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中国における「国家知的財産権戦略要綱」の策定・実施

2009年11月12日

徐瑄

徐瑄(Xu Xuan):曁南大学法学院教授、知的財産権学院副院長、
知的財産権学科主任

1962年5月生まれ。広州市人大代表、広州市人代財経委員会委員。国の社会科学基金特別委託プロジェクト(08@zh003)「科学的発展観を貫き、知的財産権戦略を実施することについての研究」首席専門家。2001年 北京大学法学院博士取得。中国社会科学院法学研究所ポスドクを経て現職。主な研究分野は知的財産権関連の法学、法理学、法哲学(マルクス主義立憲政治哲学)及び法学、管理学、法経済学等の異なる学問分野に跨る基礎分野。知的財産権の教育と科学研究に従事。知的財産権法修士課程指導教官。技術経済・管理学博士課程指導教官。知的財産権対価理論の枠組みを打ち出す。「中国社会科学」、「中国法学」、「中外法学」等の刊行物に多数の論文を発表。中国法学会知的財産権研究会常務理事、中国知的財産権研究会理事、中国科技法研究会常務理事、広東知的財産権法研究会副理事長、広東省法理学会副会長。上海経済・法律研究所特別招聘研究員を兼務。

 中国国務院が2008年6月5日に「国家知的財産権戦略要綱」を発表し、直ちに実施してから既に1年余りが経つ。これは中国の知的財産権制度整備における今一つの一里塚となる。本論文は主に「要綱」が発表された法律的背景、「要綱」が言及している知的財産権の立法任務及びこの1年来の実施状況を紹介する。

 「要綱」の策定は、中国の知的財産権立法の法律的背景に根差しており、即ち戦略要綱は中国の知的財産権制度整備を踏まえて生まれたものである。

 知的財産権の制度整備は国の知的財産権戦略の策定と実施のための基礎を定めるものである。中国の知的財産権立法は1970年代末から1990年代初めにかけての初期整備、1990年代初めから21世紀初めにかけての発展、及び2001年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟前後における完備という3つの段階のプロセスを辿ってきた。この30年前後の間に、知的財産権を保護するための全面的な立法作業が完了した。

 第1段階は制度作りの初期段階である。中国は知的財産権制度のない状態から知的財産権保護の基本的制度を作り上げるまでに10年の歳月を費やした。1970年代末から1990年代初めにかけて、中国は「商標法」、「特許法」、「著作権法」、「不正競争防止法」等の法律を次々と公布し、一連の重要な知的財産権関連の国際条約に加入した。これらの知的財産権保護制度の確立により、中国では知的財産権法律制度の基本的な枠組みが一応完成した。これは中国がWTOに加盟するため、また、加盟後にその約束を履行するために進めた立法作業である。

 第2段階は充実を図る段階である。1990年代初めから21世紀初めにかけて、中国は既存の知的財産権関連の法律・規範を手直しすると同時に、「コンピュータソフト保護条例」、「音声・映像(AV)製品管理条例」、「植物新品種保護条例」、「知的財産権税関保護条例」、「特殊マーク管理条例」等の法規を公布し、さらに一連の関連実施細則と司法解釈を発表した。こうして知的財産権保護の法律制度は充実したものになった。

 第3段階は補充立法の段階である。この段階は2001年の中国のWTO加盟の前後にあたり、WTO加盟と社会主義市場経済確立の要請に応えるため、既存の知的財産権関連の法律・法規と司法解釈について全面的な手直しを進める一方、「集積回路(IC)レイアウトデザイン保護条例」、「オリンピックマーク保護条例」を補充・公布した。立法の目標は「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(即ちTRIPs協定)及びその他知的財産権関連の国際ルールに合わせることであった。各級の官庁と司法機関は国際ルールに合致し、分類も充実した一連の官庁規則、規範的文書及び司法解釈を次々と発表し、各法律・法規が効果的に執行できるようにした。

 これらの立法作業は国家知的財産権戦略を策定するための制度面での基礎を固めるものであった。

 国家知的財産権戦略の策定は、国のレベルから知的財産権を全面的に保護し、社会の各分野で知的財産権制度が全面的に運用されることを狙っている。中国では知的財産権制度の確立からまだ日が浅く、科学技術と文化のイノベーションを奨励し、市場競争の秩序を保持する等の面でその役割がまだ十分に発揮されていないため、権利侵害、海賊版等の行為がしばしば起きていた。こうした状況の下、中国政府は国家知的財産権戦略要綱の策定に取り掛かった。その目的は知的財産権制度に社会・経済の発展を促す役割を発揮させることにあった。2005年初め、戦略の策定が国務院の活動スケジュールに組み込まれた。

 2005年初め、国務院は国家知的財産権戦略策定作業指導グループを設置し、戦略策定作業をスタートさせた。「全国の力を結集し、全国の知恵を結集する」という方針の下、国の知的財産権主管省庁と各関係省庁がリーダーシップをとる作業システムが出来上がり、中国の知的財産権関連の意思決定層、学術界及び司法、企業、貿易分野の精鋭が次々と集まった。30余りの部門、数百人の専門家がこれに参加し、3年前後を費やして、中国の「国家知的財産権戦略要綱」を完成させた。2008年4月9日、温家宝首相が招集した国務院常務会議は「国家知的財産権戦略要綱」を審議し、原則的に採択した。さらに手直しを加えた後、2008年6月5日、国務院は「国家知的財産権戦略要綱」を発表し、即日実施した。

