中国の低炭素エネルギーと環境汚染防止に関する研究の現状
2010年 3月16日
陳冠益(Chen Guanyi):天津大学環境科学・工程学院院長
天津大学環境科学・工程学院院長。1970年6月生まれ。1998年、浙江大学工学部熱エネルギー工学博士。バイオマスエネルギー転化の基礎理論と技術、固形廃棄物のエネルギー化・資源化利用、CO2、NOx排出削減・抑制等の環境保護研究に従事。この5年の間に、国家「863」ハイテク研究プロジェクト、国家「973」重大基礎研究課題、科学技術部国際協力重点プロジェクト、霍英東青年教師基金プロジェクト、国家自然科学基金プロジェクト、天津市自然科学基金プロジェクト、天津市科学技術計画重点プロジェクト、欧州連合(EU)プロジェクト、中国-オランダ協力プロジェクト等手掛け。50編余りの論文を発表、発明特許5件。現在、中国再生可能エネルギー学会理事、中国農業生態保護協会理事、「太陽能学報」編集委員、「生物質化学工程」編集委員、科学技術部プロジェクト専門家グループメンバー、国際太陽エネルギー学会シニア会員、米国化学学会(ACS)会員。バイオマスエネルギー技術・利用分野で、専門書1冊の編集主幹を担当、2冊の編集に参加。また、CO2排出削減・抑制分野では、共同編著1冊。
共著者:鄧娜、呂学斌、王媛、鄭雪晶、張光輝、趙靖、王燦、顔蓓蓓
要旨
本論文は、1.中国のエネルギー構造の現状を説明するとともに、集中型低炭素エネルギー、分布型低炭素エネルギー及び個別低炭素エネルギーの研究と技術の進展状況を整理・分析し、2.大気、固形廃棄物、水環境及び炭鉱・油田の視点から低炭素エネルギーに関係する環境汚染防止研究の現状を分析し、3.わが国の低炭素エネルギー、環境汚染防止分野の立法、政策と保障措置を系統的に整理・分析し、4.この分野の技術における中国の将来の道筋について提言を行うものである。
化石燃料(石炭、石油、天然ガス)は世界の経済・社会発展におけるカギとなる物質的基礎であり、また、大気の温室効果ガス(例えばCO2)の濃度を高め、気候温暖化と環境悪化を招く主要な根源でもある。化石エネルギーは再生不可能で、且つ気候・環境問題を引き起こすことから、エネルギー消費構造への関心が高まっており、「高炭素から低炭素へ、最終的には炭素循環と無炭素へ向かう」技術の道を歩むことが期待される。
現在、低炭素経済の発展は世界的な流れとなっており、その中心となるのは低炭素エネルギー技術である。低炭素エネルギーの技術革新を推し進め、低炭素経済への資金投入を増やすことは、中国が気候変動に対応するための根本的な道であり、これは又、持続可能な発展を図り、省エネ・(汚染物質)排出削減を実施し、資源節約・環境調和型社会を築く上でも必要なことである。低炭素エネルギー技術には再生可能エネルギーの利用、新エネルギー技術、化石エネルギーの高効率利用、温室効果ガスの抑制と処理及び省エネの各分野が含まれる。
1 低炭素エネルギー研究の現状
中国ではエネルギー多消費7大業種のエネルギー消費が全国のエネルギー総消費量の半分以上を占めている。CO2排出の主要業種は火力発電、石油加工、水道、金属精錬等の基礎原材料工業及び交通輸送業である。現在のエネルギー消費構造は良質なエネルギー消費の割合が低く、1990~2005年の期間中、石炭、石油、天然ガス、水力と原子力及びその他再生可能エネルギーがエネルギー総消費量に占める平均割合はそれぞれ約71.5%、20.1%、2.2%、6.2%であった。一方、先進国は約26%、40%、24%、10%となる。中国は「石炭が豊富で、石油が不足し、ガスが少ない」エネルギー構造だと言えよう。
「低炭素経済」の実質はエネルギー効率とクリーンエネルギー構造の問題である。低炭素の理念を踏まえ、中国の低炭素エネルギーの現状及び発展動向を図1に示す。その中心はエネルギー技術の革新とエネルギー制度の刷新であり、目標は気候変動を緩和し、人類の持続可能な発展を促し、炭素循環・無炭素モデルに向かって突き進むことである。中国は高度経済成長期に差し掛かっており、経済成長を犠牲にして二酸化炭素の排出を削減するわけにはいかない。このため、積極的かつ効果的な方法を取ることが一段と必要になる。中国は低炭素エネルギー技術を発展させる際、石炭中心のエネルギー構造を正面から見据え、化石エネルギーのクリーン・高効率な転化利用と省エネ・排出削減技術を重視しなければならない。しかし、戦略上は新エネルギーが伝統的エネルギーに代わり、優勢エネルギーが希少エネルギーに代わり、再生可能エネルギーが化石エネルギーに代わる道を堅持し、代替エネルギーの割合を徐々に高めていかなければならない。政策措置の面では制度の刷新を積極的に進め、低炭素技術の道を強力に後押しする。
1.1 低炭素エネルギー
低炭素エネルギーは炭素分子量が少なく、又は炭素分子構造を持たないエネルギーであり、広義にはエネルギーを節約し、排出も削減できるエネルギーだと言える。クリーンな低炭素エネルギーは世界的なCO2排出汚染を大幅に減らし、それは同時に又、中国社会の排出削減にもつながる。その基本的な特徴は再生でき、持続的応用が可能なこと、高効率で且つ環境適応性に優れていること、産業への大規模な応用が可能なことである。
