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水素エネルギー社会の構築を目指して-低炭素社会実現のために-

2010年 2月23日

勝田正文

勝田正文(かつた まさふみ):
早稲田大学理工学術院環境・エネルギー研究科教授

1982年 早稲田大学より工学博士受領。
1977-1982 東京電機大学工学部助手。
1982-1984 早稲田大学専任講師。1984-1989早稲田大学助教授。
1989- 同大学教授。
現在日本機械学会フェロー、評議員、企画理事。日本冷凍空調学会参与、監事。日本伝熱学会元副会長。

1. はじめに

 我が国では、1993年度に国の水素技術開発プロジェクト『水素利用国際クリーンエネルギーシステム』、略称WE-NET(World Energy Network)第Ⅰ期計画を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとして発足させた。本プロジェクトは、海外の未利用再生可能エネルギーを利用して液体水素を生産し、消費地に海上輸送して発電や自動車用燃料として利用することを最終目標としていた。第Ⅰ期計画(1993~1998)は、長期計画(フィジビリティスタディ)としてスタートした。しかしこの間、エネルギーを取り巻く情勢が大きく変化したこと、それと時を同じくして、再生可能エネルギーをはじめとした新エネルギー(太陽電池や風力発電など)が、世界的にも(特に先進国を中心に)普及の段階に入りつつあること、加えて固体高分子燃料電池技術の急速な進展等を考慮して、第Ⅱ期(1999~2003)では、これら技術開発動向を踏まえ、純水素固体高分子燃料電池、水素自動車燃料系システム、水素ステーションなど短期に実用化できる技術開発を優先して行うよう軌道修正された。すなわち1993年当時、『夢』の水素エネルギーにすぎなかった段階から、近い将来『現実』の世界となる段階へ到達したと判断したものである1)。事実、その後、本プロジェクトは水素の安全利用に関する開発研究や燃料電池に係る技術開発に移行している。また、ごく最近『戦略技術ロードマップ』がNEDOにより策定され(http://www。nedo。go。jp/roadmap/)、その中の水素編で水素製造、貯蔵、輸送、供給に関する2020年までの技術開発ロードマップが紹介されている。このマップは2008年夏の洞爺湖サミットの際に提示されたクールアース50に反映されている(クールアース―エネルギー革新技術計画―経済産業省)。ここではより具体的な水素製造、貯蔵や供給の技術開発について言及すると共に飛躍的な低コスト化、例えば、2020年を目標に輸送コスト(高圧輸送7円/m3、液体輸送3円/m3)や水素価格40円/m3を求めている。成果普及に関する課題、とくに供給インフラでは、「黎明期は、化石燃料改質器一体型の定置燃料電池やガソリンスタンドにおける水素スタンドの併設から利用が進展し、技術・需要の進展に合わせ、水素ステーションや低圧パイプラインを用いたローカル水素供給システムの活用が見込まれる。将来は、ローカル水素供給システムとコンテナ等による大規模生産拠点からの輸送との最適な組み合わせによって、全国規模の水素供給インフラが構築されることが期待される。」としている。これを受け、エネルギー供給産業の戦略としてマイクログリッド内に水素供給を考えるようになった。(http://www。enecho。meti。go。jp/policy/coolearth_energy/coolearth-gaiyou。pdfを参照)

 そこで本稿では、間近に迫る水素エネルギー社会のモデル構築をこれらのロードマップに先行して目指した研究開発の取り組み(本庄早稲田地域におけるG水素モデル社会の構築、環境省地球温暖化対策事業、『G水素プロジェクト』2003-2007)について紹介するとともに、本プロジェクトの成果および課題について述べる。

2. G水素による水素エネルギーモデル社会の構築

 水素社会の実証事業モデルの概念図を図1に示す。ところで、水素が二次エネルギーとして期待される所以は、①原料に多様性があり、種々の一次エネルギーを使って造りだせるため資源的な制約がない、②燃焼生成物が水だけであるために環境破壊の心配がなくクリーンである、③サイクルが早いために、地球上の物質循環を乱さない、④水素は貯蔵が比較的容易である、⑤汎用性が高い。例えば、高効率で運用できる燃料電池での分散型発電、自動車や航空機の燃料、水素と金属あるいは合金との反応によるエネルギー変換機能を用いた電池等への利用などの特徴を有しているからであると、説明されてきている2)。新しい取り組みではさらに踏み込んで、可能な限り化石燃料による一次エネルギーに依存しない「脱化石資源」、「水素供給の多様化」を目標に、グリーン水素(以降G水素と記す)を以下のように定義した。すなわちG水素とは、

