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日本の一般廃棄物の処理・リサイクルの動向

2009年9月17日

占部武生

占部武生:
龍谷大学理工学部環境ソリューション工学科教授、博士(工学)

1968年、横浜国立大学工学部金属工学科卒業。1988年より東京都清掃研究所主任研究員、2002年より東京都環境科学研究所 応用研究部長、2004年より現職。専門は廃棄物工学。金 属学会技術開発賞、日本機械学会環境工学部門技術業績賞、環境大臣賞(廃棄物・浄化槽研究開発部門)、廃棄物学会功績賞を受賞。

1. はじめに

 2000年循環型社会形成推進基本法が制定されるとともに、これに前後して容器包装リサイクル法、家電リサイクル法等の個別リサイクル法が制定された。基本法では、まず再使用、再生利用(リサイクル)、熱 回収といった循環的な利用を図り、循環的な利用が行われないものは適正に処分することが規定されている。最近では、循環型社会と低炭素社会の形成の統合化を図る施策が採られている。

 一般廃棄物の2006年度の年間総排出量は5200万トンで、1人1日当たりの排出量は1115gである。焼却比率は78%と高く、資源化率、埋立量については数値目標を立てその実現に努めている。こ こでは、こうした社会状況下での一般廃棄物の処理・リサイクルの動向について述べる。 

2. 処理とリサイクルの動向

1) ごみ質

 容器包装リサイクル法の施行にともない紙やプラスチック容器の分別収集を行う自治体が増え、ごみ質への影響が出ている。この傾向がさらに進み厨芥の比率が増加すれば、発熱量がかなり低下することになり、厨 芥の別途処理を検討する必要が生ずることも考えられる。ところで、1980年代と現在を比べた時、ごみ質の特徴的な変化の例として、塩ビ比率の低下、Cd、Hg等の重金属含有量の低下をあげることができる。こ れらは法規制されているわけではない。代替製品の開発・普及等によるものと考えられる。

2) 焼却・溶融

 焼却炉では現在でもストーカ式が最も多い。流動床式焼却炉は減少したが、それに代わって溶融炉が増加している。焼却にともなうダイオキシン類の削減策として、燃焼室の高温化、燃 焼ガスの攪拌の促進等が行われ、従来に比べて完全燃焼化が進み、ダイオキシン類の低減、未燃ガスの減少が実現している。燃焼室の高温化にともない、ストーカの水冷化、蒸発管壁へのパネル設置等が行われ、現 在のところ比較的順調に稼働している。溶融処理で生成されるスラグの生産量は85万トン(2008年見通し)に達している。スラグの日本工業規格が作られているが、スラグの用途の拡大が課題である。焼 却灰の資源化としては、溶融スラグのほかにセメント原料化、エコセメント化があり、これらについては数は少ないが実機が稼働している。

 焼却処理においてHClの高率除去を要する場合洗煙処理を行うケースが多いが、最近では吹き込み用消石灰の微粉化やNa系吹き込み材による安価な乾式除去で20~30ppmに除去できている。また、確 実なNOx除去に触媒脱硝方式が多く採用されているが、装置入口での排ガス再加熱に要するエネルギ削減のため、触媒使用温度の低温化に向けた開発が行われている。

3) 発電、熱利用 

 2006年の発電付きごみ焼却施設数は291、総発電能力は158万kWである。環境省は温室効果ガス対策の切り札として、2012年の総発電能力の目標を250万KWとしている。これにともない、高 効率発電を促進するため交付金比率を通常の1/3から1/2とする処理量別発電効率(例えば601~800t/日で21%、1801 t/日以上で25%)を定めている。

 1990年代初頭までは過熱蒸気の圧力は3MPa、温度は300℃が主流であったが、最近では発電能力向上のため4MPa、400℃が広く採用されるようになり、さ らに高温高圧化が図られているケースもある。400℃での過熱器材はSUS310レベルのものが使用され、5年以上使用されているケースがいくつかある。焼却物としてRDFを用い、過 熱器材にSUS310レベルのものを用い430℃で稼働している循環式流動床炉で、過熱器材が激しい腐食を受けたケースがある。ポイラの高温高圧化に当たっては、溶融塩腐食等に対して各種配慮が必要になる。こ のように発電による廃熱利用は進んできたが、欧州でみられるような近隣地域への熱利用はほとんど進んでいない。温室効果ガス対策からも温水、蒸気等の利用促進が課題である。また、焼 却施設の低温廃熱を利用する技術として、蓄熱材の液体、固体間の変態を利用して20km圏内にコンテナ車で熱供給が行える方式が研究され、実用化しようとしている。

