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チベット産ソフォラ・モールクロフティアナ種子の抗腫瘍効果および免疫賦活活性に関する研究

2010年 7月12日

馬興銘

馬興銘(ma xing-ming):蘭州大学基礎医学院教授

1969年05月生まれ。甘粛農業大学動物医学院において基礎獣医学の博士学位を取得。現在は主に感染や免疫、漢方生薬の抗腫瘍作用や免疫活性メカニズムなどに関する研究に従事。

 ソフォラ・モールクロフティアナ(Sophora moorcroftiana、中国語は「砂生槐」)は、チベット名で「薊瓦」と称し、チベット産「狼牙刺(Sophora Viciifolia)」、「刺柴」、「金雀花(ムレスズメ)」とも呼ばれる。マメ科エンジュ属の植物であり、青海チベット高原に群生する。自然草地に自生する貴重な植物であり、海抜2800~4400メートルに位置する氾濫平野の砂地や風積砂丘に自生する。潜在的な利用価値の高い植物資源であることから「チベット高原の金」として注目されている。多くの学者がソフォラ・モールクロフティアナ種子の抗腫瘍効果や免疫賦活活性について高度な研究を行っている。

1. チベット産ソフォラ・モールクロフティアナの植物学的特徴

 ソフォラ・モールクロフティアナはマメ科エンジュ属に属する落葉低木であり、枝が多く、小枝には柔らかで灰色の短葉毛が密集しており、先端は針状になっている。托葉は針状で硬く、葉の長さは3-5cmである。葉柄や葉軸は長くて柔らかな毛で密に覆われている。葉の形状は細長い円形、たまご型、逆たまご型などで、長さ4-10mm、幅2-4mmである。葉の両面は白や薄い黄褐色の長くて柔らかな毛で密に覆われており、先端部には刺状の芒がある。頂生の総状花序で多くの花をつける。萼(種)の先端はくぼんでいる。翼弁は旗弁より短く、子房は白く柔らかな長毛で密に覆われている。青海チベット高原の波密、ニンティ(林芝)、ミリン(米林)、札囊、ラサ(拉薩)、リンプン(仁布)、シガツェ(日喀則)、ラツェ(拉孜)などに群生する。海抜2800~4400mの山林に自生し、ヤロザンブ川の谷合において広域な分布が確認されている。木の高さは環境によって30~100cmとさまざまである。毎年4月中旬に新しい葉を付け、5~6月に青紫色の花を咲かせる。7月に付けた莢は、8月になると種子が熟し数珠状になる。莢ごとの種子の数は1~7個である。種子は短軸3~4mm、長軸4~5mmの楕円形である。趙文智らの研究によると、ソフォラ・モールクロフティアナは典型的な深根性樹木である。散布された種子が砂地に定着後、根を通して繁殖する。主根の貫通力は強く、平均して地下3mにまで達する。側根は地表0.7~1.5mの範囲に横走する。種間競争による退化により、適度に砂に埋もれた環境がソフォラ・モールクロフティアナにおける若枝の生長を促進する。同地区における最適な群生環境は、砂嵐の影響を受けやすい砂段丘、半固定砂丘、初期固定砂丘などであり、向かい風面下部の砂埋没が最も激しい部分において(毎年30cm以上)1~2年間耐えることができる。高原渓谷の海抜が上がるに伴い、降水量は600mmから400mmにまで減少し、年平均気温は8.2℃から5.8℃に低下する。またソフォラ・モールクロフティアナの群生密度は増加していくが基茎部は減少していく。樹木の高さや若枝の長さは海抜上昇の影響をあまり受けない。砂に埋没していない場合は種子による繁殖が中心だが、砂に埋没している場合は栄養繁殖が中心となる。砂嵐による影響に適応するため繁殖方法を調整することができるので、砂漠の緑化に応用できる。以上のことからソフォラ・モールクロフティアナは、乾燥・温暖な気候を好み、旱魃や砂地に強いことがわかる。砂嵐にも負けない頑強な適応力を有しており、防風、飛砂固定、水や土壌の保持といった生態学的機能を持つ。

