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医療用レーザー技術やレーザー治療器の発展

2010年10月15日

武 暁東

武 暁東(Wu Xiaodong):
中国科学院蘇州生物医学工程技術研究所医療用レーザー技術研究室主任、研究員

1968年4月生まれ。1995年3月に中国科学院・長春光学精密機械研究所の光学修士学位を取得。2000年10月から2004年3月まで筑波大学に留学し、工学博士学位を取得。主な研究分野は医療機器や光電機器。衛星リモートセンシング設備や医療用スペクトル分析装置の開発業務に長年にわたり従事。現在は主に疾患の観察、診断、治療およびリハビリにおける医療用レーザー技術の応用を目的とした研究、開発、産業化の業務を担当。

共著者:高 静


 概要:本論文では、生物医学の見地からレーザーの効果や一般的なレーザー治療器を簡潔に紹介する。医学分野におけるレーザーの主な応用例を分類することにより、幾つかの代表的なレーザー治療技術を紹介すると共に、中国におけるレーザー治療器市場の展望を分析する。またレーザー医療機器の発展の方向を示す。

1 序文

 レーザーとは、物質の誘導放出によって生じる一種のコヒーレント光である。レーザーには良好な単色性、視準性、コヒーレンス性といった特徴があるため、疾患の診断、観察、治療などに非常に適している。1963年にGoldmanが、良性皮膚疾患に対するルビーレーザーの応用に成功すると、医学分野におけるレーザーの活用が始まった。さまざまな新型レーザー機器の開発が進むに伴い、数多くの学門分野の基礎や臨床においてレーザー技術が広く応用されるようになった。応用目的は大きく分けてレーザー診断とレーザー治療の二つである。前者はレーザーを主に情報担体として用いており、後者はレーザーを主にエネルギー担体として用いている。レーザー診療技術は、従来の診療方法と比べて非接触・最小侵襲の面で非常に優れており、臨床治療には欠かせないキー技術と効果的な手段となっている。レーザー医療機器に対する需要は急速に拡大しており、臨床治療や科学研究におけるレーザー医療機器の役割がますます重視されている。

2 レーザーの生物学的効果

 レーザーには一般的な光線とは異なる発光メカニズムがあり、レーザーと生体組織における生物学的効果が顕著であることが、生物医学分野においてレーザーが広く採用される基本的な理由である。レーザーを生体組織に照射すると、一部は散乱され、レーザーの照射によって形成される光学情報により、検体組織の成分構造を検出することができる。また一部は吸収されるが、生体組織における光の吸収は、組織構造や吸収スペクトルに関係するが、主にはレーザーの波長によって左右される。紫外線は主にタンパク質によって吸収され、可視光はヘモクロム、メラニン、その他の色素によって吸収される。700~900nmは、生体組織における光学窓とも称され、同波長範囲において組織における光の吸収が最小になる。赤外線は主に水によって吸収される。レーザー照射と生体組織の相互作用によって生じる生物学的効果には、光熱効果(Photothermal)、光化学効果(Photochemical)、生物刺激効果(Biological stimulation effect)、光圧効果(Light pressure effect)、光機械効果(Photomechanical)などがある。これらの効果を利用することにより、レーザーを用いた疾患の診断や治療が可能となる。

 レーザー技術は基礎医学研究に先進的な手段を提供している。レーザー診療は、手術療法と非手術療法に分けることができる。レーザー手術療法とは、マイクロビームを用い患部組織の切除、蒸散、凝固を施すことであり、部分的な侵襲が機能に与える影響を観察する。非手術療法とは、弱いレーザービームを患部に直接照射したり、光ファイバーを挿入し組織を破壊することなくレーザーを血管内に照射したりすることによって、血液循環の改善、免疫力の強化、抗アレルギー、鎮痛消炎といった効果を引き出すことである。

3 レーザー医療における一般的なレーザー装置

(1) 気体レーザー(Gas Laser)