  1. 再生可能資源を活用して得られる水素ならびに再生可能資源を活用してアルミニウムやシリコン等を媒体として得られる水素。
  2. 一次~三次産業から排出される廃棄物(農林・畜産・水産・食物残渣等)を活用して得られる水素。
  3. 副生成物として回収される水素。
  4. G水素社会として取り上げる水素(ⅢとⅣはエクセルギー、LCA評価による検討に基づく)。である3)。

 このように水素エネルギーモデル社会の構築を最終目標に、なかでも水素資源の多様化の一環としてG水素を定義してこれを活用した「ゼロエミッション都市作り」を目指して、G水素の製造・輸送・貯蔵・利用に関する主要技術開発を『本庄・早稲田地区』で展開した。すなわち、ここに展開するプロジェクトは、『今世紀は、「脱化石資源」、「資源のエクセルギー評価に基づいた活用」、「水素資源供給の多様化および廃棄物の減量」を目指すことにより、持続性のある地球環境の保全が達成できる』という基本理念に基づく。(http://e-tech。eic。or。jp/libra/lib_6/lib6。htmlを参照)次に、各タスクの考え方およびプロジェクト提案時の計画を順次述べる。

2.1 G水素の製造

 既に述べたように二次エネルギーとしての水素は、再生可能エネルギー、原子力や夜間余剰電力などによって水電解あるいは天然ガス、メタノールそしてガソリンなどを改質して製造するのが一般に考えられている製造シナリオである。従って、燃料電池であれ、エンジンであれエネルギー変換プロセスでの相当な高効率化が必須であり、製造・変換過程での一次エネルギーをどこから供給するかによって、クリーンなエミッションである優位性を除いて、エネルギー変換過程での優位性が損なわれる懸念が生じる。

 そこでG水素の製造については、一次~三次産業から副生する物質、エネルギーを原料とする、以下の技術開発を試行した。

 (1) 廃シリコンからの水素の製造
 (2) 廃アルミニウムからのG水素の製造
 (3) 水素発酵菌によるG水素の製造

 (1)および(2)については、半導体製造・加工排水中の高純度シリコン切削・研磨屑を水酸化処理して高純度水素を製造する。同様にアルミニウムについても、アルミニウム屑、アルミニウムドロス等の水酸化処理で製造する。ここでは、アルミニウム・シリコンを媒体とし、再生利用可能資源を輸送して、消費地での水素ならびにエネルギーとして回収する考え方について、アルミニウムを例に述べる。二次産業からの副生水素としては、鉄鋼産業におけるコークス炉ガスからの改質、ソーダ産業からの塩分解の副生水素などがよく知られ、話題となっている。しかしながら、これらのガスはいずれも石油、石炭および電気を消費しており、真の意味でのG水素とは位置づけ難い。

① アルミニウムの例

 アルミニウムは原料であるボーキサイト(酸化アルミニウム:Al2O3を主成分に酸化鉄、酸化シリコンを含有する鉱石)を水力発電等による電気エネルギーによって還元して製造される。

② わが国では、このようにして製造されたアルミニウム地金を約240万トン/年輸入している。また、国内でのアルミニウムリサイクルによって回収されたアルミニウム屑は、電気エネルギーによって再生され、アルミニウム地金として約120万トン/年製造されており、国内では合わせて約360万トン/年のアルミニウムが流通している。このように大量に流通しているアルミニウムのなかには再生されにくい屑も発生しており、今後増加していくものと考ええられる。

 一方、アルミニウムをアルカリ溶液中で反応させると
Al+3H2O→Al(OH)3+1。5H2
ΔH=-418。6kJ/mol
水素、水酸化アルミニウムと熱エネルギーが回収される。

③ Al(OH)3 は高温で焼成することにより
2Al(OH)3 →Al2O3+3H2O
ΔH=+19。0kJ/mol
となり、若干のエネルギーを付加することによりアルミニウムの原料となる。

 つまり、アルミニウムに託した水力エネルギーを、先ずアルミニウム製品としてその機能を果たした後、水素と熱を回収して水酸化アルミニウムを得る。得られた水酸化アルミニウムに若干の熱を付加して酸化アルミニウムとした後、Al地金を輸入した帰り船に積み込む。このようにして、再生可能資源(水力発電等)はAlを媒体とした循環システムが構築される。この際、発電に化石燃料を使用していないことが重要で地球温暖化に寄与できると位置づけられる。

