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著作権保護—中国イノベーション型国家建設の重要な柱

2009年11月27日

劉春田

劉春田 (liuchuntian):中国人民大学法学院教授 中国人民大学知的財産権教育・研究中心主任

 1949年3月生まれ
主な研究成果:『知的財産権法』などを著作、および『中国社会科学』、『中国法学』などに約40編の論文を発表。中国版権協会副会長、中国知産権研究会副会長、中華商標協会副会長、国際知的財産権保護協会中国支局理事などを兼任。

 中国は製紙と活字印刷技術の発祥地である。長期にわたって中国は生産力と経済規模の面で世界随一を誇ってきた。しかし、明時代以降、体制上の問題ゆえに立ち遅れた中国において、資本主義の重要なシンボルとも言える著作権制度が登場することはなっかた。実際、知的財産権制度は西洋から中国に入ってきたのである。その後、清時代の終わりに日本の経験を参考とした著作権の法律制度が中国でも確立されるようになった。とりわけその法律は「日本学」と呼ばれていた。1898年に特許法、1904年に商標法、そして1910年に著作権法が公布かつ施行された。その後、中国社会における長期にわたる騒乱や外国からの侵略により、中国の近代化の道は阻まれ、経済と社会の発展が滞るようになり、知的財産権制度の積極的な活用も停滞した。新中国が成立して始まった60年間の改革と建設により、財産関係に対する革命と改造が成し遂げられた。長期にわたる単一的な公有制経済制度や計画経済の実施は、製品生産と市場経済を排除するだけでなく、法治制度や私権を基礎とする著作権の保護を軽視することにつながった。こうして国家発展を目指す過程は回り道や停滞ばかりとなり、大きな挫折を味わうことになった。中国人民もその影響で大きな代償を払うことになった。1978年に鄧小平の指導のもと、中国は果敢な態度で間違いを正し、国内改革や対外開放に関する実際的な政策を実施した。改革開放後まもなく法治制度確立への努力が再開され、知的財産権に関する法制度の再整備も真っ先に着手された。11年に及ぶ過酷な努力の結果、1990年に著作権法が公布され、2001年には1回目の改訂が行われた。20年弱にわたる実践の成果は、制度文明の重要な要素である著作権法が社会主義の物質文明と精神文明を法的に保障するものであるほか、イノベーション型国家建設の重要な柱でもあることを物語っている。新中国における著作権法の再整備の過程は、制度イノベーションの歴史、生産力進歩の歴史、思想解放の歴史である。歴史は鏡であり、中国は60年にわたる歴史において対称的な二つの側面を経験してきた。とりわけ後半30年間の探究と発展の歴史は、腐朽を奇跡に変えた誇るべき成果であり、静かに育まれた「中国モデル」であると言える。この歴史は中国人にとって励みとなる里程標となるだけでなく、諸外国、とりわけ発展途上国の手本にもなっている。

