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中国知的財産権の司法保護が直面する問題及び分析

(西安交通大学法学院 副院長) 2009年11月26日

馬治国

馬治国(Ma zhiguo):西安交通大学法学院副院長 教授

博士研究生指導教師。陝西省哲学社会科学重点研究基地-知的財産権研究センター主任。西安交通大学知的財産権司法鑑定所主任。弁護士、調停員、知的財産権司法鑑定人。1959年7月生まれ。2003年西安交通大学管理科学および工学専攻、管理学博士。主な研究対象は科学技術法、知的財産権法学。これまでに法学専門著書、教材10点を出版、学術論文150余編を発表。国家社会科学基金プロジェクト、国家863ソフトウェア重大特別課題、国家ソフトサイエンス(政策要綱)プロジェクト、博士点基金プロジェクトを主宰、国家知的財産権戦略に参加。現在、中国科学技術法学会副会長、中国法学会知的財産権法学会理事、中国知的財産権研究会理事、中国法学会経済法研究会理事、中国法学会民法研究会理事。2005年、「政府特殊補助金を享受する国務院の専門家」の栄誉を獲得。2008年第一回「中国科学技術法学突出成果賞」を獲得。

要旨

 知的財産権の司法保護とは、権利侵害者に対し民事、行政及び刑事面における法的責任の追及を行うことを指す。知的財産権権利侵害の民事、行政責任及び刑事責任には実質的な区別はなく、程度の違いのみが存在する。一般の権利侵害行為に対しては、民事と行政の法執行を用いて救済し、権利侵害の程度が深刻なものに対しては、刑事上の手続きを発動させる必要がある。刑事保護は現在の中国の知的財産権司法保護におけるウイークポイントとなっている。保護する度合いが高い方法として、権利侵害の責任を刑事化すべきであるが、知的財産権が濫用され、技術イノベーションが阻害されるのを防ぐためには、過度の保護を防ぐことも必要である。刑罰を軽くすることで調整を行い、寛大と厳罰をもって互いに補い合うバランスを実現することが、当面の主な課題である。

1.中国の知的財産権司法保護の現状分析

 知的財産権権利侵害の危害は極めて深刻であり、技術イノベーションの原動力と源泉に危害を及ぼす問題となっている。その社会に対する危害の程度は麻薬類の販売に匹敵する。麻薬類が危害を及ぼすのは個別の人の生体であるが、知的財産権の権利侵害が蔓延し危害を加えるのは、国家や民族の創造能力であり、知的財産権の権利侵害者が得る利益の大きさは、なおさら麻薬類販売と文化財横流しと同列にして論ずることが出来る。また、潜在的な権利侵害者にとっては抑えることのできない誘惑の力を持ち、その利益が法外、しかもリスクの低い業種に自ら進んで危ない橋を渡り、一か八かの勝負に走り、後ろへ引くことも出来ず、権利侵害の波は絶えず強大になっていく勢いが見られる。これらはマルクスが「資本論」の中で記述していた「資本」の状況と似ており、暴利を貪るため、資本は進んで法律を蔑ろにし、自ら危ない橋を渡り、天下の謗りを顧みることをしない。現在は、資本は進んで好き放題にすることはなく、その反対に21世紀の一番重要な資本、即ち知識経済時代の特殊な資本である知的財産権(「知的資本」とも称する)は、自分で自分の身を保てないだけでなく、侵犯される対象となっている。権利者と法執行、司法機関をして、対応に奔走して疲労する受身の進退きわまる境地に陥らせている。この種の転倒した現象は、人々を憂えさせている。この種の現象を変える根本的な道筋は、知的財産権の司法保護を絶えず、適切に強化することにあり、最も効果的で直接的な措置は、適切な刑事・司法保護を一歩進んで探究・模索することである。

①中国の知的財産権司法保護の範囲

 中国の知的財産権司法とは、行政による法執行以外の、司法機関を法執行の主体とする保護手順である。国際条約と国外法の「法執行」に相当する。中国の知的財産権司法に対し影響が最も大きいのは「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(以下TRIPSと略)である。「知的財産権の行使」を当該協定の第三部に特別に設け、法執行の手続的な問題を計5節で規定している。全体的な義務を除き、具体的な法執行の措置は次のように分けられている。

  1. 民事上の手続き(公平・適切な手続き、証拠の提供、差止め命令、損害賠償、他の救済措置、情報に関する権利、被申立人に対する賠償)。
  2. 行政上の手続き(民事に基づく)。
  3. 暫定措置(司法を主とし、行政は司法に基づく)。
  4. 国境措置。
  5. 刑事上の手続き。

 中国の法においては、知的財産権保護は行政と司法の2つの部分に分けられる。行政保護は行政機関を通じて実現されるものであり、ここでは詳述しない。司法保護は民事司法、行政司法及び刑事司法の3種類の基本的手段に分けられ、保護の具体的なプロセスと段階は異なった手続法の規定に従って実現される。中国の法律では、司法機関主体の分類に従い、民事及び行政司法は権利者が司法の手続きを開始し、人民法院(裁判所)によって司法のプロセスが終結する。刑事司法は公安機関、検察機関及び法院がそれぞれ介入し、最終的には法院によって終結する。知的財産権の司法保護とは、司法の手続きをスタートさせることにより、知的財産権侵害の行為を実施した人に対して制裁を行い、知的財産権権利者の権益に対する保護と救済を実現することである。

