トップ >第39号:中国の高等教育改革の現状および動向> 中国における高等教育が直面するチャレンジ及び改革の情勢

中国における高等教育が直面するチャレンジ及び改革の情勢

2009年12月22日

劉宝存

劉宝存:

1964年生まれ。2002年、北京師範大学国際及び比較教育研究院比較教育専攻を卒業、教育学博士の学位を授与される。現在、北京師範大学国際及び比較教育研究院院長、教育部人文社会科学重点研究基地北京師範大学比較教育センター主任、教授、博士課程指導教官。2007年、教育部新世紀優秀人材支援計画に選出される。

 現代世界において、知識は総合的な国力及び国際競争力を高める上でよりいっそう決定的な要素となっており、人材資源は経済社会の発展を促進する上で、より戦略的な資源となっている。高等教育は何千万人もの高い資質を備えた専門的な人材及びハイレベル・創造的な人材を養成し、科学技術の革新を図り、社会的なサービスを展開する重要な使命を担っており、経済社会の発展を促進し、自主的な創造能力を高め、社会主義現代化建設を推進する上で基礎的、先導的及び戦略的な役割を備えている。近年、中国の高等教育事業の発展は非常に大きな成果を挙げ、高等教育の改革は歴史的な困難を打破し、大学が経済社会の発展に向けたサービス提供能力は顕著に増強されている。しかし、高等教育の発展は革新的な国家建設、経済社会の発展及び優れた教育に対する国民の要求にはまだ完全に対応してはいない。新たな発展のチャンス及びチャレンジを目前にして、新たな高等教育の改革が現在育まれているところである。

1.中国の高等教育の発展及び改革は非常に大きな成果を挙げた

 10年来、党中央、国務院の正確な指導の下、中国の改革及び発展を両輪とし、その規模はかつて無いほど発展し、体制改革及び配置構造の調整は輝かしい成果を挙げ、社会主義現代化建設のために強力かつ有力な人材を提供し、科学技術革新のために重要な貢献を果たしてきた。同時に、将来的な高等教育の改革と発展のためにも貴重な経験を提供し、堅実な基礎を固めている。

1. 高等教育の規模は飛躍的な発展を実現し、世界で規模が最も大きい高等教育システムを構築した

 1999年、当時の経済社会発展の必要性及び高等教育に対する国民の強烈な願望に基づき、党中央、国務院は時世を見極め、高等教育の学生数を拡大するとの重大な方針を決定した。10年来、各地区、各部門及び大学側の共通の努力により、中国の高等教育の発展は非常に大きな成果を挙げた。1998年~2008年、全国の各種高等教育の全体としての規模は800万人足らず(そのうち一般大学の本科・専科在校生340.87万人)から2907万人(そのうち一般大学の本科・専科在校生2021.02万人)に達し、3.6倍となり、ロシア、インド及びアメリカを次々と追い越して世界第一位となった。高等教育の総入学率は9.8%から23.3%に上昇し、大衆化発展段階に突入した。

2. 高等教育体制改革は歴史的な困難を打破し、高等教育の改革と発展のために良好な体制保障を提供している

 近年、中国は“共同建設、調整、提携、合併”などの措置により、一連の学科が総合化され、人材が集中した総合的大学を構築し、中央と省の二元管理、省を主とする管理の新メカニズムを作った。大学の管理体制の改革は不断に深化し、大学サービスの社会化、校内人事及び分配制度、入学試験制度、卒業生の就業制度及び大学のコスト分担制度などの重大な改革は顕著な成果を挙げ、困窮学生への学費支援政策や制度も徐々に完備され、民間運営の高等教育も比較的大きく発展した。

3. 世界的な一流大学及びハイレベルな大学建設の成果は顕著であり、中国の高等教育の運営水準及び競争力の向上をもたらしている

 “第9期5ヵ年計画”から“第10期5ヵ年計画”期間、中国は“985プロジェクト”及び“211プロジェクト”を実施することにより、各種高等教育の全面的な発展を図るとともに、集中的に重点学科、イノベーション・プラットホームとイノベーション・グループ構築を強化したことで、一連の国際的に先進的な水準にある学科及び研究成果が生み出され、中国の特色を備えた高水準の大学が初歩的に形成され、世界的な一流大学との距離も縮まった。同時に、中国の高等教育の運営水準及び競争力の向上ももたらされた。

4. 大学は経済社会の発展のために重要な貢献を果たし、大学と社会各部門間の提携・相互利益関係は増強されている

 近年、大学は人材養成、基礎研究、ハイテク研究開発、技術移転及び産業化など大きな成果を挙げている。“第10期5か年計画”期間だけでも、全国の大学は1397万人もの卒業生を送り出し、経済成長、産業構造の調整及び科学技術革新推進のために人材面での支援を行っている。同時に、大学は累計で国家自然科学賞75件(全国受賞総数の55.07%を占める)、国家技術発明賞64件(全国受賞総数の64.4%を占める)、国家科学技術進歩賞433件(全国受賞総数の53.57%を占める)を授与された。そのうち国家自然科学1等賞が1件、国家技術発明1等賞が2件で、後者は中国において6年連続で国家技術発明1等賞の受賞者がいないとの局面を打破した。大学技術移転も新たな進展を見せており、経済社会の発展のために重要な科学技術面での支援を提供している。大学における哲学・社会科学繁栄計画の実施は、先進的な文化の発展、安定した社会の全面的な建設のために大きく貢献し、非常に良好に“シンキングベース”及び“シンクタンク”の役割を果たしている。