4) 材料問題

 利用温度の高温化にともない、ストーカ式焼却炉においてはストーカ、蒸発管、過熱器管が、外熱式熱分解ガス炉では空気予熱器が、溶融炉では耐火物の損傷が大きな問題になっている。このように、従 来に増して材料問題の比率が高くなっており、ネックになっている材料問題が解決すればコスト低減や効率アップ、あるいは新たな処理法につながる場合もある。溶融炉における耐火物材や高温空気予熱器材については、精 力的に研究・開発が行われているが、まだ対応できる材料は開発されていない。

5) プラスチック

 容器包装リサイクル法により自治体に回収されたプラスチックは、パレット、板材等のマテリアルリサイクルのほかに、高炉還元剤としての利用やコークス炉化学原料化、合 成ガス化等のケミカルリサイクルとして実用化している。この場合、前処理として塩ビの除去が行われる。

 一般廃棄物からごみ固形燃料(RDF)を製造し、連続式焼却炉で発電することを国は推奨してきたが、三重県のRDF発電施設のRDF貯蔵用サイロで爆発事故が起こった。そこでは、現 在RDFの保管管理を徹底して稼働している。この事故を契機にしてRDF施設の新たな建設は進んでいないが、産業廃棄物系の紙、プラスチックを主成分とする固形燃料(RPF)の製造施設は増加している。

6) 安全対策

 廃棄物処理作業時の事故発生率は他に比べてかなり高い。これまでも火災、爆発等の事故はあったが、前述したRDFサイロで7人の死傷者が出た爆発事故は、廃 棄物処理においてその危険性を予知し十分な管理をすることの必要性を強く認識させた。

7) 炭化、バイオガス化、亜臨界水処理

 新しい処理方式としてバイオガス化、炭化、亜臨界水利用式等がある。炭化炉は外熱式ロータリキルン式で処理量が40t/日・炉程度のものが稼働している。廃棄物からの炭化物は、灰分が多いこと、C l含有量が高く、燃料等への利用にあたっては、洗浄により塩素や灰分の低減化が必要な場合がある。ここでも生成物である炭化物の用途開発が課題である。厨芥、紙 等の乾式バイオガス化は実証段階から実用化に入りつつあるが、残さの利用/処理、ごみからのバイオガス化可能物の効率的選別等が課題となっている。亜臨界水領域でごみを処理する方式は10トン強/日・炉 のものが稼働しており、実用化に入りつつある。

8) 埋立

 日本では、大都市で管理型海面埋立がされているケースがあるが、準好気性の管理型山間埋立がされている場合が多い。焼却灰などを対象としたクローズドシステム型処分場も研究開発され、す でにいくつかが稼働している。浸出水の処理では、難分解性有機物、アンモニアの早期分解が従来からの課題として残っており、それらの研究がされている。覆 土におけるメタン酸化菌によるメタン削減効果等についても研究されている。メタンガスを利用した発電施設が東京都で稼働しているが、焼却灰の埋立が主流になった現在、今後この方式の増加は見込みにくい。

9) 家電リサイクル

 家電リサイクル法が施行され、現在6品目が回収・再商品化されている。それぞれについてリサイクル率が定められているが、リサイクル率をさらにあげるため、選別技術の開発・研究がされている。廃 家電などの基盤、携帯電話等には貴重なレアメタルや貴金属等が使用されている。資源の枯渇等から最近それらの価格が高騰している。そのため、従来から言われてきた都市鉱山の利用が緊急の課題になっており、廃 家電からのレアメタルや貴金属の回収技術が開発・研究されている。

3. おわりに

 循環型社会、低炭素社会形成に向けた制度ができたことなどにより、製鉄、非鉄精錬、セメント等の日本の基幹産業が自らの施設を利用して資源循環に積極的に係わるようになった。施 設の若干の改造等で資源循環が可能になり、副産物も既存のルートを使用できるメリットがある。資源循環をになう自治体や新たな企業等の存在も重要であるが、基 幹産業を含めた既存産業の資源循環への係わりの強化が今後一層重要になると思われる。

 これまで焼却、埋立等の海外技術を導入したあとなんとか使いこなすまでには人、時間を要することを経験してきた。こうした日本の過去の経験は途上国に参考になると思われる。ところで、日 本の廃棄物の処理技術は焼却から埋立、リサイクルに至るまで多面的にカバーしており、一部のリサイクルを除いて世界的レベルに達している。今後は、循 環資源の技術力を生かして広く世界に貢献していくことが課題と思われる。


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