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中国での腫瘍免疫治療現状

2010年 6月28日

馬傑

馬傑:中国医学科学院腫瘍病院センター実験室主任
分子腫瘍学国家重点実験室研究員、博士課程指導教官

アメリカがん協会会員、人事部に特別招聘され中国で働く専門家。北京免疫学会理事、「がん進展雑誌」の編集委員。1994年に日本の札幌医科大学にて医学博士の学位を取得。その後カナダに渡り抗腫瘍薬物キャリアの研究を行う。2000年に中国医学科学院の世紀を越える導入人材として招聘に応じて帰国し、主に腫瘍のターゲット治療研究に従事。国家人事部の優秀選抜支援重点プロジェクト、国家「863」プロジェクト、国家自然科学基金プロジェクトを担当。国家第11次5ヵ年計画および重大な新薬創製計画に参加。現在主な研究のテーマは下記のとおりである。免疫系を活性化させる生物因子を作製し、発現し、腫瘍の早期発育に影響を及ぼす免疫学の要因を示し、腫瘍の免疫治療及び予防のために理論的な根拠を提供する。腫瘍のターゲット治療をするために、複数の抗腫瘍薬のナノ製剤学の研究を行い、ナノキャリアの技術プラットホームを確立する。その内、薬物新剤型ダウノマイシンのリボゾームの製造工程は2005年に国家の発明特許権を取得。腫瘍関連のmicro RNAの研究。腫瘍抗原関連抗体の腫瘍の発生発展における作用。ターゲット抗原提示の抗腫瘍免疫治療における研究。2005年から、日本の国立研究院及びアメリカのスタンフォード大学と提携して、中国医学科学院腫瘍病院で体細胞治療の研究に取り組む。研究成果をSMALL、Clin. Cancer Resなどの雑誌で発表。国内外の研究誌に学術論文を42編発表し、国家の特許権を2件獲得。

 1980年代から、腫瘍の治療手段が一層豊富になり、腫瘍の治愈率も大幅にアップしてきている。これは多種類のターゲット治療薬の研究開発のほかに、支持的療法による患者の生活の質の改善、患者の生存期間の延長が大いに貢献しているおかげである。特筆すべきは、中国では腫瘍患者の大半は正規の手術、放射線療法、化学療法を施行後、漢方医学の扶正治療(抵抗力や免疫などを助ける)によって生体の各器官のバランスを取り戻して、西洋医学治療による様々な有害反応を緩和していることである。

 免疫治療とは支持的療法の内の比較的急進的な方法である。免疫学の原理に基づき設計された各治療方法は生体の免疫システムのバランスを取り戻して、変異細胞を除去するための生体の能力を回復させることができるだけではなく、直接腫瘍細胞を殺傷することもできる。従って、免疫治療は漢方医学の扶正(抵抗力や免疫などを助ける)という理念に合致しており、西洋医の医学的理論にも適合する治療方法である。免疫治療を中国で充分に周知拡大することができれば、腫瘍治療の分野で大きな市場の将来性が期待できるはずである。

1.中国の腫瘍免疫治療の現状

 中国では、各省、市にほとんど腫瘍専門病院が設立されている。現在、これらの専門病院で腫瘍患者に施す治療方法は主に、外科切除→薬物治療および/または放射線治療である。免疫治療を実施している腫瘍専門病院は多くはない。主に専門の人材が不足しているからである。中国の病院は医療サービスを主体とし、従業員は医者、看護師がメインとなっている。医療資源の配分が不均衡なため、各省、市の腫瘍病院の診療が非常に繁雑で負担が大きくなっている。医療スタッフの継続教育において、比較的大きな問題が存在している。免疫治療は実施者に対して高い免疫学のバックグラウンドを求めており、医者は研修、訓練が足りず、病院に研究者を配置することができない現状では、多くの病院が免疫治療に取り組む基礎を備えていないのはまぎれもない事実である。

