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中国における商標戦略の制定と実施

2009年11月19日

李順徳

李順徳(Li Shun De):中国社会科学院法学研究所研究員、
教授、博士課程学生指導教員
中国社会科学院知的財産権センター副主任

 1948年4月生まれ。現在、中国知的財産権研究会副理事長、中国知的財産権研究会特許委員会委員、中国世界貿易機関研究会学術顧問、中国科学技術法学会常務理事、国家自然科学基金委員会管理科学部専門家審議組メンバー、中国法学会知的財産権法研究会副会長、中国法学会世界貿易機関法研究会副会長、国家知識産権局「知的財産権資産評価促進プロジェクト」特別招待専門家、中国電子図書館プロジェクト建設法律法規指導委員会委員、中国2010年上海世界博覧会知的財産権諮問専門家、国家中医薬法制顧問、上海市知的財産権局専門家諮問委員会委員、北京市工商行政管理学会理事、北京市重点産業知的財産権連盟専門家、北京市発明特許賞審議委員会委員、北京中関村科技園区主任専門家顧問、江蘇省知的財産権研究センター専門家委員会委員、世界知的所有権機関(WIPO)世界学院遠隔教育課程指導教官、中国知的財産権育成訓練センター遠隔教育課程指導教官、国家工商行政管理局育成訓練センター兼職教授に就任。1985年に中国初の特許代理人となり、特許代理と知的財産権の研究に従事。これまでに『世界特許制度発展動向の研究』、『中国知的財産保護制度発展と完備』、『WTOと中国の知的財産法律制度の研究』、『WTO加盟後の知的財産保護研究』、『電信およびネットワークの知的財産に関する問題研究』、『中国地理標識保護二体制評価研究』、『第二回WTO交渉に関連する知的財産問題』、『国際社会に関する知的財産保護の政策方向性』、『知的財産保護と濫用防止』などの重点課題を担当、ならびに『国家の知的財産戦略』の多項目にわたる特別テーマ研究に参加。主な著作には『コンピュータソフトウェアと集積回路の知的財産保護』、『知的財産価値評価における法律問題』(合著)、『中華人民共和国著作権法改正閲読指導』(合著)、『知的財産法の基礎』、『知的財産の概論』、『WTOのTRIPS協議解析』、『知的財産の公共教程』、『知的財産保護と管理実務』、『専門技術者知的財産保護知識テキスト』など。中国特許法、商標法、著作権法、対外貿易法、コンピュータソフトウェア保護条例、集積回路の回路配置設計保護条例、情報ネットワーク伝達権保護条例などの法律、法規の制定と改正作業に参加。

1.中国における知的財産権法律制度中の商標制度

 近代中国における知的財産権法律制度は改革、開放の産物であり、社会主義市場経済の設立と発展の必然的な結果である。

 商標は知的財産権を構成する重要な部分である。商標制度は知的財産権の法律制度を構成する重要な部分である。近代中国における知的財産権の法律制度で最初に登場したのは『商標法』であり、1982年に登場した『商標法』は近代中国における知的財産権の法律制度設立の序幕を開くものとなった。

 1978年に国家工商局は同制度を、1979年11月には商標登録制度をそれぞれ復活させた。1963年に公布された『商標管理条例』と『商標管理条例施行細則』に基づき商標登録・管理作業を展開してきたが、改革開放路線を進む中国経済体制の改革の成熟と企業の自主権が拡大するのにともない、この『商標管理条例』と『商標管理条例施行細則』は明らかに経済発展の要求に適応できなくなったため、新たな商標法の制定し商標権を保護することが全体的な傾向となっていった。

 1982年8月23日の第五回全国人民代表大会常務委員会第24次会議審議で『中華人民共和国商標法』が通過し、1983年3月1日から施行された。さらに、1983年3月10日に国務院は『商標法実施細則』を公表し、同日付で効力が発生し、近代中国における商標法律制度が正式に確立された。

(1)近代中国における商標法律制度の構成

1. 商標法律の法規および行政法規

  1. 『中国人民共和国商標法』(1982年8月23日通過、1983年3月1日施行、1993年2月22日改正、1993年7月1日施行、2001年10月27日第二次改正、2001年12月1日施行、現在、第三次改正作業中)
  2. 『中国人民共和国商標法実施細則』(1983年3月10日公布、施行、1988年1月3日改訂、1993年7月15日第二次改訂、1995年4月23日第三次改訂、2002年 8月3 日第四次改訂、『商標法実施条例』に改名、2002年9月15日から施行)
  3. 『特殊マーク管理条例』(1996年7月13日公表、施行)
  4. 『中華人民共和国刑法』(1997年3月14日改訂、1997年10月1日施行)第3章 第7節 知的財産権侵害罪(第213-215、220条)
  5. 『オリンピックマーク保護条例』(2002年1月30日通過、2月4日公布、2002年4月1日施行)
  6. 『国際博覧会マーク保護条例』(2004年10月13日通過、2004年10月20日公布、2004年12月1日から施行)
  7. 『商標審査標準』(1987年3月制定、1994年の改正後に『商標審査準則』に変更、2005年12月の再改訂後に対外公開)
  8. 『商標審議規則』(1995年11月2日元国家工商行政管理局第37号令公布、2002年9月17日国家工商行政管理総局令第3号第一次改訂、2005年9月26日国家工商行政管理総局令第20号第二次改訂、2005年10月26日から施行)
  9. 『商標審理標準』(2005年12月制定、公布)
  10. 『著名商標の認定と保護規定』(2003年4月17日发布、2003年6月1日から施行、1996年8月14日国家工商行政管理局公布した『著名商標の認定と管理暫定規定』を同時に廃止)
  11. 『著名商標認定作業細則』(2009年4月21日国家工商行政管理局工商標字〔2009〕81号公表、施行)
  12. 『団体商標と証明商標の登録と管理弁法』(2003年6月1日から施行、1994年12月30日公表の『団体商標と証明商標の登録と管理弁法』を同時に廃止)
  13. 『サービスマーク保護に関する若干問題の意見』(1999年3月30日)