(3)では食品系残渣、排出物を原料とし、嫌気性水素生成細菌の利用を考えている。この方式では、有機性廃棄物をまず酸発酵によって有機酸に変換後、水素ガスと二酸化炭素として回収する。有機性廃棄物に水素生成細菌を適用することで効率的な水素生産が可能になり、環境浄化とエネルギー回収の双方に貢献が可能であると考えている。なお、生成する二酸化炭素はカーボンニュートラルであるため、地球温暖化には寄与しない。この方法における課題は、有効な生成細菌を育成することおよび温度を適宜制御することで飛躍的に水素生成速度を向上させることにあると認識している(クールアース50においてもメタン発酵や水素発酵は、効率のよい発酵菌の探索など、研究段階にあるとしていることを付言する)。

2.2 G水素の輸送・貯蔵

 G水素エネルギーをモデル地区にスムーズに導入するためのインフラの大部分は、輸送と貯蔵技術にあるといっても過言ではない。水素の輸送・貯蔵手段として、液化方式、高圧方式、水素吸蔵合金方式などが考えられる。最近の水素ステーション建設動向を見ると、国内での一般的な水素の輸送・貯蔵方式としては、圧縮方式が主流になりつつある。しかし、中長期的な候補としてその他の方式も視野に入れる必要性は、国際的(米国・EUのロードマップ)にも認知されている。そこで、水素吸蔵合金(MH)を中核物質として以下の3課題について、検討している。

(1)HCS-MHの製造技術:水素化燃焼合成技術による活性化処理フリー水素吸蔵合金製造技術

(2)SG化処理技術と水素精製機能を有した吸蔵装置の製作:シリコン樹脂をバインダーとしたMHの加工技術の確立と水素精製機能を備えた吸蔵装置の製作

(3)MHを利用した水素貯蔵・輸送技術:地域への分散型供給を目指し、MHによる水素精製・輸送および貯蔵の最適化を図る

 ここでは(1)と(3)について述べる。(1)の技術は、高圧水素雰囲気下での燃焼合成技術であり、この方式によれば、大量の熱と時間を必要とする活性化処理が省略でき、加えて、同一合金組成にあって水素吸蔵量に優位性が認められる。第二次のWE-NET計画では3wt%を吸蔵量の目標値として掲げたが、はるかに高い値が見込まれる画期的な製造法である。将来予想される、個別分散型でのG水素エネルギー利用に対して有効な技術であると認識している。

 (3)の技術は、(1)の高性能水素吸蔵合金によるモデル地区での水素貯蔵受入・供給システムの技術開発によって、各種燃料電池の実用化ならびに普及、燃料電池コジェネレーションシステムの実用化を促し、加えて開発予定の一人乗りFCコミュータ、交通制御システムなどモビリティー環境やヒートポンプシステムへの水素供給も可能とする水素輸送・貯蔵技術である。

2.3 G水素の利用技術

 G水素の供給先については主に燃料電池を考えているが、利用技術では下記のような他に例を見ない、ユニークな応用を提案している。これらの技術はいずれも、実験室レベルの開発・研究段階を終了し、実証段階に至っている。(1)PEFCコジェネレーションシステムの開発、(2)超軽量一人乗り自動車(カーシェアリング用)の開発、(3)カセット式燃料電池信号機システム、(4)FC駆動車椅子の開発、(5)MH利用の小型自動販売機(低温度差空調・冷凍装置)、(6)バイオマス由来のPEFCの開発である。http://www。waseda。jp/rps/information/magazine/front/front_080527。html(参照)

図1  水素社会の実証事業モデル(本庄・早稲田地域でのG水素社会の構築)

図1  水素社会の実証事業モデル(本庄・早稲田地域でのG水素社会の構築)

 (1)と(6)は廃棄物由来のG水素やバイオ由来水素ガスを直接利用するための定置型燃料電池システム、とりわけ経済的なシステムを開発する。また、コジェネレーションシステムとすることで排熱の応用も期待される。さて一方、近年、大気環境の悪化や化石燃料の枯渇が深刻化し、自動車からの排出ガス低減が強く求められ各所で低公害車の実用化が強く求められている。このような状況を鑑み、(2)では、総合的な低公害化、充電時間の短縮を目的とし、一人乗り電気自動車をベースとして、既存技術を摘要した燃料電池ハイブリッド自動車を設計、製作する。このいわばコミュータカーは、健常者はもちろんのこと、今後迎える高齢者社会や身障者にも配慮して、大学での研究ならではの特徴を前面に出している。さらに2005年度以降において、試作車両に車両情報(車両位置、車速、燃費等)通信装置を搭載する。この情報を中央サーバーに送り管理する通信システムを構築する。最後に2006年度においては車両を複数台製作し、早稲田大学本庄キャンパスを対象地区とし、上記システムのフィジビリティスタディを実施し、(3)で新たに設置する新方式信号装置とサーバー情報を連携させることにより最適な交通流制御手法を提示する。