 学術活動が活発に行われている第一線の都市、例えば北京、広州、上海、天津などでは、科学研究の水準が比較的高いため、免疫治療が比較的うまく進められている。また、経済における先進地域の一部では、腫瘍の免疫治療に対する関心が比較的強く感じられる。次に中国医学科学院腫瘍病院を例に挙げて免疫治療の発展状況を説明する。

中国医学科学院腫瘍病院の免疫治療の発展について

1. 抗体類ターゲット治療薬

 このような薬物は腫瘍内科で広範に使用されている。

 主に免疫学の原理によって取得した数種のモノクローナル抗体薬物である。これらの薬物は腫瘍細胞表面のターゲットに結合して、腫瘍細胞をアポトーシスさせる。現在普通に使われているのは、下記のようなものがある。

  • リツキシマブ(Mabthera):B細胞表面のCD20抗原を識別する。主に非ホジキンB型リンパ腫の治療に用いられる。
  • トラスツズマブ(Trastuzumab):ヒト上皮成長因子受容体-2(HER2)を識別する。主にHER2陽性の乳がんの治療に用いられている。
  • セツキシマブ(Cetuximab):血管内皮成長因子受容体(EGFR)を識別する。主に結腸直腸がんの治療に用いられている。

 上記の抗体薬物の治療は本当の意味での免疫治療ではない。これらの薬物は免疫学の原理を利用してターゲットに結合することができるにすぎず、患者の生体の免疫機能の調整は全く実質的に実現できていない。

2. インターロイキン2(IL2)

 末期腎がん、悪性黒色腫の治療に用いられる。合併症がよく見られるため、現在この種の薬物の臨床での使用は比較的限られている。

3. 活性化自己リンパ球移入療法

 腫瘍の手術、放射線療法、化学療法という3大治療方法はいずれも基本的に腫瘍細胞の直接殺傷に着眼しているが、腫瘍細胞を徹底的に殺すことはできず、正常の組織を損傷しやすい。特に抗腫瘍メカニズムで重要な位置を占めている生体免疫システムを損傷してしまう。生物治療は腫瘍治療の第4の方式である。主に腫瘍の宿主の防御メカニズム或いは生物製剤の作用により生体自身の生物学的反応を調整することによって、腫瘍を抑制或いは除去する。活性化自己リンパ球移入療法は腫瘍の生物治療の方法の一つであり、免疫活性細胞の点滴を通じて腫瘍患者の免疫機能を増強し、抗腫瘍の效果を図るものである。患者に自己の或いは同種の特異的或いは非特異的な腫瘍殺傷細胞を受動的に受け入れさせ、体内の細胞の免疫機能を補充することができるだけではなく、患者自らの特異的および非特異的な抗腫瘍メカニズムを直接または間接的に賦活することができる。初期段階での移入免疫治療では、リンパ因子で殺傷細胞(LAK)を賦活してエフェクト細胞にしていた。しかしこの方法ではLAK細胞の増殖が遅く、IL-2への依存量が多く、殺傷において腫瘍に対する特異性がないため、人々は更に高い効果がある特異的抗腫瘍免疫活性細胞を探し求めている。

1)TAK(tumor antigen activated killer cell)

 1993年、中国医学科学院腫瘍病院は現代免疫学と腫瘍免疫学の理論によってTAK細胞(tumor antigen-activated killer cell)を研究製造して免疫治療を行った。TAKは特異的な腫瘍殺傷細胞の細胞毒性T細胞(CTL)で、TAKの培養では腫瘍可溶性抗原(TSA)、抗CD3モノクローナル抗体およびIL-2を用いて共同で患者の末梢血リンパ細胞を刺激し、CD8+CTLを主とする異質細胞群の生成を誘導する。TAK細胞の作製プロセスは複雑ではないが、新鮮な組織の標本を取得するために外科手術医の協力が必要である。その具体的な流れは下記のとおりである。GMP実験室において手術で切除した腫瘍組織を破砕し、細胞膜可溶性抗原(TSA)を抽出する。腫瘍患者或いは同型異体健康ヒトの末梢血からリンパ細胞を分離し、TSA、抗CD3モノクローナル抗体およびIL-2により共同でリンパ細胞が必要な数量に増殖するまで刺激する。臨床応用においては、TAK細胞を生理食塩水(ヒトの血清蛋白2%と適量のrhIL-2を含む)の中に懸濁させる。普通術後7~9日から患者に静脈注射を始め、3~5日間おきに1回実施し、1クール4回とし、移入する細胞の総数は2×109から3×109とする。TAK細胞は体外での増殖が速く、IL-2に対する依存量が少なく、TSAターゲット細胞を選択的に殺傷するのが特徴である。研究を深めていく中で我々は、TAK細胞2~6×109数量による殺傷水準はSteven Rosenbergが1011LAK細胞を使って得た殺傷水準に相当することが分かった。TAK細胞治療の末期腎がんに対する有効率は23.5%に達することができる。論理から言えば、TAKはLAKより良い特異性を持っている。