 医療に用いられる気体レーザーの中でも代表的なものがCO2レーザーである。波長は10.6μmである。臨床で用いる炭酸ガスレーザーの高出力がもたらす熱圧力効果により、組織中の水分を揮発させ、病変組織を切除する。しみ、血管腫、皮膚癌、胃の切除、心臓、心血管手術、口腔癌や口腔粘膜疾患などの分野で顕著な効果を発揮している。またHe-NeレーザーやAr+レーザーなどは、網膜剥離、網膜変性、胃潰瘍などの治療に広く用いられている。

(2) 半導体レーザー(Semiconductor Laser)

 半導体レーザーの材料には、一般的なGaAs、GaAlAs、GaAsPを含め20~30種類がある。低出力の半導体レーザーを人体組織に照射すると、体液循環の増進や人体組織における活性細胞の成長促進といった効果があり、臨床において皮膚炎の治療、傷口の癒合、鎮痛を目的として用いられている。高出力の半導体レーザーは、止血効果の高いレーザーメスを用いた切除手術に用いられている。代表的なものとしては、前立腺切除術や肝葉切除術などがある。

(3) ランプ励起固体レーザー(Lamp Pumped Solid State Laser)

 世界初のレーザー装置であるルビー(Ruby)レーザーは、ランプ励起固体レーザーであった。ルビーレーザーは当初眼科で採用されていたが、後にアルゴンレーザーや色素レーザーが主流となった。高出力のルビーレーザーは、現在では刺青の除去に用いられている。固体レーザー装置の開発初期は、ランプ励起レーザーが圧倒的に多かった。低価格、高出力、高安定性といった特徴ゆえに、幅広い分野で採用された。目下最も代表的なものは、波長1.06μm、第二高調波532nmのランプ励起Nd:YAGレーザーであり、上部消化管の出血など出血性疾患の止血のほか、血管病変にも用いられる。またランプ励起Nd:YAGレーザーを内視鏡と組み合わせることにより、膀胱、肺、消化管などの内部にある腫瘍、声帯病変、鼻茸などの治療に採用できる。

(4) 半導体励起固体レーザー(Diode Pumped Solid State Laser)

 半導体レーザーの急速な発展は、全固体レーザーに画期的な革命をもたらした。半導体励起固体レーザーには、高効率、コンパクトな構造と体積、長寿命といったメリットがあるため、レーザー装置の研究開発においても注目されている。医療分野における同レーザーのシェアは高く、今後段階的にランプ励起固体レーザーに代わり、全固体レーザーの主流となると予想される。

(5) エキシマレーザー(Excimer Laser)

 エキシマレーザーは、強力な紫外線を発生させることができる。他のレーザー装置では、紫外線を発生させることは非常に難しく、独特のメリットを有している。二つの原子で構成する分子であるエキシマは、励起状態でのみ安定する。励起状態の寿命は短く、エキシマは短い時間の中でレーザーを発生する。臨床における応用では、さまざまな組織を正確に切除することができるほか、切除過程において熱変化を伴わないという特徴がある。主にレーザー血管形成術、屈折矯正角膜形成術、中枢神経系の病巣切除術などに用いられる。

(6) 色素レーザー(Dye Laser)

 色素レーザーの出力波長は、連続調節が可能であり、異なる作業波長を提供することができる。通常の作業環境下における治療用レーザーのシングルパルスエネルギーは5~30mJであり、疾患に応じて選択する。医学分野で用いられる色素レーザーは、アルゴンイオンレーザー励起のものとクリプトンイオンレーザー励起のものがある。一般的に癌に対する光線力学的療法に用いられるほか、白内障治療や内視鏡による凝固処理などにも採用されている。