1.なぜ中国はイノベーション型国家を目指すべきか

 イノベーション型国家の建設は知識経済時代の先進国が満たすべき基本的な条件であり、近代化を目指す中国にとっても不可欠である。人間本来の能力であるイノベーションは、知識に対する革新だと言える。知識がなければ労働はなく、労働がなければ生産力もない。知識は自然法則に対する認識の科学的な発見でもあり、自然を変化させようという技術的発明も含まれる。同時に自身の感情に対する芸術的表現、そして外部世界の時空的変化に伴う環境変化に対する描写が含まれる。科学技術の役割に対する認識に関して「知は力なり」という尊い格言を最初に発したのは英国の哲学者であるベーコンである。後に科学技術と生産力の内在的関係を明らかにした古典学者は、「科学技術は生産力である」という科学的結論を導き出した。中国では鄧小平が近代科学技術に対する理解に基づき、科学技術と人類発展の関わりを考察かつ集結整理することにより、「科学技術は第一の生産力である」という思想を提出した。事実が示すとおり科学技術なくして生産力は成り立たない。生産力の誕生や発展の歴史は、科学技術の誕生や発展により決定される歴史なのである。生産力の「錬金術」である科学技術は終始生産力の中核であり決定的要素である。近代科学技術の進歩は、資本主義の初期段階における人類の資源、労働、財産の伝統的な関係を変えた。またレーニン時代における資本主義国は「世界の工場」、発展途上国は世界の市場といった構造を変えた。現在、一般的な技術分野において先進国は創造者また「社長」であり、発展途上国は製造者また「労働者」である。先進国はハイテク分野における独占的地位を保つため、依然として創造と製造を担っている。これは現在の世界経済における基本的な分業構造であり、この分業構造を掌握しているのが先進国である。科学技術や知識が決定的な要素なのである。社会主義国家である中国は、落後することが許されない現代最大の発展途上国である。制度の違い、歴史の長さ、文化伝統と価値観の違い、大国復興の感情、利害関係と矛盾といった要素を考慮すれば、基本的に先進国により確立された世界秩序を中国が受け入れざるえないことが分かる。その中で妥協点を見つけだし、現行の秩序を利用することによって国際社会との相互利益を実現させなければならない。同時に国際提携に伴う条件も無視することはできない。中国の台頭により引き起こされた国際経済の構造や秩序の変化、国家間の根本利益の衝突、制度の違いにより引き起こされた発展モデルの違いを考えれば、中国の近代化を諸外国にも託すことができないことをはっきりとしている。独立や自主、法律の改革と強化、イノベーション型国家の確立は、中国が強国の夢を実現させるために避けて通れない選択肢である。これらを無視して中国が近代化を実現させることはあり得ないのである。よって内発的動機付けと外部からの圧力という二つの要素が中国にイノベーション型国家を確立するよう求めていると言える。

 内発的動機付け:改革開放以来、中国経済は急成長を続けており、科学技術と文化のイノベーションは相当進歩している。イノベーション能力は向上し続けており、経済社会の発展における知識の役割はますます顕著になっている。しかし、その経済成長は粗放的で、資源環境の代償はあまりにも大きい。自主イノベーション能力が十分ではなく、ハイテク分野における核心技術が乏しい。さらに、イノベーション成果が経済、文化、社会などの面における科学的発展に十分結び付いていない。イノベーション型国家が備えるべき量化基準と比べると、先はまだ長いといえる。統計データによると現在の中国における科学技術進歩貢献率は約39%で、イノベーション型国家が必要とする基準である70%とは大きくかけ離れている。国家の研究開発投資がGDPに占める割合は1.4%、米国、日本、西欧で取得した特許の数は全体の1%にも満たない。中国における技術の対外依存率は50%以上に達しているほか、重要設備と基本ソフトウェアも依然として輸入に頼っている状態であり、競争力のある核心的技術に欠けている。例えば光ファイバー製造設備の100%、ケーブル製造設備の85%、石油化学工業製造設備の80%、NC旋盤の70%、医療設備の95%を輸入に頼っている。企業におけるイノベーション能力の欠如を示す概算統計として以下のデータがある。目下中国で知的財産権を保有している企業は全体の1万分の3、特許権取得企業は1.1%、そのうち発明特許権を獲得している企業はわずか0.17%である。この0.17%の発明特許は主に漢方、ソフトドリンク、食品、漢字入力法などの分野に集中しており、海外の特許申請は主に移動通信、半導体などハイテク分野に集中している。過去30年における中国経済の高度成長は粗放的で、大量の資源消費という代償の上に成り立っており、持続的な発展は不可能である。経済成長と資源エネルギー不足の矛盾は日増しに顕著になっており、資源の大量消費と生態環境破壊を基礎とした経済発展の限界が近付いている。これまでの資源消費型、環境汚染型、技術依存型、労働集約型を特徴とするGDP成長は、継続的な発展が不可能であるゆえに必ず見捨てられるであろう。現在の中国は「世界の加工工場」などといわれているが、核心的技術に欠けるため中国企業の利益は大量の労働力資源の消費、つまり「血と汗の結晶」に依存しているのである。文化の面ではどうだろうか。中国では長期にわたり思想束縛があり、イデオロギーが過度に強調されてきた。文化の経済性や産業性は軽視または無視され、文化産業を国民経済の重要な柱とすることはなかった。それが著作権保護の整備に影響し、中国の文化産業の発展は欧米、日本、韓国に比べて大きく遅れをとることになった。これらの状況は中国がイノベーション型国家としての水準に達するまで相当の距離があり、今後も相当な努力が必要であることを説明している。こうした顕著な問題を解決し、充分な開発や知識資源の利用に基づいたイノベーション型国家発展の道を歩むよう真剣に努力すべきである。