5. 高等教育の国際協力及び交流はより深まり、分野はより広くなり、国際競争力は不断に増強されている

 経済発展に伴い、国際化は高等教育発展の重要な課題の1つとなっている。中国は高等教育の国際協力及び交流を非常に重視している。現在まで、中国は世界の188の国及び地区と協力及び交流関係を確立しており、18の教育業務協議機構を設立し、若干の双方向及び地域的な教育協力及び交流プラットホームを構築し、締結並びに実行中の教育協力合意は154に達し、現在実施している政府間協力の教育プロジェクトは計77件である。イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなど26の先進諸国を含む34の国及び地区と学歴・学位の相互認証合意を締結しており、国連ユネスコ、国連児童基金、国連開発計画、世界銀行など40以上の重要な国際組織と教育協力及び交流関係を結び、大量の協力プロジェクトを展開している。長年の努力により、“大国を重点とし、周辺を先ず重要とし、後進国を基礎とし、多面的な国際組織を重要な舞台とする”、このような全方位、多階層、重点的かつ段階的な官民挙げての双方向、多面的で大きな局面が形成されている。中国の大学は世界著名な大学、科学研究機関と“強者と強者との協力”及び“強力分野での協力”を展開しており、国際競争力は増強され、国際的地位も顕著に向上している。

2.中国の高等教育は新たな発展のチャンス及びチャレンジに直面している

 世紀の変わり目は中国の高等教育が急速に発展した時期であり、中国の改革開放が不断に深化し、経済社会の発展が新たな成果を不断に勝ち取った時期でもある。長年にわたる急速な発展の後、中国の高等教育は新たな経済社会情勢に直面し、新たな発展とチャンス及びチャレンジに直面している。

1. 国家は科学教育立国及び人材強国戦略を確立し、革新型国家を建設する国家戦略目標を確立し、人材養成及び科学技術革新は国家発展の戦略的重点となっている

 現代世界において、科学技術は絶えず進歩し、知識経済はまだ始まったばかりであり、国際競争は日増しに激化している。世界各国は国家目標を実現し、新世紀における競争で戦略的に有利な地位を獲得するため、次々に科学技術の革新及びハイクラスの人材養成を国家の全体戦略の核心としている。党中央、国務院は相次いで科学教育立国及び人材強国戦略を打ち出し、イノベーション国家を建設する国家戦略目標を確立している。科教興国戦略では、科学技術が第一の生産力であるとの思想を全面的に展開し、教育が根本であるとの姿勢を堅持し、科学技術及び教育を経済、社会発展の重要なポジションに据え、国家の科学技術面での実力及び生産力転化を実現する能力を増強し、全民族の科学技術文化面での資質向上を図ることが要求される。イノベーション型国家建設では、科学技術革新を中国の経済社会発展の基本戦略とし、中国独自の革新能力を大幅に向上させ、中国の国際競争力を高めることが要求される。科教興国及び人材強国戦略の提出から、イノベーション型国家を建設する戦略目標の確立まで、中国が科学技術革新及び人材養成に基づき経済社会の発展を推進するとの基本的な国策が反映されている。高等教育の経済発展を促進し、社会的進歩をリードする上での先導的かつ基礎的な役割を十分に発揮させ、高等教育と経済社会との相互関係を強化し、経済社会の発展にサービスを提供する能力を不断に向上させるため、国家は高等教育への投資を大幅に増加し、それに基づき大学における人材養成及び科学技術革新を推進することにより、社会の進歩を促進し、総合的な国力を高め、発展の主導権を得ようとしている。

2. 社会経済と高等教育の持続的な発展のために強力かつ有力な支援及び保障を提供している

 どのような社会でも教育は一定の人力、物力、財力を基礎としなければならず、現実の生産力発展水準に応じて提供可能な物質的条件を前提及び根拠としなければならない。社会経済の発展は国家の教育経費の支出能力および個人の教育への支出を決定するため、教育発展の規模及び速度に影響を及ぼす。同時に、社会経済の発展は人材の人数、パターン、構造及び質に対する要求も決定するため、教育の発展に対して要求を提示する。

 改革開放の30数年来、中国の社会主義経済建設は大きな成果を出し、国家の財力も不断に増強されている。1978~2008年、中国の国内総生産は3624.1億元から300670億元まで増加し、経済総量が世界で占める割合は1.8から6.4%に上昇している。財政収入は1132億元から61317億元まで上昇し、外貨準備高は1.67億米ドルから1兆9460億米ドルまで増加しており、安世界第一位になった。都市住民の1人当り平均の収入は343元から15781元まで増加し、農村住民家庭の1人当り平均の純収入は133.6元から4761元まで増加し、都市農村住民の人民幣貯蓄残高は210.6億元から21.8万億元にまで増加し、1人当り平均では21.9元から16407元まで増加し、国民の生活は小康状態に達した。社会経済の発展は、高等教育の持続的な発展に有力な支援及び保障を提供している。

3. 国民が高等教育を受けることは調和社会を築く上げる重要な構成部分となっている

 党の第16期第6回全体会議において、社会主義調和社会を建設しなければならないと指摘している。党の第17回全国代表大会報告は、“引き続き思想を解放し、改革開放を堅持し、科学の発展を推進し、社会の調和を促進する”との重要思想を強調する際に、特に“発展は国民のためであり、発展は国民に依拠し、発展の成果は国民が享受する”ように努力しなければならないと指摘している。“全国民が、学びたい者には教育の機会が与えられ、求職者は仕事が得られ、病人には医療が施され、老後の生活は保障され、住むための住居が得られるように努力して、調和社会の建設を推進する”と提起する際に、教育問題を調和社会建設の優先的課題として捉えている。