各種エネルギーの分子式炭素数:伝統的エネルギーの石炭は135、石油は5~8、天然ガスは1で、水素エネルギーは0となる。再生可能エネルギーは基本的に低炭素又は無炭素エネルギーである。低炭素エネルギーは風力、太陽エネルギー、原子力、バイオエネルギー、水力、地熱エネルギー、海洋エネルギー、潮汐エネルギー、波力、海流・熱対流エネルギー、海水温度差エネルギー、メタンハイドレートを含んでおり、技術の統合・応用を通じ、低炭素エネルギーシステムを構築し、石炭、石油等の化石エネルギーに代替させ、二酸化炭素の排出を減らす目的を実現する。
図1 わが国の低炭素エネルギーの現状及び発展動向のブロック線図
中国は低炭素エネルギー資源が非常に豊かであり、水力資源の包蔵量は6.84億kWhに達し、技術的に開発可能な量は3.78億kWhに達する。陸地で開発可能な風力資源は約2.5億kWhで、海上で開発可能な風力資源は7.5億kWhに達する。太陽エネルギー資源も豊かであり、大部分の地区では年間日照時間が2,000h以上となる。海岸線が果てしなく続き、潮汐エネルギー資源は2億kWhに達する。(農作物の)茎の年産量は6億tに達し、その50%以上がエネルギーとして使える。サトウキビの搾りかす、もみ殻、コーヒー豆の搾りかす、各種の加工廃棄物と生活ごみも豊富にあり、標準炭換算で約1億tとなる。南中国海北部斜面のメタンハイドレート資源量は石油185億tに相当する。
1.2 集中型低炭素エネルギーの研究・技術とその進展
「低炭素経済」の視点から見た中国のエネルギー技術研究には次の二つの側面がある。(1)省エネ・排出削減。化石エネルギーの高効率利用と節約を実現する。(2)エネルギー構造と産業構造の調整。良質な化石エネルギーの比率を徐々に高め、クリーンで再生可能なエネルギーを十分に利用・開発し、エネルギー消費構造における化石燃料の割合を減らす。また、エネルギー供給の多様化を図る。当面の一時期は、エネルギー構造を調整して低炭素エネルギーを目指し、石炭を主とし、石油、天然ガス、水力発電、原子力発電と再生可能エネルギーが互いに補い合う多様なエネルギー構造体系を作り上げる。
(1)石炭のクリーンな転化利用:
主な技術は次の通り。1)石炭ガス化技術。工業的規模のガス化炉が稼働又は建設中である。2)石炭液化技術。自前の知的財産権を持つ石炭間接液化技術は万t級パイロットプラントでの開発が既に完了し、現在、大規模な実証プラントの建設が進められている。3)石炭からメタノール、DME、MTO等を製造する技術。中国のこの技術は外国とほぼ同じ水準にあり、万t級パイロットプラントが既に完成している。4)石炭から合成ガスを製造する技術。幾つかの小規模な実証プラントが建設された。5)石炭から水素を製造する技術。国内外で比較的成熟したものとなっている。6)石炭の高効率燃焼技術及び二酸化炭素の回収。外国は既に実証段階にあり、中国では実証プラントの建設が始まったばかりである。
(2)太陽エネルギー:
発展の重点は結晶シリコン技術、薄膜電池技術、電力網接続発電システム技術、建築と一体化した太陽エネルギー利用技術等。高純度多結晶シリコン材料の生産技術分野では、一定規模の生産が実現された。同時に、薄膜電池技術を重点的に研究開発し、電力網接続発電システム技術の普及を図り、建築と一体化した太陽エネルギー利用技術の開発を進めている。高温太陽エネルギー集熱技術及び太陽熱発電技術のレベルを引き上げた。また、太陽エネルギーの集熱による高温蒸気発生発電システムと通常のエネルギーによる蒸気発電システムを結合し、分散型コージェネレーションシステムの経済性を高めた。
(3)風力エネルギー:
自主的に研究開発した200~700kWの各種風力発電ユニットは既に普及・応用され、3MW永久磁石直接駆動(PMDD)風力発電ユニットと2MWデュアル非同期風力発電ユニットは実証段階にある。自主開発・製造能力を高め、MW級大型風力発電装置の製造技術、ウィンドファーム技術を重点的に開発し、風力発電産業の規格システムを確立し、海上風力資源の試験・評価技術を充実させた。ウィンドファームはスケールメリットによるコストダウンを図り、用地選定微視的技術と最適化設計技術を重点的に開発すべきである。海上ウィンドファームの開発技術を発展させ、海上風力発電ユニットと海上ウィンドファームの用地選定微視的技術及びウィンドファーム設計・建設のモデル研究を進めている。100万kWさらには1,000万kWの大型風力発電基地の建設が既に始まり、内蒙古草原では多くの10万kW以上の風力発電所が建設された。
(4)原子力:
中国は原発設備一式の供給能力を備えつつある。第2世代の原発技術を既にマスターし、第3世代の原発技術を目指して自主的な歩みを進めている。高温ガス冷却型試験炉が既に完成し、現在、高速中性子実験炉の密閉式核燃料サイクルシステムを建設中である。熱核融合の分野でも良好な研究成果が得られ、清華大学原子力設計研究院は10MWのモジュール式高温ガス冷却型試験炉を完成させた。
(5)バイオマスエネルギー:
バイオマスエネルギー技術は単純な廃棄物処理からバイオマスの総合利用へと発展し、栽培業、飼育・繁殖業と広く結びつき、グリーンエコロジー農業が確立された。バイオマス発電技術及び、バイオマスから液体燃料を製造する技術を重点的に発展させ、バイオマスを中心とする新たな資源利用モデルを作り上げた。また、大型メタンガス施設の施工技術を推し広め、バイオマス発電所を自主的に建設している。その他、バイオマス固形化燃料技術の研究開発と実証実験、エネルギー植物/作物による燃料エタノールとバイオディーゼル油技術の開発・実証実験を進めている。