 国の知的財産権戦略を実施する綱領的文書となる「国家知的財産権戦略要綱」の発表は、中国の知的財産権戦略の実施が正式にスタートしたことを示している。この戦略要綱は前文、指導思想と戦略目標、戦略的重点、特定の任務、戦略措置の各部分から成り、計65条、全文約7,600字。同要綱は知的財産権戦略の全体的任務を手配し、7つの特定任務と9つの重点措置を確定した。知的財産権の法制整備を急ぎ、その保護状況を改善し、2020年までに中国を知的財産権の創造・活用・保護・管理の水準が比較的高い国に築き上げることを目指すとしている。形式を見ると、国家知的財産権戦略の策定は1つの「要綱」と20の専門テーマに分かれる。「要綱」は知的財産権戦略の総論部分である。専門テーマは「要綱」の策定に必要な土台作りをする一方、「要綱」の導きの下で一層の推進と深化を図るものである。20の専門テーマはそれぞれ知的財産権戦略のマクロ問題、知的財産権の主な類別、知的財産権の法制整備、知的財産権の重要な管理段階、知的財産権の重点業種という5つの側面からその創造、活用、保護、管理について研究を繰り広げる。

 注目に値するのは、中国の国家知的財産権戦略要綱の中で、今後5年間の戦略の重点的内容が示され、具体的手配が行われていることである。

1. 知的財産権制度を充実させる。その中には法律、行政法規の制定と整備が含まれている。具体的には次の通り。

  1. 知的財産権の法律・法規を一段と充実させる。特許法、商標法、著作権法等の知的財産権専門法律と関係法規を急いで改正する。遺伝資源、伝統知識、民間芸能及び地理的表示等の立法作業に適時に取り組む。知的財産権立法の整合性を図る作業に力を入れ、法律・法規をより実施しやすいようにする。不正競争防止、対外貿易、科学技術、国防分野の法律・法規中の知的財産権関連の規定をより完全なものにする。
  2. 知的財産権の法執行・管理体制を整備する。司法保護システムと行政法執行システム作りを強化し、知的財産権保護における司法の主導的役割を生かし、法執行の効率と水準を高め、公共サービスに力を入れる。知的財産権の行政管理体制改革を深化させ、権利・責任一致、合理的分業、科学的意思決定、円滑な執行、強力な監督の行われる知的財産権の行政管理体制を作り上げる。
  3. 知的財産権の経済、文化、社会政策における誘導的役割を強化する。産業政策、地域政策、科学技術政策、貿易政策と知的財産権政策とのつながりを強める。関連産業の発展に適した知的財産権政策を策定し、産業構造調整との最適化を図る。それぞれの地区の特色に合わせて、知的財産権分野の助成政策を充実させ、地区の特色ある経済を育て、地域経済の釣り合いのとれた発展を図る。重大科学技術プロジェクトの知的財産権関連作業の仕組みを作り、知的財産権の取得と保護を重点に全過程追跡サービスを実施する。対外貿易に関連した知的財産権政策を充実させ、対外貿易分野の知的財産権管理体制、事前警報・緊急対応の仕組み、海外での権利保護の仕組み及び紛争解決の仕組みを確立・整備する。文化、教育、科学研究、衛生各政策と知的財産権政策の協調・整合性を図り、公衆が文化、教育、科学研究、衛生の各活動で法に従ってイノベーションの成果と情報を合理的に利用する権利を保障し、その成果の合理的共有を促す。公共の危機に対応する国の能力を保障する。

2. 知的財産権の創造と活用を促す。具体的要求は次の通り。

  1. 財政、金融、投資、政府調達の各政策及び産業、エネルギー、環境保護の各政策を活用し、市場主体による知的財産権の創造と活用を指導・支援する。科学技術イノベーション活動における知的財産権の誘導的役割を強める。技術革新では合法的に産業化できることをその基本的前提とし、知的財産権を取得することをその追求目標とし、技術規格を作り上げることをその努力方向とする。国の資金援助で開発された研究成果の権利帰属と利益分有の仕組みを整える。知的財産権指標を科学技術計画の実施評価体系と国有企業の業績考課体系に組み入れる。知的財産権集約型商品の輸出比率を徐々に高め、貿易成長パターンの根本的転換と貿易構造の最適化・高度化を図る。
  2. 企業が知的財産権の創造と活用の主体となるよう後押しする。自主イノベーション成果の知的財産権化、商品化、産業化を促進し、企業が譲渡、許諾、抵当等の方法で知的財産権の市場価値を実現するよう導く。知的財産権の創造における大学、科学研究院・所の重要な役割を十分に発揮させる。若干の重点技術分野を選び、一群の核となる自主知的財産権と技術規格を作り上げる。大衆的な発明創造と文化イノベーションを奨励する。優れた文化作品の創作を促す。

3. 知的財産権の保護強化。知的財産権の侵害行為を処罰する法律・法規を改正し、司法による処罰の度合いを強める。権利者の自己保護意識と能力を高める。権利保護のコストを引き下げ、権利侵害の代価を高くし、権利侵害行為を効果的に抑制する。