 (4)では、高齢化社会を迎えるに当って今後需要が増加するであろう電動車椅子のパワーユニットの燃料電池化と、インテリジェント化をさらに推し進め、障害者や高齢者にとって利用しやすい車椅子の提案につなげていく。以上のように全体では12課題を提案し、4大学・10企業が参加している。事業全体を概観する構成図を図2に、研究課題及び開発組織を図3に示す。

図2 技術開発の実施体制

図2 技術開発の実施体制

図3 課題と組織

図3 課題と組織

 図2の中で、事業評価WGは、それぞれの技術検討グループに参加して各システムの基礎データ等を収集し、GHFS(Green Hydrogen Feasibility Study)グループにて環境経済性及び事業性の評価検討を行った。さらに、技術検討WG・事業評価WGでの議論を踏まえ、その評価等をプロジェクトの展開に適正に反映させるため、FS委員会を設置して全体計画に関わる意思決定を行う仕組を構築した。

3. 開発目標

 FS委員会の評価を基に、各技術開発WGによる最終目標を以下のように設定した。また、研究開発の進捗状況を分類評価して、実用化までの時間及び経済性を考慮して、図4に示すロードマップを独自に作成した。

  • MGHU:低圧アルミ(アルミドロス処理800kg/day)、高圧アルミ・シリコン(35MPa、純度99。99%、水素6、000Nm3/y)
  • BGHU:1kgの生ゴミから20Lの水素製造、発酵残渣におけるBOD160mg/L、T-N120mg/L以下
  • IMHU:低コスト活性化フリーMH(TiFe)の製造、水素精製純度99。999%
  • GHE-S:ULFCV5台、COMS3台、GHFC信号機1機、FC車椅子3台、FCフォークリフト1台
図4 技術開発ロードマップ

図4 技術開発ロードマップ

4. 事業成果

4.1 MGHU(Metal-Green Hydrogen Utilization)システム

 MGHUは、シリコン・アルミ等の金属を原料とする水素製造技術およびその周辺技術について検討するワーキングである。廃アルミの場合、効率的な反応を行うため予備処理を実施する。次に、アルカリ溶液にて水素化反応を行った後、低圧もしくは高圧で水素を回収する。水素と同時に発生するアンモニアの処理技術も検討している。生成物として水酸化アルミもしくはベーマイトを回収する。シリコンの場合も同様に、アルカリ溶液での水素化反応を行う。副生成物を高付加価値製品とするため、生成物である珪酸ソーダと廃アルミ(副生アルミを含む)処理溶液からの析出物を原料としてゼオライトの製造技術を開発する。廃アルミからのG水素製造では、①廃アルミからのG水素製造(低圧)において実証機設計、製作、試運転及び実証試験、装置特性把握を行った。また、②廃アルミからのG水素製造(高圧)(アイテック)において基礎実験、晶析試験及び装置改造、高圧・高純度水素回収試験を行っている。(図5~図8参照)。

4.2 BGHU(Bio- Green Hydrogen Utilization)

 水素発酵菌によるG水素の製造では、①生ごみ前処理条件の検討と前処理装置の試作、評価、②生ごみ水素発酵の高効率化、③水素発酵残さの排水処理を実施した。装置を用いて生ごみスラリーを前処理し、それを連続して培養槽に送り水素発酵させた。

 培養した5日間の平均水素ガス発生量は430ml/h、平均水素分圧は23。5%であり、生ごみ1kg当たりの平均水素発生量は7。75Lであった。

4.3 IMHU(Innovative Metal Hydride Utilization)

 水素化燃焼合成技術による活性化フリー水素吸蔵合金製造技術では、高圧水素雰囲気下で大きな発熱を伴うTiH2合成を利用するTiFe合成法に挑戦し、そこで得られた合金はわずかな前処理で比較的容易に水素化した。シリコン樹脂をバインダーとしたMHの加工技術と水素精製機能を備えた吸蔵装置の製作・MH装置による水素精製・輸送・貯蔵技術では、繰り返し使用時において水素吸蔵合金は粉化し、伝熱特性が低下することが問題点として着目される。

