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O2/CO2燃焼方式における煤塵生成および制御に関する研究の進展

2010年 2月16日

姚洪

姚洪 (YAO HONG):
華中科技大学・石炭燃焼国家重点実験室教授/博士課程教員

1968年生まれ。2002年 豊橋技術科学大学環境・生命工学専攻 博士学位取得。中国石化公司省エネセンターエンジニア、豊橋技術科学大学JSPS 研究員、COE研究員を経て、2005年より華中科技大学教授。2006年にはカナダAlberta大学客員教授。研究分野は固体燃料の燃焼および汚染物質の制御。100余の論文を発表。

概要

 O2/CO2燃焼方式は、石炭燃焼に伴うCO2の排出を抑制する効果的な技術的手段の一つになると見なされている。CO2がN2の代わりとなることを考えると、同燃焼方式によって汚染物質である煤塵が生成されるメカニズムおよび制御技術に関する高度な研究が期待される。本論文では本研究チームがO2/CO2燃焼方式における煤塵生成および制御に関して実施した実験室レベルの基礎研究を紹介する。実験や研究を通して、O2/CO2燃焼条件では煤塵のうちPM1-10やPM1の生成濃度が低下することが明らかになった。また鉱物の気化が抑制されることも分かった。難溶解性元素の気化が、揮発性元素に増して抑制されるようだ。O2/CO2燃焼条件では、O2濃度が高くなるに伴い、温度や還元性雰囲気の影響を受ける鉱物の気化量は、まず減少し後に増加する過程をたどる。実験において、石炭中に天然アルミノケイ酸塩吸着剤を添加し、石炭配合による燃焼方式を採用した場合に、石炭燃焼過程における煤塵の排出を効果的に減少することができた。燃焼する石炭に天然カオリン吸着材を添加すると、カオリンと揮発性元素の化学反応によって、PM1の排出濃度が抑制される。燃焼温度が上昇するに伴い、化学反応とカオリンの持つ物理活性性能の相互作用によって、カオリン吸着材の揮発性元素に対する吸着効果は、まず増加し後に減少する過程をたどる。瀝青炭と褐炭を混合し燃焼すると、瀝青炭に含まれるアルミノケイ酸塩と褐炭の燃焼過程で生成される揮発性元素の相互作用によって、PM1の生成が抑制される。この種の抑制は石炭の成分や混合比率によって決まる。O2/N2燃焼方式と比較すると、O2/CO2燃焼方式では、石炭混合による燃焼によって鉱物の相互作用が低下し、PM1の生成抑制効果も減少する。

1. 背景

 化石燃料を燃焼すると温室効果ガスであるCO2が大量に排出され、地球温暖化や気候変動を引き起こすことは明らかになっている。温室効果ガスの排出を効果的に抑制することは、人類社会の持続的な発展を左右する重大な課題である。将来的に再生可能エネルギーが主要なエネルギー源となり、CO2排出問題が根本的に解決されるかもしれない。しかし化石燃料の中でも特に石炭は、将来のエネルギー源の中でも、最も安価かつ安全なエネルギー源であり続けることだろう。また再生可能エネルギーへの移行前においては、最も主要なエネルギー源である[1]。石炭は地球上の化石燃料の中で最も豊富に存在する。また中国をはじめとする国々において、最も主要な一次エネルギーとなっている。高効率でクリーンな石炭の燃焼技術を開発することによって、石炭燃焼発電に伴うCO2の排出量を制御し減少させることができる。このことは中国だけでなく全世界の持続可能な発展を実現する上で、緊急で価値のある課題となっている。