②中国の知的財産権司法保護の現状紹介

 中国の知的財産権司法保護が始まったのは20世紀の80年代初頭であり、そのメルクマールとなるのは知的財産権法律の制定・実施である。1982年8月23日に「中華人民共和国商標法」(1983年3月1日施行)、1984年3月12日には「中華人民共和国特許法」(1985年4月1日施行)、1990年9月7日は「中華人民共和国著作権法」(1991年6月1日施行)がそれぞれ採択された。知的財産権の主幹となる法律の制定・実施は、司法保護を現実のものとした。

 知的財産権に対する中国の刑事保護の始まりは、1979年に制定され、1980年から施行された「中華人民共和国刑法」であり、当時は商標冒用の罪を処罰するだけであった。1994年7月に全国人民代表大会が「著作権侵害の犯罪を懲罰することに関する規定」を公布して以降、知的財産権の全面的な刑事保護制度が確立されるようになった。さらに、刑事司法保護のニーズが急速に増加するのにともない、主として2004年12月8日の「知的財産権侵害刑事案件を取扱う際の具体的な法律適用に係る若干の問題に関する最高人民法院、最高人民検察院の解釈」の公布・実施、及び2007年4月4日に改めて公布された「知的財産権侵害刑事案件を取り扱う際の具体的な法律適用に係る若干の問題に関する最高人民法院、最高人民検察院の解釈(二)」に具体的に示されるようになり、知的財産権の刑事犯罪に打撃を与える法律適用の問題をして比較的良好な解決が得られるようにし、罪の確定、量刑基準の更なる明確化、刑事懲罰の正確性と効率性は一層向上した。

 WTO加盟後、中国の知的財産権保護の立法及び法執行は大変大きな進展を見ている。国内外の各タイプの知的財産権に対して、全面的な保護を与えている。保護の対象と方法はTRIPSが列挙している各タイプの知的財産権及び各種の保護手段を包含している。1994年以来、中国政府は「中国知的財産権保護状況」(白書)を連続15年公表しており、その中には、いずれも極めて正確なデータが示されており、近年、司法機関は知的財産権案件のデータ及び典型的な案例を毎年公表するようになっている。2008年の「国家知的財産権戦略要綱」の公布は、知的財産権保護が新たなレベルに高められたことを示しており、要綱制定の趣旨は、「中国の知的財産権創造、運用、保護及び管理の能力を向上させ、イノベーション型国家を建設し、小康(多少ゆとりのある)社会を全面的に建設する目標を実現させるため」であり、知的財産権の保護を戦略の一環とし、保護の水準と有効性を高めた。特に「知的財産権保護における司法の主導的役割を発揮させ」、「司法懲罰の力の度合いを大きくする」ことが強調された。中国の法院がこの30年来審判した知的財産権案件の数が急速に増加していることも、これが中国の一貫した態度であることを説明している。「2001年から2008年にかけ中国全国の地方法院が受理及び結審した知的財産権民事一審案件は141,968件と135,899件であり、年平均ではそれぞれ25.61%と25.57%増加した。2002年から2008年にかけて中国全国の地方法院が受理及び結審した知的財産権行政一審案件は4,546件と4,416件であり、年平均ではそれぞれ25.26%と29.28%増加した。1998年から2008にかけて中国全国の法院が受理及び結審した知的財産権刑事一審案件は5,271件と5,231件であり、年平均ではそれぞれ22.59%と22.77%増加した。現在、中国の法院が受理している案件は、すでにすべてのタイプの知的財産権の分野をカバーしており、知的財産権の創造、運用、保護と管理の全過程に及んでいる。」

③中国の知的財産権司法保護に存在する問題の分析

 上述のデータから、中国の知的財産権司法保護の歴史は30年にも届かないが、その払った努力と収めた成績は顕著なものであることが分かる。同時に、これらのデータはまた、現在、知的財産権権利侵害現象が比較的深刻な、民事、行政、刑事の三種類の司法のチャネルが受理した案件の年平均伸び率は24.49%であり、経済成長の水準をはるかに上回っていることを説明している。この種の現象と経済発展の状況は相互に連携したものであり、経済活動における知的財産権の地位が高まっているのにもかかわらず、具体的な保護水準はいまだ権利侵害を効果的に押さえる程度にも達しておらず、保護制度はなお一層の整備を行う必要があることを物語っている。

 知的財産権権利侵害の現状は、2008年の司法案件の数量及び増加率から説明することが出来る。2008年、中国全国法院の知的財産権審判作業には引き続き大きな進展が見られた。「全国地方法院が年間で新たに受理及び結審した知的財産権民事一審案件は合計24,406件と23,518件であり、新たに受理及び結審した知的財産権民事二審案件は合計4,7598件と4,699件、結審した知的財産権に関わる刑事案件は3,326件、判決で法的効力を発生しているのが5,388人、新たに受理した一審知的財産権行政案件は1,074件、結審したのは1,032件である。」 2008年のデータを用いて次のような比較を行った。

表1 全国地方法院が2008年に受理及び結審した知的財産権民事一審案件と2001~2008年との比較
  受理した知的財産権民事一審案件 結審した知的財産権民事一審案件
2008年案件数 24,406件 23,518件
2001~2008年案件数(年平均) 141,968(17,746)件 135,899(16,987)件
2008年の平均を超えた案件数 6,660件 6,531件
2008年の平均を上回る年間伸び率 38% 38%