図5 廃アルミ(低圧)装置/図6 廃アルミ(高圧)装置

図5 廃アルミ(低圧)装置/図6 廃アルミ(高圧)装置

図7 廃シリコン装置/図8 廃シリコン利用ゼオライト

図7 廃シリコン装置/図8 廃シリコン利用ゼオライト

 この現象を軽減するためにシリコンゴム(SG)との混合および金属銅によるめっき処理の有効性を明らかにした。また、G水素に含まれるアンモニア等不純物を除去することを目的として、模擬ガスを使用して水素精製実験を実施した。その結果、水素精製実験では4N~5Nの高純度水素の回収に成功した。

4.4 GHE-S(Green Hydrogen Equipment-System)

 カセット式GHFC信号機の製造とシステム開発では、グリーン水素を燃料とした将来の水素社会への適応、災害時に長時間の安定電源供給による稼動が可能なカセット式GHFC信号機の製造とシステムを開発し、本庄地区での屋外実証試験による信頼性の検証を実施した。実証試験に際して、35MPa大型容器の開発、容器認定取得を行った。GHE-Sの製造とシステム開発は次の二課題からなる。すなわち、

①小型FCV(COMS)の開発

 FC、高圧水素容器などのコンポーネントを車両に搭載するとともに制御システムを構築し、走行試験が可能な車両を完成させた。走行に要する平均消費電力を三値制御の導入により制御し、特に平均消費電力の高い本庄モードでは、燃料電池の効率向上、バッテリーの充電損失低減により大幅な燃費の向上が可能となった。

②ULFCV(Ultra light-weight Fuel Cell Vehicle)の開発

 量産型ULFCVを設計し、1台を実際に製作した。環境負荷低減に効果的である量産型ULFCVをカーシェアリングとして運用していくことにより、水素社会構築の一端を担い、地域のシンボルとして貢献することが可能であることがわかった。これら車両は、各種展示会とりわけ水素EXPOなどに積極的に参加している。周辺諸国のニュースやホームページに紹介されるなど好評であった(図9参照)。

 燃料電池搭載車椅子の開発では、車いす搭載機器の中で、燃料電池の部分の課題を最優先とし、ハイブリッドシステムの制御装置も改良した。2006年度中に開発したパワーユニットを軽量化車体に搭載して走行試験を行った。

図9 ULFCVおよびCOMS

図9 ULFCVおよびCOMS

5. G水素祭について

 本プロジェクトの集大成として、2007年11月3日から18日にかけて、公開シンポジウムおよび燃料電池車によるカーシェアリング実証試験を中心にして、G水素祭りを開催した。本庄市地域住民や児童などに参加を要請し、将来の水素社会を垣間見せることに成功した。その他のイベントは、FC車両の展示(本庄祭 ほんじょう秋の祭にて)水素製造精製プラントの見学、科学実験イベント、各種デモンストレーショ

概要

期間:2007年11月3日~18日
実施内容
  • 展示(本庄祭・ほんじょう秋の花祭り)
  • 公開シンポジウム
  • G水素製造プラント見学会
  • 試乗会
  • デモンストレーション・展示
  • 科学実験イベント(小中学生対象)
  • 燃料電池車によるカーシェアリング
  • 実証試験
  • FC車いす実証試験

 延べ参加人数:189名

6. まとめにかえて-プロジェクトのその後-

 本G水素プロジェクトは2008年3月に終了したが、その後それぞれ新たに立ち上がった研究開発プロジェクトに移行して活動している。例えば、水素吸蔵合金では、『食品産業における省CO2化のための廃熱・太陽熱利用による水素冷水機に関する技術開発(略称:イチゴプロジェクト』(環境省地球温暖化対策)において、再び大学と企業、県が連携して水素吸蔵合金の新しい製造法や冷水機の開発を進めている。また、NEDOからの委託研究である『固体高分子型燃料電池内における熱・物質輸送現象』において、燃料電池膜の更なる効率化を目指して研究を続けている。また、開発したFC車両の数々は、地域連携のためのイベントなどで(特に墨田区)活躍している。

 研究開発ではないが、『デュアル対応国際(戦略)環境リーダー』(振興調整費)も人材育成において採用され、2009年4月より修士、博士両課程でスタートしている。この中で、本プロジェクトに協力された企業でのインターンシップや地域との連携への学生参加を計画している。

図10 2007年11月G水素祭の概要/図11 FCカーシェアリングの本庄実証試験

図10 2007年11月G水素祭の概要/図11 FCカーシェアリングの本庄実証試験

 なお、本原稿は2006年2月に行われた第21回環境工学連合講演会論文『本庄・早稲田地域でのG水素社会モデル構築』勝田正文 を参考に再編集したものであることをお断りいたします。


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