 CO2の主要な排出源となっている石炭火力発電所をはじめとする化石燃料を利用した発電所において、CO2回収技術を応用しCO2の収集や貯蔵を行うことは、人類活動によるCO2の排出量を抑制するための重要な手段であると見なされている。各国政府はCO2の回収・貯蔵技術の開発のために人材や資金をふんだんに投入している。化石燃料を利用した発電所におけるCO2回収技術は、3種類に分けることができる[2]。第一類は燃焼後にCO2を分離する方法である。つまり通常の空気燃焼によって発生した煙からCO2を分離し収集する技術である。第二類は燃焼前にCO2を収集する方法である。気化によって燃料をCOやH2を含む合成ガスに変化させる。次いで水性ガスシフト反応を利用し、COをCO2に変換した上で収集する。H2は燃料として火力発電などに用いる。第三類はO2/CO2燃焼(Oxy-fuel combustion)方式である。空気分離によって得られた酸素を従来の空気に変えて燃焼すると、排気ガスの主な成分が高濃度CO2となり、CO2の収集が容易になる。燃焼システムの温度を制御するため、一般的に排ガス再循環を採用することから、酸素/再循環ガス燃焼とも呼ばれる。これら3種類の技術の開発が全世界で進められている。前述した三つのCO2回収技術のうち、微粉炭火力発電所に応用が可能なのは、第一類と第三類である。当該技術に関する数多くの経済性評価によると、O2/CO2燃焼技術のために通常要する総費用が、空気燃焼下におけるCO2分離技術に比べ非常に安価である[3-6]。加えて汚染物質の排出が少なく燃焼効率が高いという利点もある[7-9]。汚染物質の排出を限りなくゼロに近づけることも可能だ。現在稼働中のものを含めた従来型石炭火力発電所のCO2排出量を抑制する技術として、極めて優れた競争力や将来性を備えていると言うことができる。

 石炭火力発電のよって排出される汚染物質には、煤塵(PM)、SOx、NOx、重金属(水銀)などが含まれる。石炭のO2/CO2燃焼も例外ではない。石炭のO2/CO2燃焼によって排出される汚染物質(SO2 やNOx)について、一部の単一汚染物質に対する研究が国内外で進められている。しかし進行中の研究は、O2/CO2燃焼における汚染物質の生成に関するものに集中している。NOxに関する研究から、O2/CO2燃焼がNOxの生成量を著しく低下させることが分かっている[9-12]。その主なメカニズムは、再循環ガスに含まれるNOxが燃焼室に戻った後、再燃焼に類似した過程が生じることである[10,11]。実際のところ、O2/CO2燃焼における高濃度CO2といった排ガス条件および微粉炭燃焼過程の変化が、燃料のNOx生成反応を複雑にしているのである。またSO2に関する研究から、O2/CO2燃焼における再循環の作用により、排気ガスに含まれるSO2の濃度が著しく高くなると共に[9,12,13]、SO2の生成量が一定程度抑制されることが分かっている[9]。高いSO2濃度は、石灰吹込み脱硫などの技術によるSO2除去に寄与する[14]。O2/CO2燃焼においてSO2生成量が減少する原因は、簡単に言えばSO2と石炭灰の作用による[9]。石炭灰の特性が、石炭に含まれる鉱物質などの無機質の特性や燃焼過程を決定する。その特性がO2/CO2燃焼におけるSO2の生成特性に与える影響は十分に理解されていない。別の点として、高いSO2濃度が排気ガス中のSO3濃度を上昇させるが、それがSO2生成の抑制に及ぼす影響についても、いっそうの理論的探求が必要である。これまでに本研究チームは、微細煤塵などに対する基礎研究にも従事したことがある。同研究によると、O2/CO2が石炭に含まれる主な鉱物質の変化生成物に与える影響は小さいということが明らかになった。しかし石炭に含まれる主な鉱物相の相対含有量には大きな影響を及ぼす。特に微細煤塵の生成には顕著な影響がある[15-17]。Suriyawong ら[18]の研究が示すように、O2/CO2燃焼は煤塵の生成量を減少させるが、煤塵の大きさが小さくなる。我々の研究[16]からも同様の結論が得られた。また我々の研究[15,17]からは、O2/CO2がサブミクロン粒子の形成、つまりサブミクロン粒子の生成過程に顕著な影響があることも明らかになっている。

 以上のことから、O2/CO2燃焼過程における反応条件の変化が、汚染物質の生成過程や生成量を複雑にすることが明らかである。汚染物質の生成過程に関する定量的記述が求められている。また燃焼過程における汚染物質の生成を効果的に抑制する必要もある。これらの必要に応えるため、燃料特性、O2/CO2燃焼、石炭燃焼過程などを結び合わせた上で、汚染物質の生成過程および制御に関する徹底的かつ系統的な研究を行わなければならない。以上の点を念頭に置き、本論文では本研究チームの進めるO2/CO2燃焼方式における煤塵生成および制御に関する研究結果の一部を紹介する。