(6)水素エネルギー:
次の二つの分野がある。1)水素製造技術。化石燃料からの水素製造、水の電気分解による水素製造、生物による水素製造、微生物による水素製造、太陽熱化学サイクルによる水素製造、太陽エネルギーと半導体光触媒反応による水素製造、核エネルギーによる水素製造等がある。2)コスト、密度、安全性等の要因を考慮した水素貯蔵技術。貯蔵容器の研究で大きな進展が得られ、水素貯蔵の圧力と効率が高まった。容器の材質改善及び貯蔵補助物質の添加により、圧縮水素貯蔵技術の利点が生かされるようになった。近年、水素製造技術は水を原料とする実用段階に移っている。
(7)地熱エネルギー:
主には地熱エネルギーを直接利用する方法を採っており、熱水の直接利用と水源ヒートポンプがある。研究の重点は地熱の階段式利用技術、涵養技術、地下熱交換器の熱伝達性と低温平衡等に置かれている。地熱の大規模な開発利用は依然として制約を受けている。
(8)水力:
小型水力発電施設の建設技術はかなり成熟しており、その設備容量は3,050万kWに達する。設計・製造技術は世界の先進水準にある。現在、研究の重点は300m級ハイダム及び複雑な地質条件下でのハイダム築堤技術、大型地下洞室及びハイスロープ定着技術、高落差・大流量の条件下での洪水排出、エネルギー散逸等のカギとなるダム施工技術に置かれている。大型の通常水力発電ユニットと揚水式エネルギー蓄積ユニットの国産化を推し進め、6万kW超貫流式、100万kW級混流式水車発電ユニット及び30万kW超揚水式エネルギー蓄積ユニットの設計・製造技術の研究を行っている。水力発電建設における環境保全技術を開発し、環境に優しい設計・施工技術と環境保全措置を確立した。また、老朽発電所の更新・改造と流域の最適スケジューリング技術を研究し、全体の運転効率を高めた。
(9)メタンハイドレート:
研究の重点はメタンハイドレートの貯蔵技術と液化技術、その濃縮法則と採掘の基礎技術に置かれている。
(10)交通産業の低炭素エネルギー利用技術:
交通産業の低炭素エネルギーは既に自動車分野に利用され、良い成果を収めた。アルコール類、天然ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、バイオ燃料等の亜高炭素燃料、電気や水素等の低炭素燃料を車の動力とする実証実験を進め、多くのハイブリッド車が生まれた。また、新しいタイプの低炭素車エンジン技術を開発した。例えば、高圧コモンレール技術、成層燃焼技術、均一充填圧縮点火技術及び、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの長所を合わせた理想的なエンジンDie sotto(ガソリン/ディーゼル油混合技術)等である。現在、航空機用の新エネルギーの研究開発を進めており、これにはバイオ燃料と航空ケロシンの混合燃料、リチウム空気電池、太陽エネルギーと水素エネルギーの動力電池がある。
1.3 分布型低炭素建築のエネルギー技術とその進展
人間の活動がもたらす温室効果ガスの中でCO2の排出は77%を占め、主に交通、建築、工業及び森林減少の四つの面に集中している。そのうち建築物で使用される電力及び暖房の炭素排出量は19.8%(温室効果ガス全体の15.3%)を占める。グリーン低炭素建物を建設し、建物の炭素排出を効果的に抑制・低減することは、低炭素都市を築く上での必須条件となる。低炭素建築の省エネに関する国内の主な研究は建築エネルギー消費の統計と省エネ行動の管理、建物外壁の新構造と新素材、暖房・空調システムの新しい省エネ技術、再生可能エネルギーの応用等。
(1)建築エネルギー消費の統計・評価システム及び省エネ行動の管理に関する研究:
エネルギー消費の統計と省エネ潜在力の分析は建築省エネの基礎となる。1980年代以降、中国の研究者は建築省エネの調査及び省エネ潜在力に関する研究を繰り広げ、建築物のエネルギー消費について使用方式、スペースの広さの違いに応じ、統計をとった。その後、建築の環境アセスメントに関する研究を進め、グリーン低炭素建築の設計・建設ガイドライン作りに生かし、建築業が環境調和型の持続可能な成長の道を歩むよう導いた。「中国エコ住宅技術評価マニュアル」と「グリーン五輪建築評価システム」を実施・普及させた。また、建築の低炭素化に対する省エネ行動の貢献度を高めるため、その行動に関する指導的原則を打ち出した。
(2)建物外壁の新構造と新素材、暖房・空調システムの新しい省エネ技術:
中国北方の建築エネルギー消費の内訳は暖房・空調65%、温水供給15%、電力14%、炊事6%となる。研究者は新型グリーン建材の開発、建築環境の整備、外壁構造の省エネ等の面から低炭素建築の研究を進め、建築設計が現地の気候条件に適したものとなるよう導いた。外壁構造の熱消費量指標、熱伝達係数及びドアと窓の空気漏入・熱消費量に制限が加えられ、建築物のエネルギー消費を減らした。熱供給・空調システムの省エネに関する研究は建築暖房・空調システムの型式、システムの効率向上に集中しており、これには冷源・熱源の選択、運転調節、エネルギー消費の計量等がある。
(3)再生可能エネルギーの建築への応用研究:
再生可能エネルギーを利用すれば、建築物の高エネルギー消費型の消費モデルを改めることができる。その主な研究分野は太陽エネルギー、地熱エネルギー、汚水・排水熱エネルギー等。農村地域はバイオマスエネルギーの応用である。
太陽エネルギー:太陽エネルギーの建築への応用研究は1970年代末に始まり、1990年代末になると、太陽光、太陽熱、光電変換技術を利用した多くの公共建築物と住宅が登場した。現在、中国は世界最大のソーラー温水器生産・販売国である。国内の学者は太陽光、太陽熱、太陽電池を一体化した建築について多くの研究を進めてきた。太陽エネルギーを利用した冷凍については、吸収式冷凍と噴射式冷凍が既に実用段階に入り、吸着式冷凍はまだ研究段階にある。
風力エネルギー:風力エネルギーを建築に利用する研究は始まったばかりである。都市建築における風力資源の開発方法、旋風式ファン及び建築ファンの可能性、建築群の風エネルギー増大効果、ビル風を利用する風力発電技術について研究が行われた。
地源ヒートポンプシステム:地源ヒートポンプシステムには多くの研究があり、その普及も順調に進んでいる。研究の重点は地下熱交換器の熱伝達性への影響要因に置かれ、例えば土壌の熱伝導性、埋戻しの媒質、接続方式、システムの運転方式等である。
汚水熱エネルギー:都市汚水は都市の余熱型低温熱源だが、大規模な開発はまだ行われていない。現在の研究の重点は都市汚水源のヒートポンプシステムに関する実施可能性の調査分析、管材問題、システムのスケール防止、防食等であり、建設中のプロジェクトでも研究が進められている。
バイオマスエネルギー:バイオマスエネルギーは中国農村部の建物で使用されるエネルギーの中で大きなウェートを占め、単一の遅れた利用方式から高効率の総合利用に転じつつある。研究の重点はバイオマスを利用した集中型ガス化ガス供給・暖房、成形ペレット炉の燃焼等で、多くのモデル基地が既に完成している。また、農村の家庭用メタンガス技術も進歩しており、一群のモデル村が建設された。
1.4 CO2排出ゼロ又はマイナスのバイオエネルギー技術及びその進展
低炭素バイオエネルギーは燃料として直接使える各種のバイオマス及び、バイオマスを加工・調製した各種のエネルギーを指し、前者は一次バイオエネルギー、後者は二次バイオエネルギーと呼ばれる。主な技術にはバイオマス直接燃焼/混合燃焼、メタンガス発酵、バイオマス熱分解ガス化、バイオ水素製造、燃料エタノール及びバイオディーゼル油等がある。ライフサイクルの視点から見ると、バイオマスエネルギーはCO2排出ゼロのエネルギーに属する。その転化利用の過程で、技術の進歩と革新を通じ、一定量のCO2を消費するなら、又は、炭素回収・貯留(CCS)技術を利用するなら、CO2排出マイナスを実現することができる。
バイオマス成形・直接燃焼技術:近代的な薪節約かまど、ボイラ燃焼がある。各種の薪節約かまどは1980年代から普及が始まった。農作物の茎を利用したボイラ燃焼発電はこの5年で急速な発展を遂げ、20余りの実証発電所が完成しており、その設備容量は約200万kWとなる。生活ごみ焼却発電は一段と重視されており、60余りの高規格発電所が建設された。この他、茎/石炭混焼技術、ごみ/茎混焼技術も実証実験が行われている。また、幾つかのバイオマス成形燃料基地及びペレット化燃料基地が建設された。今後の課題:バイオマスの燃焼過程における団粒及びその完全燃焼、ボイラ伝熱面に灰がたまるメカニズムと腐食の防止、ボイラ後部の排ガス除塵、ボイラ底部の安定した状態での連続排滓、燃焼時の汚染物質抑制及び灰の利用、多種バイオマス原料の低コスト精密成形技術等。
メタンガス発酵技術:技術開発のテンポが速く、その普及が進んでいる。農村部では家庭用のメタンガス発生タンクを主に使用し、各世帯の暖房、炊事等の日常的なエネルギー需要を満たしている。高・中・低温メタンガス発酵技術の進展は目覚ましく、大中型飼育・繁殖場のメタンガス施設で広く採用され、それは地域のガス供給と発電にも生かされている。近年、茎発酵メタンガス技術の研究開発が重視されている。今後の課題:家庭用メタンガス技術の低コスト化及びその信頼性、高密度のメタンガス発生タンク、一定規模のメタンガスシステム設備の製造及びその高メタン含有量の調節・制御、茎を利用したメタンガス発酵プロセスの安定性と連続性。
バイオマス熱分解ガス化技術:ガス化した可燃性ガスは炊事、熱供給又は発電に用いる。固定床ガス化技術は農村での実証・実用が進み、流動床又は循環流動床のガス化技術は発電又は地域熱供給の分野で実証実験が行われている。高速熱分解液化技術の実証実験もある程度進んでいる。研究開発された技術にはバイオマスのガス化による合成ガスの製造(合成油又は化工原料に用いる)、高速熱分解による高品質の自動車用バイオディーゼル油又はバイオガソリンの製造がある。研究の重点はガス化タールの制御、ガス化残滓の総合利用、タール汚水の浄化、バイオマス合成ガスの調節・制御、生物油の精製と品質向上等。
バイオ水素製造技術:炭水化物を水素ドナーとし、光合成細菌又は嫌気性細菌を利用して水素ガスを製造することを指しており、廃棄物回収・利用の新たな道が開かれた。その原料は豊富にあり、グルコース、汚水、セルロースを原料とする研究が盛んに行われている。しかし、いずれも実験室での研究の段階にあり、産業化するには解決すべき多くの技術的・経済問題が残されている。
