高効率クリーン燃料エンジンの開発

2010年 2月17日

黄佐華

黄佐華:中国西安交通大学教授

西安交通大学教授、工学博士、中国教育部長江学者奨励計画」の特別招聘教授、国家自然科学基金委員会傑出基金獲得者。国際燃焼機関会議(CIMAC)評議員、中国内燃機関学会副理事長、中国工程熱物理学会理事兼燃焼委員会副主任委員、中国国家自然科学基金プロジェクト審査員を務める。Combust. Flame, Combust. Sci. Technol., Int. J. Hydrogen Energy等の国際刊行物に113編の論文を発表。

1.概説

 中国は人口が多いが、石炭資源以外のエネルギーが不足していて、特に高度経済成長に伴い、この矛盾は問題になってきた。中国のエネルギー構成において、石炭に対する依存度は60%に達する。世界の先進国に比べ、わが国の設備と技術は立ち遅れており、このため、エネルギーの消費率と汚染物質の排出度も高い。現在、中国は石炭について直接燃焼以外の高効率・クリーンな転化・利用方式、例えば、石炭のガス化及び液化技術、コジェネレーション技術等を模索している。近年、中国では自動車工業が急速に成長し、車の保有台数が急増し、エネルギーに占める石油燃料の割合が増え続けている。2009年の国内自動車生産量は1,000万台を超えた。中国は石油資源に限りがあり、日増しに増大する石油消費需要を満たすのが難しく、石油の輸入は燃料を補充するためにやむを得ない。内燃機関では、燃料の高効率クリーン利用が省エネと汚染抑制の面で重要な分野となっており、燃料のエネルギー消費率低減が温室効果ガスCO2の排出削減にも貢献することができる。中国に比べ、米国、日本、欧州(EU)等の先進国は燃料エネルギーの供給と利用の面で石油燃料が中心となっている。米国の97%の交通燃料は石油を使っており、そのうちガソリンエンジンが65%、ディーゼルエンジンが20%、タービンエンジンが12%を消費している。米国の研究報告は、動力装置の技術進歩により、エンジンの熱効率をさらに25~50%高めることができると予測している。中国の93%以上の交通エネルギーは石油起源であり、交通輸送分野で40%以上の石油が消費され、95%のガソリン、60%のディーゼル油、80%のケロシンが各種交通機関で使われている。中国では2010年の自動車の石油消費が全国の石油総消費量の43%を占め、2020年には67%に達するであろうとの研究予測がある。現在、中国の交通燃料の年間総消費量は米国に次ぐ世界第2位である。このため、交通分野における燃料の高効率・クリーン化は中国の経済・社会の持続可能な成長と環境保護に影響する重要なポイントとなっている。

 対応の必要に迫られている石油燃料の高効率クリーン利用問題を前に、中国の国家発展・改革委員会、科学技術部、国家自然科学基金委員会等は重点的に支援と資金を与え、また、プロジェクト資金助成により、研究・技術成果の転化と普及を図っている。例えば、科学技術部は国家「863計画」の重大特別プロジェクト「省エネ・新エネルギー自動車」において、自動車企業、大学、科学研究機関を結集し、石油燃料エンジン及び石油代替燃料エンジンに対する技術開発研究を進めている。その目標は一定規模のモデルとしての役割を果たし、普及を図ることであった。「973計画」の中の「内燃機関の低温・低公害燃焼理論とクリーン代替燃料の基礎研究」では主に大学を結集し、内燃機関の高効率クリーン利用の幾つかのカギとなる基礎理論問題についてフォーサイト研究活動を繰り広げ、その新技術開発を導く土台作りをした。一方、国家自然科学基金委員会は、広い範囲と方向において内燃機関の高効率・低公害利用に関する基礎問題研究に資金援助した。同委員会はプロジェクトへの資金助成の他、中国の大学の中で内燃機関研究イノベーション陣とそのリーダーを重点的に育成し、わが国の内燃機関基礎研究を代表するセンターを西安交通大学上海交通大学天津大学に設置した。