 現代社会において、教育は人々に公平な競争、上を目指す機会を与え、社会的な不公平を低減させ、社会の調和のとれた発展を促進するものである。そのため、世界の多くの国では教育の発展を社会の公平を実現し、社会の調和を図る上での手段としている。中国の高等教育の飛躍的な発展に伴い、国民が高等教育を受ける機会は日増しに増加しており、大学入学難の問題がなくなり、入学難から良い大学への入学難に変化した。優れた大学が相対的に不足するという矛盾が突出している。そのため、良い大学の構築及び資源共有を加速させなければならず、社会主義調和社会の建設を促進しなければならない。

4. 高等教育の環境は大きく変化しており、高等教育改革は新たな突破、新たな措置を求められている

 現代における情報技術の進歩は我々の生活、仕事、学習、思考、価値観などを改変しつつあるとともに、教育教学の改革の突破口を与えている。情報技術を用いて大学の教育改革を推進しなければならない。そのため、情報技術人材養成を強化し、情報技術の応用水準を向上させなければならないと要求されている。

 中国の対外開放の更なる拡大、社会主義市場経済の大いなる発展及びインターネットなど新興メディアの急速な発展は、青年・学生が世界を理解し、知識を深め、視野を拡大する上で更に有利な条件を提供し、学習及び娯楽のために新たなルートを切り開き、青年・学生の全面的な発展のためにより広い空間を創出している。同時に、計画経済から市場経済に向けて転換する初期には、社会の一部領域で道徳性が欠如し、誠実さを失い、封建的な迷信、邪教や賭け事・性情報など社会的な害毒が流布され、拝金主義、享楽主義、極端な個人主義など一連の腐敗かつ遅れた文化や有害な情報もネットワークを介して伝播するため、青年・学生の成長にマイナスの影響が与えられる。社会主義調和社会の構築は学生の道徳教育及び教師の徳の涵養を図り、調和のある学園文化の建設を強化し、青年・学生の健全な成長のために良好な雰囲気を創出しなければならない。

 注意すべき点は、中国の大学生グループの構成要員は非常に大きく変化している。計画出産政策の実施により、一人っ子がすでに大学生の主体となっており、家庭は一人っ子の学歴及び将来の進路に対する期待値は高い。一人っ子は向上心を備え、正義感が強く、知識欲が高いなどの優れた点を持っているが、同時に、自己中心的で、責任意識が弱く、生活の自立能力が弱く、主体的な学習意識及び原動力が不足しているなどの欠点も存在している。従来からの人材観、教育観、質概念を単純に一人っ子に援用すると、理想的な効果を生むことは難しく、彼らのイノベーション意識、イノベーション能力及び実践能力の養成及び向上にも影響が及ぶ結果となる。このような重大な変化に適応し、学生により多くの関心を寄せ、大学生活及び学習に適応することを助け、併せて彼らの特徴に応じて適確な教育教学措置を制定し、彼らの健全な成長を促さなければならない。

3.中国の高等教育は新たな困難、矛盾及び問題に直面している

 経済社会の不断の発展及び国民の高等教育を受けることの要求の高まりに伴い、中国の高等教育は多くの新たな困難、矛盾及び問題にも直面している。

1. 教育投資が不足し、大学の運営条件は逼迫している

 近年、中国経済の持続的な発展に伴い、財政的な教育投資も不断に増加している。1998~2007年の間に、全国の教育経費は2949.06億元から12148.07億元に増加し、そのうち、国家の財政的な教育経費(各級財政からの教育支出、都市農村教育費付加、企業経営中小規模学校支出や校営産業減免税などの項目を含む)は2032.45億元から8280.21億元に増加している。予算内で教育経費が財政支出に占める割合は15.36%から16.26%に上昇し、国家の財政的な教育経費が国内総生産に占める割合は2.55%から3.32%に上昇した。投資の増加に伴い、大学の運営条件は不断に改善されている。1998~2008年の間に、全国における一般大学の教学・事務用建屋面積は4958m2から33576m2に増加し、教学・科学研究機器設備、価値は373億元から1842億元に増加し、図書資料は5.7億冊から16.5億冊に増加した。しかし、高等教育の財政面での経費投入が在学生の増加に追い付かないため、大学生1人当りの経費及び運営条件はいずれも減少傾向を示している。統計によれば、1998~2007年の間に、全国の一般大学生の1人当り平均の予算内事業費支出は6775.19元から6546.04元に減少し、全国の一般大学生1人当り平均の予算内公用経費支出は2892.65元から2596.77元に減少している。一般大学生1人当り平均の教学・事務用建屋面積は 本科大学は13.5m2から13.7m2に増加しているが、専科大学は18.0m2から14.7m2に減少している。一般大学生1人当り平均の教学・科学研究機器設備価値は、本科大学は5979元から8787元に増加し、専科大学も4411元から5305元に増加している。一般大学生1人当り平均の蔵書数は、本科大学は115冊から73.9冊に減少し、専科大学も126冊から58.5冊に減少している。まとめて述べると、中国の高等教育の大きな規模拡張に伴い、一般大学の運営条件は、教学機器設備価値の増加が基本的に高等教育の規模拡張と同一歩調を維持している以外、校舎、図書などの運営条件は明らかに不足しており、時には数億元の債務超過となっており、教育教学の質の改善を制約しているばかりではなく、大学発展のボトルネックともなっている。

2. 大学の学科設置、養成目標、課程は社会の必要とずれており、各レベル高等教育の協調的な発展が不十分である

 現在の中国社会は急速なスタイル変換の時期にあり、産業構造は不断に調整され、人材養成に対する要求も不断に高まっている。しかし、専門的な予測及び予報メカニズムを欠いているため、多くの大学は市場の要求を読み誤るか、むやみなブームとなっている専門学科を設置するか、または専門学科の設置を随時更新できないため、高等教育の人材養成に専門人材不足と過剰とが併存する結果となっている。農学、林学、水力、地質、鉱業、石油、情報、生命科学など国家が直ちに必要としている学科や人材養成が不足し、法学系、管理系を専攻する卒業生には過剰である。人材及び資源の浪費につながる。