 表1は、知的財産権民事権利侵害案件は8年間継続して増えているが、2008年は年平均増加率を上回り、権利侵害が進行している趨勢にあることを説明している。

表2 全国地方法院が2008年に受理及び結審した知的財産権行政一審案件と2002~2008年との比較
  受理した知的財産権行政一審案件 結審した知的財産権行政一審案件
2008年案件数 1,074件 1,032件
2002~2008年案件数(年平均) 4,546(649) 4,416(631)
2008年の平均を超えた案件数 425 401
2008年の平均を上回る年間伸び率 65% 64%

 表2は、知的財産権に関わる行政訴訟事件は民事訴訟事件と比べて伸びはより速く、7年間案件は絶えず増加しているが、2008年一年間の数は平均数量の65%を超えており、このタイプの案件は、いずれも権利の取得及び保護において行政管理部門が行った行政行為に対する合法性の問題に関わっており、権利者の権利意識の増強及び異なった原因によってもたらされた権利侵害紛争が増加していることを反映している。

表3 全国地方法院が2008年に受理及び結審した知的財産権刑事案件と1998~2008年との比較
  受理した知的財産権刑事一審案件 結審した知的財産権刑事一審案件
2008年案件数 1,432件 3,326件
1998~2008年案件数(年平均) 5,271件(479)件 5,231(475)件
2008年の平均を超えた案件数 953件 2,851件
2008年の平均を上回る年間伸び率 199% 600%

 表3は、知的財産権権利侵害の深刻さの程度が激しくなり、2008年に受理した案件は11年間の年平均値の2倍に達し、結審した案件は6倍に達していることを説明している。刑事司法保護は公安、検察及び法院の3つの機関が分業、協力して完成させるもので、最も重い犯罪であって初めて法院審判の段階に進むことになり、一部の軽微な犯罪行為は公安と検察の段階において終結する。従って、刑事案件の範囲と数量は実際には拡大理解する必要があり、以下のデータは非常に参考になる。

 「2008年、検察機関は検察の職能作用を十分に発揮し、知的財産権侵害の犯罪案件1,210件2,107人の逮捕を許可し、1,432件2,697人を起訴した。最高人民法院はまた知的財産権侵害の犯罪案件6件を監督・処理し、公安機関の知的財産権侵害の犯罪事件32件の立件、捜査を監督した。2008年、公安機関は刑事法執行の職能を十分に発揮し、一年間で合計1,455件の知的財産権侵害事件を摘発・逮捕、事件に関わる金額は総額でおよそ16.5億人民元に達し、犯罪嫌疑者2,642人を逮捕した。海賊版に打撃を与えることにおいては、権利侵害の海賊版等の類の不法出版物案件合計5,119件を摘発・逮捕し、案件に関係する要員8,771人を捜査・処分し、権利侵害の海賊版等の類の不法出版物1,391.7万点余を押収し、不法CD生産ライン7本を捜査・押収し、1996年以来不法CD生産ライン累計238本を捜査・押収した。」

 ここで使用したのは司法保護のデータで、これはすでに認定されている確定して疑いのない権利侵害案件であり、まだ大量の案件が司法の手続きに入っていない。従って、実際の権利侵害現象は、すでに知られているものよりさらに深刻である。

 司法保護がこのように成果を収めているのにもかかわらず、なぜ権利侵害現象はまだこのように深刻なのであろうか。最も根本的な問題は、司法保護がカバーする範囲と懲罰の力の度合いが権利侵害に対抗するのに不足していることにある。権利侵害行為は依然として暴利を手にしており、依然として存在し、増加している。司法保護の水準と権利侵害発展の足取りには一定の隔たりが存在している。21世紀の知的財産権侵害製品の製造・販売は、暴利を得られる業種となっており、その製造と卸売活動は極めて隠蔽されたものであり、捜査・処罰部門は必ず権力と能力を備えなければならず、そうして初めて任に堪えるようになるのである。過去の経験に頼っていた知的財産権行政法執行部門は捜査・処罰の仕事に堪えることができなくなっており、司法保護の範囲は拡大する必要がある。現在の知的財産権権利侵害の状況に基づくと、保護の範囲を改めて区分すべきであり、合法的な方式で隠された販売行為に対しては、民事司法救済を採用し、不法な露天場所の方式で販売する者に対しては、行政法執行の方式を採用して救済し、製造の根城またはすでに大規模に製造・販売連合体制を組織している者に対しては、刑事司法により打撃を与えるやり方を採用しなければならない。刑事手段で救済するやり方が占める比率は極めて小さく、これがまた権利侵害の制止が困難であることの主因にもなっている。

2.知的財産権刑事司法保護の強化の必要性

①国際条約の拠所

 TRIPS第61条の「刑事上の手続」は、知的財産権刑事法執行保護の専門条項である。中国はメンバー国として、立法はすでにTRIPSと一致しており、法執行の思考の筋道においても一致しており、具体的な措置も強化されているところである。

②国内刑事法律の規定

1. 「刑法」分則第三章第七節「知的財産権侵害罪」

第213条 登録商標冒用罪
第214条 登録商標偽造商品販売罪
第215条 不法製造、不法製造登録商標標章販売罪
第216条 特許冒用罪
第217条 著作権侵害罪
第218条 権利侵害複製品販売罪
第219条 営業秘密侵害罪