2. 司法解釈

  1. 『最高人民法院による人民法院が登録商標権に対し財産保全を実施することに関する解釈』(2000年11月22日通過、2001年1月2日公布、2001年1月21日から施行)
  2. 『最高人民法院による商標審理事件に関連する管轄と法律の適用範囲問題に関する解釈』(2001年12月25日通過、2002年1月9日公布、2002年1月21日から施行)
  3. 『最高人民法院による登録商標独占権の侵害行為の訴前停止と証拠保全の法律適用問題に関する解釈』(2001年12月25日通過、2002年1月9日公布、2002年1月22日から施行)
  4. 『最高人民法院による渉外民商事事件の訴訟管轄に関する若干問題の規定』(2001年12月25日通過、2002年2月25日公布、2002年3月1日から施行)
  5. 『最高人民法院による商標審理民事紛争事件の法律適用に関する若干問題の解釈』(2002年10月12日、2002年10月12日公布、2002年10月16日から施行)
  6. 『最高人民検察院、公安部による経済犯罪事件の起訴標準に関する規定』(2001年4月18日公表、実施)(第61条-第69条)
  7. 『最高人民法院、最高人民検察院による知的財産権侵害刑事事件手続きの具体的な法律応用に関する若干問題の解釈』(2004年11月2日最高人民法院審判委員会第1331次会議、2004年11月11日最高人民検察院第十回検察委員会第28次会議通過、2004年12月8日公布、2004年12月22日から施行)
  8. 『最高人民法院、最高人民検察院による知的財産権侵害刑事事件手続きの具体的な法律応用に関する若干問題の解釈(二)』(2007年4月4日最高人民法院、最高人民検察院通過、2007年4月5日公布、施行)
  9. 『最高人民法院による登録商標、企業名称と優先権との衝突に関する若干問題に規定』(2008年2月18日最高人民法院通過、公布、2008年3月1日から施行)
  10. 『最高人民法院による著名商標保護に関わる民事紛争事件の法律適用に関する若干問題の解釈』(2009年4月22日最高人民法院が通過、4月23日公布、2009年5月1日から施行)

3. 中国が参加する関連国際公約

 中国は『世界知的所有権機関』(1980年6月3日)、『工業所有権の保護に関するパリ条約』(1985年3月19日)、『標章の国際登録に関するマドリッド協定』(1989年10月4日)、『標章の登録のための商品およびサービスの国際分類に関するニース協定』(1994年8月9日)、『標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書』(1995年12月1日)、『知的所有権の貿易関連の側面に関する協定』(2001年12月11日)など商標に関する主要な国際組織と条約に相次いで加入しており、中国における商標保護の国際化レベルは日に日に向上している。

4. 中国と外国が締結した二国間協議

 中国は米国、EU、日本、ロシアなど数多くの国家と知的財産権問題に関する二国間協定を相次いで締結している。

(2)近代中国における商標法律制度の発展

 近代中国における商標法律制度は、すでに約30年におよぶ確立と発展を経ており、基本的に完備されている。

 1978年、中華人民共和国工商行政管理総局が作業再開した後、直ちに全国の商標に対し整理・登録を実施し、1979年11月に全国統一の商標登録を回復した。1980年の商標登録申請数はわずか2.6万件で、1982年前の中国が申請承認した商標登録総数は約8万件であった。2007年末までに、商標登録申請総数はすでに569.33万件に達しており、登録商標の累計総数は303.77万件に達した。これは1979年登録商標数の93.5倍であり、その内、外国(地区)における中国の登録商標数は53.80万件に達した。

 2000年から2007年までの8年間で、国家工商総局商標局が受理した商標登録申請は約404万件であり、これは1980年から1999年までの20年間の商標登録申請総数の2.5倍である。この8年間で計229.8万件の商標登録申請の審査し、188万件を登録承認した。これは、1999年末以前における中国の登録商標承認の累計総数の1.6倍である。

 2008年、中国は計69.8万件の商標登録申請を受理し、75万件の商標登録申請を審査した。商標登録申請の年審査数が初めて同年の申請数を超過した。計40.3万件の登録商標が承認され、2002年から2008年まで、中国の商標申請登録数は7年連続で世界一となった。2008年末までに、中国の登録商標の累計総数は344.1万件に達し、その内、外国企業が中国で登録した商標は60万件に達した。中国で商標登録する国と地域はすでに約130カ国となっており、登録商標は累計約53万件で、約100倍の成長となった。2009年6月30日までに、中国の商標登録申請の累計総数はすでに677万件となっており、有効な登録商標総数は240万件で、すべて世界一を占めている。

 中国の改革開放の成熟と投資環境の改善にともない、中国における外国(地区)企業による商標登録申請数も猛烈な勢いで増加した。1982年の申請数はわずか1565件であったが、1992年には8367件に達した。(マドリッド協定を通し提出した保護領域拡大は含まれない)。1989年10月4日、中国が正式に『マドリッド協定』加盟国になった後、マドリッド協定からきたその他加盟国の商標を持つすべての人が保護領域拡大申請手続きを始めた。1990年にはマドリッド協定による中国における商標保護領域拡大申請が2048件となり、1992年では2591件に達した。

 2008年、世界はマドリッド協定加盟国に対し378,894件の新たな指定を通知し、(国際登録中の指定あるいは後期指定)、2007年と比べ2.3%増加した。中国は四年連続で最も多く指定された国となり、17,829件が指定され、前年比4.9%増加し、新たに加えられた指定総数の4.7%を占め、2007年に新たに加えられた指定と比べ6.9%多いものとなり、累計はすでに約13万件となった。その次はロシアで、計16,768件(8.5%)、米国(15,715件、7.5%)、スイス(14,907件、2.6%)、EU(14,502件、13.8%)日本(12,748件、3.7%)であった。

 2008年、世界の国際商標登録であるマドリッドシステムの申請数は42075件に達し、増加率は5.3%であった。その内、ドイツ、フランスと米国の申請数が上位三位に並び、中国企業が提出した国際登録申請はすでに四年連続でマドリッド協定加盟国第八位を占め、発展途上国の中で一位を占めている。2008年の国際商標申請数で上位を占める企業のうち、中国企業は初めて十位以内に入った。この組織が受理した国際商標登録申請のうち、ドイツが最も多く、6214件の申請を提出し、その総数の14.8%を占めた。その次はフランスで、4218件を提出し、その総数の10%を占めた。米国は第三位で、3684件あり、その総数の8.8%を占めた。欧州共同体商標意匠庁(OHIM)は第四位で、3,600件の国際申請があり、6.8%増加した。スイスは第五位に入り、2,885件の国際申請があり、8.6%増加した。イタリアは第六位に後退し、2,763件の国際申請があり、3.7%増加した。中国は1585件の申請を提出し、第八位を占めた。EU加盟国が提出した国際申請は計27,242件であった。