4. 知的財産権の乱用防止。関連の法律・法規を制定し、知的財産権の境界を合理的に定め、知的財産権の乱用を防止し、公平な競争の行われる市場秩序と公衆の合法的権利を守る。この他、知的財産権文化の育成を打ち出した。具体的措置は次の通り。知的財産権の宣伝に力を入れ、社会全体の知的財産権意識を高める。知的財産権普及のための教育を幅広く繰り広げる。精神文明創設活動と国の法律普及教育の中に知的財産権関連の内容を追加する。社会全体で、イノベーションを名誉とし、剽窃を恥とし、誠実・信義を名誉とし、盗用・詐欺を恥とする道徳観を広く発揚し、知識とイノベーションを学び、誠実に法を守る知的財産権文化を作り上げる。


 中国の国家知的財産権戦略は知的財産権の特定任務を定めた。特許、商標、著作権、商業秘密等についてそれぞれの具体的な目標と任務を定めている。

1. 特許
  1. 国の戦略的必要性を目安に、バイオ・医薬、情報、新素材、先進的製造、先進的エネルギー、海洋、資源環境、近代的農業、近代的交通、航空宇宙等の技術分野を先行させ、一群のコア技術の特許を取得し、中国のハイテク産業と新興産業の発展を支える。
  2. 規格関連の政策を策定・整備し、特許を規格に盛り込む行為を規定する。企業、業界組織が国際規格の制定に積極的に参画することを支援する。
  3. 職務発明制度を充実させ、職務発明者のイノベーション意欲をかき立て、また、特許技術の実施も促すような利益分配の仕組みを作る。
  4. 特許権付与の条件に従い、特許審査の手続きをより完全なものにし、審査の質を高める。不正常な特許出願を防止する。
  5. 特許保護と公共利益の関係を正しく処理する。法に従って特許権を保護すると同時に、強制許諾制度を整備し、例外制度の機能を発揮させる。また、合理的な関連政策を研究・策定し、公共の危機が発生した時、公衆が必要な財とサービスを適時かつ十分に得られるよう保証する。
2. 商標
  1. 商標権者と消費者の合法的権利を確実に保護する。法執行能力を強化し、盗用等の権利侵害行為を厳しく取り締まり、公平な競争の行われる市場秩序を守る。
  2. 企業が商標戦略を実施し、経済活動で自前の商標を使うのを支援する。企業が商標の中身を豊かにし、商標の付加価値を増やし、商標の知名度を高め、有名商標を作り上げるよう導く。企業が国際商標登録を行い、商標の権利を守り、国際競争に加わることを奨励する。
  3. 農業の産業化における商標の役割を十分に発揮させる。市場主体による商標の登録と使用を積極的に促進し、農産物の質的向上を図り、食品の安全性を保証し、農産物の付加価値を高め、市場競争力を強める。
  4. 商標管理を強化する。商標審査の効率を高め、審査期間を短縮し、審査の質を確保する。市場法則を尊重し、有名商標、著名商標、知名商標、ブランド製品、優良ブランドの認定等の問題を確実に解決する。
3. 著作権
  1. 報道・出版、ラジオ映画テレビ、文学・芸術、文化娯楽、広告デザイン、工芸美術、コンピュータソフト、情報ネットワークなど著作権関連産業の発展を後押しし、強い民族色と時代的特徴を持つ作品の創作を支援し、市場競争に加わりにくい優れた文化作品の創作を後押しする。
  2. 制度を充実させ、著作権の市場化を図る。著作権抵当、作品登録及び譲渡契約届出等の制度をさらに充実させ、著作権の利用方法を広げ、著作権取引のコストとリスクを引き下げる。著作権の市場化にあたり、著作権の集団管理組織、業種協会、代理機関など仲介組織の役割を十分発揮させる。
  3. 海賊版行為を法に従って処分し、その行為に対する処罰を強化する。海賊版製品の大規模な製造・販売・頒布行為を重点的に取り締まり、海賊版現象を抑える。
  4. 著作権保護がインターネットなど新しい技術の発展から受ける挑戦に効果的に対応する。著作権保護と情報伝達保障の関係を適切に処理し、著作権を法に基づいて保護すると同時に、情報の伝達を促進する。
4. 商業秘密。市場主体が法に従って商業秘密の管理制度を確立するよう導く。他人の商業秘密を盗む行為を法に基づいて取り締まる。商業秘密の保護と職業選択の自由、秘密に関わる者の競業制限と人材の合理的流動との関係を適切に処理し、職員・労働者の合法的権利を守る。
5. 植物の新品種
  1. インセンティブの仕組みを確立し、新品種の育成を後押しし、イノベーションの成果が植物の新品主権に転化されるようにする。新品種権を持つ一群の種苗業者の誕生を支援し、新品種保護の技術サポート体制を確立・整備する。新品種試験のガイドライン作りを急ぎ、試験に対する審査レベルを高める。
  2. 資源提供者、育種者、生産者、販売者間の利害関係を合理的に調整し、農民の合法的権利の保護を重んじる。種苗業者と農民の新品種権保護意識を高め、品種権者、品種生産・取次販売業者と新品種を使う農民が共に利益を得られるようにする。
6. 特定分野の知的財産権
  1. 地理的表示保護制度を充実させる。地理的表示の技術規格システム、品質保証システムと検査測定システムを確立・整備する。地理的表示資源の一斉調査を行い、地理的表示産品を助成し、地方色のある自然・人文資源の優位を現実の生産力に転化させる。
  2. 遺伝資源の保護・開発・利用制度を充実させ、その流出と無秩序な利用を防止する。遺伝資源の保護、開発、利用における利害関係を調整し、遺伝資源獲得と利益分有の合理的仕組みを築く。遺伝資源提供者の知る権利と同意権を保障する。
  3. 伝統知識の保護制度を確立・整備する。伝統知識の整理と伝承を後押しし、伝統知識の発展を図る。伝統医薬の知的財産権管理、保護、利用に関する調整メカニズムを整え、伝統工芸の保護、開発、利用に力を入れる。
  4. 民間芸能の保護を強化し、その発展を図る。民間芸能作品を発掘し、民間芸能の保存者と後続の創作者との間の合理的な利益分有の仕組みを確立し、関係する個人と団体の合法的権利を守る。
  5. 集積回路(IC)のレイアウトデザインの専有権を有効利用することに力を入れ、IC産業の発展を図る。
7. 国防の知的財産権
  1. 国防の知的財産権の統一的な調整管理の仕組みを作り、権利帰属と利益分配、有償使用、インセンティブメカニズム及び緊急事態下での技術の有効な実施といった大きな問題を重点的に解決する。
  2. 国防の知的財産権管理を強化する。知的財産権管理を国防の科学研究、生産、経営及び装備調達、後方支援、プロジェクト管理の各段階に組み入れ、国防の重大な知的財産権の掌握・統制能力を増強する。基幹技術のガイドラインを発表し、兵器装備の基幹技術と軍需・民需結合のハイテク分野で、一群の自主知的財産権を作り上げる。国防知的財産権のセキュリティと事前警報の仕組みを確立し、軍事技術協力と軍事品貿易における国防の知的財産権について特別の審査を実施する。
  3. 国防の知的財産権の効果的活用を図る。国防知的財産権の秘密保持・解除制度を整備し、国の安全保障と国防上の利益の確保を踏まえ、国防知的財産権の民生分野への移転を促進する。民生分野の知的財産権の国防分野での活用を奨励する。