 外部からの圧力:中国のWTO加盟後、中国の世界市場における影響力はますます大きくなっており、それに伴い貿易摩擦が問題化している。とりわけ知的財産権の保護が各方面からの注目の的となっている。国際舞台において知的財産権は理論や道徳に関する問題ではなく、実力をベースとした国家間の力の争いであった。諸外国が低投資、低産出、低コスト、低価格を特徴とする中国の「温州製造」に対抗できなくなったため、諸外国は知的財産権の保護を理由として貿易保護政策を採用し、中国に対して高投入、高生産、高コスト、高価格の「温州創造」に切り替えるよう大きな圧力をかけるようになった。こうして諸外国の市場における中国製品の影響力が弱まった。中国企業がライター、織物、タイヤの製造・販売で満足してしまうと、国際市場における活路は見出せない。先進国は中国の知的財産権に関わる問題をWTOの紛争解決機関に訴えるほか、米国「337調査」の関連法律条項を頻繁に利用して中国企業に対し調査と訴訟を提起し、中国製品の米国市場進出を妨害している。目下中国は米国「337調査」による最大の被害国となっている。先進国は知識イノベーションにおいて「他より高い技術」を持つことにより、知的財産権に関わる産業が国民経済の支柱になっている。このため知的財産権保護の強化は必ず国際交流に関する原則の一部となることを直視しなければならない。いかなる国家であっても「技術が他に及ばない」のであれば、先進国の知的財産権に束縛されて永遠に遅れをとり、受動的地位のままである。これは変えることができない現実であり、このような国際的な環境の中でイノベーション型国家を確立することが中国にとって唯一の選択肢なのである。特に著作権法を含む健全に整備された国内の知的財産権制度の構築はイノベーション型国家建設を法的に保障するものである。

2.文化イノベーションはイノベーション型国家の基本の一つである

 文化イノベーションはイノベーション型国家にとって重要なものである。イノベーションは国家と民族の発展にとって尽きることのない原動力であり、社会発展の源泉また核心である。ますます多くの国々が科学技術イノベーションをその基本戦略とすることによって、ハイテクイノベーション能力を大幅に向上させ競争力を強化している。それらの国々はイノベーション型国家と呼ばれており、古いタイプの国家、つまり中東産油国家に代表されるような主に自国にある豊富な天然資源を売ることで国家財産を増やしている資源型国家、およびラテンアメリカに代表されるような主に先進国の資本、市場、技術に頼って自国の工業化と近代化を実現している依存型国家などとは区別されている。イノベーション型国家であるかの判断基準は量化の結果であり、一連のデータに反映される。目下世界が認めるイノベーション型国家は米国、英国、日本、フランス、ドイツ、フィンランド、韓国、シンガポールなど20カ国となっている。