 統計によると、中国では商標の行政保護分野では、商行政管理機関が商標事件の90%以上を処理している。1993年から2007年までに、全国各級の工商行政管理機関は計56.88万件の各種商標法違反事件を調査処分し、その内、調査処分を受けた商標権侵害類似事件は36.56万件で、罰金は27.46億人民元となり、1755人が司法機関に移送され刑事責任を追究された。

 2008年に全国各級の工商行政管理機関は計56634万件の各種商標法違反事件を調査処分し、前年と比べ6316件増え、12.55%増加した。その内、商標権侵害・偽造事件は47045件、一般違法事件は9589件、国内事件は45492件であり、前年と比べ5494件増え、13.74%増加した。渉外事件は11142件、前年と比べ822件増え、7.97%増加した。各地で調査処分を受けた渉外商標権侵害・偽造事件は10944件であり、前年と比べ796件増え、7.84%増加した、渉外商標事件の98.22%を占め、渉外商標の一般違法事件は198件で、前年と比べ26件増え、前年と比べ15.12%増加した、渉外商標事件の1.78%を占め、前年と比べ0.11%増加した。事件の罰金・没収金額は4.67億人民元となり、前年と比べ11.92%増加した。移送司法機関に移送処理された商標犯罪嫌疑事件は137件、犯罪容疑者は145人となり、没収・削除された違法商標マークは計1963万件、没收・廃棄された商標権侵害商品は2287万件であった。

 中国で1980年代中期から次々と商標、特許、著作権などの民事事件審判が始まり、1985から2008年9月末までに、全国地方法院は知的財産権民事一審事件を135475件受理し124851件結審した。その内、特許民事事件31005件、商標民事事件19985件、著作権民事事件42072件、技術契約事件23755件、不正競争民事事件8727件、その他知的財産権民事事件9931件を受理した。2001年から2007年までに、全国地方法院は知的財産民事一審事件を77463件受理、74200件結審し、年平均でそれぞれ22.60%と22.92%増加した。1985年から2008年9月末までに、全国地方法院は知的財産権行政一審事件を4249件受理、3847件結審した。その内、特許行政一審事件2749件、商標行政一審事件1407件、著作権行政一審事件93件を受理した。1980年の刑法施行後に人民法院はそれに基づきすぐに登録商標に対して刑事司法の保護を与え、1997年の刑法改訂後に各種知的財産権に対し全面的な刑事司法の保護を与えた。

 2001年から2008年までに、全国地方法院は知的財産権民事一審事件を141968件受理、135899件結審し、年平均でそれぞれ25.61%と25.75%増加した。2002年から2008年までに、全国地方法院は知的財産権行政一審事件を4546件受理、4416件結審し、年平均でそれぞれ25.26%と29.28%増加した。1998年から2008年までに、全国地方法院は知的財産権刑事一審事件5271件受理、5231件結審し、年平均でそれぞれ22.59%と22.77%増加した。

 2009年7月末までに、全国で指定を受け管轄権を持つ中級法院は、特許事件71カ所、植物新品種事件38カ所、集積回路設計図設計事件43カ所に達しており、一部の知的財産権民事事件の審理許可を受けた基層法院は84カ所に達している。多くの地方法院は裁判所により統一受理された知的財産権民事、行政と刑事事件を試験的な実務作業を実施した。2008年10月までに、全国の地方法院で独立設置された知的財産権裁判所は298カ所、特別設置された知的財産権合議法廷は84カ所であり、知的財産権審判に従事する裁判官は計2126人となった。

2.中国における知的財産権戦略の重要な構成部分である商標戦略。

 中国における商標戦略は中国の知的財産権戦略の重要な構成部分であり、中国における商標戦略の研究は中国の知的財産権戦略全体の理解と研究と切り離すことはできない。

 中国における知的財産権戦略の制定と実施は経済のグローバル化といった大きな背景のもと、中国のWTO加盟後に更なる発展を求めるための重大な取り組みである。

 最も早く知的財産権を国家戦略レベルに押し上げたのは米国であり、米国のカーター大統領は1979年に「国家の競争力と企業家精神を向上させるような独自の政策を打ち出す」政策を提起し、初めて知的財産権戦略を国家戦略レベルに押し上げた。1980年に米国国会は『バイドール法』(「大学、中小企業の特許プログラム法案」とも呼ばれる。公法96-517、米国法第35篇第18章「連邦政府支援で発明されたものの特許権」、米国特許法第2章第18節第200条-第212条)を通過させ、中小企業と非営利機関が連邦政府支援プロジェクトを十分に利用し新しいものを創造するよう奨励し、優れた効果と利益を得た。 1988年、米国は通商法の改正を通し、知的財産権と国際貿易を合わせた「スーパー301条」を制定し、知的財産権の保護を大幅に強化することで、WTO協定の一つである『知的所有権の貿易関連の側面に関する協定』(TRIPS協定)の制定を通過させ、この方法を国内法から国際公約に拡大し、世界への普及に力を尽くした。

 2002年3月20日に日本は最初の「知的財産権戦略会議」を開催し、「知的財産権立国」を提起し、知的財産戦略委員会を設立した。2002年7月3日、日本は五回目の「知的財産権戦略会議」において「知的財産権戦略大綱」を通過させ、「知的財産権立国」の戦略スローガンを提起した。また、2002年11月27日に日本国会は『知的財産基本法』を通過させ、2003年3月1日から効力が発生した。2003年3月1日に日本政府内閣は知的財産戦略本部を設立した。毎年定期的に知的財産推進計画を提出している。2004年6月11日、日本国会は『知的財産権高等法院設置法』を通過させ、2005年4月1日から、日本では『知的財産権高等裁判所設置法』の実施が始まった。

 2004年1月30日、欧州委員会は欧州議会と欧州連合理事会に『知的財産権保護強化指令』提案を提出し、さらに厳格な措置とプログラムを採用し、知的財産権の保護を強化するよう提案した。2004年11月10日、欧州委員会は知的財産権を保護強化する戦略を通過させた。

 上述のような先進国の取り組みは、中国に大きな啓発を与え、中国における国家的な知的財産権戦略を推進・促進したといっても過言でない。

 2000年から、国家知識産権局は知的財産権戦略問題を検討し始め、2002年に特許戦略推進プロジェクトが始まった。2002年に国家知識産権局は知的財産権戦略の制定準備を始め、2004年初めに初歩的な枠組みを提出した。国家知識産権局は2004年全国特許業務会議において「知的財産権戦略の真摯な研究と積極的な実施」部署を設定した。国家知的財産権保護業務チームは2004年5月に成立された。8月30日に国家知識産権局は国務院に『国家知的財産権戦略の制定と実施に関する意見』を提出した。続いて温家宝総理が国家知識産権局の報告に指示を与えた。2004年9月に国家知識産権局は30以上の国務院の部・委員会・弁公室・局と意見を交わし、国家知的財産権戦略業務の組織的枠組みを制定した。