 筆者は西安交通大学内燃機関燃焼研究チームの責任教授として、同大が近年進めてきた高効率・低公害・クリーン燃料エンジンの研究と関連する基礎的な研究活動を紹介し、合わせて中国のその他の主な大学の研究活動についても簡単に紹介することにする。

2.西安交通大学が進めてきた研究活動

1. 天然ガス/水素混合エンジンの研究

 国家「973計画」のプロジェクト「天然ガスエンジンの低温燃焼と汚染物質抑制の基礎研究」で資金助成を受け、天然ガス/水素混合技術によってエンジンの低温・低公害燃焼を実現する道を探った。中国の天然ガス自動車は既に西安を含む幾つかの都市のバス・タクシーに使われており、車の排ガス汚染を減らす上で一定の効果を上げた。希薄燃焼(Lean burn)技術はエンジンの燃油経済性を向上させ、低温・低公害燃焼を実現する効果的な手段だが、天然ガスエンジンは希薄燃焼の際に燃焼速度が遅く、燃焼サイクル変動率が大きくなるという問題を抱えており、エンジンの安定した運転に影響する。燃焼速度が速い水素を天然ガスに混入すれば、燃焼速度を高め、燃焼サイクル変動率を引き下げることが期待できる。こうした考えに基づき、西安交通大学は天然ガス/水素混合エンジンの研究活動を集中的に進めた。研究範囲は基礎的な燃焼現象の解明からエンジンの運転までである。まず、天然ガス/水素混合エンジンの燃焼と排出について研究し、その後、天然ガスに水素を混ぜた後の燃焼に関するいくつかの基礎的な問題に的を絞り、定容燃焼装置を採用し、予混合における球状火炎の成長に対する基礎研究を行った。そして最後に基礎研究で得られた結果に基づき、エンジンの最適化制御を導き出し、エンジンの低温・低公害燃焼を実現した。我々の研究により、次のような成果といくつかの基本的現象についての認識が得られた。天然ガスに水素を混ぜれば、エンジンの希薄燃焼能力を高め、希薄燃焼の条件下でエンジンのサイクル変動率を引き下げることができ、体積割合で10%の水素を天然ガスに加えると、エンジンの希薄燃焼能力が10%向上する。天然ガスに水素を混入した時、エンジンの燃焼・放熱時間が短縮され、有害排出物の一酸化炭素(CO)と未燃焼炭化水素(UHC)が低減した。水素の添加は一酸化炭素と未燃焼炭化水素の酸化を促進する重要なファクターだと考えられる。水素の混合で燃焼速度が高まるため、最大トルク(Torque)が発生する点火時期を遅らせる必要がある。理論混合比では、天然ガス/水素混合エンジンは窒素酸化物(NOx)の排出が増加することになる。しかし、希薄燃焼能力が向上するため、このエンジンは希薄混合気の範囲内で安定した運転が可能となり、その低温燃焼条件により窒素酸化物の排出を効果的に低減することができる。天然ガス/水素混合燃焼方式は燃料中の炭素の割合を減らすため、エンジンの二酸化炭素の排出も抑えられる。水素は単位体積当たりの質量が小さいため、水素を混ぜると、混合気の体積発熱量が低下する。研究の結果、次のことがわかった。適度な水素混合比率の場合、燃焼に対するその改善効果は燃料発熱量の低下でもたらされる効果より大きく、このため、エンジンの動力性能を高め、排出を減らすのに役立つ。しかし、混合比率が一定の数値を超えると、燃焼に対する改善効果は燃料発熱量の低下と増加する伝熱損失によって相殺され、エンジンの出力は逆に低下する。混合比率が小さ過ぎる時の改善効果ははっきりとしていない。このため、適度な水素混合比率を選択して初めて、最良のエンジン性能を実現することができる。大量のエンジン試験を通じ、水素20%の体積混合比を選択した天然ガス/水素混合エンジンが最良の動力性能を示すことを発見した。西安交通大学は均質混合気天然ガス/水素混合エンジンとシリンダー内直接噴射成層燃焼エンジンについて試験を行い、どちらも最良の水素混合比率は20%という結果が得られた。これは最良の混合比率が混合気の形成方式と無関係であることを示している。