2. 「著作権侵害の犯罪を懲罰することに関する全国人民代表大会常務委員会の決定」

3. 「中華人民共和国刑事訴訟法」

4. 中国司法機関の関連の司法解釈

  1. 「著作権侵害の犯罪を懲罰することに関する全国人民代表大会常務委員会の決定」の適用における若干の問題に関する最高人民法院の解釈。
  2. 最高人民法院の「不法出版物刑事案件審理の際の具体的法律応用に係る若干の問題に関する解釈」。
  3. 最高人民法院、最高人民検察院の「知的財産権侵害案件を取り扱う際の具体的法律応用に係る若干の問題に関する解釈」(一、二)。
  4. 最高人民法院の「知的財産権審判業務を全面的に強化し、イノベーション型国家を建設するために司法保障を提供することに関する意見」第七条。
  5. 最高人民法院の「国の知的財産権戦略を貫徹実施する上での若干の問題に関する意見」。

③現有する刑事法律と政策が導く方向

 現在の刑事立法から見てみると、知的財産権に刑事保護を採用する傾向が明らかとなっている。具体的には刑事責任の敷居を低く下げ、出来るだけ当事者が刑事責任を追及する方式を選択し権利を守れるようにしていることに示されている。TRIPSの刑事法執行の措置は、中国の知的財産権刑事法執行が参照するものである。中国「刑法」の中では7つの罪名が列記されており、その中の特許冒用罪は基本的には実際と合致しておらず、このような判例を眼にすることは容易ではない。商標権、著作権、営業秘密侵害は比較的深刻であるが、刑法の罪状認定、量刑はまだまだ細分化が不足している。最高人民法院と最高人民検察院の司法解釈は知的財産権刑事司法制度の実施と整備を絶えず推進し、「二高」(最高人民法院と最高人民検察院)の2回の司法解釈は犯罪の敷居を絶えず引き下げ、懲罰の力の度合いを高めており、知的財産権権利侵害責任「刑事化」の傾向がはっきりと見られる。知的財産権民事権利侵害と犯罪の境界は権利侵害の損害の程度にあり、権利者の実際の損失または権利侵害者の不法所得の数量の変化が権利侵害の性質の変化を決定する。罪状認定基準の引き下げは、権利侵害行為がさらに多く犯罪化され、保護の力の度合いが強化されるようにしている。同時に、刑罰の種類の増加、特に罰金の適用、付帯する民事賠償の適用は、処罰の力の度合いも強化されるようにしている。

3.知的財産権刑事司法保護の理由と直面する問題

①国家戦略と世界経済体系加入実現の必要性

 中国は発展途上国として、経済発展と国の隆盛のための唯一の道は科学技術に依拠することである。中国が制定した「科学教育による興国」、「人材による強国」、「持続可能な発展」と「知的財産権」の四大戦略のその核心は知的財産権戦略であり、特に自己の知的財産権創造能力を増強しなければならないということである。知的財産権は総合的国力が具現されたものであり、また科学技術、経済発展の原動力と水準の標識でもある。いわゆる発展した国(先進国)では、主として知的財産権が発展しており、富の多少は占有する知的財産権の多少によって決定されており、中国の自主的知的財産権保有量は現在依然として比較的低い水準にある。イノベーションを奨励するためには、戦略的眼光と措置をもち、知的財産権権利侵害行為に厳しい打撃を与え、保護の力の度合いを大きくし、国際的な認可を勝ち取らなければならず、そうすることにより初めて技術の国際交流と知的財産権の国際貿易を強化することが可能となり、さらに国内企業と研究機構が自主的知的財産権の創造と利用の能力を高めるのを奨励することが可能となる。

②知的財産権の権利の性質の決定

1. 知的財産権の私権的性質

 知的財産権法学専門家の鄭成思氏が起草した「中国民法典」草案の「知的財産権篇」 第一条は「知的財産権は私権である」ことを明確にしている。私権と公権は私法と公法と同じように、紛争はあるものの、区別が難しいものではない。現実の生活における幾つかの現象は往々にして公衆に誤解を生じさせ、知的財産権は私権ではないとみなすようにさせている。例えば公衆と最も多く接触する商標権は、市場管理においては、商標冒用に打撃を与えることは工商行政管理部門が責任を負い、工商管理部門は商法違法行為に対して罰金を科すだけであり、権利者の民事権利が侵害を受けたかどうかを問うことはしておらず、権利者に対して賠償をどのように行うかは考慮してはいなかった。従って一般の公衆、また一部の工商行政管理要員も含めて、商標権権利侵害即ち罰金であり、行政処罰であると誤認させ、商標権権利侵害はさらに民事賠償をしなければならず、私権侵害の結果が深刻であるものに対しては、刑事責任を負わなければならないことを知らないのである。知的財産権の私権的性質に対するこの種の誤解は、また多くの間違った観点の影響を受けている。例えば「公」と「私」の2つの言葉であるが、中国では長期にわたって「私」が一般に貶義にとらえられ、「先公後私」(公を先にし、私を後にする)が社会主義の原則であり、私権は当然公権の要求が満たされて初めて口にすることができるものであると考えられてきた。知的財産権侵害の行為に対しては、法律が行政処罰を受けるものと規定している以上、先に「私権」に対する賠償及び権利侵害者の刑事処罰に対して注意を払うことはできない。