 同時に、政策傾向、利益誘導、計画停滞などの要因の影響を受け、一部の大学は運営の位置付けが不明確であり、徒にいわゆる上位層、上位規格を追及するあまり、人材養成の規格またはモデルが同一傾向となり、特色を欠いている。運営目標において、一般大学はいずれも総合的、多学科型、研究型の大学を設置しようとしており、運営レベルにおいて、多数の大学が本科、修士、博士課程の教育にグレードアップを図ろうとしている。そこで、昇格がブームとなり、中等専門学校は高等職業学校に、高等専門学校は学院に、学院は大学に改められ、専門学校の課程は大学の学部課程に、大学の学部課程は修士課程に、修士課程は更に博士課程に昇格させられようとしており、自らの特色が失われている。特に高等職業教育は“圧縮型”の本科教育となり、特徴を欠き、優位性がないため、人材市場の競争において劣勢となっている。

3. 教員全体としての資質は低い、研究を重視し、教学を軽視する現象が依然として存在している

 近年、高等教育の規模の拡張に伴い、大学教員の人数も急激に増加している。1998年~2008年の間、一般大学の専任教員は40.73万人から123.75万人まで、83.02万人増加した。質の高い教員が不足している。一部の大学では資格を下げて補わざるを得ず、一連の学歴、職階の低い教員を補充しており、大学卒業生が学部生を教える現象も珍しくない。統計によれば、2008年、全国の大学教員中で修士・博士の学位を有する者はわずか50.7%に過ぎない。経験のあるベテラン教員の定年退職と大量の若年教員の着任により、教員の低年齢化傾向は比較的顕著であり、2007年のデータによれば、30歳以下の教員は349401人で、総数の29.90%を占め、31~35歳は217412人で、総数の18.60%を占め、36~40歳は183974人で、総数の15.74%を占め、このような40歳以下の教員が総数に占める割合は63.25%である。ベテラン教員に比べ、若年教員は学歴が高く、研究訓練を多く受けており、自身の専門分野に対する向上心が高く、実務の努力をするなどの優れた面を備えている。一方で、彼らは教育訓練が不足し、教員としてのアイデンティティを強化する必要があり、学生に対する関心が不十分で、教育育成及び職業尊敬精神を強化する必要があるなどの明らかな不足箇所も存在している。

 同時に、研究重視、教学軽視の原因により、多くの教員、特に高い水準の教員は教育活動、特に本科生の教育活動に従事することを希望しない。2001年に教育部は「大学本科教学業務において教学の質を高めることに関する若干の意見」(教高[2001]4号文書)において、“主に学部課程で講義しないか、または学部における教育活動の基本業務量及び質の要求に達しない教員を、副教授または教授の職務に招請してはならない”と規定しているが、関連文書の実行が不十分であったため、大学では依然として教授が主幹講座、基礎講座で講義せず、講師だけが講義する現象が多く見られる。統計によれば、2004年まで、全国では29.4%、3万人近くの教授、副教授が学部で講義をしていない。

4. 高等教育の質はまだ経済社会発展の必要に完全に適応できておらず、大学生の就職情勢は厳しい

 中国の大学は人材養成面で従来から独自の優れた面を持つ。例えば基礎知識の確実な習得を重視し、専門知識の系統的な学習を強調し、分析能力及び学習能力の養成に力を入れ、勉学に努力する精神及び良好な学習習慣の提唱することである。しかし、多くの不足点、例えば少なからぬ大学は教育理念が旧態依然であり、教育内容は陳腐で、その方法は単一であり、知識の掌握が過度に強調されて自主的な学習、主体的な探究があまり重視されないなどの点も存在しているため、養成される人材のイノベーション意識、イノベーション精神、実務能力及び持続的に発展可能な能力が不足し、特に先鋭的かつイノベーティブな人材が大きく不足しているため、経済社会発展の必要性を満足することが難しい。この点について著名な国際的コンサルタント会社であるマッキンゼーは2005年の調査報告「中国で見え隠れする人材不足」において次の通り指摘している。2005年の大学卒業生310万人には、アメリカの2倍強であるが、多国籍企業の要求を満足できる者は10%未満に過ぎない。主な原因として、実際の応用テクニックを欠き、英語水準が劣っているからである。今後10年中国は7.5万人の国際経験を備えた管理層を必要とするが、現状では5000名強に過ぎない。中国大学教育は理論教育、書物教育を重視するのみであり、実用的かつグループ作業のテクニックを提供することはできない。中国では毎年60万名の新たな工程師が“誕生”しており、アメリカを9倍も超えているが、1.6万名だけが外国企業で業務に従事する実務能力及び言語能力を備えている。このような調査結果はあまり正確であるとは限らないが、一定程度において中国の大学における人材養成の質の面で存在する問題を反映しているため、関心を寄せざるを得ない。

 上記に関連する問題は大学生の就職情勢が厳しい点である。中国の新規労働力人口の増加、農業から非農業への人口移動、都市における一時帰休・求職者人口の“三大人口ピーク”の影響を受け、ここ数年、中国の労働力就業情勢は普遍的に厳しくなっている。就業面からみると、大学の学生募集増は諸刃の剣であり、一方では、青年の第1回就業時期を繰り延べ、中国の新規増加労働力人口の就業方面での圧力を大きく緩和する上での助けとなるが、他方では、大学卒業生数の急増は就業難の問題を激化させることにもなる。ここ数年、毎年全国で少なくとも100万人を超える卒業生が卒業時に就職できず、農村及び都市の貧困家庭の負担を増加させている。