 客観的にいって、こうした主張は完全ではなく、前述の判断基準は科学技術のイノベーションにのみ適用できるものであり、完全な意味におけるイノベーション型国家に適用できるものではない。イノベーションは自然科学技術のイノベーションだけに留まらず人と文化のイノベーションも含まれるべきである。社会の発展は物質文明と精神文明の統一や協調による発展であり、どちらもなおざりにすることはできない。今日、先進国が輸出しているのは科学技術製品のみならず、文学・芸術製品も含まれている。さらには法例制度、価値観、発展様式の輸出もある。また文化・芸術製品の貿易に関する成長速度は極めて大きく、米国、日本、韓国はその点で特に際立っている。それら国家の映画、テレビ、アニメーション、ゲームソフト、さらには食品、服飾、生活様式、およびそれによって形成される価値観は文化産業となっている。これらは多大な経済価値を生み出すだけではなく、計り知れない社会的効果を上げて文化の拡大を実現している。この基本的な事実を無視してイノベーション型国家を定義しても不完全なのである。

 文化生産力は生産力の重要な部分を構成しており、文化生産も物質生産と言える。文化的製品のイノベーションはイノベーション型国家の重要な要素である。中国の習慣的な認識に基づけば、イノベーションとは一般的に科学技術分野のイノベーションに限られている。イノベーション型国家と言えば科学技術における先進国家を指す。実際これは偏った見方であるばかりか科学的にも一致しない。生産を物質的製品と文化的産品に分けるための区分基準は、製品の機能であって製品の性質ではない。物質的製品の機能は人々の生産生活における衣、食、住、行(交通)などの物質的要求を満たすことであり、文化的製品の機能は人々が求める快適さなどの心理的または精神的な必要を満たすものである。しかし、生産の性質からいうと、物質的生産であろうと文化的生産であろうと物質的材料や人類と物質的世界の変換作業とは切り離すことができず、同じように価値の凝縮するものであり、物質的生産の過程に属しているためいずれもGDPにおいてかなりの比重を占めている。一方は物質的分野、もう一方は精神分野と単にそれぞれの使用価値が異なるに過ぎないのである。中国の文化は、長期にわたり体制による制限と思想統一が横行していたため、政治的に偏った主張、階級闘争、イデオロギーなどが、「文化産業」や「娯楽業」をひた隠しにしてきた。それら生産力や経済基礎とそぐわない指導部の構造は文化の繁栄や創造性を妨げ、文化産業が引き起こす一連の物質的産業の発展にも影響を与えた。典型的なイノベーション型国家では科学技術分野の持続的な革新のみならず、文化的産業分野においても懸命なイノベーションが進められており、投資拡大により文化的産業分野における国際競争力の優位性が形成されている。米国の映画産業、日本のアニメーション産業、韓国のドラマ産業は自国の経済と国際貿易においてますます大きな比重を占めるようになっており、経済効果と社会効果の二つの面でメリットがある。例えば、ハリウッド映画は誰でも楽しめるものを製作することで、多くの人を喜ばせることができる。さらに様々な名目に変更することで上演し続けることができ、投資家に数億、さらには数十億ドルの収益をもたらしている。「ディズニー」の人気は衰えることなく、約一世紀にわたりアメリカに巨大な利益をもたらし続けている。ハリーポッターは世界中の子供たちを楽しませ、作者に巨大な富をもたらすと同時に、各国の出版社、発行者の多大な財源となった。それ以外に、映画上映、ドラマ、各種演劇を作り、特許を発給して様々なジャンルのおもちゃ、服、ポストカード、登録商標マークをデザインし、テーマパークを建設するなど、巨大な産業チェーンにより巨額な社会財産を創造してきた。それと同時に、数知れない雇用人口を受入れ、社会の安全と調和を提供してきた。中国人はこれらの事実に気づいたのである。新しい世紀に入り、中国は文化的イノベーションと科学技術革新がイノベーション型国家にとって鳥の両翼または車の両輪であり、いかなる国家であれ文化的イノベーションを切り離し、自然科学技術だけに頼ってイノベーション型国家を作ることはできないことを徐々に認識しはじめた。文化は一つの産業である。中国には悠久の歴史と豊かな文化が蓄積されており、世界で最も大きく聡明な知恵を持つ人材資源を有する。優れた政策、整った法律環境があれば、文化的産業は国民経済の新たな成長ポイントとなれる条件が整うのである。