2. O2/CO2燃焼方式における煤塵生成および制御に関する研究

2.1 O2/CO2燃焼方式における煤塵生成

 典型的なO2/N2燃焼方式における煤塵生成のメカニズムについては、国内外の学者によって幅広い研究が進められている。主な研究内容は以下のとおりである。(1) 無機鉱物の気化-凝固[19-21]。(2) 含有鉱物の重合[22-23]。(3) コークス粒子の粉砕[24-25]。(4) 外部鉱物粒子の粉砕[26,27]。このうち無機鉱物の気化-凝固は、微小モード粒子(1マイクロメートル未満)の主要な形成メカニズムである。また含有鉱物の重合や外部鉱物粒子の粉砕は、粗大モード粒子(1マイクロメートル以上)の主要な発生源である。燃焼条件の変化は石炭燃焼過程における煤塵の生成特性に影響するものと思われる。

 O2/N2またはO2/CO2燃焼雰囲気において異なるO2濃度が、煤塵の粒径分布、質量濃度、化学組成に与える影響を比較研究するため、本研究チームは、O2濃度が10%、20%、30%の場合のO2/N2またはO2/CO2燃焼雰囲気において、落下型管状炉を用いた燃焼実験を行った。実験温度は1300℃、試料供給量は0.25g/minとした。10μm未満の粒子は、収集段階を13に設定したDLPIで収集した。各レベルの煤塵の元素組成は、エネルギー分散型蛍光X線装置を用いて分析した。

 異なる実験条件においてDLPIが収集した煤塵PM10の粒径分布は図1で示すとおりである。超微小モード(0.2μm前後)や粗大モード(8μmを超える)を除き、すべての粒径分布が2μm前後で明らかな変曲点が見られる。これは我々が以前行った研究[28-30]およびLinakら[31, 32]またはSeamesら[33] の発見した中間モードと類似した特徴である。図1から、O2/N2燃焼方式と比べて、O2/CO2燃焼方式における各モードの煤塵分布は、変化が少ないことも分かる。しかし煤塵の生成濃度に対する影響は比較的大きい。

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図1 異なる燃焼雰囲気における煤塵の質量と粒径分布(a: O2/N2, b: O2/CO2)

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図2 異なる雰囲気におけるPM1-10 (a)とPM1 (b)の生成濃度

 図2が示すとおり、O2濃度が同じであれば、O2/CO2燃焼雰囲気はO2/N2燃焼雰囲気と比べて、煤塵におけるPM1-10(空気動力学径1-10μm)とPM1(空気動力学径1μm未満)の生成濃度が少ない。Suriyawong[18]ら、およびKrishnamoorth[34]らの研究と比較してみると、前述の結果の主な原因として次の点を挙げることができる。1)CO2中におけるO2の拡散速度は、N2中におけるO2の拡散速度よりも低い。(DO2/CO2=1.3×10-4m2/s,DO2/N2=1.7×10-4m2/s)。このためO2/CO2雰囲気においてO2がコークス粒子表面まで拡散する速度が低くなる。結果としてコークスの燃焼程度や燃焼温度が低下し、PM1-10とPM1の生成量が減少する。2)O2/CO2燃焼雰囲気において、粒子表面のCO/CO2比率が増大するため、鉱物質の気化が減少し、PM1の生成量が減少する。図2からは、O2/CO2燃焼雰囲気におけるPM1-10の生成濃度は、O2濃度の上昇に伴い増加することも分かる。またPM1の生成濃度は、O2濃度の上昇に伴い、まず減少し後に増加する過程をたどる。O2濃度が20%の際に生成されるPM1は、O2濃度が10%または30%の場合よりも少ない。Leeら[35]の研究によると、CO濃度の増大は鉱物質の気化を大いに促進するという。O2/CO2燃焼雰囲気においてCO+O2→CO2 およびC+CO2→COという反応が起こり、O2濃度が低下するほど、CO2濃度が上昇する。こうして炉内で生成される排ガスのCO含有量や還元雰囲気が増大し、鉱物質の気化が促進される。またO2濃度が継続的に増加すると、煤塵の燃焼が激しくなり、燃焼温度も上昇する。この点も鉱物質の気化に寄与する。

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図3 O2/N2およびO2/CO2燃焼雰囲気におけるPM1-10(a)とPM1(b)の元素組成