(7) 各種レーザー装置の性能比較

表 各種医療用レーザー装置の性能比較
  出力/エネルギー 效率 線質 体積 寿命 安定性 価格
気体レーザー 大きい 低い 良い 大きい 短かい 良い 中間
半導体レーザー 大きい 高い 悪い 小さい 長い 良い 低い
ランプ励起固体レーザー やや大きい 低い やや良い やや大きい やや短い やや良い やや低い
半導体励起固体レーザー やや大きい 高い 良い やや小さい 長い 良い やや低い
エキシマレーザー やや小さい やや低い 悪い 大きい やや短い やや悪い 高い
色素レーザー やや小さい やや低い やや悪い 大きい 短かい やや悪い 高い

4 レーザー診療技術

 医療分野におけるレーザーの応用には、光線力学的療法、エキシマレーザー角膜形成術、レーザー砕石術、低出力レーザー治療、レーザーを用いた歯科診断および治療、レーザー血管形成術、レーザーを用いた内視鏡手術などがある。

4.1 光線力学的療法

 光線力学的療法(Photodynamic Therapy、PDT)とは、光力学反応を用いて疾患の診断や治療を行う新療法の一つである。可視光線、近赤外線、紫外線などによって生じる光力学反応は、生体組織において励起状態の光感作物質が脱励起することで引き起こされる一連の物理、化学、生物学的変化の過程である。主に固形悪性腫瘍に対する治療に用いられている。

 光線力学的療法の基本的な過程は以下の通りである。生体組織における内源性または外源性の光感作物質に対し適切な波長の光を照射すると、光子エネルギーを吸収し基底状態から励起状態へと変化する。励起状態にある光感作物質は非常に不安定であり、脱励起の物理過程においてエネルギーを放出し、急速に基底状態に戻る。脱励起の物理過程において蛍光が生じる。蛍光スペクトルを分析することにより疾患の診断を行うことができる。脱励起の化学過程において一重項酸素を中心とする大量の活性酸素が生成される。活性酸素は幾つかの生体高分子と相互作用することによって、損傷した細胞構造の機能に良い影響を与えるため治療効果が得られる。

 PDTを用いた悪性腫瘍の治療は、数十ヵ国において大々的に進められている。各種腫瘍患者に対する治療事例は数万例に及び、臨床効果は一貫して肯定的なものである。腫瘍疾患の他に焔状母斑、網膜黄斑、動脈硬化、乾癬、関節リウマチ、尋常性白斑などの治療においても、PDTが良い成果を上げている。

4.2眼科におけるレーザー技術の応用

 眼球の組織構造は光に対して特殊な性質を有しているため、眼科疾患に対するレーザー治療は非常に有効である。これまでに角膜切除屈折手術、虹彩切除術、強膜切除術、眼底組織凝固術などにおいてレーザーが採用されている。目下臨床において用いられているエキシマレーザー角膜屈折矯正手術には、エキシマレーザー角膜切除術(photorefractive keratectomy、PRK)、エキシマレーザー角膜内切削形成術(laser in situ keratomileusis、LASIK)、エキシマレーザー上皮細胞屈折矯正術(laser epithelial keratomileusis、LASEK)の3種類がある。度数の低い患者に対しては、PRKが依然として適切な手術法の一つである。また角膜が薄く近視度数の高い患者に対してはLASEKを選択することもできる。しかしLASIKの採用率が著しく高く、徐々に主流となってきている。

 LASIKの光源には、一般的に波長193nmのエキシマレーザーが採用される。エキシマレーザーは、一種の超紫外線波長であり、レーザーが組織上に照射されるごとに、組織の分子を蒸散させる。正確性が非常に高いだけでなく、コールドレーザーであるため照射部位の周囲組織に熱反応が生じない。角膜構造に悪影響を及ぼすことなく、正確な蒸散によって角膜1層のみを精確に切除できる。手術ではマイクロタイプの角膜切除メスを用い、角膜前の基質層に直径8.5mm(8.0~9.0mm、角膜の厚みの1/4~1/3)のレーシックフラップを切り込む。次いでエキシマレーザーを用いて、フラップ下の角膜基層を削る。最後にフラップを元の状態に戻す。同手法は角膜上皮や前境界板を温存するため、角膜の生理解剖に最も合致する。無痛、安定した屈折状態、急速な視力回復といった利点があり、目下世界で最も進んだ屈折矯正技術である。