2. 知的財産権の無体財産権の性質

 中国では、知的財産権が無体財産であると認められてからまだ20年の歴史しかなく、中国五千年の文明史においてはこの概念はなかった。二千余年の長い封建社会発展の歴史において、現代化の工業は生まれておらず、従ってまた現代化の意味である「技術」もなく、中国の歴史においては「技芸」または「手芸」しかなかった。しかも封建制度に適応する伝承方法(例えば「男子に伝え、女子に伝えない」等の制度)があった。しかしこの種の「技芸」は知的財産権保護の対象ではなく、従って中国の普通の人々が無形の財産権を受け入れることは現代工業の発展が比較的早かった国と比べて困難なことであった。知的財産権が形成する工業的基盤と文化的基盤のいずれも中国には欠けており、当然として知的財産権の意識が形成される基盤が欠けていた。改革開放20余年来、知的財産権が最も早く認識されたのは財産権であり、従って、最も多くの利益を得るのは知的財産権の権利者ではなく、政府関係部門でもなく、一群の知的財産権を冒用した製品を製造、販売する者であり、これらの人々は知的財産権が価値のある財産権であり、従って知的財産権を冒用した製品を製造、販売すれば暴利を手にすることが可能であることを最初に認識することとなったのである。短い20年の間に、発展の速度が知的財産権冒用製品の製造、販売と比べられる業種は一つとしてなかった。もし国民経済が知的財産権冒用製品製造、販売の速度と水準に従って発展することができるとするなら、中国のGDP年間伸び率は8%ではなく、2桁の数字となるか、またはもっと速いものとなるであろう。残念なことに、知的財産権冒用製品の製造、販売が中国の技術、経済の発展にもたらした多大な破壊とマイナス面の影響について、真剣な研究を行った者はいないようである。知的財産権権利侵害製品の製造・販売が中国でこのように蔓延ったことは、中国の知的財産権保護の力と知的財産権権利侵害の力の力比べにおいて、権利侵害者の一方に敗れ、「邪気は一尺の高さ、正気は一丈の高さ」(邪悪は正義に勝てない)でなく、「正気は一尺の高さ、邪気は一丈の高さ」(正義は邪悪に勝てない)であったことを反映している。正気と邪気の適正でない位置関係を改めるためには、知的財産権の保護と権利侵害の関係を系統的に研究することが必要である。

③知的財産権権利侵害の特色の決定

1. 権利侵害と財産損失の間の関係についてしばしばなされる誤解

 第一に、人々は、損害をもたらしていないということを抗弁の理由として権利侵害行為を放任し、権利侵害者の責任を免れさせている。

 最も古い著作権侵害の形式は作品に対する模倣であり、この種の行為は権利者に対してはっきりとした財産的損失をもたらさない。例えばある大学院生は学位をだまし取るため、某学者の論文を引き写したが、当該学者は引き写しが行われたために収入が減少したことはなく、またその名声に影響を及ぼすこともなかった。その他の権利侵害にも類似の状況が見られる。例えば、他人の特許技術を勝手に使用したが、製品の品質が粗悪であり、市場を占領することがなく、権利者に対して経済的損失をもたらさなかった。また、権利者の技術秘密を剽窃したが、使用はしておらず、実際の財産上の損害ももたらさなかった。従って、現在の実際の損失をもたらしたかどうかを権利侵害であるかどうかの基準とし、財産損失を権利侵害成立の前提条件とするやり方は不適切であり、権利侵害と損失にそれぞれ対処すべきである。権利侵害を判断する基準は、違法に使用されたかどうかであり、この基準を法定化すべきである。損失がもたらされたかどうかは事実の問題に属しており、権利侵害の結果の問題であり、賠償額確定の際の参考とするだけである。

 第二に、知的財産権が無体財産であるため、権利侵害の結果は直接の財産損失ではなく、競争の優勢と市場の喪失であり、最終的に財産である。従って、容易に財産損失は不確定であるとみなされ、これによって追求が行われなくなる。

2. 知的財産権製品の低価格製造・販売は権利侵害者の利益獲得の最も主要な手段である

 他人の知的財産権を侵害することを通じて利益を獲得する最も有効な方途は知的財産権製品のコピーであり、もとの知的財産権製品を下回る価格でその冒用した知的財産権製品を販売し、当該製品の市場シェアを占領し、知的財産権権利者の販売量を減少させ、収益減少の損失を被らせるのである。

 冒用した知的財産権製品の製造・販売を抑止できない原因は、「正気は一尺の高さ、邪気は一丈の高さ」(正義は邪悪に勝てない)であり、権利侵害に打撃を与える力の度合いが小さく、権利侵害の誘惑の力の強さが大きいことにある。強大な利益に動かされ、潜在的な権利侵害者が次々と現実の権利侵害者に変わり、さまざまな手段で利益を追い求めることになるのである。