 2005年1月8日に国家知的財産権戦略制定業務指導グループが国務院により正式に承認され成立した。呉儀副総理がグループリーダーとなり、指導グループを28の部門で構成され、事務所は国家知識産権局に設けられた。2005年6月30日に呉儀副総理は国家知的財産権戦略制定業務指導グループの第一回会議が召集開催し、国家知的財産権戦略の制定業務が始まった。同年8月8日、国家知的財産権戦略制定業務指導グループは『国家知的財産権戦略制定業務方案』、『国家知的財産権戦略網要大綱』などの書類審査を通過させ、戦略制定業務を全面的に展開した。

 国家知的財産権戦略には網要と20テーマがあり、国家知識産権局が率先し網要を制定した。国家工商行政管理局が率先し責任を負う「商標戦略研究」は国家知的財産権戦略の20テーマの一つである。テーマは1.立法、法律執行などを含む法制整備研究、2.人材育成、宣伝普及、戦略目標、産業化および政策支援研究などを含むマクロ経済政策の研究、3.特許、商標、版権、商業秘密など各種知的財産権戦略研究を含む知的財産権主要分類の研究、4.仲介サービスなどの知的財産権重要管理プログラムの研究、5.IT、薬品などの重点産業戦略の研究など五つに大きく分類される。

 2007年2月に国家知的財産権戦略の20テーマが承認された。2008年4月に国務院は『国家知的財産権戦略網要』(以下『網要』と略称)を原則的に通過させた。2008年6月5日に国務院が『網要』を公布した。これは国家知的財産権戦略の制定が完了し、実施段階に突入したことを示すものとなった。

 『網要』は国家知的財産権戦略における20テーマを取り上げまとめたものである。序文、基本理念と戦略目標、戦略重点、特殊任務、戦略措置の五つの部分に分かれ、計65条となっており、それらを「一つの方針、二段階の目標、四項目の原則、五つの重点、七項目の任務、九項目の措置」と総括できる。

 「一つの方針」とは「国家知的財産権戦略の基本理念」である。『網要』では国家知的財産権戦略の基本理念は創造、効果的な運用、法的な保護、科学的な管理の奨励を方針とし、知的財産権制度の完備に力を注ぎ、良好な知的財産権の法治環境、市場環境、文化環境を積極的に作り上げ、中国知的財産権の創造、運用、保護、管理能力を大幅に向上させ、革新的国家の建設と小康社会(ややゆとりのある社会)の建設を強力に支援することが示されている。

 「二段階の目標」とは「国家知的財産権戦略の戦略目標」を二段階に分けている。『網要』では、最初の五年の目標は、自主知的財産権のレベルを大きく向上させ、知的財産権の運用效果を増強し、知的財産権保護の状况を改善し、社会全体の知的財産権意識を向上させることである。次に2020年までに中国を知的財産権の創造、運用、保護、管理レベルの高い国家とし、知的財産権の法治環境をさらに完備し、市場を主体とする創造、運用、保護、管理の知的財産権能力を増強し、知的財産権意識を人々の心に浸透させ、自主知的財産権のレベルと保有量が革新的国家の建設を効果的に支援できるようにし、知的財産権制度を経済発展、文化の繁栄、社会建設の促進に反映させることである。

 「四項目の原則」とは「国家知的財産権戦略の基本原則の実施」である。『網要』では、知的財産権の創造、運用、保護、管理能力を大きく向上させ、中国の自主革新能力の強化に役立て革新的国家を建設する。また、それを社会主義市場経済体制の完備に役立て、市場秩序を正し、誠実と信用の社会を建設する。そして、それを中国企業市場の競争力増強と国家の競争力の向上に役立てる。さらに、対外開放の拡大に役立てて共存共栄を実現させる。知的財産権戦略を国家の重要戦略とし、知的財産権業務を的確に強化しなければならない。

 「五つの重点」とは「国家知的財産権戦略の五つの重点」である。『網要』では、

 一つ目は知的財産権制度の完備で、知的財産権の法律執行と管理体制を確立と知的財産権の法律法規をさらに完備することで、知的財産権の経済、文化、社会政策における指導を強化する。

 二つ目に知的財産権の創造と運用を促進し、財政、金融、投資、政府購入政策と産業、エネルギー、環境保護政策を運用し、市場が主体である創造と知的財産権の運用を導き、支持することで、企業が知的財産権の創造と運用の主体となるよう推進する。

 三つ目に知的財産権の保護を強化し、司法処罰をさらに強化する。権利保護コストを削減し、権利侵害の代価を高め、侵害行為を効果的に食い止める。

 四つ目に知的財産権の濫用を防止し、関連する法律法規を制定する。知的財産権の境界線を合理的に定め、公正な競争の市場秩序と民衆の合法的な権利と利益を擁護する。

 五つ目に知的財産権の宣伝を強化し、社会全体の知的財産権意識を高める。知識を尊重し、革新を尊重し、法を誠実に守るという知的財産権の文化を育てる。

 「七項目の任務」とは「国家知的財産権戦略の七項目の特殊任務」である。『網要』では、これには特許、商標、版権、商業秘密、植物新品種、特定領域の知的財産権、国防知的財産権など7項目の特殊任務が含まれる。

 「九項目の措置」とは「国家知的財産権戦略の九項目の戦略措置」である。『網要』では、これには知的財産権の創出能力の向上、知的財産権の転化運用の奨励、知的財産権法制建設の加速、知的財産権の法律執行レベルの向上、知的財産権の行政管理の強化、知的財産権仲介サービスの成長、知的財産権の人材育成の強化、知的財産権の文化建設の推進、知的財産権の対外交流提携の拡大など9項目の戦略措置が含まれる。

 『網要』の中では商標戦略の内容に触れており、主に「特別任務」の「商標」部分(第21-24条) 「(二)商標」に集中している。

 (21) 商標権者と消費者の合法的な権利と利益を的確に保護する。法律執行能力の建設を強化し、偽造など侵害行為を徹底的に攻撃して公正な競争の市場秩序を擁護する。

 (22) 企業の商標戦略を支持し、経済活動において自主的商標を使用させる。企業に商標内容を豊富にするよう導き、商標の付加価値を増して商標の知名度を高め、著名商標を育成する。国際商標登録を行なうよう企業を奨励し、商標の権利と利益を擁護して国際競争に参加する。

