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衛星リモートセンシング観測技術の利用

2009年10月16日

名前

張良培(Zhang liangpei):
武漢大学測量製図リモートセンシング情報工学国家重点実験室、「長江学者」特別招聘教授

 1963年4月生まれ。1998年、中国武漢大学写真測量・リモートセンシング専攻工学博士。国際刊行物に170編余りの研究論文を発表、中国教育部自然科学1等賞、中国測量製図科学技術進歩1等賞、武漢大学優秀教師など受賞。

 人類は環境保護の重要性を既に深く認識している。地球環境を守るため、科学者は地球の物質的世界、生物及びその役割の変化について観測・分析を行う必要がある。伝統的な情報取得法は現場又は現地での野外収集だが、時間を浪費し、出費がかさみ、しかも精度が高くない。このため、1960年代以降、多くの情報取得作業が高空からの遠隔収集に変わり、衛星リモートセンシングは徐々に人々に認められ、地球観測の重要な手段となったのである。

1. リモートセンシングとは何か

 リモートセンシング、即ち遠隔感知は直接接触をせずに、各種のセンサを用い、遠く離れた対象物の電磁波情報について収集・処理を行い、対象物又は自然現象を感知・探査する技術である。図1はリモートセンシングによる情報取得の流れ図である。

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図1 リモートセンシングによる情報取得の流れ図

 リモートセンシングは地表の各地物情報をどう区別し、監視測定するのであろうか。周知のように、いかなる物体も反射と吸収のスペクトル特性を持つ。図2が示しているのは3種類の異なる地物のスペクトル分布曲線である。この図からわかるように、スペクトル特性は物体毎に異なる。リモートセンシング技術とはこの特徴を利用し、それぞれの物体の性質を識別するものである。

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図2 各対象物のスペクトル分布曲線図

2. リモートセンシング技術の利点

 現場又は現地での伝統的なデータ収集方法に比べ、リモートセンシング技術は主に次の4つの点で優れている。

  1. 探査する範囲が広い。1枚のランドサット(Landsat)画像がカバーする地上範囲は3万km2余りに達し、これは中国海南島の面積にほぼ相当する。
  2. データ取得の速度が速く、周期が短い。実地測量調査は数年、十数年さらには数十年を要するが、ランドサットはわずか16日で地球を1回カバーすることができ、MODISは1~2日しか要しない。
  3. 地上の条件に制約されることが少ない。高山、氷河、砂漠等の条件に制約されずにすむ。
  4. 取得する手段が多く、その情報量が大きい。人々は探査目標の違いに応じ、可視光カメラ、赤外線カメラ、可視赤外走査放射計(VISSR)、合成開口レーダー、実開口レーダー等のセンサを衛星に搭載し、必要な対象物の情報を得ることができる。

3. リモートセンシングの応用

 リモートセンシング技術のお陰で、人々は地球を連続的にカバーし、繰り返し観測できる画像情報を通じ、それぞれの地物が持つスペクトル特性の違いに応じ、地表系内部の各地物の分布と変遷を素早く正確に分析できるようになった。リモートセンシングによる対地観測データの取得がシステム化されるのに伴い、この技術は生態環境、林業、鉱産物、都市変遷等の研究分野及び関連産業において時空分布・変化の情報を取得するための重要な手段となり、経済建設、社会の発展、国の安全保障、市民生活などに広く応用されている。

 中国武漢大学によるリモートセンシング技術の幾つかの典型的な利用例を以下に示す。

(1) 都市ヒートアイランドのリモートセンシングによる監視

 地球温暖化と都市化プロセスの加速に伴い、都市の地表が次々と自然の地表に取って代わり、顕著な熱効果を生んだ。都市のヒートアイランド現象は市民の生産活動と生活に危害をもたらし、悪化する一方の都市の熱環境は今や社会・経済の持続可能な発展を妨げる大きな要因の1つとなっている。リモートセンシング技術を使って都市のヒートアイランド効果を分析すれば、その分布の構造と特徴を正確につかみ、ヒートアイランド効果の分布・強度と時空変化の状況を理解し、都市システムの計画的配置に科学的な根拠を提供することができる。

 図3は武漢市のメーン市街地における1988年・2002年夏季の地表温度分布図であり、米ランドサットの熱赤外データを利用した。温度分布図からわかるように、都市部はヒートアイランド効果が顕著であり、且つその範囲は中心地域と一致し、境目がはっきりとしている。2002年はヒートアイランドの面積が1988年に比べて著しく拡大し、その強度も増している。