 中国医学科学院腫瘍病院は1993年5月から1996年7月の間に同方法で延べ259名の患者を治療した。胃がん、腎がん、副腎腫瘍、黒色腫、リンパ腫、肝がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、肺がん、乳がん、食管がん、すい臓がんなどを含む多くの腫瘍の型に及び、その内47%の患者は2クール以上治療を受け、3%の患者は5クールの治療を受けた。免疫実験室、生物治療科および腫瘍外科の関係部署の協力によって、手術、化学療法等の治療方法と併用して、TAK細胞での腎がんと胃がんの治療において比較的良い結果を上げた。成果は何回にもわたって「中華泌尿外科雑誌」と「中華微生物学と免疫学雑誌」に掲載された。

臨床の治療効果:腎がんの例

 1993年5月から1994年10月まで、移入TAK細胞免疫療法で末期腎がんを17件治療した。患者の年齢は38-74歳で、平均年齢58.5歳であった。その内男性は15件、女性は2件であった。Robsonステージによれば、ステージⅢは2件、ステージⅣは15件であった。11件は単一臓器転移で、6件は多発的臓器転移が発生していた。15件の患者は根治的腎摘出術を受けた。8件は術後10日間からTAK細胞免疫治療を加え、7件は術後のフォローアップで遠隔転移が発生した後本治療を始めた。その他2件の患者はTAK治療のみを受けた。根治的腎摘出術を施した後直ちにTAK細胞治療を行った件は、CR 1件、PR 2件で、有効率は37.5%になった。その他9件はPR 1件で、有効率は11.1%であった。全部で17件の患者の内、CR 1件、PR 3件で、総有効率は23.5%になった。有効と評価された4件の患者は治療前のKarnofsky評点は69-90点で、腫瘍転移部位は下大静脈腫瘍血栓が1件、両肺多発的転移が3件(その内1件は脳転移が伴った)であった。TAK治療を施した後、CR患者の両肺多発的転移病巣は完全に消滅し、3件のPR患者は転移病巣が51-96%縮小した。その内、下大静脈腫瘍血栓の患者は腎臓切除術後5ヶ月以内にTAK治療を2クール受けた。患者は両下肢の浮腫が無くなり、B型超音波検査で下大静脈腫瘍血栓の最大直径の積が83%縮小したのが分かった。もう一つのPR症例は腎臓切除術後の47日間以内にTAK免疫治療を連続して2クール受けた。胸部撮影で両肺転移腫の数量が減って、腫瘍体積が著しく縮小し、転移腫の最大直径の積の和は96%減少したことが分かった。本グループ17件の患者は1995年2月時点で、治療後の生存期間は最短で2ヶ月間、最長で20ヶ月間、平均生存期間は既に10ヶ月間になっている。死亡は7件であった。本グループの患者は治療後、CD3、CD4、CD8およびIL-2α受容体の測定を行ったところ、免疫機能の測定指標はすべて治療前より著しく高くなっていた。