 (23) 商標の農業産業化における作用を発揮する。市場を主体として商標を登録、使用するよう積極的に促進し、農産物の質の向上を促進して食品の安全を保証し、農産物の付加価値を高めて市場競争力を増す。

 (24) 商標管理を強化する。商標審査の效率を高め、審査周期を短くして審査の質を保証する。市場の規律を尊重し、著名商標、著名商品、ブランド製品、優秀ブランドの認定などの問題を的確に解決する。

 『網要』で直接言及している商標(あるいはブランド)の内容にはさらに以下の点がある。

 「国際的著名ブランドを育成する。」「著名ブランドと核心的な知的財産権を持ち、知的財産権制度の運用に熟練した優良な企業を形成する。」「違法複製・偽造などの侵害行為を減少させ、権利保護のコストを著しくダウンする。」(第7条)

 「特許法、商標法、著作権法などの知的財産権の専門法律および関連法規を改訂する。」(第8条)

 「企業の著名ブランド設立を支持する。」(第40条)

 「特許と商標権の帰属確定、授権手順を改革し、特許の無効審判と商標審議機構を準司法機関へ変更する問題を研究する。」(第46条)

 「権利侵害の繰り返し、集団性の権利侵害および大規模な偽造、違法複製などの行為に対する計画的、重点的な知的財産権保護の特殊項目を展開する。」(第47条)

 「高品質な特許、商標、版権、集積回路設計図設計、植物新品種、地理標識などの知的財産権の基礎情報データベースを建設し、中国の検索方法と習慣に適合する検索システムの開発を加速する。」((第52条))

 『網要』の多くの条項は知的財産権全体に焦点を合わせており、当然ながら商標にも適用しなければならない。『網要』は全体的に内容が関連付けされており、特殊な場合として商標の内容にも直接触れているため、中国商標戦略の内容を容易に理解できる。

3.中国における責任重大な商標戦略の実施と、その遠い道のり

 2008年6月5日に国務院は『国家知的財産権戦略網要』を公布した。『網要』の公布は、中国国家知的財産権戦略の制定がすでに完成し、実現に向かっていることを示している。国家知的財産権戦略の実現は中国知的財産権の法律環境に深く大きな影響を及ぼすことになる。

 2008年11月29日に胡錦涛総書記は十七回中央政治局第九次集団学習会において、「人類社会発展の歴史と中国の成長は、いずれも大量資源の浪費、生態環境破壊による粗放な成長を長く続けることはできないことを我々に告げている。現在の国際金融危機が中国経済成長に与える影響が日増しに深まる中、成長の方向を転換させず、経済メカニズムを調整して成長手段を絞っていく。」 「中国の特色である自主革新の道を今後もたどり、科学教育興国戦略、人材強国戦略、知的財産権戦略の実現に力を注ぎ、企業を主体として市場を導く産学研が連携した技術革新システムの設立を加速する。創造の精神、革新の精神、創業の精神を社会全体に大きく発揚し、自主革新能力を増強して革新型国家の建設を促進する」ことを指し示した。

 2009年3月5日に国務院の温家宝総理は政府作業報告の中で、2009年の主要任務である「成長方法の変換を促進し、経済メカニズムの戦略調整の促進に力を注ぐ」点について、科学教育興国戦略、人材強国戦略、知的財産権戦略を今後も引き続き実現してゆくことを提起した。国家革新システム建設を今後も促進し、基礎科学と最先端技術の研究を強化し、重大科学技術のインフランストラクチャと公共プラットフォームの建設を促進し、積極的に海外の優れた人材と知力を取り入れ、各種の人材育成を強化することにより、知的財産権の創造、運用、保護、管理レベルを向上させることが示された。

 政府作業報告で知的財産権については三度、ブランドについては二度言及しており、科学教育による国家振興戦略、人材強国戦略、知的財産権戦略を引き続き実施するべきであると強調している。総理は政府作業報告のなかで、知的財産権戦略を科学教育による国家振興戦略、人材強国戦略と並ぶ三大戦略と位置付けたのは今回が初めてである。

 2008年10月9日に国務院は国家知的財産権戦略の実施作業部局間合同会議(以下、合同会議と略称)制度設立に同意すると返答し、それにより『国家知的財産権戦略網要』が強力に実施されることとなった。

 合同会議の主な職責は、国務院の指導のもと、国家知的財産権戦略実施作業の調整、国家知的財産権戦略実施計画の研究制定、政策措置の指導・励行・検査の実施、国家知的財産権戦略実施の過程における重大問題の協調的解決、国家知的財産権戦略実施の重大政策措置の研究、国務院への意見提出、国家知的財産権戦略実施作業に関する他の重要事項の研究である。

 合同会議は国家知識産権局が率先し、国家知識産権局局長の田力普が召集者を担当した。メンバーは国務院分管副秘書長の畢井泉および中央宣伝部、外交部、発展と改革委員会、教育部、科学技術部、工業と情報化部、公安部、司法部、財政部、人的資源と社会保障部、環境保護部、農業部、商務部、文化部、衛生部、国有資産監督管理委員会、税関総署、品質監督検験検疫総局、工商行政管理総局、ラジオ映画テレビ総局、版権局、林業局、知的財産権局、国務院法制事務室、中国科学院、最高人民法院、最高人民検察院、総装備部など計28の部門と機関の責任者で構成されている。合同会議事務室に国家知識産権局が設けられ、合同会議の日常業務を担当している。 

 合同会議制度では各メンバー、機関に対し組織的な指導と調整を強化し、国家知的財産権戦略実施作業の大々的な推進、合同会議への積極的な参加、職責に基づく分業、国家知的財産権戦略実施に関する問題の自発的な研究などを通し、合同会議で確定した作業内容と決定事項を実行することが求められている。また、コミュニケーションの強化、互いの密接な協力や支持を通し、国家知的財産権戦略実施推進の総力を結集しなければならない。工業と情報化部、司法部、工商行政管理総局、知識産権局、総装備部に『網要』を実現する指導機関を設立して、各領域が実施する知的財産権戦略の組織的な指導を強化した。

 2008年11月21日に国家知的財産権戦略の実施作業部局間合同会議が北京で開催された。これは国家知的財産権戦略実現のプラットフォームが設立されたことを示している。国務院弁公庁は『国家知的財産権戦略任務分業の実施』を発行した。