燃料エタノール技術:一定の比率に従ってガソリン又はディーゼル油の中に加える無水エタノールを指す。ガソリンを完全燃焼させ、自動車排ガス中のタール、二酸化炭素、酸化窒素等の排出を減らすことができる。現在、これは生産規模が最も大きいバイオエネルギーである。サトウモロコシによる燃料エタノールの新しい生産工程は既に実証段階に入った。エネルギー作物のキャッサバから燃料エタノールを生産する技術は既に実証運転が行われている。また、古くなった小麦、トウモロコシ等のでんぷん質原料から燃料エタノールを生産する多くの実証プラントでは良い効果が上がった。茎から生産する技術は中間試験段階から実証段階に移った。今後の課題:エネルギー量が多いエネルギー作物の選抜育種とその低コスト化、茎から燃料エタノールを作る技術のネック解消と工業化実証。
バイオディーゼル油技術:油料作物、エンジニアリング微小藻等の水生生物、動物油脂又は飲食店の廃油等を原料とし、生物的又は化学的手段によって高脂肪酸メタンに転化する。現在、トレンチオイルを原料とするバイオディーゼル油技術は世界をリードする水準にあり、10余りの実証プラントが建設され、その年産能力は100万tに達する。油料作物(例えばヤトロファ、ブンカンジュ)を原料とする実証基地も既に完成した。エンジニアリング微小藻によるバイオディーゼル油技術はまだ実験室段階にある。今後の課題:廃油脂の集中収集と前処理、含油率の高い油料作物の選抜育種及びその低コスト化、エンジニアリング微小藻によるバイオディーゼル油技術。
中国のバイオエネルギー開発利用はまだスタート段階にあり、エネルギー構造全体に占める割合は非常に小さい。しかし、大きな可能性を秘めており、バイオエネルギーのCO2排出削減効果が顕著であることを特に考慮すべきである。現在の問題点:原料供給のボトルネック問題、バイオディーゼル油の合成過程で比較的大きな汚染がもたらされること、バイオ水素製造過程で水素生成の効率が低く、また、水素ガスの収集が難しいこと、メタンガス発酵過程で発酵効率が低く、また、持続的な運転能力に欠けること等。
2 エネルギー利用に関係する環境汚染防止研究の現状
2.1 エネルギー利用に関係する環境汚染の状況
エネルギーと環境は密接な関係を持ち、エネルギーの利用は環境の構成と質に大きな影響を及ぼしている。現在、中国のエネルギー構造は石炭中心であり、その大規模採掘とエネルギー化は深刻な環境汚染を引き起こした。例えば温室効果ガス、超微細粒子、重金属の排出である。石油の大量採掘とエネルギー化については、自動車工業と石油精製過程でもたらされる環境汚染が特に深刻である。化石エネルギーの利用が中国の環境悪化を招いた主要原因であり、温室効果ガス排出の根本的な源だと言うことができる。表1は1990年と2020年のエネルギー利用による中国の温室効果ガス排出状況を示したものである。
温室効果ガス | 1990年 | 2020年(予測) |
エネルギー消費によるCO2の排出 | 650 | 1750 |
エネルギー消費によるN2O、CH4の排出 | 14 | 34 |
石油と天然ガスの生産によるCH4の排出 | 6 | 11 |
2.2 大気汚染防止技術とその進展
大気汚染の主要な特徴はエネルギー構造によって決まる。中国の一次エネルギーは石炭を主としており、且つ今後のかなり長い期間、この状況は変わることがない。大気汚染は煤煙型の特徴を示しており、中国は大気汚染が比較的深刻な国の一つとなった。近年、中国は大気汚染防止の政策・立法と技術の面で顕著な成果を上げたが、情勢は依然として厳しい。大気汚染物質の排出総量はなお非常に高く、大多数の都市では大気環境の質が国の定める基準を超えている。低炭素エネルギーの開発と実用は大気環境の質を著しく改善するであろう。
近年、中国はエネルギー消費が引き起こす大気汚染を防止する技術分野で多くの活動を行った。主な措置と技術の進展状況は次の通り。エネルギー使用の技術レベルを向上させた。これには排ガス・排熱の回収、コージェネレーション、炉・窯の改造、エネルギー管理システムの採用及び、高効率エネルギー消費機器の設置、先進的な石炭加工技術の採用と普及等がある。また、環境に優しい代替エネルギー(水力発電、太陽エネルギー、バイオマスエネルギー、風力及び原子力等)を開発した。政策レベルでは経済構造を見直し、工業比率を引き下げた。現在、SOx及びPM(吸い込む可能性のある粒子)に対するオンライン監視・制御で一応の成果を上げており、次の段階の制御の重点はNOx、CO2となる。研究方法ではマクロからミクロへ、都市という小さい尺度から地域さらにはグローバルな大きな尺度へと変化があり、研究内容も単一の要素から多元的な要素へと移った。この分野の最先端の課題は原子、分子及び活性化学種のレベルにおいて、大気環境におけるそれらの活動・変化の過程と環境効果を研究することであり、生態効果が含まれることもある。
2.3 CO2排出削減と炭素回収・貯留(CCS)技術及びその進展
CO2排出削減のカギとなる措置はエネルギーの節約、エネルギー効率の向上、エネルギー構造の最適化、代替エネルギーの発展、CO2の処理・利用に関係している。現在、中国が既に工業化し、又は研究に力を入れている技術には溶剤吸収法、吸着法、膜法、生物吸収法等がある。溶剤吸収法は大規模なCO2回収に適した技術案だが、これには一部の溶剤が毒性を持つ、溶剤は再生する必要がある、回収プロセスが複雑である等の問題も存在している。膜分離技術は既に経済的に見合う多くの実用例がある。しかし、大規模なCO2回収システムとしてはコストと信頼性の面で大きな問題を抱えている。圧力スイング吸着法(PSA)は技術工程が簡単で、エネルギー消費が低い等の利点を備え、各種ガスの分離に用いることができ、合成アンモニア変換ガス及び窯・炉ガスからCO2を分離・回収できる。生物吸収法はCO2排出削減の目的を達成すると同時に、新しい燃料を提供することもできる。しかし、処理の規模や地域の面で厳格な規制を受けるだろう。