5. 高等教育体制の改革は依然として停滞しており、高等教育の更なる発展を制約している

 改革開放以降、体制改革は常に高等教育の重心である。高等教育のマクロ管理体制面から見ると、政策から実践まで中国は改革開放以降非常に大きな成果を挙げ、高等教育管理体制の調整も基本的に一段落したが、依然として一連の問題が存在している。先ず、政府の管理職能が不明確であり、高等教育の管理において明らかな“欠落”及び“越権”現象が存在している。いわゆる“越権”の多くは、教育管管理部門がその職責の権限範囲を読み誤るかまたは超えることを指し、言い換えると“管理すべきではない事項を管理する”ことであり、主に、教育行政部門が多くの社会仲介機構、学校ひいては教員が行うべき事柄を実施することに示され、例えば大学の教学業務水準の評価、大学院専門課程統一入試、国家学位の授与などである。いわゆる“欠落”とは、それとは逆に、教育行政管理部門がその果たすべき職責を果たさないか、または実施不十分であることを指し、言い換えると“管理すべき事項を管理しない”ことであり、主に、教育計画、教育予測が不十分で、規則制度が不備であり、教育のマクロ管理に力が傾注されていないことに示されている。“欠落”及び“越権”現象は政府の活力分散、過重な負担を招き、不可避的に政府の業務効率に影響を及ぼし、場合によっては政府の方針決定を誤誘導することにもなるとともに、学校運営や社会の学校運営に対する積極性及び活力を抑制して、教育仲介組織の創設及び成長を阻害することになる。次に、管理理念が立ち遅れ、政府の大学に対する管理方式が硬直しており、主に行政指令、計画などの方式が採用されており、最も典型的な管理手段は行政的な審査認可であり、計画体制及び集権的管理の色合いが明確である。近年発表されている一連の“プロジェクト”、“プログラム”、“計画”は、大学の発展のために経費面での支援を与え、国家が早急に必要とする学科分野を強化しているが、同時に高等教育管理体制の集権傾向及び政府の大学に対する管理も強化されており、場合によっては“権力のレントシーキング”現象も出現している。第三に、大学は運営の自主権を欠いているため、社会に正面から向き合った自主的な学校運営は難しい。1998年の「中華人民共和国高等教育法」は法律形式で大学の運営自主権に対して明確な規定を施しているが、これらの法律が規定する運営自主権は本来の意味においては実現されておらず、大学が独立法人として社会を向いて自主的に運営されるためにはまだ非常に長い道を歩む必要がある。

 現行の大学の内部管理体制には依然として問題が存在している。党・政府この両グループは一連の指導管理職能を共同で行使するが、相互の分担が曖昧であるため、問題があれば誰にも責任がありまたは負うべき責任がないとの事態となり、管理効率が低下する。同時に、党・政府の職能区分が不明確であるため、容易に党と政府の紛争が発生する。計画経済体制、高度集権の管理体制及び官本位文化の影響を受け、中国の大学内部における行政権力と学術的権威とは大きくバランスを失効しており、それは主に行政権力と学術的権威との境界不明、位置付け不明確、行政権力の広範化、学術的権威の希薄化として示され、場合によっては学術管理の行政化傾向も出現する。大学レベルであるかそれとも学院レベルであるのかに係わらず、権力は依然として党・政府指導部の手中に過度に集中しており、学術的権威は脆弱である。同時に、校-院-系の三元責任権限関係は十分に機能しておらず、権力は高度に校レベルに集中しており、院・系の権限は過度に小さい。これらの困難、矛盾及び問題の存在は、場合によっては重大な社会問題を引き起こす結果となる。

4.中国の高等教育の発展及び改革の趨勢

 規模の飛躍的な発展を経過した後、中国の高等教育モデルは規模の拡大から質の向上に向けて転換を図っている。新たな経済社会発展の情勢及び国家発展戦略の調整に直面し、中国は現在「国家中長期教育改革及び発展計画綱要」を制定しており、ここ数年の政策措置及び1年あまりの全国範囲での研究により、今後10数年間における中国の高等教育の改革及び発展の趨勢及び方向を見て取ることができる。

1. 高等教育の規模を安定的に拡大し、人材養成の質の向上に力を注ぐ

 中国の経済社会の発展は高等教育に対して新たな要求を提出し、高等教育の規模拡張と質向上との矛盾の転化を求めており、党中央、国務院は新たな発展の情勢に直面して、度々“‘第11期5ヵ年計画’、高等教育の発展に際しては科学的発展観の実現を全面的に貫徹し、確実に質の向上に重点を置かなければならない”と強調している。「国民経済及び社会発展の第11期5ヶ年計画綱要」では、“高等教育発展の重点を質の向上及び最適化構造に置き、研究及び実践を強化し、学生のイノベーション精神及び実務能力を養成する”と明確に指摘されている。2006年5月10日、温家宝総理は自身が招集した国務院常務会議の席上、“高等教育の発展に際しては科学的発展観の実現を全面的に貫徹し、学生募集規模の伸び幅を適度にコントロールして、学生の募集規模を安定化させ、確実に質の向上に重点を置かなければならない”と強調している。党中央、国務院の“高等教育の発展に際しては科学的発展観を指導とし、確実に質の向上に重点を置く”ことに関する戦略的な決定及び配置に基づき、2006年より、一般大学の学部・専科生募集の伸び幅は減少を開始し、前年の12.77%から8.24%に減少し、2007年には3.64%に減少し、2008年には一部回復して7.38%となった。今後10数年は、高等職業・高等専門教育を積極的に発展させ、学部生教育及び修士課程教育を安定的に発展させ、博士課程教育の規模を安定させることが、中国の高等教育の規模発展の基本的な考え方である。伸び幅から見ると、従来の何年も連続して10~40%と異なる年間増加率が再現されることはなく、毎年3~5%の伸び率が比較的現実的な選択である。