 2009年3月19日に国家知的財産権戦略の実施作業部局間合同会議事務室が率先し制定した『2009年国家知的財産権戦略実施推進計画』が発行実施され、二部に分類された。第一部は重点作業で、行政管理能力と宣伝教育を主要内容とするインフラ整備と積極的な措置により国際的金融危機に対応することが明確にされている。第二部は具体的な措置で、網要戦略の9大措置と一致させ、240条の具体的な取り組みを提示し、同時に主な実施部門を明確にした。

 2009年4月21日に合同会議のメンバー、機関が共同で制定した『2009年中国知的財産権保護行動計画』(以下『行動計画』と略称)が発行され実施された。この『行動計画』は9つの内容に分けられ、170項目の具体的な措置が挙げられている。立法分野では、商標、版権、特許および税関知的財産権保護などに関する23の法律、法規、定款と管理方法の改訂、制定で、3つの司法解釈が起草、制定された。法執行分野では、知的財産権侵害の偽造などの行為に対し9つの特別整備キャンペーンを全国で展開し、12項目の措置を取って日常の法執行を強化する。審判作業分野では、7項目の措置を取り、作業中に存在する突出した問題を効果的に解決して司法保護力をさらに強力にする。構造建設分野では、23項目の措置を取り、部門が地域と相互作用する作業機構建設に協力するよう推進し、部門の知的財産権の管理を強化する。宣伝分野では、24項目の措置を取り、大型宣伝活動の展開、記者発表会の開催、フォーラムの開催など様々な形で、社会全体に知的財産権保護の雰囲気を作り上げる。育成訓練教育分野では、各種の育成訓練と講座の開催など19項目の措置を実行することで、法執行司法人員、企業・事業団体人員、法律関係者と小・中学生に知的財産権の育成訓練教育を実施する。国際交流と提携の分野では18項目の措置を実行し、提携設立、フォーラム、セミナーなどの形で交流を強め、提携を拡大する。企業の知的財産権保護推進分野では7項目の措置を実行し、企業の知的財産権制度の完備を指導し、知的財産権制度を運用により競争に参加する能力を強める。権利者に対するサービス分野では25項目の措置を取り、知的財産権の公共サービスレベルを向上し、知的財産権の仲介サービスを成長させる。

 合同会議の28のメンバー、機関は『2009年国家知的財産権戦略実施推進計画』で確定した240項目の業務に関し、2009年8月までに212項目を展開して任務を完遂しており、知的財産権に関する27項目の法律法規を制定、改訂している。また40項目の主な政策措置が提示され、15項目の法執行がおこなわれた。15の公共サービスのプラットフォームが立てられ、大型の知的財産権の宣伝、人材育成、対外交流活動がおこなわれた。司法部、農業部、国有資産監督管理委員会、工商総局、品質監督検験検疫総局、ラジオ映画テレビ総局、版権局、林業局、知識産権局、国防科学技術工業局、最高人民法院、総装備部が『網要』を実現するための意見を提出し、具体的な業務案を制定し、それに伴う関連政策を提出した。

 中国知的財産権戦略はすでに中国国家発展戦略の重要な部分となっており、中国の今後の成長に重要な影響力を持っている。中国知的財産権戦略制定と実現過程において、商標戦略の制定と実現は重要な位置を占めている。

 2009年4月21日に国家工商行政管理局は『著名商標認定作業細則』を発した。著名商標の認定において考慮すべき要素と証拠材料、商標管理手順の審査、商標異議手順の審査、商標異議の再審と商標論争手順の審査と検証、再審と審査および監督と法律の責任について、いずれも詳細に規定した。

 2009年6月2日に『国家知的財産権戦略網要』を徹底的に実施し、商標戦略の実施を大々的に推進するため、国家工商行政管理局は『<国家知的財産権戦略網要>を実現し、商標戦略の実現に向けて推進することに関する意見』(以下『実施意見』と略称)を公表した。

 『実施意見』では商標戦略の基本理念に再度言及しており、商標戦略目標を4つに具体化した。つまり商標保護制度をさらに完備し、企業の自主商標の保有量をさらに増やし、企業管理と商標運用力を著しく強化し、社会全体の商標意識を全面的に高めることである。また商標戦略の役割を具体的に11項目に分けた。商標の法律法規システムを全面的に完備すること、あらゆる商標の政策システム構築を大々的に推進すること、商標登録管理体制構造を革新し完備すること、市場を主体とする商標戦略の実施をそれぞれ指導し支持すること、商標権利者と消費者の合法的な権利と利益の保護を強めること、農産物商標と地理マークを都市部と農村部統制の発展、区域発展における促進作用に十分発揮させること、社会発展の仲介サービスシステムを適正にすること、商標登録管理と公共サービスの情報化を促進すること、商標宣伝の教育を強化すること、各種商標の専門の人材を育成訓練すること、商標の国際交流と提携を拡大することである。

 『実施意見』は中国商標戦略実施を全体的に三段階に分けている。第一段階は2009年から2010年までに各項目の任務を分け、実施の具体的な段取りを確定することを前提に、作業任務分業部署を完成させ、各項目の戦略実施体制構造を確立し、各項目の任務を全面的に開始することである。第二段階は2011年から2015年までに国民経済と社会発展十二五計画に基づき、業務において段階的な成果をおさめ、前期の結果を基礎として重点的に推進することである。第三段階は2016年から2020年までに地区、産業の発展状況に基づきそれぞれを指導し、全体的なバランスをとりさらに完備し、各項目の戦略目標を全面的に実現させる。国家工商総局が商標戦略実施の指導グループを立て、商標戦略実施の組織指導業務を全面的に担当する。各関連部門の責任は商標戦略実施指導グループによりそれぞれ確定する。各省、自治区、直轄市の工商行政管理局は地元の特徴と実際の状況に合わせ、自主的に制定あるいは地元政府が地域商標戦略を制定するよう促し、総局の各項目業務要求を実現し業務を効果的に繰り広げる。商標戦略実現の経費に関する特別予算と支出制度を立て、戦略実施作業の各項目経費を確保する。