 天然ガス/水素混合による燃焼速度の向上とサイクル変動率の引き下げは、排気ガス再循環(EGR)装置を採用し、エンジンの窒素酸化物排出を一段と低減することに道を開いた。理論混合比で混合気が燃焼した時、天然ガス/水素混合エンジンは窒素酸化物の排出を増やすことになるが、適度な割合のEGRを採用すれば、窒素酸化物の排出を低減することができ、エンジンの動力性能と熱効率にも影響しない。同じサイクル変動係数において、天然ガス/水素混合はより大きなEGR率を採用することができ、EGR率が大きい時、天然ガス/水素混合の変動係数に対する低減効果は一段と顕著になる。天然ガス/水素混合と適度な割合のEGRを結び付ければ、気体燃料エンジンの安定した低温燃焼を実現することができる。EGRの割合が20%の時、窒素酸化物の排出は大幅に低減され、このEGR率と20%の水素混合比率を組み合わせてもエンジンの動力性能、熱効率、COとUHCの排出に影響しない。エンジンは低温・低公害の燃焼過程が実現されることになる。

天然ガス/水素混合エンジン

天然ガス/水素混合エンジン

 火花点火エンジンは点火後に火炎が拡がっていく燃焼方式を採用している。エンジンはシリンダー内の影響要因が多い。天然ガス/水素混合燃焼における基本現象の研究が法則に適うようにするため、西安交通大学は定容燃焼装置を採用し、予混合時の球状火炎の成長について多くの理論・実験研究を行った。メタン中の水素混合比率、圧力と温度、混合気の濃度及び模擬EGRの希釈比の条件下における燃焼の基本的特性の研究である。水素を混入した後、層流燃焼速度が高まり、火炎は層流火炎から乱流火炎に変わるタイミングが早まり、火炎構造は一段と不安定になり、燃焼速度を大幅に向上させた。天然ガス/水素混合エンジンが燃焼速度を高める原因はここにある。化学反応動力学を用い、火炎の中間基(Intermediate radicals)と反応過程について分析も行った。同時に、シンクロトロン放射光イオン化(Synchrotron Photoionization)の測定手段を利用し、メタン-水素-酸素低圧層流予混合火炎の中間生成物のモル分率分布曲線について研究を進め、水素混合が火炎の主要生成物と中間生成物のモル分率に及ぼす影響を分析した。その結果、水素を混入した後、火炎中のHとOHのモル分率が上昇し、水素の強い拡散性と活性が火炎の化学反応速度を増大させ、水素混入後の実験で測定された火炎中間生成物のモル分率はいずれも大幅に低下していた。

クリーン燃料燃焼研究装置

クリーン燃料燃焼研究装置

 シリンダー内直噴天然ガス/水素混合エンジンは定容燃焼装置を用い、燃料の噴流及び空気との混合過程について研究を行った。また、高圧噴射燃焼と均質混合気燃焼について対比分析を行い、混合気の成層と乱流が燃料噴射時の燃焼速度向上を促すカギとなる要因であることを発見した。噴射燃焼の燃焼速度は均質混合気燃焼よりも高く、希薄混合気の状況下において、乱流と成層が噴射燃焼の速度向上に及ぼす効果は一段と顕著なものであった。天然ガス/水素混合の均質混合気燃焼速度に対する向上効果は噴射燃焼速度に対する向上効果よりも大きい。噴射燃焼は乱流のランダム特性により、火炎核形成の初期にサイクル変動が存在するが、天然ガスに水素を混入すれば、火炎核形成初期と火炎成長過程におけるサイクル変動を効果的に抑え、気体燃料の安定した高速燃焼を実現することができる。燃焼パラメータと水素混合比率の間には非線形の関係が見られる。燃焼ボンベでの結果からエンジン内に存在する現象が検証され、エンジンの研究に理論的指針を与えた。エンジンの研究活動に合わせ、数値シミュレーションの手段を用い、天然ガス/水素混合エンジンの燃焼過程についてシミュレーションを行った。これは燃焼過程の細部を理解する上で補完的役割を果たすものである。