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図3 武漢市のメーン市街地における1988年・2002年夏季の地表温度分布図

(2) 植生の純一次生産力(NPP)のリモートセンシングによる監視

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図4 日本・紀伊半島の2001年の
年平均NPP分布図

 植生の純一次生産力(NPP)は緑色植物が単位時間内に蓄積した単位面積当たりの有機物の量を指す。地表の炭素循環で大きなウエートを占めるNPPはその原動力となるだけでなく、生態系の炭素固定を決定し、生態プロセスを調節する主要ファクターでもあり、地球の変動及び炭素収支の中で重要な役割を演じている。リモートセンシング情報を利用すれば、広範囲にわたる植生のNPP値及びその分布状況を効果的かつ的確に推定し、環境と生態系の保護、林業など多くの分野に情報サービスを提供することできる。

 図4はリモートセンシング手段を利用して作成した日本・紀伊半島の2001年の年平均NPP分布図である。検証の結果が示すように、リモートセンシングによるNPPの推定は精度が高く、特に自然・野生の植生におけるNPPの推定精度は98.5%に達し、実測結果とほぼ一致する。

(3) 鉱物情報のリモートセンシングによる抽出

 鉱物調査は識別が難しく、発見が難しいという特徴を持つ。自然資源が次第に枯渇しつつある状況の下、地質資源を素早く確実に手に入れるため、空間情報分析、図形・画像処理、デジタル地質図作製等に対する地質関係者の要求は非常に差し迫ったものとなっている。伝統的な地表面調査、物理探鉱等の技術は絶えず進歩しているが、コストが非常にかさむ。現在、国と企業は技術者に対し、目的を持ち、的を絞って投資を行い、比較的小さな投資で最大のリターンを得るよう求めている。交通の便が悪く、人跡まれで、自然条件が悪く、地質研究の水準が高くない地域で鉱物の情報識別と探査を行う場合、リモートセンシング技術は経済的で簡便な良い方法を提供することになる。リモートセンシング画像の各波長域における鉱物のスペクトル特徴とスペクトル差異を利用すれば、岩石と鉱物の情報を効果的に識別することができる。ハイパースペクトル画像は一般のマルチスペクトル光学画像に比べ細部が鮮明であり、特殊な診断的特徴をよりよく探ることができる。図5はAVIRISのハイパースペクトル画像を利用して探査した米ネバダ地域の鉱物資源分布図である。

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図5 米ネバダ(Nevada)地域の鉱物調査図

(4) 人口調査

 人口情報はその国の経済・社会の発展と資源の利用に直接影響するものであり、人口の分布を正しく認識することは人口資質、資源と環境の総合管理能力を高める上で重大な意義を持つ。統計部門による伝統的な人口データ取得方法は大量の人力、物資と時間を費やす必要があり、特に広範囲の人口情報に対する統計は大きな困難を伴う。

 リモートセンシング技術の発展は人口情報取得のための新たな手段を提供することになる。リモートセンシング画像を利用すれば、住宅地の情報を直接抽出し、人口密度を推定することができる。例えば、米軍事気象衛星Defense Meteorological Satellite Program(DMSP)に搭載されているOperational Linescan System(OLS)センサは、夜間の都市部の灯りを検知し、さらには小規模な住宅地、車の流れ等から発せられる弱い光を捉えることができる。このデータを利用すれば、大きなスケールで素早く人口密度を推定し、都市計画の意思決定に参考となる根拠を提供できる。図6は抽出した2000年の湖北省各県・市のDMSP/OLS夜間光画像データ及びこのデータを使ってシミュレーションした人口密度分布図である。

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図6 2000年の湖北省各県・市のDMSP/OLS夜間光画像データ及び人口密度シミュレーション図

 現在、リモートセンシング技術は多くのプラットフォーム、多くの時相により、動的に素早く、高い分解能で観測データを提供できる新たな段階に入っており、その応用分野は絶えず広がりを見せ、効果と効率が著しく向上した。中国政府は既に遠くない将来、自前の高分解能対地観測システムを完成させることを決めており、その時には各種の運用衛星が100基を超えることになろう。リモートセンシング技術の急速な発展に伴い、人類は立体化・多段階・多方位・全天候型対地観測の新たな時代に入るであろうと予見できる。


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