 メディアは、『実施意見』には4つの注目すべき点があると論じている。一つ目は商標権利者と消費者の保護と、商標行政の法執行力を強化し、偽造などの権利侵害行為を厳しく攻撃することで、公正な競争による市場秩序を擁護することで、商標権者と消費者の合法的な権利と利益を的確に保護し、商標権侵害情報を中国社会の信用システムに含めることである。二つ目は商標審査の周期を1年内に抑え、商標登録の管理を強化し、商標審査效率を上げて審査周期を縮め、審査品質を保証することである。2010年末までに、商標登録申請の大幅な増量により引き起こされる停滞問題を徹底的に解決し、商標審査の周期を12ヶ月以内に制限する。三つ目は今年、来年の二年間で商標法を改正し完備に着手することである。四つ目は企業が商標の国際登録を積極的に行なうように指導し、商標の国際登録知識を大々的に宣伝し、普及し、企業が国際貿易で自主商標を使用するよう導き、商標の国際登録を積極的に推進し、自主商標商品の輸出率を徐々に高める。そして企業が海外の商標紛争に積極的に対応するよう奨励し、地元の法律と国際規則を用いて海外商標の最先使用を争う登録行為と商標権侵害偽造行為を制止することである。また海外の権利保護に関するクレームと援助方法に精通することである。

 2009年7月14日に国家工商行政管理局は「『<国家知的財産権戦略網要>の徹底実施と商標戦略実施の大々的な推進に関する意見』の任務分業」を発行した。その各項目の商標戦略任務を10項目に分け、計77条あり、それぞれを国家工商行政管理局関連の司、庁、局、直属機関に分けて実施する。任務を担当する主要部門と機関には商標局、商標審議委員会、中華商標協会、法規司、国際合作司、人事司、弁公庁、独占禁止と不正競争防止法執行局、外商投資企業登録局、個人私営経営経済監督管理司、中国個人労働者協会、食品流通監督管理司、消費者権益保護局、市場規範管理司、企業登録局、経済情報センター、宣伝センター、行政学院などがある。

 2009年9月2日に国家工商行政管理局は『国家商標戦略実施のモデル都市(区)、モデル企業作業の展開における指導意見』を発行し、全国規模で商標戦略実施のモデル都市(区)およびモデル企業作業を展開した。モデル企業はその作業において、様々なタイプの都市、企業に配慮し、省、市、県、郷区域のつながりおよび大、中、小企業が連結した商標戦略実施隊の形成を調整しなければならず、独自の特色、効果的な商標戦略実施計画を制定し、その商標戦略を実施することで商標を主導とする区域特色経済を形成し、自主著名商標を育成することである。『意見』ではこの作業の組織指導、申告条件、政策扶助と手順などの内容についても説明している。

 他の合同会議メンバー、機関のうち、国家商標戦略実施と最も密切なのは最高人民法院である。

 2008年8月1日に最高人民法院は『国家知的財産権戦略網要の真摯な学習と徹底に関する通知』を発行し、各級の人民法院に組織指導を強化し、投入力を強め、国家知的財産権戦略に関する人民法院業務要求の徹底的な実施と各項目の戦略措置の順調な実施を保証するよう要求した。

 2008年11月に最高人民法院は全国の裁判所で「司法による権利保護、革新の奨励」という知的財産権司法保護の強化月間キャンペーンを繰り広げた。最高人民法院は相次いで5件の影響力の大きい知的財産権事件を選び公開審理をおこなった。また100件の全国知的財産権司法保護の典型的な実例を一般公開した。そのなかには保護商標権の実例25件が含まれている。

 2009年3月30日に最高人民法院は『最高人民法院の国家知的財産権戦略の徹底実施におけるいくつかの問題についての意見』を公表した。これは6部に分けられ、計36条の具体的な意見が提出された。それは特許事件、商標事件、著作権事件、商業秘密事件、植物新品種事件、特定領域知的財産権事件、不正競争事件、独占事件、知的財産権契約事件、知的財産権訴訟前臨時措置事件、知的財産権授権使用権確認事件、知的財産権行政事件、知的財産権刑事事件、知的財産権審判監督事件、知的財産権執行事件、知的財産権渉外事件など16種類に分けられており、それぞれの知的財産権事件の審判実施における重点と難題に対し一連の指針が提示された。また、人民法院による国家知的財産権戦略の徹底実現に対する要求を提出した。そのうち直接商標戦略に関わる主な内容は以下の通りである。

 「商標権司法保護の強化と商標信用の保護により自主ブランド育成を推進する。商標事件の審判を通して企業の商標戦略実現を支援し、その経営において積極的かつ適正に自主商標を使用するよう促し、自主ブランドの育成とブランド経済の成長を促進する。そして商標偽造、悪質な模倣などの権利侵害行為を厳しく制裁し、権利侵害の法律責任を厳しく適用し、商標権者と消費者の利益を確実に保障することで公正競争の市場秩序を保全する。商標権の法律属性を正確に把握し、商標に基づき製品区別あるいはサービスの出所を精査して、商標権の範囲を合理的に定める。そして商標の優位性、知名度の大きさなどに基づき保護強度と範囲を確定し、商標権侵害の判定における類似商品、商標近似と誤導による損失を正確に認定する。著名商標の司法認定と保護に関する法律の位置づけを正確に把握し、事実認定、各事例の認定、受動認定、必要に応じた認定など司法原則を堅持しつつ、法に基づいて著名商標を慎重に認定し、著名商標において種類の異なる商品に対する保護の範囲を合理的かつ適切に確定し、関連事件の審判監督と業務指導を強化する。商標権保護と特定産業発展の関係を適切に処理し、商標権の保護を重視するだけでなく、関連産業のレベルアップと発展の促進にも役立てる。法に基づいて地理マークとオリンピックマーク、世界博覧会マーク、特殊マークなどに関わる事件を受理し速やかに解決する。」

 「関連部門と協力し、権利侵害の繰り返し、集団性の権利侵害および大規模な偽造、無断複製などの行為などに対する計画的、重点的な知的財産権保護の特殊項目を展開し、偽造、無断複製を阻止する。」

 「特許と商標授権使用権確認の手続きの改革を促進する。国家の関連部門と積極的に協力し、救済手順を簡素化することを目標とし、特許の無効審理と商標審議機構から準司法機構への変換問題を研究することで、関連法律規定の改訂を積極的に促進する。」

 「独占事件と著名商標認定関連など特殊な知的財産権事件の管轄権を適度に集中させる。著作権、商標、不正競争、知的財産権契約などの一般知的財産権事件の基層裁判所の受理を適度に増やす。上級人民法院の法に基づく指定により、一般知財産権事件の管轄権を持つ基層裁判所が区域管轄を超えて同じ上級人民裁判所管轄区内の一般知的財産権事件を管轄できるようにする。」