 中国が国家知的財産権戦略を発表してから1年後、国家知的財産権局はその実施状況を世界に公表した。国務院は2008年6月5日に「国家知的財産権戦略要綱」を発表した後、10月9日、この戦略を実施するための省庁間合同会議制度を設けることに同意し、合同会議の全体会議が開かれた。国務院弁公庁は「国家知的財産権戦略実施任務作業分担」を印刷・配布し、全面的な戦略実施活動が正式にスタートした。それから1年が経過した。

1. 合同会議のメンバー団体は戦略実施活動を大いに重視した

 2009年以降、合同会議の28のメンバー団体は「2009年国家知的財産権戦略実施推進計画」で確定された240項目の作業任務を中心に積極的な活動を繰り広げた。これまでに212項目の任務が既に遂行され、27件の知的財産権関連の法律・法規が制定・改正された。また、40項目の主要な政策・措置が打ち出され、15項目の法執行活動が展開され、15の公共サービスプラットフォームが築かれた。それと同時に、知的財産権に関する宣伝・人材養成・対外交流活動が大いに繰り広げられた。具体的には次の5点にまとめることができる。

  1. 組織的指導を強化し、戦略実施のための付帯政策を定めた。各関係部門は戦略実施活動を大いに重視し、真剣に検討・手配した。工業・情報化部、司法部、国家工商行政管理総局(工商総局)、知的財産権局、総装備部は「要綱」を徹底させ、実行に移すための指導機関を設置し、各分野での知的財産権戦略実施に対する組織的指導を強化した。司法部、農業部、国有資産監督管理委員会(国資委)、工商総局、国家品質監督検査検疫総局(質検総局)、ラジオ映画テレビ総局、著作権局、林業局、知的財産権局、国防科学技術工業局、最高人民法院、総装備部は「要綱」を実行に移すための実施意見と具体的作業プランを策定し、関連の付帯政策を打ち出した。例えば、農業部は「農業知的財産権戦略要綱」を積極的に策定した。工商総局は「『国家知的財産権戦略要綱』を実行に移し、商標戦略を強力に推進することに関する意見」を策定・発表した。総装備部は「国防知的財産権戦略実施案」を検討・策定した。これまでに少なくとも15の省(1級行政区)が既に省レベルの知的財産権戦略要綱を確定している。
  2. 知的財産権の法律・法規を整備し、その良好な法治環境を築いた。法制弁公室、知的財産権局は特許法の第3回改正作業を完了すると同時に、「特許法実施条例」の改正作業に取り組んだ。法制弁公室、ラジオ映画テレビ総局、著作権局は現在、「ラジオ・テレビ局放送録音製品報酬支払い弁法(規則)」の制定作業を進めており、その支払い状況の概算を始めた。衛生部は「衛生知的財産権管理弁法」の改正作業をスタートさせ、また、「医薬衛生分野の重大科学技術特別プロジェクトに関する知的財産権管理弁法」を検討・起草した。環境保護部は「生物遺伝資源管理条例」の立法作業を続行中である。質検総局は「国家規格の特許関連規定」及び付帯の規格・規範制定作業を積極的に進めている。
  3. 市場主体が知的財産権の総合能力を高めるよう導き、その創造と活用を促した。発展改革委員会は「バイオ産業の発展加速を促す若干の政策」を公布し、バイオ技術の知的財産権保護の仕組みを整え、その知的財産権の審査を急ぐよう明確に求めた。また、「当面優先的に発展させるハイテク産業重点分野のガイドライン」を改定し、知的財産権と有名ブランドの創造、活用、保護を強化した。科学技術部は重大科学技術特別プロジェクトの知的財産権管理規則を起草中であり、各特別プロジェクトでそれぞれの特徴に見合う知的財産権戦略と管理モデルを定めるよう促している。超LSIの製造装置及びプロセス一式、大型航空機等の特別プロジェクトでは知的財産権作業プランが既にスタートした。工業・情報化部は重点業種・分野の知的財産権情報追跡・事前警報の仕組みを作り上げるとともに、知的財産権局と合同で業界別知的財産権戦略の関連作業を進めている。財政部は知的財産権への支援を強化し、関連の科学技術プロジェクト経費の中に知的財産権事務費を計上することを認め、また、科学技術重大特別プロジェクトの実施過程で事後補助の財政支援方式を採用することを検討している。さらに工商総局と共同で文書を印刷・配布し、知的財産権の資産評価を規範化した。国資委は「中央企業の知的財産権への取組み強化に関する指導意見」を印刷・配布し、中央企業が自社の知的財産権戦略策定を中心に据え、その知的財産権の総合能力を高めるよう求めた。中国科学院は「中国科学院研究機関知的財産権管理暫定弁法」を公布・実施し、科学研究院・所の知的財産権管理を強化した。