 この他、西安交通大学はエタン/水素混合、プロパン/水素混合、ブタン/水素混合等の面で予混合層流燃焼の基礎研究を進め、低炭素燃料の水素混合燃焼についてかなり系統的な認識を得た。低炭素燃料に水素を混入した後の着火特性を理解するため、西安交通大学は衝撃波管(Shock tube)を利用し、高温・高圧条件下での水素混合燃料の着火遅れ(Ignition delay)について研究を進めており、エンジン対策のための理論的サポートと基礎的データがえらている。

2. 酸素含有燃料を用いたクリーンエンジンの研究

 酸素含有燃料を用いたクリーンな代替エンジンは西安交通大学が近年進めてきた主要な研究分野の1つであり、科学技術部の「973計画」及び国家自然科学基金プロジェクトの支援を受けた。この研究活動はエンジン本体に関係するだけでなく、噴霧と燃焼の基礎研究もカバーしている。エンジンはガソリンエンジンとディーゼルエンジンである。単一燃料はジメチルエーテル(Dimethyl ether)で、混合燃料にはガソリン/メタノール、ディーゼル油/メタノール、ガソリン/エタノール、ディーゼル油/エタノール、ディーゼル油/ジメチルエーテル、ディーゼル油/ジメトキシメタン(dimethoxymethane)、ディーゼル油/ジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)、ディーゼル油/炭酸ジメチル(Dimethyl carbonate)、ディーゼル油/炭酸ジエチル(diethyl carbonate)、ディーゼル油/アジピン酸ジエチル(diethyl adipate)がある。ディーゼル油/バイオディーゼル油混合燃料エンジンについても研究が行われている。

 ジメチルエーテルはディーゼル油に代替するクリーン燃料と見られており、石炭又は天然ガスから得られる。石炭が豊富にある中国にとって、石炭からジメチルエーテルを製造することは現実的な技術方法と言える。西安交通大学は1997年から米フォード基金の資金援助を受け、全国に先駆けてジメチルエーテルエンジンの研究を進め、中国初のジメチルエーテル車を開発し、路上走行試験を行った。ジメチルエーテルエンジンの燃焼と排出の面で系統的な研究を繰り広げた。ジメチルエーテルエンジンがカーボンスーツ(すす)を排出しない主な原因は酸素富化の条件下における拡散燃焼現象にあり、少量の予混合燃焼でエンジン燃焼過程での低騒音が実現された。急速な拡散燃焼がエンジンの熱効率を高める主な原因である。ジメチルエーテルエンジンの給油と燃焼システムを最適化するためのカギとなる技術を打ち出した。ジメチルエーテルエンジンは無煙燃焼を実現するものであり、排気ガス再循環を採用してジメチルエーテルエンジンのNOx排出問題を解決し、エンジンの無煙燃焼と低NOx排出の目標が達成された。ジメチルエーテルには粘度が低く、潤滑効果が劣るという欠点がある。このため、ディーゼル油80%/ジメチルエーテル20%混合燃料の案を採用すれば、スモーク(炭素粒子)を効果的に低減すると同時に、比較的良好な燃料潤滑性を維持することができ、既存エンジンで使用するのに都合がよい。

西安交通大学が開発したジメチルエーテル車

西安交通大学が開発したジメチルエーテル車

 ガソリン/メタノール又はガソリン/エタノール混合燃料をエンジンに使用することは原理と技術の面で既にかなり成熟している。混合比の薄いメタノール又はエタノールは良好な相互融解性を備えており、エンジンの動力性能と熱効率が若干向上し、一酸化炭素を低減することができる。しかし、混合比の濃いメタノール又はエタノールは助溶剤又は表面活性剤を添加し、ガソリンとアルコール燃料間の相互融解を実現する必要がある。アルコール燃料の発熱量はガソリンより低いため、濃い比率でアルコールを混入した後、エンジンは燃油消費率が高くなり、未燃焼のメタノールとホルムアルデヒドの排出が若干増えることになる。この問題は排気管上の酸化触媒反応器によって解決する必要がある。西安交通大学はガソリン/アルコール混合燃料エンジンについて低温始動過程の性能と排出を主に研究してきた。再生可能燃料とバイオ燃料の視点から考えると、発展の余地が大きいのはガソリン/エタノール混合燃料である。