 図3はO2濃度が20%の場合におけるPM1-10(a)とPM1(b)に含まれる一部の元素について、O2/N2およびO2/CO2燃焼雰囲気における含有量分布を示したものである。図から明らかなとおり、O2濃度が同じであれば、O2/N2燃焼雰囲気とO2/CO2燃焼雰囲気の違いが煤塵におけるPM1-10の元素組成に及ぼす影響は大きくない(図3a)。しかし煤塵におけるPM1の元素組成には大きな影響を与える(図3b)。O2/N2燃焼雰囲気と比べて、O2/CO2燃焼雰囲気で生成されるサブミクロン粒子に含まれる揮発性元素Na、K、Sなどの含有率が上昇する。また難溶解性元素Si、Al、Mg、Ca、Feなどの含有率が低下する。図2と図3に基づく計算によると、O2/CO2燃焼雰囲気で生成されるサブミクロン粒子における各元素の絶対量は一様に減少する。すべての元素の気化が抑制されるのである。以上のことから、O2/CO2燃焼雰囲気においては、難溶解性元素の気化が揮発性元素に増して抑制されるということが推測できる。その主な原因は、難溶解性元素の気化温度が揮発性元素よりも高いために[36]、難溶解性元素が揮発性元素以上に温度による影響を受けやすいからである。O2/N2燃焼雰囲気と比べて、O2/CO2燃焼雰囲気におけるコークス粒子の燃焼温度が低く、難溶解性元素の気化が揮発性元素に増して抑制されるのである。以上の理由でO2/CO2燃焼雰囲気で生成されるサブミクロン粒子のうち、揮発性元素であるNa、K、Sの含有率が上昇し、難溶解性元素であるSi、Al、Mg、Ca、Feの含有率が低下する。

2.2 石炭燃焼に伴う微細煤塵の制御

 Gale[37]らの研究によると、高温下において多くの気化した元素(Na、K、Ca、Fe、Mgなどや一部の重金属)は、石炭に含まれるアルミノケイ酸塩(カオリンなど)と化学反応を起こし、安定した化合物として粗大粒子中に留まる。こうして気化した元素の微細煤塵への変化が抑制されるため、集塵装置の収集効率が向上する。Naruseと筆者による [38-40]以前の研究によると、アルミノケイ酸塩(カオリンなど)は、石炭やスラッジの燃焼過程で排出される微細煤塵の一部を減少させる。また微細煤塵に含まれるPbやCdをはじめとするアルカリ金属や重金属の量を抑制することができる。本研究では前述した制御技術を応用し、O2/CO2燃焼方式におけるカオリンの添加が、煤塵の生成特性に与える影響を調べた。

 中国は火力発電大国であり、エネルギー源の70%以上を火力発電に依存している。石炭資源の減少に伴い、一部の発電所で購入している石炭が、ボイラー設計当初における石炭の種類とは一致しないようになっている。またボイラーの燃焼を安定させるために混炭を採用する場合も多くなっている。不完全なデータではあるが[41]、中国における1年間の混炭使用量は、2000万トン以上に達している。火力発電所において混炭が使用される比率は、最高で50%強になる。石炭混合には、瀝青炭に無煙炭、非粘結炭、褐炭などを加える方式が含まれる。燃焼過程で気化した元素とアルミノケイ酸塩の直接的な作用として、微細煤塵の生成が抑制される。このため本研究チームは、微細煤塵の生成抑制を目的とした石炭混合の応用の可能性を探るため、揮発性元素の含有量が高い石炭およびアルミノケイ酸塩の含有量が高い石炭を用いて、さまざまな混合比率における実験を行った。

 カオリン吸着材の添加と石炭混合という二つの面から、煤塵制御に関する本研究チームの研究成果を以下に紹介する。

2.2.1 カオリン吸着材の添加

 褐炭を落下型管状炉で燃焼させ煤塵を収集する実験を行った。燃焼温度は900℃、1100℃、1300℃、燃焼雰囲気はO2/CO2=1/4、カオリンの添加比率は石炭/カオリン=100/5(wt%)とした。