  4. 知的財産権保護を確実に強化し、司法と行政の法執行に力を注いだ。最高人民法院は「国家知的財産権戦略実施の若干の問題に関する最高人民法院の意見」を作成・実施するとともに、一連の司法解釈と指導意見を出し、知的財産権の司法による保護に一層の力を入れた。公安部は海賊版による権利侵害の違法犯罪行為を厳しく調査・処分した。2009年上半期は海賊版等の不法出版物を製造・販売する各種の治安・刑事事件5,231件を調査・処分し、違法犯罪容疑者1万1,000人余りを逮捕した。また、著作権局と共同で印刷複製企業に対する特別検査行動を起こした。商務部は海外での知的財産権保護を援助する仕組みを定め、「海外での知的財産権保護の強化に関する通知」を印刷・配布し、国外の有名な展示会場に知的財産権サービスステーションを設置した。文化部は文化市場の適正化に一層の力を入れ、2009年上半期には不法なAV製品約2,177万点を押収し、不法な書籍・新聞その他刊行物約549万点を没収した。税関総署は新しい「『知的財産権税関保護条例』実施弁法」を公布した。今年上半期、全国の税関は国内企業の自主知的財産権を侵害した疑いのある貨物106ロットを差し押さえた。ラジオ映画テレビ総局は違法海賊版を手に入れ、世に広める行為を法に従って取り締まり、ラジオ映画テレビ知的財産権保護協会の設立を後押しした。著作権局は「2009年ネットワーク権利侵害海賊版取り締まり特別行動プラン」を策定・実施し、インターネットでの海賊版を厳しく監視する特別活動を全面的に繰り広げた。林業局は林業分野の植物新品種保護活動を積極的に展開し、林業の知的財産権早期警報の仕組みを作り、知的財産権保護連盟を結成した。知的財産権局は合同会議の28のメンバー団体と共同で「2009年知的財産権保護行動計画」を策定し、8省庁と共同で「企業海外出展知的財産権管理弁法」を印刷・配布した。また、特許権侵害の詐欺行為等に対し、「雷雨」、「天罰」と名付けた知的財産権法執行特別行動を起こした。最高人民検察院は知的財産権侵害の犯罪取り締まりに一層の力を入れ、上半期は知的財産権関連の犯罪容疑者計946人(事件数585件)の逮捕を承認し、1,194人(671件)を起訴した。
  5. 知的財産権の宣伝教育を幅広く繰り広げ、知的財産権文化を育成した。中央宣伝部は中央の報道機関に意見を伝え、知的財産権宣伝活動の報道に一層の力を入れると同時に、知的財産権問題で世論を導くよう求めた。中央宣伝部、知的財産権局、国務院新聞(報道)弁公室等の28部門は4.26宣伝週間で一連の活動を繰り広げた。外交部は知的財産権関連の国際組織との協力を積極的に進め、知的財産権戦略の対外宣伝に力を入れ、その対外工作で影響力を高めた。教育部は知的財産権の内容を「全日制義務教育思想・品性カリキュラム基準」に盛り込み、専門学位を目指す大学院生の養成過程で知的財産権法オリエンテーションを開設し、関連大学が知的財産権の専門人材養成に力を入れるよう導いた。司法部は知的財産権遠隔法制講座を設け、法律修士の専門学位取得を目指す在職者を対象とする知的財産権教育オリエンテーション養成プランを策定し、全国の養成機関リストを発表した。人的資源社会保障部は知的財産権分野の職業資格問題の検討を開始するとともに、海外から知的財産権の人材と技術者を導入し、知的財産権知識の継続教育を進め、公務員の研修を行う活動を積極的に繰り広げた。
2. 地方の知的財産権戦略活動が速やかに繰り広げられた