2. チベット産ソフォラ・モールクロフティアナ種子に含まれる蛋白質の分析

 李玉祥および許毓英の実施したソフォラ・モールクロフティアナ種子に含まれる蛋白質などの栄養成分の分析によると、粗繊維の含有量は2.71~13.63%、脂肪の含有量は8.90~9.39%、蛋白質の含有量は29.42~30.60%であった。これは大豆に次いで高い栄養価であり、チベット産ハダカムギや小麦の3倍近く、イネ科植物の種子の23倍も高い。アミノ酸17種の含有量は23.22~24.53%であり、詳細は次の通りである。アスパラギン酸(2.19~2.11%)、トレオニン(0.86~0.84%)、セリン(1.19%)、グルタミン酸(5.37%)、グリシン(1.26~1.25%)、アラニン(0.96%)、シスチン(0.29~0.30%)、バリン(1.07~1.21%)、メチオニン(0.35~0.31%)、イソロイシン(0.96~0.86%)、ロイシン(1.77~1.66%)、チロシン(0.86~0.96%)、フェニルアラニン(0.98~1.06%)、リシン(1.41~1.39%)、ヒスチジン(0.81~0.61%)、アルギニン(2.94~2.20%)、プロリン(1.26~0.94%)。トリプトファンを除いた必須アミノ酸7種の含有量は、いずれもエンドウ、チベット産ハダカムギ、小麦、マメ科牧草のアルファルファより高い。熱量は13461~21029kJ/kgであり、典型的な高蛋白植物資源と言うことができる。この点は植物蛋白資源が著しく不足しているチベット地区にとって非常に意義深い。

3.チベット産ソフォラ・モールクロフティアナ種子における化学成分の分析

 張勝らの発表によると、ソフォラ・モールクロフティアナには漢方生薬として利用できる化学成分が数多く含まれている。種子にはオキシマトリン1.64%、オキシソホカルピン0.5%、マトリン0.172%、ソホカルピン0.005%が含まれる。地上部分にはα-マトリン、オキシマトリン、ソホカルピンが含まれている。根にはソフォラ・モールクロフティアナ・フラバノンH、I、J、甘草イソフラボンA、山豆根フラバノンA、ファセオリンが含まれる。またソフォラ・モールクロフティアナ・フラバノンG、ソフォラ・モールクロフティアナ・イソフラボンA、ソフォラ・モールクロフティアナ・フラバノンB、甘草イソフラボンB、クロタキカズラ・イソフラボン、L -マアキアイン、サティボルなども含まれている。

4.チベット産ソフォラ・モールクロフティアナ種子の伝統的な薬効

 「中華人民共和国薬典」や「全国中草薬匯編」の記述によると、ソフォラ・モールクロフティアナには清熱(熱証の解除)、利湿(利尿作用)、駆風(胃腸内にたまったガスを排出する作用)、殺虫(有害な昆虫を殺す作用)といった効能があり、腸炎、赤痢、湿熱黄疸(黄疸症状のうち熱が湿より重いもの)、癰腫(局部の化膿性疾患)、瘡毒(瘡瘍などの毒)、疥癬などの治療に用いることができる。「中華薬海」や「中国医学百科事典―チベット医学」の記述によると、主にチベット産ソフォラ・モールクロフティアナの種子を薬として用いる。チベット薬学名は「覚偉哲吾」と称する。8~10月に熟した果実を採取し、日に当てて乾燥させてから種子を扱く。不純物を取り除けば薬として用いることができる。涼性(体を冷やす)で苦味があり、消炎、解毒、嘔吐誘導の効能がある。3~9グラムを煎じて飲むことにより、湿熱黄疸、ジフテリア、寄生虫感染症、チベット医学における赤巴病、中毒症、消化不良などを治療することができる。ヘチマの種、リグラリア・ヴィルガウレア、唐古特烏頭(Aconitum tanguticum (Maxim.) Stapf)などのチベット生薬と共に用いることによって、疫病による胸痛を抑えることができる。中国衛生部が1995年に公布した「中華人民共和国衛生部薬品標準」のチベット生薬(第一巻)に記された標準薬品名は、ソフォラ・モールクロフティアナ種子である。