 高等教育の発展の重心に転換が生じた後、質の向上が高等教育の改革及び発展の主な旋律となる。先ず、大学における人材養成の規格に重大な変化が発生し、イノベーティブな人材が大学における人材養成の全体的な質の面での規格となる。イノベーション人材とはすべての大学共通の養成目標であるが、異なる類型の大学は全体的な人材養成目標を基礎として、具体的な養成目標を制定しなければならない。次に、イノベーション人材の養成モデルが人材養成の質向上の核心となる。20世紀末から、中国の大学では課程体系及び教学内容の改革に着手しており、2007年に発動された「大学学部における教学の質及び教学改革プロジェクト」は選りすぐられた課程、新たな教材、教育モデルのイノベーションを核心とする期間4年の改革である。今後10数年は、教育モデルのイノベーションを核心とし、課程体系の最適化、教育内容の更新、実践及び実験教育の環の強化、教育方法のイノベーションが、改革の重点となる。更に、質の管理及び評価体系の構築を強化することが人材養成の質向上の重要な環となる。

2. 分類指導及び管理を強化し、大学の特色創出を促進する

 中国の大学に高等教育の大衆化過程において出現した位置決めが不明確で、代り映えせず、見栄を張る現象はすでに人々の関心の的となっており、この種の状況は高等教育の全体としての発展に不利であり、高等教育が経済社会の発展のためにサービスを提供する能力及び大学自身の健全な発展に影響を及ぼすことが認識されているため、大学に対して分類管理、分類指導を実施することは必要な措置である。しかし、どのように大学を分類するのかについては、依然として大きな論争の的となっている。ある人間はアメリカのカーネギー財団の大学分類法に倣って、大学を研究型大学、研究教学型大学、教学研究型大学、教学型大学、高等職業・高等専門学校などの類型に区分するように主張しており、ある人間はヨーロッパモデルに倣って、大学を研究型大学、多科性大学、地方大学及び職業大学に区分するように主張しており、ある人間は大学の使命に基づき、大学を“985大学”、“211大学”、省所属大学などに区分するように主張しており、ある人間は管理システムに基づき、大学を中央所属大学、省所属大学、高等職業・高等専門学校に区分するように主張しており、ある人間は大学の発展目標に基づき、大学を世界一流大学、高水準大学、地方高水準大学、地方高水準応用型大学、及び高水準高等職業学校に区分するように主張している、などである。いずれにしろ、大学に対して分類管理、分類指導を実施することは正しい。一定期間の研究及び検討の後、政府は大学の分類に関する指導的意見を提示するはずである。

 大学の分類管理、分類の発展は、必然的に関連する政策の調整に波及する。多くの人間が主張するように、異なる類型及び階層の大学は性質及び使命の上で差異があるため、教育部が政策を制定する際には、曖昧な“大学”との提示法は回避し、学生教員比、学生1人当りの費用支出、教員の専門技術職務構造、教員の業務量構造などの面において、いずれも異なる類型及び階層の大学の特徴の違いに応じて異なる政策を制定し、各階層の大学の質基準を制定し、各階層に対して優れた大学には承認及び奨励を与え、異なる階層の大学がそれぞれの階層範囲内において卓越性を追求することを奨励しなければならない。資源分配においては、研究及び学術の発展を基礎とするプロジェクトの独占的な地位を改め、異なる階層及び異なる類型の大学内に大学の個性の発展、特色の発展、質の向上を促進するプロジェクトを設置し、申請大学の範囲を限定し、異なる類型、異なる階層の大学の個性の発展及び特色の発展を支援しなければならない。評価方式においては、従来の単一的な学術的価値志向を改め、価値志向の多様化を実現し、運営の特色面の評価に注意しなければならない。

3. 教員グループの構築を強化し、高水準の教員グループを確立する

 ここ10年の急速な発展により、中国の高等教育規模は世界第一位となっており、名実共に高等教育大国なっているが、高等教育強国とは呼ばれていない。そこで、多くの人々が高等教育強国の建設を提起している。高等教育大国から高等教育強国への転換を実現する上で、鍵となるのは教員である。梅貽琦が1931年に清華大学の学長に就任する際の就任演説で提起した“大師論”は、今もよく耳にする言葉である。彼は、“大学の大学たる所以は、優れた教授が居るか否かにかかっている。孟子は‘古い国と尊ばれるのは、大きな樹木があるからではなく、忠義な譜代の家臣がいるからである’と述べている。ここでそれに倣うと、‘大学と尊ばれるのは、大きな建物があるからではなく、優れた教師がいるからである’。”と述べている。中国が高等教育強国を構築し、高等教育の質を向上させるためには、高い階層の人材グループの養成に力を入れ、導入及び養成により、一群の学術面で国際的な影響力を有する世界一流の各分野での指導的人物及び国際的に先進的な水準を有する優れた教員を集め、一連の学術面で優れた中年青年リーダー及び何万もの中年青年の基幹教員を養成しなければならない。近年、大学では新規に就任する教員の割合が非常に高いとの実際情況について、大学は青年教員に対する傾斜政策を実行し、青年教員の科学研究に対する経費支援を強め、青年人材の成長のためにより多くのチャンスを創出しなければならず、中年老年教員の伝授・支援・指導面での役割を十分に発揮させるとともに、各種ルートによる青年教員の訓練により、青年教員の科学研究能力及び教学水準を効果的に高め、その専門的な実務経験を豊富とさせ、業務水準を高めさせなければならない。