 地方の知的財産権戦略の策定と実施は国家知的財産権戦略の有機的な構成部分であり、また、国家知的財産権戦略を効果的に実施するための道でもある。このため、国家知的財産権局は「要綱」の発表に先立つ2007年10月、「地方と国の知的財産権戦略の整合問題研究」をスタートさせ、地方戦略と国家戦略の整合性を図る課題に取り組んだ。2007年末、国家知的財産権局は「第17回党大会の精神を貫き、実行に移し、地方の知的財産権戦略策定にしっかり取り組むことに関する若干の意見」を印刷・配布し、地方が戦略の策定を進めるよう指導した。

 2008年6月5日に「国家知的財産権戦略要綱」が発表・実施されると、各地方はそれぞれの知的財産権戦略策定の歩みを速めた。現時点で、15の省・自治区・直轄市が既に地方知的財産権戦略の要綱又は相応の実施意見を策定・発表している。そのうち遼寧、上海、江蘇、山東、河南、湖南、広東、貴州、陜西、四川の10省・市は地方知的財産権戦略要綱を発表した。北京市、重慶市はそれぞれ「首都の知的財産権戦略の実施意見」と「知的財産権保護模範都市創設意見」を発表した。また、河北、雲南、青海3省はそれぞれ国家知的財産権戦略を徹底させる実施意見を発表した。その他の省・自治区・直轄市の戦略策定作業も精力的に進められている。今年から来年にかけて、全国の大部分の省・自治区・直轄市が地方知的財産権戦略を次々と発表する見込みだ。この他、これまでにハルビン、長春、瀋陽、済南、青島、武漢、宜昌、成都、貴陽、厦門、福州、深圳等の各関連都市もそれぞれの実情に合わせて知的財産権の戦略又は実施意見を発表した。戦略要綱又は実施意見を既に発表した省・市の一部はさらに戦略の実施に合わせ、多様な取り組みが見られる。上海、貴州、陜西等の省・市は戦略実施評価活動を繰り広げた。陜西、河南、四川、広東等の省は地方知的財産権戦略年度推進計画を策定した。そのうち河南省の推進計画は省政府の目標考課評議範囲に組み込まれた。江蘇省は知的財産権戦略モデル省の創設活動を繰り広げ、体制・仕組みと政策の革新モデル、ソフト環境作りの革新モデル及び知的財産権の創造能力向上、サービス能力向上等を通じ、地方知的財産権戦略を積極的に探究・実践した。これは全国のその他地区が知的財産権戦略をよりよく実施するための有益な参考となるものである。地方の知的財産権戦略は概ね国家知的財産権戦略の策定モデルに従い、省内の関係官庁から成り、主管副省長をリーダーとする戦略策定・実施指導グループを設けている。国家知的財産権戦略と異なるのは、地方の戦略が策定の過程で地域経済発展の特色に注目し、地方の主力産業と特色ある産業に対する知的財産権の促進的役割を重視していることだ。例えば、北京市の戦略はハイテクとハイエンド産業を切り口とし、科学・教育の強みを武器に、中関村の国家自主イノベーションモデル区作りを重視している。重慶市の戦略は知的財産権保護の重要性に注目し、知的財産権戦略の実施を通じ、知識産業保護模範都市を創設し、その企業誘致・資金導入のソフトパワーを強めることである。河南省の戦略は農業と食品加工業を切り口とし、知的財産権活動を通じ、経済大省から経済強省への転換を急ぐことである。湖南省、遼寧省、陜西省の戦略はそれぞれ湘株潭2タイプ社会試験区、環渤海経済圏、関中経済区と陜北エネルギー化工基地を軸に進めるものであり、区域から省全体に広げ、その経済発展を促す地方知的財産権戦略を策定した。地方戦略の策定・実施作業が徐々に進展するのに伴い、国家レベルの指導を求める地方の声がますます強まった。このため、今年5月、知的財産権局は江西省南昌で地方知的財産権戦略策定・実施研究討論班を開いた。発展改革委員会、科学技術部、国資委の各関係者は力強い支持を与え、国家区域計画、国家中長期科学技術発展計画及び国家知的財産権戦略企業専門テーマの策定・実施の経験についてそれぞれ説明し、地方の出席者と交流を行った。終了後、知的財産権局は地方の戦略策定・実施状況を整理し、国家レベルの一層の指導強化を求める地方からの出席者の意見・提案を参考にして検討を進めた。現在、「地方知的財産権戦略策定・実施個別指導意見(初稿)」が既に出来上がっている。次の段階ではこの初稿を手直しし、年内の発表を目指す予定。