毒作用・副作用:腎がんの例

 上記17件の腎がん患者は合計TAK治療を36クール受けて、TAK細胞を144回点滴注射した。生物化学検査で、治療前後の肝腎機能、電解質、ビリルビンについては著しい変化はなかった。治療期間に患者の体重に著しい変化はなかった。点滴注射後、延べ72件の患者(50%)に不調の訴えはなかった。一部の患者は注射後発熱、寒気による震えが現れた。その内、グレードⅠの発熱は34.7%を占め、グレードⅡの発熱は13.9%を占め、グレードⅠの震えは6.9%を占め、グレードⅡの震えは6.9%を占め、グレードⅢの震えは1.4%を占め、グレードⅣの呼吸困難は2.8%を占め、皮疹と液体貯留はそれぞれ0.7%を占めた。治療後体温が38℃を超えた患者に消炎鎮痛坐剤50mgを用いて、対症治療を施し、3~4時間後に体温は正常に回復できた。寒気による震えが発生した患者にはプロメタジンを25mg筋肉注射すると、30分後に緩和できた。

2)RAK(RetroNectin activated killer cell)

 2005年に、中国医学科学院腫瘍病院は日本のTakara Bio社と提携合意書を締結し、中国医学科学院腫瘍病院でTakara Bioの特許製品のRetroNectinの使用を推進し、腫瘍患者の細胞治療を行った。RetroNectinはフィブリンの一つで、多種類の細胞の増殖を促進することができる。RetroNectinはrhIL-2、抗ヒトCD3抗体と組み合わせて、ヒトのリンパ細胞を300倍以上に増殖させることができる。このような培養条件で得た細胞をRAK(RetroNectin activated killer cell)と言う。RetroNectinによって培養して得られるRAK細胞の数量はCD3AK培養条件(rhIL-2、抗ヒトCD3抗体のみで刺激)によって得られる細胞数量より遥かに多い。

 RAK細胞はCD3+CD8+を主とする殺傷細胞である。体外機能検査によれば、RAKは腎がん細胞に比較的高い殺傷性があることが分かる。体内治療の結果によれば、1×108 RAK細胞/匹を静脈注射したところ、腫瘍のあるヌードマウスの腫瘍の成長が遅くなり、腫瘍を得て35日時点での腫瘍の体積が対照組より著しく小さかった。安全性評価実験では、RAK細胞注射が生体に対し比較的安全であり、使用分量の範囲内で毒作用・副作用反応が発生しないと分かった。

 RAKは現在の、戻す自己リンパ球の数量不足というボトルネックを解決した。腫瘍患者は大体免疫低下の状態にあるため、患者から採取した末梢血リンパ細胞は以前の培養条件下ではなかなか予期する数量を達成できず、細胞治療によって得られる治療効果に限界があった。RetroNectinを用いて、患者に活性化した自己リンパ細胞を大量に点滴することにより、患者の腫瘍に対する免疫力をアップする可能性がある。現在、この治療案は既に中国国家食品薬品監督管理局に申告され、専門家の検証にパスしている。

3)CIK(Cytokine induced killer cell)

 これは現在国際的に比較的成熟しており、治療効果が比較的良い腫瘍免疫治療の手法である。CIK細胞は多種の生物活性因子(インターフェロンγ、CD3モノクローナル抗体、インターロイキンⅠ、インターロイキンⅡなど)が体外で誘導し、大量に増殖した、腫瘍を殺傷する活性を持つ細胞である。そのメインの成分はCD3+CD56+細胞(約30%)とCD8+Tリンパ細胞(約70%)である。この2種類の細胞、特に前者は、正常な体内に存在する数量が比較的少ないが、腫瘍を殺傷する要となる。