 大学は一連の高水準の教員グループを構築するばかりではなく、大学教員の職務招請制の改革を積極的に探求し、教員の選任及び教員の職階評価における“出版するか、さもなくば死”(publish or perish)との潜在的な規則を打破し、教学及び科学研究における条件要求の均衡を図り、教員が高水準の研究を実施するばかりではなく、講義にも力を入れるとともに、教育と研究とを結合して、人材養成の質及び水準を高めることを奨励しなければならない。更に、大学は人事管理制度及び収入分配制度の改革を深化させ、同等の雇用契約の締結・解除、同等の昇格・降格の雇用・人事メカニズムを構築し、実際の業績を基礎とした奨励報酬制度を構築し、教員全体に全力で教学科学研究に力を入れる積極性を励起かつ発動させ、優れた教員が頭角を現し、才能を発揮することに有利な体制メカニズムを形成しなければならない。

4. 国際協力及び交流を強化し、高等教育の国際化水準を向上させる

 世界経済の一体化プロセスの進行に伴い、世界の高等教育には明らかな国際化傾向が出現した。中国の高等教育も必然的に世界の高等教育の発展傾向に適応し、国際協力及び交流を強化し、高等教育も国際化水準及び国際競争力を高めなければならない。先ず、国際的な学生の流動を積極的に推し進め、国際化された大学キャンパスを建設する。国際的に比較すると、中国への留学は全体規模が小さく、階層は低く、中国の教育大国との地位とは合致していない。国連ユネスコの統計によれば、2006年に各国の大学が受け入れた外国留学生(正規留学生)の人数は、それぞれアメリカ58万人、イギリス33万人、ドイツ26万人、フランス25万人、オーストラリア20万人、日本13万人、ロシア8万人であるが、2008年の中国への正規留学生は僅か8万人であり、質及び階層も高くなく、修士課程、博士課程への留学生は僅か1万人である。また中国への留学生が在校生総数に占める割合は非常に低い。全国範囲から見ると、中国への長期留学生の総数は在校生総数の1%未満であるが、西側先進諸国の大学における留学生が在校生に占める割合はすでに10%に接近するかまたはそれを超えており、OECD諸国の2006年における高等教育機関の外国留学生の割合は平均で9.6%である。そのため、多くの学生の中国への留学を促進し、中国の教育大国との地位に合った留学生規模を構築することは、すでに必然の流れである。同時に、中国の学生の外国への留学規模を大幅に増加させ、中国の学生が海外で学習する機会を拡大させ、学生の国際的な視野を広め、その国際競争力を高めることも必要である。次に、大学が国際化された運営理念及び発展戦略をリードし、国際的慣例に合致した科学的な管理体制及び活力に満ちた運営メカニズムを徐々に形成し、世界一流大学及びその他高水準大学の人材養成モデルに倣って、国際化された人材養成目標、専門及び課程体系を全面的に確立し、一群の国際的意識及び国際競争力を備えた革新型の人材を養成しなければならない。更に、大学が海外の高水準大学、科学研究機関、基金会組織との交流及び協力を拡大することを奨励しなければならない。大学は各校の特色ある学科に依拠して、世界の著名な大学、特に世界一流大学及び科学研究機関との組織間交流を強化し、組織間交流のランクをアップさせなければならない。実験室、研究基地、教学基地の共同設置、課程計画、国際会議の共同での立案・開催、教員の相互訪問、交換留学生などの方式により、海外の高水準大学との実質的な協力を増進させるとともに、実質的な協力パートナーシップ及び長期協力メカニズムを構築しなければならない。海外の各種基金会組織との協力を強化し、教員による海外研究基金プロジェクトへの申請を奨励し、海外の資源を利用して中国の大学の科学研究水準を向上させなければならない。教員及び学生が海外の高水準大学で研究、研修することを奨励し、教員及び学生が海外、中国大陸以外の大学で教育及び共同研究に従事することを積極的に推奨しなければならず、影響力を持つ国際会議を開催し、参加することを支援並びに奨励しなければならない。

5. 経費投入を増大し、高等教育の発展のために物質的保障を提供する

 前記の通り、高等教育の改革及び発展における多くの問題は投資不足に起因するものであり、高等教育への投資不足は教育への投資不足の高等教育分野における反映でもある。早くも1993年の「中国における教育改革と発展綱要」では“財政的な教育経費が国民総生産に占める割合は、2000年には4%に達する”との目標が提起されているが、10数年が経過しても、財政的な教育経費が国民総生産に占める割合は長期間にわたって2.5%前後で推移しており、ここ2年でやっと3%を超え、多くの先進諸国よりも下回っている。そのため、財政的な教育投資の総量を増大し、速やかに4%に到達させるとの投資基本要求は、教育界における普遍的な願望となっている。今年春の“両会議[訳者注:全国人民代表大会及び全国政治協商会議]”期間に、温家宝総理は今期の政府は必ず4%目標を実現する旨を表明しているため、今後数年における教育投資は大幅に増加することが見込まれている。教育経費は容易に圧力を受けることにかんがみ、多くの関係者は全国人民代表大会で「教育投入法」を制定し、立法により各級政府の責任を明確とし、各種教育への投入標準を制定し、責任追究制度を実行し、教育投資に法的な根拠を持たせるとともに、中央及び地方財政の教育投資に対するメカニズムを規範化し、専用経費及び専用基金の使用効率の向上を図り、中国の教育事業の発展を更に推進するよう提案している。