 知的財産権を冒用した製品を製造する方式はおよそ次の4種類のタイプに分けられる。

  • A.生産は相対的に集中し、組織は堅固で、設備は先進的であり、一切の活動はすべて秘密裏に行われる。主として大ロットの生産、卸売を行う。地下のCD生産ラインがこの種のタイプである。
  • B.合法製品を生産するだけでなく、権利侵害製品も生産する。例えば印刷工場が出版社に委託された書籍を印刷制作する他に、契約に取り決められた以外の一定数量の権利侵害書籍を増刷する。
  • C.知的財産権を冒用した製品を製造する専業の工場。例えばブランドの皮革製品、服装を生産する工場。
  • D.粗悪な製品に有名ブランドのマークを貼り付ける作業場。
知的財産権を冒用した製品販売の特色:

 知的財産権を侵害して利益を手にする上で最もキーポイントとなる段階は販売である。知的財産権を侵害した製品が出来上がった後は、販売があって初めて利益獲得を実現することが可能となる。前記のA類の一部が国外の委託を受けて製品を不法生産して国外に転売されるのを除き、その他の異なった特色の知的財産権侵害製品はいずれも販売を通す必要があり、そうして初めて最終的に利益を獲得することが可能となるのである。知的財産権侵害製品の販売における最大の特色は2つある。その一つは合法製品と異なった販売チャネルがあり、大部分の卸売チャネルは秘密の、半地下のまたは地下のものである。その二は小売ポイントが十分に分散し、全国各都市の隅々まで行き渡っていることである。

3. 知的財産権製品権利侵害製造・販売の特色

  • A.生産・販売チャネルが秘密及び隠蔽性を有しているため、一般には権利侵害製造・販売の行為を知ることは困難であり、権利侵害製品を製造・販売するグループを分裂させるに足りる奨励制度、即ち懸賞付き通報制度を確立しなければならない。その賞金は権利侵害グループ内部の内情に詳しい者の不法収益を上回るかまたはそれに相当するものでなければならない。
  • B.生産及び販売チャネルの秘密と隠蔽性は、知的財産権権利侵害製品の製造及び販売を捜査、処罰する機構に対して、捜査の権力を持つよう要求しているだけでなく、捜査の実力も持ち、各種の捜査・処罰に抵抗し拒絶する、反捜査能力を有する権利侵害勢力のさまざまな権利侵害者に対応するよう要求している。
  • C.権利侵害製品の小売が非常に分散しているため、1つの著名ブランドの権利侵害製品はほとんど全国各大小都市・農村でいずれも販売する者を見ることが可能であるが、それぞれの小売販売ポイントの権利侵害製品の数量はいずれも比較的少なく、次のような状況をもたらすことになる。

 第一に、それぞれの小売販売ポイントの権利侵害製品の被害総額が比較的小さく、刑事訴訟を提起する立件の基準に達しないだけでなく、さらには行政処罰の要求にも達していない。なおさら民事賠償訴訟に提起するには値しない。

 第二に、財産賠償の目的が達成しにくい。知的財産権は財産権として、その保護に対する有効性は主として権利侵害がもたらした損失に対する賠償に具体的に示されるべきである。しかし権利侵害製品の小売が分散し、製造と卸売のチャネルが秘密であり、調べ上げられた小売業者もまた極めて分散し、しかも被害総額が極めて小さいため、損害賠償額の計算が問題となる。外国有名ブランドのメーカーは往々にしてその販売額の減少を権利侵害によってもたらされた損失としているが、中国の法院は一般に販売額の減少は市場のさまざまな要素の影響を受けるものであるとし、これを取り上げることはしない。知的財産権製品の権利者が、知的財産権の権利侵害によってもたらされた損失金額をどのように計算するかは困難なポイントの一つであり、これに関連するもう一つの困難なポイントは、権利を侵害された者の損失と権利侵害に因果関係があることをどのように証明するかということである。市場経営における因果関係は複雑であり、信頼できる方法で証明することは極めて困難である。

 以上の権利侵害の特色のために、当事者が自己保護の能力を欠き、はては行政機関もどうすることもできないように決定づけており、従って、必ず捜査の権力と手段を有する刑事司法機関がなければならず、そうして初めて役割を果たすことが可能となるのである。

④刑事保護の特殊な効用

1. 奨励を上回る処罰の効用

 処罰の力の度合いを大きくすることは権利侵害抑止の主な方法の一つであり、知的財産権制度を用いてイノベーションを奨励することと刑法を用いて権利侵害に打撃を与えることを比べると、ここでは処罰の方が奨励よりさらに有効である。1,000人民元の褒賞で一つの特許の発明を奨励するやり方には、それほど大きな刺激作用がなく、もし特許権侵害に1,000人民元の処罰を科した場合、潜在的な権利侵害者を抑えることができる。反対に、処罰しなかった場合は、権利侵害を奨励することになる。軽すぎる処罰も一種の奨励である。

2. 潜在的権利侵害者への威嚇

 現在威嚇の作用を果たすことが可能な手段は刑事手段であり、高尚な知識階級が高い知能の知的財産権の犯罪活動、例えば技術的秘密の窃取、海賊版ソフトウェアの複製・販売に従事する場合、ひとたび捕まってしまったら刑事処罰を受けけるか、はては人身の自由を失ってしまうであろうと考える可能性があり、彼らは必ず熟慮した後で実行に移すことになるであろう。潜在的な組織犯罪嫌疑者は、その方針を決定する者がどんなに個性をもっていたとしても、公安機関の尋問に直面してはやはり控えめな態度をとるようになり、自分の結末を予期するようになり、自己の行為に対して責任を負うようになるのである。従って、刑事保護の力の度合い大きくしなければならない。中国外商投資企業協会品質優良ブランド保護委員会が毎年発表する「年度知的財産権保護最良案例賞」の内、多くが刑事保護の案例であり、この種の手段の有効性を十分に説明している。