4.3 レーザー砕石術

 ホルミウムレーザーは、波長2.1μmのパルスレーザーであり、外科手術に用いられているレーザーの中で最も新しいものの一つである。レーザーの生み出すエネルギーは、光ファイバー先端と結石の間にある水を蒸散させ、微小な気泡を形成する。またエネルギーを結石に伝達することによって結石を砕き粉末状にする。水が大きなエネルギーを吸収するため、周囲組織に対する損傷が軽減される。加えてホルミウムレーザーは、人体組織に対する侵入深さがわずか0.4mmと浅い。このため砕石時における周囲組織の損傷を最小限に抑えることができ、安全性は非常に高い。膀胱鏡、尿管鏡、経皮腎臓鏡を通してホルミウムレーザーで直接砕石することにより、組織の損傷を回避することができる。

 研究によると、内視鏡下ホルミウムレーザー砕石における1回当たりの成功率は95%以上、膀胱結石の治癒率は100%である。この種の手術は、穿孔の必要や出血のリスクがないほか、尿管腫瘍、尿管ポリープ、狭窄といった疾患を同時に治療できる。ホルミウムレーザー碎石による顆粒は細かい粉末状であるため、砕石後の排出時間も大幅に短縮することができる。

4.4 低出力レーザー治療

 医学的に言えばレーザーの強弱によって異なる生物学的効果のメカニズムがある。このため臨床応用における目的や手法もさまざまである。医療分野ではレーザー自体の物理パラメータ(出力やエネルギー)に基づきレーザーの強弱を評価するわけではない。その強弱は、レーザーが生体組織に作用した結果として生じる生物学的効果の強弱に基づき区分される。レーザーを生体組織に照射した直接の結果として、生体組織に修復不能な損傷が生じた場合、照射表面におけるレーザーを高出力レーザーと呼ぶ。修復不能な損傷が生じない場合は、低出力レーザーと称される。

 1967年にハンガリーのMesterらが低出力レーザーの生物に対する刺激作用について発表した後、動物実験や臨床実験に基づく低出力レーザーのメカニズムや治療効果に関する高度な探究や医学研究が世界中で行われるようになり、低出力レーザー治療(Low Level Laser Therapy)が開発された。低出力レーザー治療とは、低出力レーザーに皮膚を透過させ、細胞に作用を及ぼす療法である。レーザーの光子が細胞のミトコンドリアに作用し細胞のエネルギーとなる。ミトコンドリアは細胞における「発電所」であり、前述した作用の過程でアデノシン三リン酸(ATP)を生成する。ATPは細胞の健康を促進し活性を強化する。また細胞の活性化に伴い、血管における血液循環が改善し、細胞の新陳代謝も促進する。こうして細胞の有糸分裂が加速し繁殖速度が上昇するため、治癒速度も大幅に向上する。これまでに低出力レーザー治療は、精神疾患、関節リウマチ、皮膚疾患、五官疾患、さまざまな急性または慢性疼痛、炎症、血管疾患、狭心症、気管支喘息といった疾患の治療に採用されている。

4.5 レーザーを用いた歯科診断および治療

 齲蝕学、歯内療法学、歯周病学、口腔外科学、診断学にもレーザーが応用されている。特に最近十年間は、歯科分野におけるレーザーの応用に関する研究が盛んに行われている。

 視診、触診、放射線検査は、昨今の臨床における一般的な齲蝕検査の方法であるが、これら従来の検査方法は確実性や適時性の面で問題も認められている。レーザー虫歯検知機器(Diagnodent)は、数年前に開発された虫歯診断技術である。その原理は次の通りである。齲蝕組織は半導体レーザー(655nm)に励起されると、波長680nmの蛍光を発する。蛍光の強さが齲蝕の程度を示しており、蛍光強度を測定することにより齲蝕の深さを診断できる。レーザーをゾンデとして使用し、歯の構造に一切の損傷を与えることなく、深い位置にある齲蝕組織を容易に観察できる。Diagnodentに付属するフィッシャーカリエス・ピットカリエス検査用の円錐形プローブを用いて、表面の小窩裂溝を一つ一つ検査し、それぞれの齲蝕の程度を判断することができる。さまざまな位置における齲蝕の程度を精確に検査することができるのは、目下Diagnodentのみである。