3. 合同会議弁公室の調整サービス活動が顕著な効果を上げた

 第1に活動の仕組みを整え、連絡員制度と窓口制度を確立した。第2に連絡員会議を開き、2008年の活動を総括し、2009年の戦略実施活動を手配した。第3に各メンバー団体と共同で「2009年国家知的財産権戦略実施推進計画」を策定し、240条の具体的措置を打ち出し、各部門の責任分担を明確にした。第4に重大な知的財産権問題を巡って調査研究を進めた。国務院指導者の指示を実行に移し、企業の海外での会議・展示会参加における知的財産権問題、郵便関連の知的財産権問題、山寨携帯電話の知的財産権問題といった複数の分野と部門に跨る重大な問題を巡り、共同で研究・対応し、関連の政策文書を作成した。第5に戦略発表・実施1周年記念活動を繰り広げた。ハイレベル座談会を開き、ポスター、公益広告等の一連の宣伝活動を共同で繰り広げた。第6に情報通報の仕組みを確立した。2009年7月現在、「活動速報」35号、「活動の推移」32号を編集・発行し、23のメンバー団体から送付された情報54編、19の省・自治区・直轄市から送付された情報36編を採用した。多くの情報が国務院及び各級の指導者から注目され、指示を受けた。第7に国家知的財産権戦略ネットワークと関連のデータベースを構築し、社会の公衆に対する宣伝とサービスの度合いを強めた。

 その他、戦略実施1周年にあたり、中国税関は「戦略要綱」の実施で顕著な成果が上がったことを公表した。

 2009年5月現在、全国の税関が差し押さえた権利侵害の輸出入貨物は2万ロットを超え、権利の侵害に関係する貨物の数量は5億点余りとなり、いずれも前年同期を100%以上上回った。税関による知的財産権の保護は今や国の知的財産権保護システムにおける強力な「新手の部隊」となっている。

 近年、経済・社会の発展における知的財産権の役割は次第に顕著なものとなり、国際市場において、高い知名度と市場シェアは不可分の緊密なつながりがある。ますます多くの企業が知的財産権保護の重要性を認識し、それを企業の形の見えない資産の範囲に組み入れるようになった。知的財産権の保有数が急速に増えるのに伴い、知的財産権分野の国際交流も徐々に活発化している。知的財産権の水際での保護をどう強化し、中国の輸出商品の名声を高めるかは、税関がよく考えて解決すべき問題となっている。

 中国の知的財産権の創造・活用・保護管理能力を引き上げ、自主イノベーションを奨励し、自社ブランド企業の発展を促すため、2008年6月5日、国務院は「国家知的財産権戦略要綱」を印刷・配布し、全国の税関が国内企業の自主知的財産権に対する保護に一層の力を入れるよう指導した。統計によれば、「要綱」実施から1年の間に、全国の税関は国内企業の自主知的財産権を侵害した貨物計443ロット、権利の侵害に関係する貨物計1,700万点余りを差し押さえ、中国輸出商品の名声を効果的に守った。

 全国の税関は通関港の輸出入段階での知的財産権保護に一層の力を入れると同時に、税関による知的財産権保護の政策宣伝に力を注ぎ、中国のブランド製品に対し、知的財産権保護の届出を行うよう奨励・誘導した。そして企業が権利の保護面で抱えている困難な問題を解決するのに協力し、企業が権利保護の能力を高めるのを支援し、企業の自主イノベーションのためにサービスを提供した。2008年11月、税関総署は中国オートバイ商会と共同でシンポジウム「知的財産権の保護、自主有名ブランドの育成」を開催し、自主知的財産権の保護強化の道を探るとともに、「知的財産権を保護し、自主有名ブランドを育成しよう」とのアピールを出し、社会全体で共同行動を起こし、国内企業の自主知的財産権に対する保護に力を入れるよう呼び掛けた。

 この他、中国税関はその法執行における国際協力の仕組みを十分に利用して、国境を跨ぐ知的財産権を巡る違法犯罪行為を取り締まり、国際的な知的財産権保護における税関の影響力を発揮した。また、世界税関機構(WCO)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、上海協力機構(SCO)、国際刑事警察機構(ICPO)等の関係国際組織の知的財産権業務に積極的に参画している。他の国・地域の税関との知的財産権法執行の情報交換、研修、経験交流、人的交流等の面での協力も深まり、国際的な知的財産権保護問題において中国税関の影響力が発揮された。「知的財産権の水際での法執行協力強化に関する中米税関の覚書」、「中・日・韓税関による知的財産権保護行動計画」の実施で実質的な成果が得られ、関係国税関との権利侵害データ交換、事件調査協力等の面において知的財産権保護のための双方向的な法執行に力を入れた。2009年1月、中国税関と欧州連合(EU)税関は知的財産権保護協力行動計画に調印し、中国とEUの税関が手を携え、権利侵害貨物の国境を跨ぐ流通を取り締まるための協力プラットフォームを築いた。

 全力を尽くした活動は国内外の知的財産権の権利者から認められた。中国外国投資企業協会の優良ブランド保護委員会(QBPC)は法執行の効率が最も高い政府機関の選考を5年連続して行ったが、中国税関はいずれもその中に名を連ねている。

 税関総署が新たに改正した「『知的財産権税関保護条例』の実施弁法」が2009年7月1日から施行される。新「実施弁法」は税関の法執行の透明性を高め、一部の法執行手順を簡素化し、その効率を高めただけでなく、国境での保護措置の発動条件を一段と明確にし、権利者の権利乱用を防止しており、また、関係制度について立法上の技術的な整備と処理を行った。