 刑事調査を経ることによって、権利侵害製品製造・販売の手段と権利侵害行為の法則を徹底的にはっきりさせることが可能となり、権利侵害をさらに効果的に防止できるようになるかまたは権利者及び政府が実際により適した保護措置と救済手段を制定するのに有利となる。

3. 組織的権利侵害の抑止

 知的財産権の組織による犯罪の危害性は個人犯罪を上回る。組織犯罪は組織的で、管理経営の規模が大きく、健全な生産と営業販売システムにより、市場を占有する能力が強い。権利侵害の告発を受けた後の対抗能力も個人に比べて強力であり、従って、往々にして権利者に致命的な影響を及ぼすことになる。単位の知的財産権権利侵害行為に打撃を加えることは、権利者と市場競争の秩序を守る上での重点である。

4. 知能犯罪の増加の抑止

 いわゆる知能犯罪とは、知的財産権権利侵害者が伝統的な意味での犯罪嫌疑者と異なり、彼らは知識、技術を擁し、極めて高い社会的地位を享受し、一部の者は知的財産権を合法的に掌握する管理要員または技術要員であり、不法な利益を獲得するために権利侵害、例えば企業の技師または技術開発要員が単位の技術を他人に披歴またはその他の企業に直接売り渡してしまうという行為がしきりに発生することを指す。この種の犯罪は隠蔽性が強く、証拠を手に入れることが困難であり、防ぐに防ぎきれず、危害は極めて大きい。この種の職業道徳に違背し、業界規範を破壊し、法律規則を踏みにじる行為は必ず厳しく罰しなければならない。

4.刑事保護の「程度」:軽刑罰化

 処罰は永遠に保護の目的ではなく、利益のバランスに到達するための手段である。法律は犯罪、特に利に赴く性格の犯罪を消滅させることはできない。知的財産権が社会の富であり、人々が希求する力強い市場競争の武器であることから、どうしてもこの種の武器を手に握ろうとするようになる。適切な競争は法律が提唱すべきものであり、競争の規則に違反した人だけを制裁するもので、その中で競争の手段が規則に重大に違反し、公平、正義を深刻に破壊したものに対しては厳格な処罰を与える。この時初めて極端な刑事手段を適用することが可能となるが、それをつねに使用することはできず、適度ということを考えることが最良の処罰である。ということは、軽刑罰化がすなわちこのタイプの犯罪に対応する基本的な「程度」なのである。

 軽刑罰化の意味には次の2つの面がある。第一に、手続が簡易であることで、第二に、量刑が軽いことである。手続きが簡易であるということは簡便で行いやすく、適用して効率が高いことを指す。司法解釈においては手続のこの特色がすでに具体的に示されており、権利者が自訴の手続きを採用し、民事と刑事の手続きを並行して使用する等の措置を提唱している。量刑が軽いということがこのタイプの犯罪の特色の一つで、利益を手にするタイプの犯罪に打撃を与えることは、主として権利者に対する賠償を実現し、犯罪者の条件と基盤を剥奪することにあり、自由刑は目的ではなく手段である。自由を適切に剥奪し、厳格な賠償を採用し、利益獲得の目的を達成できないようにすれば、それで犯罪を抑止するのに十分であり、これが即ち適切な「程度」なのである。

5.目標実現のための努力の方向

①司法保護の主導的役割の確立

 知的財産権権利侵害製品を捜査・処罰する任務は司法機関によって完成されるべきであり、行政機関にはその任に堪える術がない。中国の「特許法」、「著作権法」及び「商標法」はいずれも、権利が侵害を受けた場合、権利者または利害関係者は人民法院に提訴することが可能であり、また行政管理部門に処理を請求することも可能であると規定している。これらの規定の前提は、権利者が権利侵害者をすでに探し出していることにある。誰が権利侵害者かが分からない知的財産権権利侵害案件である場合、3つの法律はいずれも誰が受理するかを明確にしていない。そして大量の知的財産権製品の権利侵害案件は、いずれも誰が権利侵害者か分かるすべがなく、ただ権利侵害製品が発見されるだけで、誰がニセ物を製造したかを被権利侵害者に言うように求めるのは不可能なことである。そして知的財産権権利者の同意を経ていない権利侵害製品の存在が、また現在の知的財産権権利侵害の最も主要なものなのである。この種の状況においては、捜査の手段だけが初めて役割を発揮できる。公安には完備した案件受理、捜査・処罰の制度があり、中国の深圳市、陝西省では専門の知的財産権警察の組織がすでに確立されており、比較的良好な効果を収めている。特に陝西省はここ数年の間に典型的な例を示しており、他の地域が参考にすることが可能な成功の経験を有している。公安部経済犯罪捜査局副局長が「2008中国知的財産権刑事保護フォーラム」において「知的財産権刑事保護においては、刑事の法執行をもって行政の法執行をリードしなければならない」7 との見方を提起したのはやはりこうした考えから出たもので、さらに努力して、制度を完全なものとすることで実現すべきである。