5.チベット産ソフォラ・モールクロフティアナ種子の抗腫瘍効果および免疫賦活活性

 昨今の研究によると、漢方薬やその有効成分を多標的、多手法、多方面に応用することによって、腫瘍の予防や治療を実現することができる。抗腫瘍効果の主なメカニズムには、腫瘍細胞の生長や細胞毒性効果の抑制、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する作用、免疫機能の調節、腫瘍の血管新生の阻害、腫瘍細胞の多剤耐性の逆転、テロメラーゼ活性の抑制、腫瘍細胞のシグナル伝達因子の抑制などが含まれる。研究によってソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイドおよびアルコールや水による抽出物に腫瘍細胞の生長抑制、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する作用、免疫機能の調節といった効果があることが証明されている。以上のことからソフォラ・モールクロフティアナ種子に潜在的な抗腫瘍成分や免疫調節成分が含まれていることは明らかである。

 アルカロイドによる抗腫瘍活性:馬興銘らはソフォラ・モールクロフティアナ種子からアルカロイドを抽出し、抗腫瘍活性に関する研究を行った。同研究によると、ソフォラ・モールクロフティアナ種子のアルカロイド0.6~4.8mg/mlによって、肺腺癌細胞SPC-A-1やGLC-82および胃癌細胞SGC-7901の増殖を著しく抑制することができる。腫瘍細胞増殖抑制に関するIC50は2.1~9.8mg/mlであり、抑制効果は薬物濃度や作用時間の増加に伴い強まる。0.8~3.2mg/mlのアルカロイドは、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する。蛍光顕微鏡によって癌細胞の収縮、細胞膜の出芽(blebbing)、核崩壊、アポトーシス小体の形成を確認することができる。アガロースゲル電気泳動によると、DNAの階段状断片化が明らかであり、180~200bpの整数倍のラダーとして検出される。これらはDNAが核小体のリンカー部分で断裂し、アポトーシスに至っていることを証明している。フローサイトメトリーを用いて24hにおける腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するパーセンテージを測定したところ、12.9~14.2%であった。癌細胞がS期に進むことを抑制し、G1期に留めた上でアポトーシスを誘導する。以上のことからソフォラ・モールクロフティアナ種子から抽出したアルカロイドが、腫瘍細胞の生長を抑制し、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することによって抗腫瘍効果を発揮することが明らかである。

 アルコール抽出物の抗腫瘍効果および免疫賦活活性:馬興銘らはクロロホルム、アルコール、水などの溶剤を用いてソフォラ・モールクロフティアナ種子の抽出物を取得し、抗腫瘍研究を実施した。同研究によると、0.31~5.00mg/mlの各種抽出物は、人胃癌細胞SGC-7901に対して増殖や細胞毒性抑制効果があることを示した。ソフォラ・モールクロフティアナ種子の各抽出物の胃癌細胞SGC-7901系に対するLC50は1.4~41.7mg/mlであった。95%アルコール抽出物による腫瘍細胞の増殖抑制や細胞毒性効果が最も強く(LC50=1.4mg/ml)、胃癌細胞SGC-7901に対する抑制率は87~93%であった。水による抽出物による腫瘍細胞の増殖や細胞毒性抑制効果は最も弱かった(LC50=41.7mg/ml)。以上のことからソフォラ・モールクロフティアナ種子の95%アルコール抽出物が、抗腫瘍活性の面で有効であることが分かる。さらなる研究において95%アルコール抽出物(1.25~5.0mg/ml)と胃癌細胞SGC-7901を48h共に培養したところ、蛍光顕微鏡によって細胞のアポトーシスを特徴づける形態学的変化を確認することができた。胃癌細胞SGC-7901のアポトーシス誘導率は39%に達する。電子顕微鏡を通して薬物誘導により癌細胞の超微細構造に変化が生じていることを確認できる。核小体のアポトーシスが発生し、細胞のアポトーシスを特徴づける超微細構造の変化が見られる。アガロースゲル電気泳動による分析を見ると、95%アルコール抽出物によって胃癌細胞SCG-7901を48h誘導した後に、DNAの階段状断片化が明らかとなる。これはDNAが核小体のリンカー部分で断裂し、アポトーシスに至っていることを証明している。フローサイトメトリーを用いて48hに亘る腫瘍細胞誘導によるアポトーシスの発生パーセンテージを測定したところ、4.5%~31.1%であった。G1期の細胞数が増加しているのに対し、G2期やM期の細胞数は減少しており、G0/G1期の阻害現象が生じている。G1期の腫瘍細胞がS期に進むことを阻害することによって、S期の細胞がG2期やM期に進むことも阻害でき、結果として細胞のアポトーシスが誘導される。馬興銘らは肉腫細胞S180移植マウスモデルを研究対象として、体内における抗腫瘍効果や免疫調節効果を観察したところ、ソフォラ・モールクロフティアナ種子の95%アルコール抽出物(200~800mg/Kg/d)による10日間の治療後、肉腫細胞S180移植マウスにおける腫瘍の生長が明らかに抑制された。高用量群(800mg/kg/d)における腫瘍抑制率は28.1%であった。また治療後における腫瘍組織に著しい病理学的変化が確認された。腫瘍組織の周囲組織に対する浸潤や腫瘍細胞の核分裂像数は減少し、リンパ球浸潤が認められる。また広範囲にわたる断片上の腫瘍組織壊死が複数個所で確認されており、直接的な抗腫瘍効果が裏付けられた。正常群との比較によると、各治療群におけるIL-2やTNF-αの細胞因子レベルは明らかに高かった。特に高用量群の血清におけるIL-2やTNF-αの含有量が最も高かった。このことからソフォラ・モールクロフティアナ種子の95%アルコール抽出物が、腫瘍移植マウスの免疫系に一定の改善効果を及ぼしたことが分かる。抽出物が腫瘍組織に対して生長抑制や破壊といった作用を及ぼしたため、腫瘍の免疫系に対する抑制力が低下する。このため腫瘍抗原が免疫系を刺激する力が強化され、T細胞の増殖反応が増強し、IL-2やTNF-αの産生分泌が促進され、T細胞の機能も向上する。以上のことからソフォラ・モールクロフティアナ種子の95%アルコール抽出物が、腫瘍細胞の生長抑制や細胞毒作用、腫瘍細胞のアポトーシスや壊死の誘導、自身の抗腫瘍免疫力の強化メカニズムなどによって抗腫瘍効果を発揮することが明らかである。