 炭素粒子(Smoke)と窒素酸化物はディーゼルエンジンの2大排出物である。噴霧制御を行う拡散燃焼は混合気の一部が過度に濃くなるため、炭素粒子が生じる。噴射圧力を高め、霧化を改善することは炭素粒子を低減する1つの方法であり、また、酸素含有燃料を採用し、燃焼中の酸素を補う方法もある。研究で次のことがわかった。燃料中酸素の炭素粒子に対する低減作用は空気中酸素よりもずっと大きい。酸素含有化合物を選択する時は、幾つかのカギとなるパラメータを考慮する必要があり、例えば酸素含有量、燃料のセタン価(Cetane number)、密度、沸点、ディーゼル油との相互融解性等である。上記パラメータを考慮した上で、西安交通大学はディーゼルエンジンの燃料となるディーゼル油/メタノール、ディーゼル油/エタノール、ディーゼル油/ジメチルエーテル、ディーゼル油/ジメトキシメタン、ディーゼル油/ジエチレングリコールジメチルエーテル、ディーゼル油/炭酸ジメチル、ディーゼル油/炭酸ジエチル、ディーゼル油/アジピン酸ジエチルの性能、燃焼、排出について研究を進めた。研究で次のことが発見された。着火遅れは燃料の種類の影響を受ける。セタン価がディーゼル油より高い酸素含有化合物を用いた混合燃料は着火遅れが短縮され、シリンダー内の最大圧力と圧力上昇率が低下し、燃焼騒音が低減される。逆に、着火遅れが増大すると、シリンダー内の最大圧力と圧力上昇率が増大し、燃焼騒音が増大する。また、次のことが発見された。エンジンの燃焼パラメータと排出指標は燃料中の酸素の割合と関係があり、燃料の種類にはあまり関係がない。即ち酸素含有混合燃料には共性関係が存在する。エンジンの熱効率は混合燃料中の酸素含有化合物が増えるのに伴って改善されるが、これは燃焼時間の短縮と拡散過程燃焼の改善によるものである。ディーゼル油/酸素含有化合物混合燃料はエンジンのCOと煙の濃度を大幅に低減することができ、負荷の大きい状態の時、その低減効果は一段と顕著なものとなる。混合燃料中の酸素の質量割合が10%の時、エンジンの炭素粒子は40%低減する。ディーゼル油/酸素含有化合物は炭素粒子を低減させ、窒素酸化物の排出が増えることもない。ディーゼル油/酸素含有化合物の粒子分布は小粒径の方に向かい、粒子の数が幾らか増える。エンジンの研究活動に合わせ、定容装置を用い、ディーゼル油/酸素含有化合物の噴霧の特性を研究し、数値シミュレーションによって噴霧の特徴を分析した。

3. ディーゼル油/溶存気体の噴霧とエンジンの燃焼についての研究

 一部の気体燃料を高圧下でディーゼル油に溶け込ませ、噴霧のフラッシュ・ボイリング(Flash boiling)現象を利用すれば、燃油の霧化を促進し、さらにはディーゼルエンジンの噴射圧力を高めない条件下でエンジンの性能を改善し、排出を低減することができる。西安交通大学は一定割合のメタンとプロパンをディーゼル油に溶け込ませ、ディーゼル油/溶存気体混合燃料の生成を試み、噴霧とエンジンの試験研究を行った。噴霧試験で次のことがわかった。ディーゼル油/溶存気体は燃油の霧化品質を著しく改善し、燃油と空気の混合を促進し、噴霧中の過度に濃い混合気ゾーンを減らすことができる。噴霧の粒径分布法則は小粒径の方向へ移動するというものであり、低粘度の燃油は燃油霧化に対する溶存気体の促進作用を強めるのに役立つ。また、エンジン試験で次のことがわかった。ディーゼル油に低沸点の燃料を溶け込まると、着火遅れが短縮され、予混合燃焼の占める割合が増え、拡散燃焼の占める割合が減り、燃焼時間が短縮され、エンジンの熱効率が向上し、未燃の炭化水素、一酸化炭素、炭素粒子の排出が低減した。しかし、窒素酸化物の排出はいくらか増える。ディーゼル油に6%のプロパンを溶け込ませた時、エンジンの炭素粒子排出はディーゼル油だけの時に比べ、50%低減した。その後、炭素粒子に対する低減効果は弱まり、ディーゼル油に14%のプロパンを溶け込ませた時、エンジンの炭素粒子排出は65%の低減となった。即ち6%の時に比べ15%低減しただけである。このため、エンジンにディーゼル油/プロパン混合燃料を使用する場合は、10%以内を選択するのが比較的妥当だと言える。