4.6 レーザーを用いた内視鏡手術

 内視鏡(Endoscope)は一種の光学機器であり、体外へ開口している穴から内視鏡を差し入れて体内の疾患を観察する。内視鏡は精密なカテーテルやマイクロカメラを組み合わせた光ファイバーなどで構成されており、画像を伝送しモニターに表示することができる。また冷光源や光電変換システムが装備されている。臓器の内側を直接観察し、患部の位置や範囲を確認できる。また撮影や生検を行うことも可能で、患部の診断における精度が著しく向上した。さらに内視鏡を用いた治療も可能である。光ファイバーによって冷光源を伝送する光ファイバー内視鏡は、小口径で自在に湾曲するため検査時の苦痛が少ない。患部を大きく拡大しても鮮明に画像システムに伝送することができる。内視鏡によって得た精確な画像に基づき、執刀医は鮮明な視界を確保することができるため、精密な治療が可能である。正常な組織を損傷することなく、病巣を精確かつ完全に切除することができる。

 光ファイバーの伝送するレーザービームを内視鏡によって体内に照射し、病変組織の治療を行う技術を、レーザー内視鏡治療技術と呼ぶ。レーザーは一種のコヒーレント光であり、非常に短時間のうちに密度の高いエネルギーを放出する。病変組織に照射すると、速やかに大きな熱効果が生じ、組織が凝固または蒸散するため、治療効果が得られる。レーザー内視鏡技術は、消化管における出血を止めるといった消化管疾患の治療のほか、さまざまな鼻腔疾患、ポリープや椎間板の摘出、結石などの治療に採用されており、臨床における治療効果も良好である。

4.7 皮膚科におけるレーザー技術の応用

 皮膚科におけるレーザーの応用には、紅斑のレーザー治療、レーザーによるしわ、母斑、刺青の除去、損傷した皮膚の修復などが含まれる。米国フロリダ州ジャクソンビルの形成外科医らは、臨床において水素励起色素レーザーを用い母斑、刺青、薄い褐色のしみの除去を行い、良好な効果を上げている。ドイツ・ミュンヘンの科学者らが実施した数多くの試験に関する報道によると、308nmのXeClエキシマレーザーを用いた乾癬(Psoriasis)や尋常性白斑(Vitiligo)の治療は、従来の治療法より効果が良好で、なおかつ正常な皮膚の老化を抑制する。米国マサチューセッツ総合病院・Wellman光医学実験センターの科学者は、MFEL(the Medical free-electron laser)プロジェクトにおいて皮膚病患者30万人の母斑、刺青、メラニンを除去し、正常な皮膚の色を回復することに成功した。米国やオーストラリアで進行中の臨床試験によると、高出力のウルトラパルス炭酸ガスレーザーを用いることにより、顔のしわ、あざ、その他の皮膚欠陥を除去できる。900人が参加した試験において、90%の人が顔のしわを75%除去することに成功した。世界中で数多くの科学者が、皮膚に照射したレーザーの作用に関する基礎理論や臨床応用の研究に従事している。例えばレーザーを皮膚に照射した際における細胞破壊の程度やレーザー治療における熱量に関する問題についての研究が行われ、数多くの有効な参考データを取得している。

 医学分野におけるレーザー技術の応用は、前述した内容だけにとどまらない。他にも整形外科、血液内科、外科手術、神経内科、耳鼻咽喉科、前立腺、腎臓結石などにおいても新たな研究成果や臨床応用に関する発表が相次いでいる。