 水抽出物の抗腫瘍効果および免疫賦活活性:郭君らは肉腫細胞S180移植マウスモデルを用いたソフォラ・モールクロフティアナ種子の水抽出物0.6~2.4g/kgを連続して10日間胃に投与する実験を確立した。この抗腫瘍活性研究によると、水抽出物2.4g/kg用量群において肉腫S180の生長が明らかに抑制された。腫瘍抑制率は41.4%であった。水抽出物も同様に肉腫移植マウスにおける免疫バランスの不均衡を改善し、身体の抗腫瘍力を高めることができる。水抽出物2.4g/kg用量群におけるNK細胞の殺傷活性(28.76%)および血清可溶性IL-2の含有量は、いずれもコントロール群を大きく上回った。水抽出物はNK細胞の増強や免疫細胞による細胞因子の分泌を活性化させることによって抗腫瘍効果を発揮する。安方玉や田衛花らは免疫抑制マウスモデルを確立し、ソフォラ・モールクロフティアナ水抽出物の免疫調節活性に関する高度な研究を実施した。研究結果は、ソフォラ・モールクロフティアナ水抽出物が、免疫抑制マウスにおけるマクロファージの貪食能を増強し、腹腔マクロファージの活性を著しく高めることを示している。0.6~2.4g/kgのすべてにおいて免疫抑制マウスのスプリーンインデックスが向上し、脾臓重量も増加した。LPSを併用し免疫抑制マウスにおけるBリンパ球の増殖を促進すると、中・高用量群において免疫抑制型マウスにおける抗SRBC抗体の生成が著しく促進される。特に高用量群におけるB細胞の抗体産生能力や増殖能力は、正常群と大差なかった。このことから高用量水抽出物が、免疫抑制マウスにおける体液の免疫機能を正常レベル近くにまで向上させ、Bリンパ球による特異抗体の産生を促進することが分かる。またソフォラ・モールクロフティアナ水抽出物をConAと併用することによって、免疫抑制マウスにおけるT細胞の増殖を促進し、免疫細胞がIL-2やTNF-αといった細胞因子を産生するよう促すこともできる。特に2.4g/kg用量のソフォラ・モールクロフティアナ水抽出物は、シクロホスファミドのT細胞に対する免疫機能抑制作用を著しく弱め、IL-2やTNF-αといった細胞因子の産生を促進することによって、細胞の免疫機能を向上させる。以上のことからソフォラ・モールクロフティアナ種子の水抽出物は、腫瘍細胞の生長を抑制する面で抗腫瘍効果を示すほか、NK細胞やマクロファージの非特異性免疫機能およびT細胞やB細胞の仲介する特異性免疫機能を活性化させることによっても抗腫瘍効果をもたらす。