②刑事上の手続きをスタートさせる上での基準の正確な把握

 「刑事訴訟法」第83条に対する理解は、「公安機関または人民検察院は犯罪の事実または犯罪の嫌疑者を発見したら、管轄の範囲に従って立件・捜査を行わなければならない」である。公安機関の立件基準の総合的な規定については、1979年の古い基準しかなく、新基準はまだ制定を見ていない。一部の個別の罪の立件基準、例えば「証券犯罪」、「社会秩序攪乱罪」等しかない。基準があったとしても量の基準であり、しかも捜査が行われる前は、量も不確定である。従って、立件でさらに重要なことは「質」の問題を把握することである。即ち、犯罪発見の事実をどのように理解するかということであり、この「事実」は「確定した基準」に属するのか、それとも「可能である基準」に属するのかである。可能である基準と理解すべきであり、さもなければ、捜査手続き全体がいずれもそれ以上必要でなくなってしまう。事実の確定は捜査段階のさらに掘り下げた仕事である。即ち捜査の段階に強制的措置を使用することは、犯罪嫌疑者を「そうである」及び「可能性がある」 と判断することでもあり、疑いないと確定することではない。

③刑事司法保護の証拠基準の整備

 第一に、案件受理の範囲の基準である。受理の範囲は拡大すべきであり、およそ証拠があって捜査権を使用する必要があると証明される案件はいずれも刑事司法の案件受理の範囲に属する。例えば権利侵害の源である知的財産権侵害製品を生産するメーカーを捜査・処罰する必要がある場合、刑事捜査が必要であり、刑事司法保護の範囲に属する。その他の行政及び民事の法執行は強制性に差があり、保護の目標を実現するすべはまるっきりない。まず行政または民事司法が介入し、犯罪現象を発見した後に、改めて刑事司法機関に移送するといった過去の方式を踏襲することはできない。知的財産権犯罪に打撃を与えるためには「事後に移送」から「事前に介入」に方向を転換しなければならない。

 第二に、立件の敷居の基準である。被害総額計算の基準は不法権利侵害製品の市場価格であるのか、それとも合法製品の市場価格であるのか。合法製品の価格で計算することは、我々が権利者の権利を侵害された知的財産権の真の価値を認めることを示すことになる。権利侵害製品の価格に従って計算した場合は、知的財産権を貶めるのと等しくなり、保護ではなくなる。現在公安部門の知的財産権製品権利侵害案件の捜査・処罰受理においては、被害総額立件の「敷居」に対して法律の規定がないのである。一方では各地が現地の状況に基づいて基準を自身で制定して公安部に認可を届け出ることが可能であり、もう一方では無体財産の特色に従って被害総額を計算しなければならないのである。およそ価値が市場においてすでに確定しているものについては、権利侵害者が売却した低い価格で計算することはできない。「捜査の資源を用いるかどうかについては、公安要員が裁量することが可能であり、立件の基準を固守するものではない」。

 第三に、公安、検察院、法院が証拠の基準を統一することである。知的財産権の犯罪は証拠の取得と運用の面において特殊な難度があり、案件に関わる各当事者は利益の関係のために、司法要員は知識、経験及び認識の角度の違いによるために、しばしば証拠に対してそれぞれが異なった理解を持ち、はては矛盾が生じ、案件の審理に影響するようになる。公安は犯罪を構成するとみなしたが、検察院が証拠不足であるとみなした場合、案件は法院に届かないで中途で失敗してしまうのである。主として統一した証拠の基準がないためであり、協調して制定するとともに、基準の統一を基礎として連動した法執行のメカニズムを実現する必要がある。

④営業秘密侵害案件の捜査・処罰の強化

 営業秘密が企業生存、発展の基礎であるため、営業秘密侵害の案件もまた知的財産権権利侵害における最も重大で危害が最も大きな事柄である。営業秘密は登録登記が行われていないため、主として権利者が自己の力で保護に当たるかまたは契約を通じて保護するようになっており、法律保護のバリアは相対的に脆弱であり、ひとたび侵害されると権利者の競争の優勢はたちまちのうちに喪失してしまう。従って、中国のここ数年来最大の知的財産権権利侵害案件は主として営業秘密であり、保護の方式は当然刑事司法を主とすべきである。中国陝西省の司法機関はこの件で成果を上げており、西安市法院は多くの典型的な営業秘密権利侵害案件に対して判決し、権利侵害者には有期刑の判決が言い渡され、さらに巨額の賠償の判決が言い渡された。

⑤海賊版製造・販売の行為、主として違法メーカーに与える打撃の強化

 海賊版は典型的でしかも普遍的な著作権権利侵害行為であり、不法生産、不法販売及び不法使用の3つの段階があるが、主な危害は不法メーカーによるものである。

6.結論

 中国の知的財産権司法保護は重要な時期に入っており、効果的な保護を行うためにはさらに強力な手段が必要である。刑事手段は最も厳しいものであり、適切に運用されれば最も有効である。不適切な使用は度を超えた刑罰化をもたらすことになり、過度の制裁はマイナス面の影響を生むことになる。従って、中国は知的財産権の刑事保護においては、比較的慎重である。しかし現在の権利侵害状況に基づくと、刑事保護の部分を適切に強化し、刑事化と軽刑罰化でバランスを取るようにすべきである。こうすることにより、中国の知的財産権保護の客観的要求及び司法保護効力向上の実際状況に比較的合致することになる。


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