以上のことからわかるように、CO2排出削減と炭素回収に関する各種の技術はそれぞれの実用範囲があり、適切なプロセスを選択することが必要である。CCSは技術的にそれ程難しいものでないが、エネルギー消費とコストの高さがその実用を妨げている。このため、コストが低く、エネルギー消費が少なく、新たな汚染を出さないCCSプロセスの開発が大きな課題となった。現在、中国は天津で石炭発電所のCCS技術に関する実証実験を進めている。この発電所は2010末に稼働を始める予定であり、CCS技術の応用のために生の経験とデータが提供されるものと期待される。
2.4 固形廃棄物の抑制技術とその進展
2008年、中国の各種固形廃棄物の総排出量は50億t余りに達した。主なものは糞尿、工業廃棄物、農業廃棄物、生活ごみ等であり、図2は各種固形廃棄物の占める割合を示したものである。固形廃棄物は大量の土地を占用するだけでなく、水域、大気等の生活環境をひどく汚染している。現在の主なごみ処理方式は埋立て、焼却、堆肥である。処理方式が適切でないと、深刻な環境汚染(温室効果ガス、塩素含有ガス、ダイオキシンの排出、水域の汚染と悪臭、重金属の放出を含む)をもたらし、その上、エネルギーと資源が浪費されることになる。中国科学院は国内の19のごみ焼却場を対象にダイオキシンの調査研究を行った。その結果、19基のサンプル焼却炉のダイオキシン/フラン物質排出量は0.042~2.461の間にあり、平均値は0.423で、欧州連合(EU)の基準を大幅に超えていた。焼却場の16%が中国の基準を満たさず、70%はEUの基準を満たしていない。このため、固形廃棄物を合理的かつ効果的に処理・利用することは、温室効果ガス等の環境汚染物質の排出を減らし、低炭素経済の発展を図る上で必要なことである。
サンプル番号 | 所在地区 | ダイオキシン排出(当等レベル) |
1 | 遼寧 | 0.32 |
2 | 河南 | 0.22 |
3 | 江蘇 | 3.58 |
4 | 山東 | 0.50 |
5 | 山東 | 1.15 |
6 | 福建 | 2.81 |
7 | 福建 | 0.50 |
8 | 広西 | 0.20 |
9 | 遼寧 | 0.19 |
10 | 遼寧 | 0.19 |
11 | 山東 | 17.67 |
12 | 四川 | 0.08 |
13 | 四川 | 1.10 |
14 | 黒竜江 | 31.60 |
近年、中国では固形廃棄物の管理に関する法律法規が徐々に整備され、処理技術が進歩し、処理装置のレベルが向上している。主な措置と技術の進展にはごみの分別収集・回収、閉鎖型集中積替え、衛生埋立技術、先進的な焼却発電技術、熱分解ガス化技術、総合堆肥技術がある。関心が寄せられているものはごみ埋立場のCH4回収・利用、ごみ浸出液の処理、ごみの悪臭防止、燃焼効率及び安定性、CO2排出削減、ごみ焼却時の排ガス浄化及びダイオキシン抑制、廃棄物処理におけるライフサイクル全体の評価及びデータブック研究等。この他、食堂や台所から出されるごみと分別収集した有機系ごみに対する専用技術が開発された。例えば、嫌気性消化等の生物処理技術である。政策レベルでは、固形廃棄物の再生利用に関する適切な政策と法規が定められ、大衆がごみを分別・回収利用するよう導いた。
図2 各種固形廃棄物の占める割合
2.5 水環境汚染防止技術とその進展
中国の水質汚濁問題は深刻である。河川は有機汚濁が主なもので、湖沼は富栄養化を特徴としている。沿岸海域の主な汚染指標は無機窒素、活性燐酸塩、重金属である。また、地下水は水位の低下と有毒・有害物質の汚染が目立つ。水環境の汚染要因は複雑である。エネルギー利用に関係する水環境汚染の防止には、エネルギー加工・転化過程における汚水・廃水、洗炭水、採炭地下水が含まれる。この他、浄水場と汚水処理場の省エネ又は低炭素エネルギーの使用により、汚染物質の排出を減らすことができ、これは水環境汚染の防止にも役立つ。具体的な防止技術は以下の通り。
汚水資源処理・利用技術:地下水汚染の原位置修復技術、生産汚水・廃水の排出ゼロ技術がある。汚れた採炭地下水は浄化した後に含水層に戻し、地下水の汚染及び地盤沈下を防止する。洗炭汚水は凝集・沈殿技術を用いて炭塵を回収し、洗炭水のクローズドサイクルを実現する。また、中和、凝集、沈殿、濾過等の技術を用い、火力発電所の脱硫廃水の資源化を実現する。その他、燃焼前、燃焼中、燃焼後の制御を通じ、石炭と石油の中の重金属を廃水中に最大限移動させ、吸着沈殿又はイオン交換によって除去し、廃水の資源化を実現する。
浄水場、汚水処理場の省エネ技術:先進的な汚水処理技術を発展させる。処理工程パラメータと運転条件を最適化する。周波数変換制御技術を採用し、設備の電力消費を低下させる。低炭素エネルギーを浄水場、汚水処理場の消費エネルギーとする。