3.中国における著作権制度確立の過程は思想解放と制度イノベーションの歴史である

 周知のとおり、国家競争力は国家の総合力と発展展望を評価する重要な指標である。それは科学技術の先進レベルと文化のイノベーションの全体的なレベルにより決定され、対応する社会制度の継続的な調整にもかかっている。また、思想解放と見解を改めることなどを含むイデオロギーへの依存も必要である。これらはいずれもきわめて重要であり、必ず相互協調、相互補填、科学的発展が必要である。ノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツ氏はかつてこれら三つの関係を科学的に分析した。それによると知識と技術の革新はいかなる時代であろうと経済成長の前提条件ではあるが、それ自体は充分な条件とはならず、単に潜在的な必要条件にすぎない。つまり、技術を高効率かつ広範囲に運用するには、必ず制度を整備しイデオロギーを変えなければならない。そうして初めて人類の知識を正しく利用し、部分的な生産要素の革新が実現するのである。さらに別のノーベル賞受賞者であるダグラス・ノース氏は、制度の役割をさらに強調しており、それによるとイノベーションと人に適切な刺激を与えることのできる効果的な財産権制度を奨励することが、経済成長を促進する決定的要素であると考えた。さらに彼は世界経済成長の要因は産業革命ではなく制度であり、とりわけ財産所有権制度の確立であると考えた。制度的な保証と個人への日常的な刺激がなければ、個人的産業およびその收入に保障がなく近代工業は発展しない。中国は改革開放の30年に、それら有識者の確かな見解を実証してきた。中国は前述の三つの要素に立ち向かい協調の中で困難を乗り越え発展しているのである。この30年は生産力の解放と重大な発展の歴史であり、思想の絶え間ない解放と制度の相次ぐ革新の歴史でもある。思想の解放と制度の革新を切り離しては、現代中国はありえないのである。著作権制度の視点から新中国の前期30年を結びつけて見ると、その後の30年の損得と経験に対し、思想と制度面で巨視的な調整を行い、中国の今後30年にイノベーション型国家建設という面でさらに科学的でさらに順調な発展を遂げるという積極的な意義を持っているのである。

 著作権法律制度の確立は中国における改革や進歩に必要であり、国際社会の仲間入りをするためにも重要なステップである。1978年に中国は長年推進してきた「階級闘争を以って網要と為す」という基本原則を放棄し、全身全霊で国家経済建設に邁進することを宣言した。1979年に中国政府は米国政府と契約した二国間協定の中で、相互に著作権を保護し、著作権制度の法制度作成業務に速やかに着手することを含むいくつかの約束を行った。11年という長期にわたる起草過程の中で様々な困難に直面した。

 まず経済制度の障害と改革である。著作権は私権に属し、著作権法は知的財産法である。その本質の属性を決定し、著作権制度を生活の中で現実的なものとするには、その生存に適した整えられた経済制度が前提条件である。伝統的市場国家ではこれは問題とはならない。しかし、中国では長年、生産手段の公有制を採用してきたため、理論上は商品生産の存在を否定し、制度において私有経済を否定している。思想においてはいかなる私権観念をも批判しており客観的には私権の生存空間などない。このような地盤の中、著作権制度を設立することはほとんど不可能である。中国政府の指導のもと、まず「発展こそが正道である」という思想を表明し、「白猫であれ黒猫であれ、鼠を取るのがよい猫だ」というわかりやすい道理を用いて「外資利用」として推進した。資本主義要素を持つ経済方式を導入し、また「公有経済の必要補填」として発展させ、私有経済の改革推進を実施した。この政策を実施したことで単一的な公有制経済を打破し、経済の多元化を改革として新しい経済基礎を提供した。