4. 混合燃料の着火遅れについての研究

衝撃波管装置

衝撃波管装置

 着火遅れはエンジンの性能に大きな影響を及ぼし、単一燃料については既にかなり広範囲のデータがある。しかし、混合燃料については着火遅れのデータがまだ不足している。西安交通大学が進めている混合燃料エンジンの研究に合わせ、衝撃波管装置を用い、混合燃料の着火遅れの測定を、多成分の気体燃料と液体燃料について行っている。着火遅れと燃料の組成割合との間には非線形の関係があり、このため、混合燃料の着火遅れの正確なデータを得るには実験で測定するしかない。着火遅れのデータは混合燃料の化学反応動力学を発展させるための検証的なデータとなるものであり、クリーン燃料エンジンの基礎研究にとって非常に重要である。

5. 国際間の協力

 西安交通大学は高効率・低公害クリーン燃料エンジンの研究において国際間の幅広い協力関係を確立した。Wisconsin大学エンジン研究センター、MITのSloan実験室、Princeton大学、日本の慶応大学、広島大学、群馬大学、岡山大学、英国のManchester大学、Birmingham大学等と共同研究している他、多くの二国間共同研究プロジェクト又は政府間協定プロジェクトを引き受け、学者間の相互訪問に力を入れ、国際会議を共同で手配してきた。実質的な国際協力は西安交通大学の高効率・低公害クリーン燃料エンジン分野の研究活動を促すものであり、中国の代表的な研究拠点となっている。

3.中国のその他大学が進めている高効率・低公害エンジンの研究活動

 中国の大学は高効率・低公害クリーン燃料エンジンの研究でそれぞれの特色を持つ。天津大学の内燃機関燃焼国家重点実験室はディーゼルエンジンの均質圧縮点火、低温燃焼、ガソリンエンジンの均質圧縮点火に特色があり、特に高圧多重噴射ディーゼルエンジンの研究では大きな進展がある。清華大学はシリンダー内直噴方式を採用したガソリンエンジンの均質圧縮点火で良い燃油経済性基準が得られ、低排出を実現した。エンジン燃焼の数値シミュレーションでも一定の特色を持つ。上海交通大学はジメチルエーテルエンジン及びエンジンのクリーン代替燃料で多くの研究をし、また、燃料の組合せ方式を通じ、均質圧縮点火エンジンの着火制御と負荷拡大に関する研究を進めている。大連理工大学は噴霧の質を改善することに重点的に取り組み、北京理工大学は水素燃料エンジンの研究を集中的に進め、北京交通大学は主に天然ガスエンジンの研究を行い、吉林大学はエタノール燃料エンジンの研究を専門に進めてきた。国家「863計画」の支援の下、大学が繰り広げている研究はいずれも自動車企業やエンジン企業と提携して行われ、中国のクリーン車開発の一翼を担っている。中国科学技術部国家自然科学基金委員会はクリーン燃料エンジン分野の基礎研究に対しても研究経費を助成した。中国の高度経済成長と直面する環境汚染問題は高効率・低公害エンジンの研究と開発にチャンスをもたらしていると言うことができ、大学は今後も研究活動を通じ、エンジンの省エネと汚染物質の抑制のため、理論と技術の両面からサポートするであろう。

西安交通大学のクリーン燃料エンジン研究チーム

西安交通大学のクリーン燃料エンジン研究チーム


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