 図4はO2/CO2燃焼雰囲気で石炭にカオリンを添加する前後におけるPM1の排出量を示している。図からカオリン添加前後の物理的な平均値(Cal.)と実験値(Exp.)を比較することができる。物理的な平均値とは、燃焼過程にあるカオリンが石炭に含まれる鉱物質と化学反応を起こさず、それぞれ独自に煤塵を生成すると仮定し、混合比率から計算したものである。物理的な平均値と実験値を比較すると、カオリン添加後の燃焼における実験値が物理的な平均値をはるかに下回っていることが分かる。このことはカオリンと石炭に含まれる鉱物質の相互作用を明確に裏付けている。カオリンと石炭に含まれる揮発性元素の作用によりPM1の生成量が減少するのである。本実験における三つの異なる温度を比較すると、温度が高くなるに伴い、カオリンが石炭に含まれる揮発性元素に及ぼす作用が、まず上昇し後に下落するという傾向にあることが分かる。カオリンが石炭に含まれる揮発性元素に及ぼす作用が最も強いのは1100℃の時である。

1003yao_07

図4 石炭のみの燃焼とカオリン添加後の燃焼におけるPM1の生成量

 このことはIkyooら[42]の研究におけるカオリンのセシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)に対する吸着実験の結果と類似している。異なる燃焼条件におけるカオリンの物理特性や吸着能力に及ぼす影響を研究するため、カオリンを落下型管状炉で燃焼させた後のサンプルを収集し、比表面積や平均細孔径の分析を行った。表1は異なる燃焼条件におけるカオリンの比表面積や平均細孔径を示している。

表1 カオリンの比表面積と平均細孔径
  BET surface area (m2/g) Average pore size(nm)
Raw kaolin 22.19 19.47
kaolin at 900℃ 20.41 18.31
kaolin at 1100℃ 8.59 16.03
kaolin at 1300℃ 3.46 14.56

 表1が示すとおり、O2/ CO2燃焼条件において温度が上昇するに伴い、カオリンの比表面積や平均細孔径が縮小する。物理特性や拡散メカニズムから見ると、このような縮小がカオリンと石炭に含まれる揮発性元素の吸着に不利な影響を与える。またカオリンと金属蒸気の気固反応は、温度が上昇するほどに反応速度が増す。燃焼温度を900℃から1100℃に上昇させると、反応速度が非常に遅くなり、すべての過程に影響する主な要素が形成される。こうして燃焼過程におけるPM1生成に対するカオリンの抑制作用が強くなる。燃焼温度を1100℃から1300℃に上昇させると、カオリンの物理特性が変化するため、拡散メカニズムが全過程において決定的な要素となる。Ikyooら[42]の研究も示しているように、反応温度が上昇するに伴い、カオリンの揮発性元素に対する化学吸着の増強とカオリン自体の活性低下の間で競争が生じる。このことは本論文の結論とも一致する。

2.2.2 石炭混合

 燃焼実験のサンプルには、揮発性元素を豊富に含む褐炭(XLT)、アルミノケイ酸塩を豊富に含む瀝青炭(DT)、両者を混合した混炭が含まれる。石炭サンプルの基礎特性に関する分析データは、表2で示すとおりである。褐炭XLTには、S、Ca、Feが豊富に含まれている。また瀝青炭DTの灰は、AlやSiが主体である。混合比率は褐炭と瀝青炭の質量比で、9:1、7:3、1:1、3:7、1:9とした。O2/N2またはO2/CO2雰囲気が、混炭燃焼における煤塵の生成特性に及ぼす影響を研究するため、実験条件としてO2濃度20%のO2/N2雰囲気およびO2/CO2雰囲気を採用した。燃焼温度は1300℃とし、落下型管状炉燃焼実験テーブルとDLPIを用いて煤塵を収集した。

表2 石炭サンプルの基礎特性に関する分析
Proximate analysis, wt%, ad Ultimate analysis, wt%, ad
  M A V FC C H N S O*
褐炭XLT 15.5 15.6 45.8 23.1 44.2 5.7 1.2 3.2 14.6
瀝青炭DT 1.8 27.8 26.6 43.8 55.0 3.3 0.9 1.6 9.6
Ash composition, wt%
  Na2O MgO Al2O3 SiO2 P2O5 SO3 K2O CaO MnO Fe2O3
褐炭XLT 2.0 2.8 10.0 14.2 0.8 43.1 0.4 20.5 0.0 6.2
瀝青炭DT 0.1 0.3 33.7 42.8 0.3 18.0 0.1 0.9 0.1 3.7
M: Moisture,A: Ash,V: Volatile matter,FC: Fixed carbon,*By difference
1003yao_05

図5 異なる混合比率における煤塵の生成濃度(a:O2/N2燃焼,b: O2/CO2燃焼)