 次いで計画経済体制の改革と放棄である。数十年の実践により計画体制はこの巨大社会の多種多様で、壮大な経済生活を担うことはできないことが証明された。中国農民は財産所有権と経営権の分離を発明することによって公有経済改革を切り開くカギを提出し、政府を中央と地方権力の掌握と放棄の悪循環から脱却させた。時代と共に変化する様々な情况に対応するため中国では「計画経済と商品経済の複合」、「計画のある商品経済」を継続的に打ち出した後、1992年ついに計画経済を完全に放棄し、中国経済を「社会主義市場経済」と位置づけた。またこの方針を憲法に規定し、対応する法律システムの設立に経済的、政治的保障を提供した。

 さらに著作権法制における利益集団との権益獲得争いがある。著作権制度の設立は文学芸術作品における生産、流通の利益分配関係を変えた。まず法律において作者と出版社の位置関係が逆転した。作者が権利の主体であり出版社と平等の立場で、法律に基づき作者には多くの選択空間ができた。これは紛れもなく出版社の立場に対する挑戦である。公平に言うならば、著作権法において出版社は部外者である。しかし、中国の著作権法は計画経済時代に作られ、出版社団体およびその代表者は絶対的な地位にある。国務院は作者の職能を保護する国家版権局を担当しているが、出版物管理部門による行政首長と管理を兼ねた附属機構にすぎない。よって出版社の働きのもと法律を省みず、少しも無駄のない著作権法から一部を切り取り、目を見張る七つの条文を用いて図書、定期刊行物の出版社の権益を特別に規定した。中でも最も目を引くのは法律規定で、作者が授与する出版社の権利が専有であるかどうかに関わらず著作権法はいずれも一律に専有とみなされる。この規定が自由平等の原則に著しく反していることからこれまでずっと様々な非難を受けてきたため2001年に改正された。しかし作者の権利についての法律は依然として出版者権利に関する多くの条款が残され織り交ぜられているため中国著作権法が非常に注目される一大特色となってしまった。

 そしてさらに「特権」との争いがある。著作権は基本的な知的財産権である。法治社会ではいかなる人、いかなる機構、いかなる社会団体であれいずれも法律の権限を超越していない。しかし計画経済時代は客観的に見ると各部門と機構の権限が存在している。この権限は1990年の著作権法の法制にも反映されており、なかでも最も際立っているのは第43条である。そこには「ラジオ放送局、テレビ局の非営利放送はすでに出版された録音製品であり著作権者、出演者、録音製作者の許可を得る必要はなくその報酬を支払わない」と規定されている。この規定は著作権制度の基本的準則に明らかに違反しており国際公約に違反している。ラジオテレビ部門に言わせればラジオテレビは「党と政府ののどと舌」、「国家の公益事業」、「非営利目的」で支出は膨大であり、「さら多くの支出費用をまかなえない」ため法律義務の責任を拒否しているというものである。紛れもなく政策が長期にわたり文化産業の存在を認めてこなかったことにより、ラジオテレビ部門はそうした特殊な問題を抱えているのである。しかしその主張は特権と勝手な言い分に包まれている。第43条は表面的には各部門と機構の勝利に見えるが、実際のところは法制度が特権に屈服しているのである。ただし今一度客観的、理性的にこの問題を認識すると、法制度側の「大行は細謹を顧みず、大礼は小譲を辞せず」の知恵と融通を深く感じる。小さな利益に固執して大きな損害を受けることはなく、適時に全体を見て国情に合った全く新しい法律を差し出して中国社会関係変革の道を力強く促進した。法律の実施により第43条が法律精神と対比され、それが社会各業界の批判、討伐を誘発し、最終的にはその規定の改正に一役買ったのである。