 CIK細胞は増殖が速く、腫瘍殺傷の活性度が高く、腫瘍殺傷のスペクトルが広い。放射線療法、化学療法の副作用を軽減し、腫瘍の増殖を抑制し、病状を安定させ、再発を予防し、患者の生活の質を改善し、生存期間を延ばすことができる。CIK治療法は簡単で実施しやすいため、外来診療で行うことが可能である。患者はクール毎に末梢血を1回だけ採取し、CIK細胞を3回戻す。毎回の治療時間は2時間で、治療の間隔は1日間である。CIK治療の副作用は軽く、ほぼ正常の造血に影響を及ぼさない。治療期間においても患者は通常どおり仕事をしたり生活したりすることができる。小数の患者は細胞を戻し点滴した後数時間に渡って注射反応或いはIL-2による不良反応がある。例えば発熱、寒気、脱力、皮疹がでることがあるが、皆一時的な症状で、普通医師が解熱剤或いは抗アレルギー薬物を投与することにより緩和することができる。中国医学科学院腫瘍病院でCIK治療を施す患者は大半が肺がん、婦人科腫瘍、胃腸腫瘍などで、すべての腫瘍患者は中期、末期で、大半はリンパ或いは血行転移を伴っている。CIK細胞治療を受けた後、大半の患者は精神状態が良くなり、食欲が増して、脱力の症状が緩和し、生活の質がアップしたと自ら述べている。一部の患者の腫瘍が縮小した。血液像検査を受けた5件の患者の内、4件は程度の違いはあるもののCEAが下がり、2件は治療前の半分になった。7件の患者はリンパ細胞タイプのフローサイトメトリー検査を受けた。治療の前後を比較すると、CD8+CTL細胞(CD3+CD8+)の比率が著しく増え、増加幅は50%-300%に達した。

2.中国の腫瘍免疫治療上の問題点

 中国では、腫瘍免疫治療は非常に混乱している状況にある。本来は科学的な根拠が十分で、腫瘍患者に有益な治療法であるにもかかわらず、政策上、医薬利益上の種々の矛盾から、患者は分からない、政府は管理しない、医者は触れたくないという困惑した局面になっている。現在北京で腫瘍免疫治療を行っている病院は主に中国医学科学院腫瘍病院、北京腫瘍病院、北京三零一病院、北京人民病院などがある。これらの有名な病院においても、免疫治療は下記の問題点を抱えている。

1. 免疫治療の効果が未確定

 2009年12月の中国腫瘍生物治療年会では、この分野の沢山の専門家が学術報告を行ったが、普遍的に存在している問題点は、臨床治療効果の報告は個別案件が主であり、立証できる確実な科学的データがなかったことである。免疫治療を実施している多くの病院はきちんと患者をグループ分けしてコホート研究を行わず、患者の追跡調査報告もなく、個別案件だけによって治療の効果を判断しているため、あまり説得力がなかった。

2. 高料金、かつ医療保険未指定

 北京で、北京市物価局の許可を得て、CIK治療の料金は3万元/回に定められている。この治療は医療保険に組み込まれていないため、平均年収が5万元である北京市民にとってかなりの医療負担になり、中国の腫瘍患者の家庭を尻ごみさせている。中国医学科学院腫瘍病院では人もお金もなくした痛ましい光景をしばしば目にすることがある。免疫治療が医療保険に組み込まれなかった根本的な理由はやはり治療効果が明確でないからである。医者及び科学研究者が厳密で科学的な態度で、この治療法について検証を行えば、医療保険の門が開かれると考えられる。

3. 医師の協力性不足

 免疫治療は補佐的な治療であり、現有の治療法と有機的に結びつけなければならない。そして、新しい治療法として、腫瘍医に受け入れられ、認められなければならない。しかし、人間の本性は変更や、新しい事物を拒否することがある。また腫瘍免疫治療の性質を誤解し、免疫治療を提唱する専門家が免疫治療を現在の薬物治療の代替とさせたがっていると思い込んでいる医者も多くいる。従って、現在の臨床腫瘍医に新しい治療方法を受け入れさせるにはプロセスが必要である。もし医者がこれを拒否する、より深い理由を指摘するとすれば、それは利益配分の問題だと考えられる。例を挙げると、CIKは自費治療であり、患者の資金は限られている。患者に資金を自費の薬物に投入するように指導するだろうか、それとも免疫治療に投入するよう指導するだろうか。周知されているように、中国で医薬に関して医者に与えられるリベートは10~20%である。だからよくこういうブラックユーモアがある。お医者さんは毎日処方箋を書いているわけではなくて、自分宛の小切手を書いているというものです。細胞治療は病院が主導する新しい治療技術で、製薬会社の参与がないため、医者のペンがどちらに傾くかは誰でも分かるであろう。免疫治療を医療保険に組み入れることができれば、この問題を緩和することができるであろうが、それは表面的な対処であって、根本的な措置にならないと考えられる。