水環境汚染防止技術は現在、環境汚染を軽減し、生態系悪化を食い止めることに限られているが、我々の最終目標は環境機能を回復し、持続可能な発展を実現することである。このため、水質汚濁防止に関する研究は今後、水生態系の保護と機能回復を目標とする環境技術の方向を徐々に目指すべきである。環境モデル、自動検出システム及び突発的事態に対する早期警報システム等が技術研究開発の主な対象である。現在、中国の水質汚濁防止分野では、既存技術システムの完備と統合に重点が置かれている。
2.6 炭鉱と油田の環境汚染防止技術及びその進展
中国のエネルギー消費構造は石炭と石油への依存度が高い。採炭と採油の過程で広域の地下水・土壌・大気汚染がもたらされ、深刻な影響を及ぼしており、経済の健全な高度成長を制約する大きな要因となっている。近年、炭鉱と油田の汚染防止に関する管理法規が次第に整備され、クリーン生産がますます重視されている。汚染防止の主な技術は次の通り。含炭・含油汚水の資源化利用技術:坑道廃水、採油汚水を高度処理した後、生産工程に戻して利用し、又は生活雑用水とする。含炭・含油汚泥の総合利用技術:この汚泥を処理した後、含炭添加剤を製造し、ボイラ等の加熱設備の燃料とする。炭田・油田の大気総合処理技術:採炭過程で生じる粉塵、採油期に放出される油ガスを収集・処理し、燃料として用いる。その他、炭田・油田で発生する騒音の総合処理技術及び設備統合に関する研究等がある。
炭鉱と油田の環境汚染防止技術は廃水、廃ガス、固形廃棄物の汚染防止技術の動向と一致させ、国の「省エネ・排出削減」の方針に合致させるべきである。それと同時に、採炭・採油で発生する騒音の総合処理技術及び設備統合研究に大いに力を入れなければならない。
3 低炭素エネルギーと環境汚染防止に関する政策と措置
3.1 低炭素分野の現行政策・法規体系
(1)低炭素エネルギーの政策・法規:
2005年、中国は「中華人民共和国再生可能エネルギー法」及び「再生可能エネルギー中長期発展計画」を公布・発表した。これは再生可能エネルギーの発展を奨励する法律及び措置である。2007年6月、「省エネ・排出削減総合活動プラン」と「中国気候変動対応国家プラン」が発表された。2007年10月に採択された改正「中華人民共和国エネルギー節約法」は、「国は新エネルギー、再生可能エネルギーの開発と利用を奨励・支援する」と明記している。また、2008年には白書「気候変動対応の政策と行動」が発表され、気候変動への対応面で取った政策、行動及びその成果を示した。中国の現行エネルギー法規は表3を見ること。一連の法規・政策・措置は、気候変動対応と省エネ・排出削減に対する中国政府の熱意と決意を具体的に示すものである。長期的に見るなら、工業、建築、交通分野における低炭素エネルギーの実用化は、エネルギー成長戦略の重要な一環となるであろう。
法規表題 | 文書発表番号 | 公布日 | 実施日 | 効力等級 |
中華人民共和国エネルギー節約法(廃止) | 主席令[第90号] | 1997.11.01 | 1998.01.01 | 法律 |
中華人民共和国エネルギー節約法(改正) | 主席令[第77号] | 2007.10.28 | 2008.04.01 | 法律 |
中華人民共和国再生可能エネルギー法 | 主席令[第33号] | 2005.02.28 | 2006.01.01 | 法律 |
(2)低炭素建築分野の政策・法規:
第11次5カ年計画期(2006~2010)に、中国の建築省エネ活動はモデル実験、技術研究開発、経験蓄積の段階から全面的展開の段階に移り、伝統的な成長モデルが打ち破られ、新たな段階に入った。具体的には建築省エネ関連の法規体系が一段と整備されたことである。「民間建築省エネ条例」を基本とし、「民間建築省エネ管理規定」と「建設工事品質管理条例」等を具体的な実施規則とする法規体系が作り上げられ、建築省エネに関係する各主体の職責が明確になり、相応の行政管理体系が確立され、建築省エネ活動が全面的スタートした。表4に示す通りである。
法規表題 | 文書発表番号 | 公布日 | 実施日 | 効力等級 |
中華人民共和国建築法 | 主席令[第91号] | 1997.11.01 | 1998.03.01 | 法律 |
建設工事品質管理条例 | 国務院令[第279号] | 2000.01.30 | 2000.01.30 | 行政法規 |
民間建築省エネ条例 | 国務院令[第530号] | 2008.07.23 | 2008.10.01 | 行政法規 |
民間建築省エネ管理規定(廃止) | 建設部令[第76号] | 2000.02.18 | 2000.10.01 | 官庁規則 |
民間建築省エネ管理規定(改正) | 建設部令[第143号] | 2005.11.10 | 2006.01.01 | 官庁規則 |
(3)低炭素交通分野の政策・法規:
2008年、交通運輸部は「道路・水路交通の『中華人民共和国エネルギー節約法』実施規則」(交通運輸部令2008年第5号)を公布した。この規則は交通輸送構造の最適化を導き、多様な輸送方式の調和の取れた発展と効果的な連係を促し、省エネ型の総合輸送システムを築く等の面から交通輸送業界の科学的発展を後押しし、それによって交通分野のエネルギー消費を減らし、エネルギーの利用効率を高めるという目的を実現することを狙ったものである。
3.2 低炭素経済を目指すためのエネルギー・環境政策研究
(1)低炭素政策のレベル区分:
低炭素研究は各分野に及んでおり、その主な研究内容をレベル別に紹介する。
国家レベル。研究の中心となるのは各国間の炭素排出削減責任の分担方法、国全体の炭素排出削減目標の確立と割当、国家レベルの炭素排出削減計画の策定及び実施の保障措置等。現在、中国の主要な炭素排出削減目標は既に確定し、関連の統計・監視・考課システムの構築作業が進められている。今後、主要な戦略的措置は産業構造の調整、エネルギー効率の向上、クリーン・再生可能エネルギーの発展という三つの側面に集中することになろう。
省(一級行政区)レベル。研究の中心となるのは省レベルにおける炭素排出削減目標の確立と割当、炭素排出削減計画の策定及び実施の保障措置等。各省の特色を考慮する。各省の炭素排出関連指標には大きな開きがあり、それぞれの排出削減の能力と困難の度合いにも違いがある。このため、各省の生き残りと発展に必要な炭素排出量を研究する時は、世界の主要経済国の業界別排出削減方法に対する分析結果に基づき、産業発展の地域格差、CO2排出が多い業界の分布の特徴を踏まえ、実験地区を選択・確定する必要がある。
都市レベル。一つ目は都市の炭素排出システムの研究で、これには交通、建築、産業、カーボンシンク等の炭素排出に関係する技術の研究及び各システムの関連、調整がある。二つ目は低炭素都市の具体的な計画であり、これには低炭素都市のモデル研究、都市内部の各機能区の配置、交通計画、地域社会計画等がある。
企業レベル。中心となるのは企業のクリーン生産と省エネ・排出削減に関する技術分野の研究である。
(2)低炭素経済の発展を図る中国の戦略的政策及び原則:
1)「低炭素化」を国の経済・社会発展の戦略目標の一つとし、関連指標を各計画と政策の中に盛り込み、各地の実情を踏まえ、地域別の低炭素発展モデルを探求し、炭素排出の伸びを抑えることに努める。2)炭素排出削減、エネルギー安全保障、環境保護の先進的技術を十分に利用し、中国の低炭素技術・製品の競争力を高め、低炭素へのタイプ転換を図り、飛躍的発展を実現する。また、低炭素エネルギーと低炭素エネルギー技術に関する国際的な交流・協力に積極的に参画し、国外の先進的な理念、技術、資金を導入し、新たな国際協力モデルと体制刷新を通じ、生産・消費モデルの転換を図る。3)気候変動の国際交渉と低炭素ルール作りに積極的に参画し、中国の合理的な発展の余地を確保する。また、国情と実際の能力に見合う自主的な排出削減行動を約束することにより、責任を負う大国としての国際イメージを高める。
(3)低炭素経済の発展を図る中国の主要な政策・措置
1)エネルギー供給システムの主要な措置。石炭のガス化を牽引役とするコージェネレーション技術のシステム開発・実証及び、一体石炭ガス化コンバインドサイクル技術等の先進的な発電技術の商業化を優先的に手配し、石炭クリーン利用等の関連分野で世界をリードする水準に到達させる。良質な油ガス資源を輸入・利用する。また、再生可能エネルギーを利用する技術及び国のエネルギーシステムにおけるその最適配置モデルを探究し、多元的なエネルギー供給システムを確立・整備し、エネルギー構造を転換し、エネルギーサービスを改善する。2)エネルギー利用システムの主要な措置。工業化と都市化のプロセスの中で、低エネルギー消費、高エネルギー効率、低炭素排出の方式に従い、大規模なインフラ整備を進める。工業生産、交通、建築各分野のエネルギー効率目標達成システムを確立し、新エネルギー車と新型省エネ建築を開発し、最良の実践技術を総括・普及させる。炭素回収・貯留(CCS)技術の実現可能性を探り、低炭素製品・技術の国際競争力を高める。また、業界(工業、建築、交通)、企業、都市、地域社会の低炭素発展に関する実験を繰り広げる。3)農地、草地、森林生態系の炭素固定機能について突っ込んだ研究を行い、生物と生態系の炭素固定によって気候変動を緩和する。4)関係法律法規の検討・制定。これには国の監視・考課・管理基準、財政・租税、価格等の金融政策・措置(例えば炭素税の徴収、炭素取引の試行等)がある。また、気候変動対応の戦略研究とその能力づくりを強化する。5)宣伝と世論誘導に力を入れ、各級指導部と公衆に低炭素経済の意味、その発展を図る理由及び、どう発展させるかを理解させ、社会全体の生産・生活様式と消費観の大転換を図る。
4 結びの言葉
「低炭素経済」の実質はエネルギー効率とクリーンエネルギー構造の問題であり、その中心はエネルギー技術の革新とエネルギー制度の刷新である。中国は高度経済成長期に差し掛かっており、経済成長を犠牲にして二酸化炭素の排出を削減するわけにはいかない。このため、積極的かつ効果的な手段を講じて低炭素経済を発展させ、無炭素経済に向かって突き進むことが一段と必要になる。中国は低炭素エネルギー技術を発展させる際、石炭中心のエネルギー構造を正面から見据え、化石エネルギーのクリーン・高効率な転化利用、省エネ・排出削減、汚染防止技術を重視しなければならない。しかし、戦略上は新エネルギーが伝統的エネルギーに代わり、優勢エネルギーが希少エネルギーに代わり、再生可能エネルギーが化石エネルギーに代わる道を堅持し、代替エネルギーの割合を徐々に高めていかなければならない。政策措置の面では制度の刷新を積極的に進め、国家レベル、省レベル、都市レベル及び企業レベルの各段階から低炭素経済、低炭素エネルギー技術、汚染防止技術の道を歩むための政策・法規を定め、これを強力に後押ししていく。