6.チベット産ソフォラ・モールクロフティアナ種子の静菌および殺虫活性

 馬興銘らはソフォラ・モールクロフティアナ種子から総アルカロイドを抽出し、体外静菌活性に関する研究を行った。同研究によると、ソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイドには、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌の生長や繁殖を抑制する作用があることが明らかとなった。特に黄色ブドウ球菌に対する抑制作用が顕著であり、MICは9.47~28.41mg/mlである。またソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイドには、植物病原菌であるイネ白葉枯病菌、イネ条斑細菌病菌、シリンゲ菌、ジャガイモ軟腐病菌の生長や繁殖を抑制する効果もある。最小発育阻止濃度MICは5.30~40.57mg/mlである。シリンゲ菌に対する生長抑制効果が最も強く(5.3mg/ml)、ジャガイモ軟腐病菌に対する生長抑制効果が最も弱い(40.57mg/ml)。さらに核果類の斑点症(シュードサーコスポラ菌)、トマトやブドウの斑点病、トマト葉かび病菌といった病原性真菌の生長を抑制することもできる。真菌の生長や繁殖を阻害するEC50は12.55~15.79mg/mlであり、薬物濃度が増すほど静菌作用も強くなる。ソフォラ・モールクロフティアナ種子のクロロホルム、アルコール、水による抽出物に関し静菌活性を測定したところ、クロロホルム抽出物や95%アルコール抽出物に広範な静菌活性が認められた。特にクロロホルム抽出物の静菌活性が顕著である。以上のことからチベット産ソフォラ・モールクロフティアナ種子には、静菌成分が含まれており、各抽出物に相応の静菌作用があることは明らかである。馬興銘らの研究によると、ソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイドをマウスに与えた場合における半数致死量は207.81±20.82mg/kgであり、マウスに対して中レベルの毒性を有していると言える。モンシロチョウの幼虫に対して極めて強い摂食阻害作用や殺虫作用があり、中央摂食阻害濃度LD50は481.39mg/Lである。摂食阻害率と死亡率に大差はない。このことからソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイドは、消化中毒作用を主な殺虫活性手段の一つとしていると思われる。また濃度が0.75~6.0mg/mlのソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイドには、体外において原頭節を死滅させる強力な作用がある。1.5mg/ml以上のアルカロイドの原頭節に対する死滅作用は、アルベンダゾールよりもはるかに強い。ソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイドとアルベンダゾールを併用した単包条虫の原頭節による単包性エキノコックス症の治療に関する動物実験研究によると、ソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイド(50mg/Kg/d)には、マウスにおける二次的なエキノコックスの生長を抑制する作用が認められた(発育抑制率は37%)。アルベンダゾール併用群では、発育抑制率が76%に達した。3ヶ月の治療後に光学顕微鏡で各治療群におけるエキノコックスの嚢胞壁組織を観察したところ、いずれの場合も破壊が確認された。特に併用治療群において顕著な壊死性変化が認められた。電子顕微鏡によって併用治療群におけるエキノコックスの嚢胞組織を観察したところ、胚芽層における皮質の微絨毛が減少していた。また脂質滴の増加、グリコーゲンやリソソームの堆積、細胞質の減少、細胞核の濃縮、核間隔の拡大といった細胞の超微細構造に関する異常な変化が認められた。治療後のマウスから得た血清におけるIL-4やIgEのレベルは、明らかにコントロール群を下回っていた。治療によって包虫嚢胞の増加が抑制されたほか、構造破壊が発生したため、嚢胞の免疫細胞に対する刺激が軽減し、IL-4やIgEの産生が減少したことが分かる。以上のことからソフォラ・モールクロフティアナ種子アルカロイドなどの抽出物には、潜在的な殺虫活性成分が含まれていることは明らかである。近代医学の観点から、伝統的なチベット民間医療によるジフテリアや寄生虫感染症の治療に対して、実験に基づく根拠を提供した。


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