため、資源の根本に致命的な破壊と打撃が加わり、必要な資源補充が間に合わなくなった。1982年からその捕獲量は激減し、中国近海の大・小黄魚資源は徐々に枯渇して、魚群はほぼなくなっている。過度な捕獲によって、市場に出回る多くの海産物も次第に小型化、幼体化している。1990年代末には黄東海のサワラが大量に市場に出回ったが、これはまだ成長しきっていないサワラの幼魚が捕獲されたもので、とても痛ましかった。渤海莱州湾の漁業資源群構成と生物多様性の調査によると、1998年の漁獲量平均は、1959年の3.3%、1982年の7.3%しかなかった。生物多様性は1959年から1982年にかけてわずかに上昇したものの、1982年以降は下降の一途をたどっている(金顕仕と鄧景耀、2000年)。海南島鹿回頭湾の潮間帯と潮下帯は、中国の代表的なミドリイシサンゴ帯で、たいへん美しい景観を誇っていた。ミドリイシサンゴは「石花」とも称され工芸品の材料になり、また焼いて石灰にし建材にもされるため、現地では大量に採掘された。鹿回頭湾のミドリイシサンゴは壊滅的な採掘に遭い、1980年代末には湾内には生きたサンゴはほとんどなく、死滅したサンゴの石が残るだけで、もともとそこに生息していた他の生物もそれに伴って消滅した。これに対して国は、三亜に国家レベルのサンゴ礁自然保護区を作り、まだ採掘されずに残っている地域を保護することとしたが、すでに破壊された地点の回復は全く不可能である。南沙群島のサンゴ礁も厳しい脅威にさらされている(中国科学院南沙総合科学調査隊、1994年)。

 海洋養殖業は中国で長い歴史があり、中国国民経済にとって重要な貢献をしてきた。1980年代以降、中国では、藻類や貝類の干潟養殖、網箱養殖、いかだ養殖など、近海養殖業の発展に力を注いできた。1996年の中国の海水養殖生産量は437万トンで、海洋水産品の年間総量の28%を占めた。しかし、大規模な近海養殖と養殖業の急速すぎる発展は、海産物の品質低下を招いている。養殖対象の近親繁殖や高密度の養殖が行き過ぎると、体質の劣化や病気に対する抵抗力の低下が起こる。えさのやりすぎも海域汚染を招く。また養殖品種が海へ流入し、天然品種と交配することで親となる天然固体の体質が弱くなっている。そのほかに、導入した養殖品種を逃がしてしまうことで現地の生態系はさらに弱まり、それによってすでに世界各地で起きている重大な養殖病害が、中国でも発生している。1993年中国では、養殖タイショウエビに広範囲で深刻な爆発的ウィルス病が発生し、養殖池内の半成体のエビが数日間ですべて死滅するという事態が発生した。その後、国と地方政府が大量の資金を何度も投入して、この病害に対する予防治療に取り組んでいるが、現在まで根本的な解決には至っていない。タイショウエビ養殖業はそれ以来立ち直れず、南米産バナメイを取り入れて主要なエビ養殖品種とせざるを得なくなった。1997年中国ではホタテガイ養殖もまた重大な被害を受けた。商品として成長しきる直前の貝が突然発病し、大量に死滅してほとんど出荷できなかった。専門家の分析によれば、これも体質低下によりウィルス感染した伝染病のためだという。

 このほかに、干拓や堤防の建造によって引き起こされる生育環境の喪失、バラスト水の持ち込みや人工的な導入による外来種の侵入も、中国海洋生物の多様性が損われる原因である。

 海洋生物の多様性は、人類に大量の資源を提供しているが、この資源の持続利用はまた人類自身が与える脅威にさらされている。幸運なことに生物資源は再生でき、持続利用が可能である。海洋生物資源を科学的に利用することは、海洋生物の多様性に関わる者の職責でもある。人類が海洋生物資源の開発利用を今後も続けるのなら、まず海洋生物資源の構成を理解し、それに基づいて保護と合理的開発の方策を制定し、厳しい法律法規を整備し、海を汚染する全活動を抑止し、過度の捕獲を禁止し、海水養殖にも新たな発想と技術を取り入れて、伝染病の流行や爆発的な病気の発生を防ぐ必要がある。

 海洋経済を積極的に発展させ、海洋資源を合理的に開発利用していく必要性は、政府部門と研究者にとって徐々に共通認識となっている。1990年代以降中国では、中国海域の各海区について休漁期を設け、休漁期間中は、各種船隻によるその海域での捕獲作業を禁止している。その後、各海域の休漁期はしだいに延長され、範囲も拡大して、繁殖期間中の海洋生物の幼体を保護するために役立っている。それが合理的な捕獲方法であり、海という、再生可能な人類の食物資源を、持続可能なかたちで利用していくための重要な対策である。一部の経済魚類では、休漁期制度の実施後に資源量が大幅に増大し、顕著な増産効果が得られた。海上養殖については、養殖区の合理的な区分、生理・病害の研究、品質向上等によって被害を減らすよう、専門家も提案している。そして海洋汚染の防止は、海洋生物資源を私たちが持続的に利用できるかどうかにとって、さらに重要なポイントであり、中国の人々、特に政府担当部門の目の前に置かれた、長期にわたる重い任務である。政府部門による法整備、法執行は、ある海区の海洋環境が有効な保護を受けるための鍵であり(李新正等、2001年)、国の自然保護区や多くの地方海洋自然保護区を設置することは、生物資源を有効に保護するためにふさわしい措置で、すでに顕著な成果を得ている(王斌、1999年)。中国では生物多様性を守るためにすでに多くの措置がとられているが、これを有効なものにしていくため、今後も徹底・強化が必要である。

 皆が協力し合い、海に関する知識を啓蒙し、関係法規を円滑・有効に制定・実施し、海洋環境保護と海洋科学技術に対する社会全体の意識を高めていくことで、人類が海と海洋生物の真の友人となり、海洋資源を合理的かつ科学的に開発利用すれば、人類は豊富な海洋生物資源を利用し続けることができるだろう。海がもう一度青くなれば、未来はもっと良くなるはずである。

主要参考文献:

  1. MBA中国委員会、1988年 人類は地球の一員 北京:北京出版社
  2. 黄宗国(編)、1994年b 中国海洋生物の種類と分布 北京:海洋出版社
  3. 黄宗国、1994年a 中国海域生物種の一般的特徴 生物の多様性2(2):63-67
  4. 金顕仕 鄧景耀、2000年 莱州湾漁業資源群の構成と生物多様性の変化 生物の多様性8(1):65-72
  5. 李新正 于海燕 王永強 帥連梅 張宝琳 劉瑞玉、2001年 膠州湾大型底生生物の生物種多様性の現状 生物の多様性,9(1):80-84
  6. 劉瑞玉(編)、2008年 中国海洋生物目録 北京:科学出版社
  7. 劉瑞玉 崔玉珩、徐鳳山、唐質燦、1986年 黄海・東海底生生物の生態特徴 海洋科学誌 27:153-173
  8. 王斌、1999年 中国海洋生物の多様性保護と管理対策 生物の多様性 7(4):347-350
  9. 中国科学院南沙総合科学調査隊 1994年 南沙群島とその近隣海区における海洋生物の多様性に関する研究 北京:海洋出版社

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