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図6 異なる石炭混合比率におけるPM1の減少量

 異なる混合比率における煤塵の生成濃度は図5で示すとおりである。図5から分かるように、石炭混合の実験によって生成される煤塵は、物理的な平均値と比べて、いずれの場合も一定程度減少している。混炭の燃焼によって、異なる石炭に含まれる鉱物質の相互作用が起こり、微細煤塵の生成が抑制されたことを示している。混合比率が煤塵の生成特性に与える影響を研究するため、O2/N2およびO2/CO2燃焼時の各混合比率における理論計算値と比較したPM1の減少率を図6に示す。図からわかるように、混炭における瀝青炭の比率が高くなるに伴い、PM1の減少量は、まず増加し後に低下する過程をたどる。この実験において混炭における瀝青炭の比率が30%の時に、O2/N2あるいはO2/CO2燃焼雰囲気に関わらず、PM1の減少量が最大値に達した。混炭における瀝青炭の比率が増加するに伴い、褐炭の生成する揮発性元素が減少し、瀝青炭の燃焼過程で生成されるアルミノケイ酸塩が増加する。混炭の燃焼によって生成される揮発性元素とアルミノケイ酸塩の比率が、反応の化学量論比に近づいた際、混炭燃焼によるPM1の抑制効率が最大になる。また図6は次の点も明らかにしている。混合比率が同一の場合、O2/CO2燃焼雰囲気の混炭燃焼におけるPM1の減少量は、O2/N2燃焼雰囲気と比べて小さい。その主な原因は、O2/CO2燃焼雰囲気において気化元素の生成が減少するため、気化元素とアルミノケイ酸塩の相互作用も低下することにある。実験温度において拡散が重要な作用だからである。またO2/CO2燃焼雰囲気において還元作用が増大するため、灰に含まれているアルミノケイ酸塩の融解特性が変化し、金属蒸気を吸着させる活性度が低下する。関係するメカニズムについては、いっそうの研究や探究が必要である。

3. 結論

 本論文はO2/CO2燃焼条件における煤塵生成メカニズムおよび制御に関する研究を紹介した。本研究チームが煤塵生成および制御に関して実施した研究を検討すると、以下のような結論を導き出すことができる。

  1. O2濃度が同じであれば、O2/CO2燃焼雰囲気はO2/N2燃焼雰囲気に比べて、PM1-10 やPM1の生成濃度が低下する。O2/CO2燃焼雰囲気において、O2濃度が増加すると、PM1-10の生成濃度は上昇し、PM1の生成濃度はまず低下し後に上昇する過程をたどる。O2/CO2燃焼雰囲気は、PM1の元素組成に対して大きな影響を及ぼし、鉱物元素の気化が抑制される。また難溶解性元素の気化が揮発性元素に増して抑制される。鉱物質の気化は、温度や還元性雰囲気の制約を受け、まず減少し後に増大する過程をたどる。温度は難溶解性元素の気化において主導的な作用を及ぼす。
  2. カオリン吸着材を添加すると、カオリンと揮発性元素の化学吸着作用により、PM1の生成が抑制される。燃焼温度の上昇に伴い、化学反応やカオリン自体の物理活性性能の影響を受け、揮発性元素に対するカオリンの作用は、まず増大し後に低下する過程をたどる。約1100℃の時に効果が最大となる。
  3. 瀝青炭と褐炭を混合し燃焼させると、瀝青炭に含まれる豊富なアルミノケイ酸塩と褐炭の燃焼過程で生成される揮発性元素の相互作用によって、PM1の生成が抑制される。混炭の混合比率は、PM1生成に対する抑制程度を左右する重要な要素である。O2/CO2燃焼雰囲気では、O2/N2燃焼雰囲気と比べて、混炭の燃焼による鉱物質の相互作用が低下するため、PM1生成に対する抑制効果も減少する。

 O2/CO2燃焼雰囲気において、煤塵(PM)、SOx、NOx、重金属(水銀など)といった汚染物質を同時に制御する方法について研究が進められている。例えば多機能吸着材の研究が実験段階に入っている。O2/CO2燃焼における特殊な燃焼条件やCO2ガスの循環技術などによって、類似した空気雰囲気における燃焼によって生成されるさまざまな汚染物質を結合させ、効果的に制御することが可能である。


謝意:

 本研究に対する中国国家自然科学基金委員会(NSFC、支援番号:50721140649)および日本の科学技術振興機構(JST)の共同支援に感謝の意を表明する。


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