 高等教育への投資を確実なものとさせるため、多くの専門家が“財政支出を主とし、その他複数のルートから高等教育経費を調達することを副とする”体制を堅持し、財政的な高等教育投資の増加を確保する体制及びメカニズムを構築するとともに、高等教育のコスト計算方法を科学的に確定し、併せて計測を基礎として地区、養成する階層、学科の類別ごとに大学生1人当りの教育コストの指標及び合理的な変動範囲を制定して、各大学の経費総額、コスト分担比率及び方法を画定するよう提案している。高等教育投資を増額することを基礎として、全体設計、科学的分類、段階的実施との原則に基づき、大学生1人当りの総合的定額支出標準を徐々に向上させるとともに、それを法制化して、学生1人当りの支出標準が経済社会の発展に伴い不断に向上することを保証するとともに、それを関連する政府部門が大学に支出する高等教育経費の基本的な根拠としなければならない。

6. 高等教育管理体制の改革を強化し、活力に溢れた体制及びメカニズムを構築する

 以上の各項改革措置が実現して功を奏するか否か、その鍵は活力に溢れた体制及びメカニズムの構築にある。そのため、体制改革が高等教育改革における重点中の重点となっている。中国の高等教育管理体制に存在している問題及び世界各国の高等教育管理体制の一般的な経験に基づき、中国の具体的な国情を考慮すると、高等教育の改革は主に次の幾つかのルートにより実施される。1つは、“中央及び省レベル人民政府の二元管理、省レベルの統一管理を主とする”体制の実現及び完璧化である。各級政府の管理権限の境界が不明確であり、権限が高度に集中しているとの問題については、一方において、中央及び省レベル政府の高等教育管理における権限と責任を明確化しなければならず、他方において、省レベル人民政府が高等教育を統一的に管理する責任及び権限を拡大するとともに、中心である特大都市が高等教育を統一的に管理する権限を適度に増大して、高等教育を地域経済社会の発展と良好に連動させなければならない。2つは、政府の職能を明確化し、大学の運営自主権を実現及び拡大することである。国内外の政府による管理経験によれば、至る所に存在し、すべてを管理し、すべてを包含する“全能型”政府は最良の政府ではない。そのため、我々は“全能主義”の政府観を捨て去り、教育行政機関の職能を改めて位置付けし、大学の運営自主権を実現かつ拡大しなければならない。「高等教育法」はかつて大学に独立法人の地位を与え、大学に7項目の権利を付与したが、将来の高等教育管理体制の改革においては、先ず、これらの自主権を本来の意味で実現しなければならない。3つは、政府の大学に対する管理モデルを転換し、管理手段の多様化を実現することである。従来からの行政指令、計画などの管理方式は依然として有効な管理方式であるが、法律、支出、評価などの手段も強化しなければならず、同時に政府のサービス意識を強化し、協議、意思の疎通、情報及びコンサルタントサービスにより管理効果を高めなければならない。4つは、教育仲介機構の発展を図り、高等教育管理への社会の関与を強化することである。中国は行政区域、行政レベルに応じて教育仲介機構を設置するとの単一的な思考経路を打破し、区域を跨ぎ、部門を跨ぎ、多様な性質の総合的または専門的な教育仲介機構を構築して、仲介機構の“官営”または“半官営”の性質を打破し、仲介機構の独立性、公証性、権威性を保証し、仲介機構の社会関与及び社会代表制を強め、仲介機構の運営を規範化し、仲介機構の高等教育管理における役割を十分に発揮させなければならない。5つは、大学内部の権力配置モデルを改革かつ完璧化し、行政権力と学術的権威との関係を正確に処理することである。行政権力及び学術的権威の適当な分離原則に基づき、行政的事務と学術的事務とを明確に区分し、学術委員会の職能的な役割を強化し、それに海外の大学における評議会(教授会)の役割を発揮させ、学術委員会に学術的事務上での方針決定の機能及び行政的事務上でのコンサルタント及び提案機能を付与しなければならない。6つは、大学の“緩やかな連合システム”との組織面での特性を尊重し、大学及び院・系の権限を明確に区分し、管理権限の重心を学院に置き、院・系に大学の指導下で当該部門の教学、科学研究、開発、資質のある教員グループの構築及び学科構築業務を統一的に手配し、当該部門の人事、財務、資産、学生の養成教育及び思想政治工作を統一的に管理する権限を与えるとともに、大学レベルでの管理水準も高めなければならない。


さくらサイエンスプランウェブサイト

さくらサイエンスプランウェブサイト

 

中国関連ニュース 関連リンク

オリジナルコンテンツ

柯隆が読み解く

2014/2/18更新
「中国の歴史問題」

富坂聰が斬る!

2013/12/27更新
「中国賃金事情」

和中清の日中論壇

2014/2/3更新
「失望」に潜む米国のメッセージと日本の「積み木崩し」

田中修の中国経済分析

2014/2/7 新コーナー開設
「中央経済工作会議のポイント」

服部健治の追跡!中国動向

2014/2/27 新コーナー開設 「安倍総理の靖国神社参拝に想う(上)」

川島真の歴史と現在

気鋭の研究者が日中関係を歴史から説き起こす。幅広い視点から新しい時代の関係を探る。

科学技術トピック

New

2014/3/5更新
「赤外線カメラと簡牘資料の日中共同研究」
工藤 元男

取材リポート

New

日中関連、科学技術関連のシンポジウム・講演等を取材し、新鮮なリポートをお伝えします。

中国の法律事情

New

2014/3/7更新
「百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末」朱根全

日中交流の過去・現在・未来

日中交流のこれまでの歩みとこれから

日中の教育最前線

日中の教育現場の今をレポート

中国国家重点大学一覧

 

中国関連書籍紹介

New

2014/3/12 書評追加掲載

文化の交差点

New

2014/3/18更新
「日本における中国古代絵画」朱新林

中国実感

日本人が実感した中国をレポート

印象日本

中国が日本に滞在して感じたことをレポート

CRCC研究会

過去の講演資料、講演レポート

CRCC中国研究サロン

過去の講演資料、講演レポート

最新イベント情報

アクセス数:31043468