2009年の特許法改正は戦略実施のための重大な措置である

 2008年12月27日、中華人民共和国第11期全国人民代表大会常務委員会第6回会議で「『中華人民共和国特許法』の改正に関する全国人民代表大会常務委員会の決定」が採択された。2009年10月1日から施行される。これは国家知的財産権戦略の実施における最も顕著な成果となる。最初の特許法は1984年3月12日に第6期全国人民代表大会常務委員会第4回会議で採択された。1992年9月4日の第7期全国人民代表大会常務委員会第27回会議の「『中華人民共和国特許法』の改正に関する決定」に基づき、1回目の改正が行われ、2000年8月25日の第9期全国人民代表大会常務委員会第17回会議の「『中華人民共和国特許法』の改正に関する決定」に基づき、2回目の改正が行われ、2008年12月27日の第11期全国人民代表大会常務委員会第6回会議の「『中華人民共和国特許法』の改正に関する決定」に基づき、3回目の改正が行われた。

 3回目の改正で新たに追加された内容には、遺伝資源利用の特別規定、同一の発明の2度の出願についての規定、許諾販売の特許権行使範囲への追加、特許許諾契約の締結方式、発明特許普及の制限、共有者の特許権行使の明確化、外国の特許出願者の中国での特許出願におけるハードルの引き下げ、国内の実用新案に対する保護の強化、特許行政部門の公報義務、意匠特許権の出願、特許実施の強制許諾、薬品類特許権の強制許諾、半導体技術の強制許諾等があり、いずれも規定が設けられている。そのうち特に注目に値するのは付与の条件と特許権の保護である。

1. 特許権付与の条件
  1. 新規性、創造性の定義。新特許法は新規性、創造性の定義について若干の変更を行い、次のように規定している。
    1. 新規性とは、当該発明又は実用新案が既存の技術に該当しないこと、また、いかなる団体又は個人も同様の発明又は実用新案について、出願日以前に国務院特許行政部門に出願しておらず、且つ出願日以降に公開された特許出願文書又は公告の特許文書に記載されていないことを指す。
    2. 創造性とは、既存の技術と比べ、当該発明に突出した実質的特徴及び顕著な進歩性があり、当該実用新案に実質的特徴及び進歩性があることを指す。新条文は「既存の技術」の概念を示している。新特許法第21条の定義に基づき、既存の技術とは、出願日以前に国内外において公然と知られた技術を指す。旧特許法に比べると、新規性と創造性の確定が一段と抽象的になり、特許行政部門の自由裁量の範囲が広がった。
  2. 意匠の審査条件がより厳格になった。新特許法第22条は意匠特許に合致する条件をより具体的で明確なものにし、同時に又、意匠特許出願に対する審査をより厳格にしている
    1. 特許権を付与する意匠は、既存のデザインに該当しないものとする。即ち、特許権を付与する意匠は、出願日以前に国内外において公然と知られたデザインに該当するものであってはならない。
    2. いかなる団体又は個人も同様の意匠について、出願日以前に国務院特許行政部門に出願しておらず、且つ出願日以降に公開された特許文書に記載されていないこと。
    3. 特許権を付与する意匠は、既存のデザイン又は既存のデザインの特徴の組合せと比べて明らかな相違があること。
    4. 特許権を付与する意匠は、他人が出願日以前に既に取得している合法的権利と衝突してはならない。
  3. 特許権を付与しない範囲。新特許法第25条は特許権を付与しない範囲を追加し、平面印刷物の図案、色彩又は両者の組合せによって作成され、主に表示としての機能を持つデザインを特許権を付与しない項目に入れている。特許権保護の面で、新しく改正された特許法は以下の内容を追加した。
    1. 特許盗用の処罰。新特許法第63条は盗用に対する経済処罰を強化し、特許を盗用した場合は、法に従って民事責任を問う他、特許管理部門が改善を命じるとともに、公告を出し、違法所得を没収するものとし、且つ違法所得の4倍以下の罰金を科することができると規定している。また、違法所得がない場合は、20万元以下の罰金を科することができ、犯罪を構成する場合は、法に従って刑事責任を追及するとしている。
    2. 管理部門への権限付与。新特許法第64条は特許管理部門に特許盗用行為に対する調査権限を与えている。同条の規定は次の通り。特許管理部門は取得した証拠に基づき、特許盗用被疑行為を取り締まる場合、関係当事者を尋問し、違法被疑行為と関連する状況を調査することができる。当事者の違法被疑行為の場所に対して現場検証を行う。違法被疑行為に関係する契約書、領収書、帳簿及びその他関連資料を閲覧・複製する。違法被疑行為と関連する製品を検査し、特許盗用の製品であることを証明する証拠があった場合、封印し、又は差し押さえることができる。賠償金額。新特許法第65条は旧法を踏まえ、特許権侵害の賠償金額計算式をより具体的に規定している。

      ① 権利者が権利侵害によって被った実際の損失に照らして確定する。

      ② 実際の損失を確定するのが困難である場合、権利侵害者が権利侵害によって取得した利益に基づいて確定することができる。

      ③ 権利者の損失又は権利侵害者が取得した利益を確定するのが困難である場合、当該特許許諾使用料の倍数を目安に合理的に確定する。

      ④ 権利者の損失、権利侵害者の取得した利益、及び特許許諾使用料を確定することがいずれも困難である場合、人民法院は特許権の種類、権利侵害行為の性質及び情状等の要素に基づき、1万元以上100万元以下の賠償を確定することができる。


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