3.中国の腫瘍免疫治療の将来性

 現在人類が腫瘍の原因を研究してきた結果によれば、遺伝、環境、飲食、ウィルス感染などが生体の細胞に悪変が発生する主要な原因と考えられている。正常の状況下で、人間自身の免疫系はこのような非正常な細胞を監視して発見することができる。また自身の免疫機能を利用してこれらの細胞を体内から排除することができる。但し、生体の免疫機能が低下した状況下では、腫瘍細胞は一連の方法によって免疫系の監視を逃れることができる。腫瘍患者の体内に、腫瘍細胞を識別できるリンパ細胞が存在するが、これらのリンパ細胞は数量が足りない或いは抑制状態にある。腫瘍の免疫治療を通じて、人為的にこれら自己の攻撃細胞を増加、活性化させ、生体の腫瘍に対抗する免疫力を強めることができる。

 免疫治療は手術、放射線療法、化学療法という3大療法の次に挙げられる補佐的治療手段であり、将来の腫瘍治療分野で大きな発展性が見込まれる。免疫は非常に複雑な分野であるため、現在既に存在する多くの治療方法は更に評価する必要がある。中国がこの分野において創造と功績をうち立てようとするならば、下記の二点において思想と知識上の革命を行うことが基本となる。

 まず、医療の行政管理を強化することが必要である。2009年に中国衛生部は免疫治療を第三類医療技術類に組み入れた。これは食品薬品監督管理局が免疫治療申請の受理をしなくなったことを意味している。しかし、仕事の引継ぎが問題になり、従来薬品監督管理局が受理していた申請は白紙となり、この部分の申請は放置された。政府の行政管理が行き届かないため損失を蒙っている会社が沢山ある。また、衛生部医療行政司と科学技術司は第三類医療技術の許認可において、役割が今でも定かではない。このため、第三類医療技術の許認可規定は2009年初に公表されて以来、実際に実施されていない。免疫治療は誰も管理していない無人地帯に置かれている。地方の病院では、行政管理もされていない免疫治療は必然的に無責任的なものとなり、非常に濃い営利の色を帯びている。従って、政府は国民の健康に責任を負う姿勢で、医療改革を加速し、免疫治療の管理を科学的観点で制度化しなければならない。

 その次は医者の再教育の問題である。これは技術とモラルという二つの側面の内容を含んでおり、モラルの方はより重要かもしれない。中国の改革開放に従って、人々の考え方がどんどん変わっており、中国人は全人類の幸せのために奮闘するという一つの極端から、極度に利己的というもう一つの極端に変わった。現在、中国は世界で拝金主義が最もひどい国の一つになっている。沢山の医者はこの業界に入る前に既に自分自身を見失っており、医者は彼らにとってすでに高尚な職種でなく、金儲けの職種になっている。医者と患者の目標が一致しなくなる時、日常の診療行為にかたよりが出るのは避けられない。このため、中国全体で医療業界における医療モラルの教育を強化し、医療スタッフに患者の実際のニーズに基づいて最大限に自分の医療技能を発揮させるようにすべきである。態度が正されれば、医者は自然にスキルアップを図るようになるであろう。最大限に努力し患者にサービスするためには絶えず勉強し、知識を更新しなければならないからである。中国医学科学院腫瘍病院が現在打ち出しているスローガンは「研究型の病院の確立へ」というものである。病院は医者を外国に送り出して先進知識を習得させるチャンスをどんどん作っている。このことから中国医学の明るい将来が見える。

 要するに、腫瘍の免疫治療は苦しみの中で必死にあがいている新しい方法である。それは腫瘍患者に生きるという希望をもたらすことができ、それを本当に揺りかごの中でつぶすような力は何処にもない。中国の医療衛生事業がどんどん軌道に乗るにつれて、腫瘍免疫治療の将来性が大いに期待できるであろうと我々は信じている。


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