 2009年4月21日に最高人民法院は各高級人民裁判所に『当面の経済情勢下での知的財産権審判服務大局におけるいくつかの問題についての意見』(以下『意見』と略称)を発行した。これは4部に分けられ、計20条の具体的な意見が提出された。国際的金融危機のなか、知的財産権の審判作業をさらに「成長を保ち、民生を保ち、安定を保つ」ためにどのようにサービスするかといった大局に対し、一連の要求を提出し、一連の新しい情勢下における知的財産権の司法政策を明確に完備した。そのうち商標戦略に直接関わる内容は7条(第5-11条)に及び、その内容は『意見』全体の1/3以上となった。

 『意見』は「法に基づき知名ブランド保護を強化する。……人民裁判所は法に基づき商標権保護と不正競争の防止を強化し、知名ブランドの創立と発展のために調和の取れたゆとりある法律環境を提供しブランド経済成長を促進する。さらに消費需要を刺激し創り出すことで、経済成長を牽引し、中国企業の国内、国際における競争力を向上させる。」ことを提起している。

 『意見』は「商標司法政策を完備と、商標権保護を強化により自主ブランドの育成を促進する。……市場混乱に対し商標権の除外範囲を合理的に定め、商標の使用において経営者の間ではっきりとした境界を保つよう保証し、自主ブランドの創立と成長に十分な法整備をする。」と提起している。

 『意見』は「登録商標を利用した不正な抜け駆け行為を防止する。保護を請求する登録商標が、実際には商業に使用しておらず、その民事責任を確定しなければならない場合、権利侵害行為の停止命令を主な方法にすることができる。賠償責任の確定はいずれの場合も、実際に使用していないという事実を斟酌できる。権利擁護のために支払われる合理的な費用を除き、実際の損失とその他の損害が確実にない場合、通常、その賠償は被控訴権利侵害者の利益を根拠としない。登録人あるいは譲受人に実際に使用意図がない場合、登録商標を賠償請求の手段としてのみ使用できるが、賠償しなくてもよい。登録商標がすでに商標法で規定されている連続三年の使用停止となっている場合、その損害賠償請求を支持しなくてもよい。」と提起している。

 『意見』は「著名商標司法認定の審査監督を強化し、著名商標司法保護制度を完備することで、司法保護の権威性と公信力を確実なものとする。著名商標の認定範囲と認定条件を把握し、認定範囲の拡大と認定条件の低下を禁止する。……偽造証拠により著名商標認定を騙し取る事件、およびその他の違法な著名商標認定の事件はいずれも、審判監督手続きを通して是正しなければならない。当事者が著名商標認定に関する事件において民事訴訟を妨害する場合、法に基づき制裁を加える。」と提起している。

 『意見』「商標法に関する優先権と市場秩序の擁護を相互協調する立法精神を把握して、すでに形成され、安定している市場秩序の擁護を重視し、当事者による偽造商標論争制度の不正な抜け駆け行為と争奪を防止し、登録済みの商標の軽率な撤回により企業の正常な経営に重大な問題を招かないようにする。他人の著作権、企業名称権などの優先権と衝突する登録商標で、商標法により規定されている論争期限を超過していることにより撤回できない場合、優先権者は訴訟時効期間内にその権利侵害の民事訴訟を提起することができる。ただし人民裁判所ではその登録商標の使用停止に関する民事責任については再判決しない。」

 『意見』「登録商標、企業名称と優先権の衝突を適切に処理し、……誠実で公正な競争の擁護と優先権を保護するなどの原則にしたがい、法に基づいてこの種の権利衝突事件を審理する。……中国国外で取得した企業名称などの商業マークは、その取得手続きが国外の法律規定に符合していても、中国国内での使用行為が中国の法律に違反しており中国の市場経済秩序を乱す場合、知的財産権の独立性と地域性の原則に照らし、中国の法律に基づいてその使用行為が商標権侵害あるいは不正競争に当たるかを認定する。……市場でのある程度の知名度、関係公衆が熟知しているもの、すでに実際に商号作用を持つ企業名称中の屋号、企業あるいは企業名称の略称は、企業名称と見なし、不正競争を制止して保護することができる。企業名称の使用により商標権の侵害となる場合、事件の具体的な情况に基づいて使用停止の判決あるいはその企業名称の使用方式、使用範囲に制限を加えることができる。」

 2009年4月22日に最高人民法院は『最高人民法院による著名商標保護に関わる民事紛争事件の法律適用に関するいくつかの問題の解釈』を通過させ、2009年5月1日から施行された。著名商標の概念、著名商標司法認定の適用範囲、認定要素、証拠提出責任、保護要求など5つの分野を規定している。人民裁判所の著名商標保護に関する民事紛争事件の審理において、その規準をより明確にし、適用条件と範囲を厳格化し、統一された司法基準により、著名商標の司法保護を強化する法的根拠を提示した。

 2009年4月22日に国有資産監督管理委員会は『中央企業の知的財産権業務の強化に関する指導意見』を公表した。『意見』によると中央企業は知的財産権作業を「危機をチャンスに変える」重要手段とし、技術、製品のグレードアップを積極的におこない、知名ブランドの立ち上げに努め、自主知的財産権を持つ核心競争能力を掌握し、中央企業のリスク抵抗力を強め、継続可能な発展を実現させるよう求めている。

 2009年9月10日に世界経済フォーラム第三回ニューチャンピオンズ年次総会(2009年大連夏季ダボス年次総会)が大連世界博覧広場で開幕し、国務院総理の温家宝が開幕式に出席し祝辞を述べた。その中で中国知的財産権保護の立場は確固としており、我々は今後も全面的に国家知的財産権戦略を実現し、知的財産権保護の法制、市場と文化を整備し、すべての革新的成果が尊重され報われ、各種の発明創造から現実の生産力へ転換することが強調された。国際的な調和と繁栄を促進するため、温家宝総理はその席で1.世界各国は共に地球温暖化に立ち向かう、2.貿易反対と投資保護主義に対応する、3.世界経済の持続可能な回復を促進する、4.知的財産権を保護するといった4つの提案を提出した。温家宝総理は知的財産権の保護は革新の奨励、発展の促進に必要不可欠であり、知的財産権を保護することは社会革新の原動力を保護することであると強調した。また国際社会は知的財産権の創造、運用、保護、管理能力を共に向上させなければならず、各国の国情の尊重と各方面への配慮、とりわけ発展途上国の国家の利益に配慮し、平等互恵を基礎とする対話と提携を進め、バランスの取れた効果的な知的財産権保護制度の確立を促進しなければならないとも述べた。温家宝総理の上述の祝辞には、中国政府と中国人民の知的財産権保護、国家知的財産権戦略の全面的な実現に対する確固たる決意が表されている。


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