4.法治の完備は、著作権を存分に効果的に保護し、イノベーション型国家建設の重要な保証である

 2006年初めに、中国政府はイノベーション型国家確立の重大戦略法を提出した。胡錦涛国家主席は、「イノベーション型国家建設の核心は自主イノベーション能力の強化を科学技術発展の戦略基点とし、中国の特色である自主イノベーションの道を進み、自主イノベーション能力の強化を国家戦略として、各方面の近代化建設を貫く」と指摘した。2008年6月5日に中国国務院は『国家知的財産権戦略綱要』を公布し、国家知的財産権戦略の実施を決定した。その綱要の中で国家知的財産権の戦略目標は「中国知的財産権の創造、運用、保護、管理能力を大幅に向上させ、イノベーション新型国家の建設と小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的な建設の目標を実現させること」と明確に定めている。イノベーション型国家建設の目標は主に科学技術と文化のイノベーションに着目しており、国家知的財産権戦略は制度のイノベーションに基礎を置いている。この二つの戦略目標が一致し、それぞれが分業して相互規定、相互補充、相互完備することが中国の未来発展の重要な保障となる。なかでも著作権法律を整備し、十分かつ効果的に著作権を保護し、著作権に関する産業を大々的に発展させることが国家知的財産権戦略の重要な内容である。著作権法制の初歩的な設立は、古い風俗習慣を改めて中国社会の旧思想と伝統意識を大きく変え、中国社会の近代化の道を促進することを本質とする。同時に知的財産権についてはまだ多くの問題と矛盾、および次々と現れ、早急に理解する必要のある新しい事柄があることをはっきり認識しなければならない。本文では中国は以下の業務を重点的に行うべきであるとみている。

  1. 著作権制度の本質と機能を深く理解し、著作権制度の実施を基本国策にまで引き揚げる。著作権制度で保護する核心利益は著作権に関する文化産業であり、国家経済と国民の生活であることをはっきり認識する。著作権者の権益は文化産業という巨大チェーンにおいて不可欠な部分であるにすぎない。文化産業は著作権制度の温床であり、技術と産業の発展開発の普及と著作権法律の誕生を促した。同様に文化産業の発展は著作権制度の発展を促進した。著作権保護は文化保護および関連産業の生存と発展であり生産力を保護する。中国政府は必ずイノベーション型国家建設の高所から、経済発展促進の巨視的な角度から、著作権制度を重視しなければならない。
  2. 著作権を私権とし知的財産権とする法律意識を全面的に高め、国民全体さらには政府官員と司法官が著作権を他の知的財産権利と同等に位置づけて尊重、保護できるようにする。長年の特許制度を科学技術法制としてきたことを是正し、著作権制度を文化法制の一つの理解とする。ある時期以来の「知的財産権、私権の公権化の傾向」と「知的財産権は公権力の特許である」といった観点は、公権力強化の役には立たず、実践において有害となることを十分認識する。
  3. 著作権法制の整備により、法律が著作権者に与える所有権益を確実かつ真摯に保障する。ところが実践していく中で著作権者は多くの権利が棚上げされ紙面上に保留されたままとなっている。例えばラジオテレビ協会が使用する音楽作品の料金支払い問題は先に述べたように、2001年にその使用が有料化に改正されたが、同時にその料金について「具体的な方法は国務院が規定する」としている。中国には「法があっても無駄な法であればおのずから行われることはできない」という古人の言葉がある。つまりその方法が登場しなければラジオテレビ協会は慣例にしたがい引き続き無料で他人の作品を使用できるのである。実際8年経過したにもかかわらず料金支払い方法は未だに登場しておらず、ラジオテレビ協会により無料で作品が使用されている現状は何ら変わっていない。一部分の機関はそうした状況を利用して人の財産を奪うことに盛んになり、罪の意識を少しも感じていないのである。先例のように相争って悪事を行い、社会に大量の商業目的による著作権を使用しつつ料金の支払いを拒否するという現象がおこり、しかも次第にエスカレートしている。こうした経験が我々に教えたことは、中国30年の大善事、大成功はいずれも幾千幾万もの小さな善事、小さな成功が積み重なったものである。善行は悪事の資本金ではない。大きな善事を行ったからといっても悪事を働いてはいけないのである。成績は問題を覆い隠すことはできず、このような状況を変えなければ法治に対する国民の信頼を打ち立てることは難しいのである。
  4. 司法機関は理念を正して私法の精神を抱き、「十分かつ効果的な著作権保護」を徹底づけなければならない。20年以上におよぶ実践の結果、中国ではすでに2000人以上の正式な知的財産権司法官チームが作られている。知的財産権の司法官はみな高いプロ意識を持ち、審理レベルは継続的に向上している。多くの判決文の知識、技術は高く、事実分析は透徹しており理論が明確に論証され法律の適用は正確である。ただ残念なのは著作権侵害行為に対する財産賠償があまりにも保守的で、当事者はが「訴訟に勝利し財産を損なった」ことが一般的である。これは異常なことである。訴訟は財産をめぐって行っているもので、訴訟自体はその経済活動の一環なのである。訴訟の結果が被害者の損失を満足に補償できない一方、権利侵害行為を処罰することができず、権利者が勝訴しても財産損失を招き、権利侵害者が敗訴しても收益を得ることができるのは不公正である。このままでは国民の司法への信頼を失うことになる。
  5. 新しい技術、新しい物事の著作権制度への挑戦に積極的に対応する
    技術とは人の生活様式であり社会全体が関わる構造において技術は第一で、決定的な要素である。技術革命と文化のイノベーションが世界を変え、知的財産権制度を生み出した。現在のネットワーク技術の応用は人類の生活様式を非常に大きく変えた。知識、技術、文化の生産、流通と消費様式を変え、それにともない財産流通と分配方式も変わった。この新たな情况、新たな問題に直面したことも著作権制度に対する挑戦となった。この挑戦により引き起こされた問題の斬新さ、対立の鋭さ、影響の大きさ、情勢の緊迫性は前代未聞である。中国も部外者ではなく必ず国際社会と歩調を合わせて挑戦に立ち向かい、対策を共に研究して問題の解決方法を提供しなければならない。