5 レーザー医療機器市場の展望に関する分析

 経済や社会の発展に伴い、中国は日米に次ぐ世界第三の医療機器市場となっている。今後3~6年のうちに世界第二位の市場となることだろう。目下中国には17万5000の医療・衛生機関が存在する。国家政策に基づく指導や医療・衛生機関における設備更新需要が、中国を医療機器の巨大な消費市場にしており、中国の医療機器業界にとっては大きなチャンスとなっている。レーザー技術の急速な発展、レーザー機器コストの低下、生物医工学の研究の進展と円熟といった要素により、近年中国においてレーザー医療技術が急速に普及している。調査によると、中国におけるすべての大型総合病院(中国の病院格付けで「三甲」に相当する病院)や8割の中小病院に、独立したレーザー医療科がある。中国の医療機関におけるレーザー医療機器の需要は大幅に増加している。

図1

図1 2005-2008年における中国のレーザー医療機器市場の規模と成長率

 中国におけるレーザー医療の始まりは遅く、その発展も2000年までは緩やかなものであった。報道によると、1999年における中国のレーザー医療機器市場の規模は、わずか数千万元であった。近年になり中国におけるレーザー医療機器市場が急速に拡大したのは、世界各地におけるレーザー機器や各種医療用レーザー設備の急速な進歩、医療用レーザーの研究に従事する科学者の増加、政府による医療インフラへの投資拡大といった要素による。調査会社の馳昂諮詢(Sinotes)が実施した市場調査によると、2008年通年における中国のレーザー医療機器市場の規模は、前年同期比22.4%増となる19億7000万元を突破した。2010年には30億元を超える見込みである。

 レーザー医療機器の分野では、欧米、イスラエル、日本が世界をリードしている。国内市場において中国メーカーは海外メーカーとの激しい競争に直面しているが、総合的に見て劣勢である。中国の三級病院(中国の病院格付けで最高水準、各級はさらに甲乙丙に区分される。)では、一般的に輸入医療機器が採用される。二級病院でも医療機器の2/3が輸入製品である。中国の医療機関は、毎年巨額の外貨資金を投じて数多くの医療設備を購入している。このような状況は改めなければならない。レーザー技術の研究水準だけで見ると、中国は外国と比べても遜色がなく、一部の分野では外国を上回っている。しかしレーザー医療機器に対する新技術の採用率が海外に比べ劣っている。レーザー技術に関する研究成果の応用率を向上させることが急務である。

 中国製レーザー医療機器における重要技術や重要部品は、輸入に依存する傾向が強い。専門的な研究・生産拠点の構築、独創的革新力の向上、技術集積力の強化などによって、中国製レーザー医療機器の発展を促進し、先進国との差を縮めることができる。

6 結論

 21世紀におけるレーザー医学は、技術や臨床応用の面で発展の速度を速めるだろう。レーザーの生物学的効果のメカニズムに関する研究を基礎として、レーザーの各種パラメータに基づき、生体に及ぼす作用が最適となるパラメータを模索することにより、新たな診断や治療の方法を開発することができる。レーザー機器の継続的な改良と進歩により、いっそう先進的で高性能なレーザー機器や光ファイバーが開発されるだろう。さまざまな波長や出力のレーザーを体内や血管内に挿入し、手術や照射治療を行うようになる。また高出力で超短パルスの自由電子レーザーが消化管や尿管の切開、結石の粉砕、その他の手術に広く採用されるようになる。さらにレーザーによる光線力学的療法の悪性腫瘍治療に対する応用が進むだろう。

 レーザー医学に関する基礎研究は、臨床応用に比べて非常に遅れている。レーザーの持つ特性の多くが医学分野に用いられないままになっている。医学分野における数多くの問題を新たなレーザー技術によって解決することができるだろう。今後レーザー技術がいっそう速やかに発展することを期待する。


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