 中国はここ30年で大きく発展しており、なかでも著作権制度の功績はすばらしい。中国ではイノベーション型国家の確立という志は、著作権法を含めた整備された知的財産権制度から依然として切り離すことはできない。中国は知的財産権制度の枠組みを立てたものの著作権法制のレベルとイノベーション型国家の要求とはほど遠い。中国はまだ発展途上国であり科学技術であれ経済、社会、法治の発展レベルであれいずれも完璧ではなく熟達もしておらず先進国とは大きな差がある。周知の通り社会発展は各側面の協調、発展の過程である。著作権法制の発展は中国全体の技術、経済、社会、法治状況から離脱し単独発展することはできず、先進国と同時進行しなければならない。中国が直面する任務は先進国よりはるかに困難である。輝かしい成果と同時に中国には問題や困難が山積みされている。痛みの伴う改革を行って西洋の歴史と経験を斟酌すると共に、ゼロからの学習、真剣な設計、真剣な努力などにより中国の状況に適合する市場経済制度を設立することがどうしても必要である。その一方、頭をもたげ前途を見つめ、国際社会が抱える挑戦的な問題に立ち向かい、新技術がもたらす発展の機会に追いつくよう努めなければならない。歴史は中国人に国家の発展は既成の型がなくても模倣することができると伝えている。たとえ社会制度の同じ国家であっても各自の発展の道、発展方法は似通っているだけである。中国の60年の発展の道のりはそれが先進国であれ発展途上国であれ、いずれも未だかつて経験したことがなく、中国の未来の道は必ず他と異なることが定まっていたことを歴史から知ることができる。次の30年のスタート地点に立って断言できることは、思想のさらに進んだ開放がなければさらに進んだ制度の革新はなく、中国は新しい輝きを生み出すことはできないということである。これまでの歴史の経験をまとめ、これまでの思想を再び述べ、これまでの国策に再び言及することは、中国の将来にとって重要で現実的な意義を持ち、長い歴史的価値を再認識するものである


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