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機能性コラーゲンバイオ材料及び組織再生

2010年12月 6日

戴建武

戴 建武(Dai Jianwu):中国科学院遺伝・発育生物学研究所
分子発育生物学センター副主任

武漢大学生物学部細胞生物学士、北京大学生物物理学修士、米国デューク大学細胞生物学博士、ハーバード大学医学部ポストドクター。現在、中国科学院遺伝・発育生物学研究所の研究員、博士課程指導教官、分子生物学センター副主任。中国科学院蘇州ナノメートル・生物工学研究所の客員研究員、ナノメートル生物医学部主任。
中国科学院百人計画」の入選者、国家傑出青年基金の獲得者、国家重大科学研究計画(973管理)「幹細胞自己更新能力コントロールの分子ネット研究」プロジェクトの首席科学者(2006-2010)、「幹細胞自己更新能力3次元培養の分子ネット研究」プロジェクトの首席科学者(2011-2015)。研究分野は再生医学。研究方向には幹細胞とバイオ材料を含む。

共著:韓 倩倩

要旨

 機能性バイオ材料とは有機体の物理・化学または生理の過程に対して能動的に影響を与えることができる活性バイオ材料を指し、材料及び材料が有する活性の機能成分から構成されている。コラーゲン材料は広範囲に応用されているバイオ材料であり、また成長因子は、細胞の成長、移動及び分化を促進する作用を有していることからコラーゲン材料の活性化にしばしば用いられる。私たちは遺伝子工学技術によって成長因子上にコラーゲンと特異的に結合可能なコラーゲン結合ドメイン(Collagen binding domain,CBD)を融合して、コラーゲン材料と特異的に結合可能な成長因子を作製し、成長因子の方向性をコラーゲン材料に向けた機能性コラーゲンバイオ材料を形成した。損傷した組織にはそれぞれの特徴があるため、私たちは損傷した組織の特徴に応じて異なる形態と出所のコラーゲン材料を選び、同時に異なるコラーゲン結合ドメインを持つ成長因子を作製した。それらについてそれぞれマウスの皮膚、骨、筋肉、末梢神経、中枢神経の損傷モデルの中で、この種の機能性コラーゲン材料が組織再生を促進する作用について試験した結果、コラーゲン材料とコラーゲン結合ドメインを持つ成長因子で構成された機能性コラーゲン材料は損傷組織の再生を明らかに促進し、再生組織の機能回復に役立つことが示された。

1. 機能性バイオ材料の概要

1.1 バイオ材料

 バイオ材料は通常、医療を目的とし、単独または薬物とともに組織または器官の治療あるいは損傷組織の修復材料として用いられる。バイオ材料の使用目的は、組織細胞の成長に3次元的サポートを提供し、損傷部位において充填、代替を行うと同時に、細胞の接着、増殖、分化を促進するため、通常のバイオ医学材料の要求に適合するほか、理想的なバイオ材料はさらに以下の要求を満たさなければならない:(1)良好な生物的受容性(2)分解性及び適当な分解速度(3)適当な口径構造(4)適当な表面の物理・化学性質及び良好な細胞界面関係(5)移植部位の組織と力学的性能がマッチする構造的強さ(6)理想的な2次元または3次元構造に加工しやすく、必要な組織または器官の形状が得られる[2]。

1.2 コラーゲンバイオ材料

 コラーゲンは細胞外基質の主要成分であり、細胞の成長での頼り、サポートとなるものとして上皮細胞などの増殖と分化を誘導できる。コラーゲンは生命体に機械的サポート作用を提供し、器官と組織の完全性を維持し、その正常な機能の発揮を保障する[3]。コラーゲンは傷の修復において非常に重要な作用があり、傷の癒合に関わる主な構造タンパクであるため、私たちはコラーゲンを組織損傷のサポート材料として選んだ。

 コラーゲンは医学上の多くの分野で利用され、それには傷口の癒合、火傷の修復と整形、神経損傷の再生、及び血管弁膜の代替などが含まれる。表1にコラーゲンの医療上の用途をまとめた。

表1 コラーゲン材料の医療上の用途
分 野 用 途

皮膚科

心臓血管外科

神経外科

口腔科

眼科

整形外科

泌尿科

一般外科

その他

靭帯増殖で注射可能なコラーゲン、コラーゲン人工皮膚、傷口の手当材料

血管移植材料とコーティング、心臓弁膜、血管穿刺孔の密封材料

末梢神経の再生誘導、硬脳膜代替材料

歯周靭帯再生コラーゲン膜、吸収可能な口腔組織傷口手当材料

上皮癒合促進のコラーゲン角膜保護カバー、薬物運搬用コラーゲン、角膜

骨修復コラーゲン材料、コラーゲン半月板基質、アキレス腱と靭帯の修復材料

尿管代替物、腎臓修復材料

キセノン修復材料、接着剤

薬物運搬キャリヤー、細胞運搬キャリヤー

2. 機能性コラーゲンバイオ材料の研究

 機能性バイオ材料とは有機体の物理・化学または生理の過程に対して能動的に影響を与えることができるバイオ活性材料を指し、それは細胞の成長を誘導して材料を細胞化させることで、損傷部位に新しい組織を形成させることができる。このような状況の下で、バイオ材料は物理、機械的サポート作用を発揮するだけでなく、周囲の環境を変えることで再生の過程を変えることもできる。現在、活性化材料のバイオ活性分子には次のような数種類がある。(1)細胞接着促進分子:細胞が材料上で成長、分化するのを促進する。(2)成長因子:細胞の増殖、生存を促進し、細胞の表現型を制御する。(3)特異的発現活性を有する分子のDNA:長期安定の作用効果を発揮する。この3方面の研究は現在いずれも大きな進展があり、私たちは成長因子の独特の機能に特に注目している。

2.1 成長因子とコラーゲンとの複合構成バイオ材料

 成長因子は細胞間の信号を通じて細胞の活動に影響を与える一種のポリペプチド因子であり、多種の細胞から分泌され、標的細胞表面の特異性受容体と結合してその作用を発揮し、細胞の増殖、移動及び遺伝子の作用を促進または抑制し、生命体の発育と損傷修復の過程において重要な作用を発揮する[4]。

 現在、成長因子でコラーゲン材料を活性化し、コラーゲン材料と共同で損傷を修復した多くの例がある。しかしこれまでの研究によると、成長因子とバイオ材料の簡単な複合作用には限りがあり、それは体内の体液の浸潤と流れが成長因子の自由な拡散をもたらすために、局部に集めるという目的を達することができないからである。図1に示した。この拡散では幾つかの問題があり、一つには拡散した成長因子が有機体に潜在的リスクをもたらし、二つ目には拡散によって細胞の活動が主に材料の外部で発生するために修復効果が限られことから、修復効果を高めるためには薬剤を繰り返し使用しなければならず、これは疑いなくコストと患者の苦痛を高めることとなる[5]。

図1

図1 成長因子と材料の簡単な吸着のバイオ材料

2.2コラーゲン結合ドメインを持つ成長因子とコラーゲン材料の複合構成を利用した機能性コラーゲンバイオ材料

 特定の方式によって成長因子をコラーゲンサポート材料の上に固定し、成長因子の自由な拡散を制限したならば、成長因子に材料の元の位置で作用を発揮させ、細胞が材料内で増殖、移動、分化するのを促進することができる。図2に示した。これによって私たちが推測できることは、一つは体内に移植後、成長因子の自由な拡散を制限することができ、成長因子の自由な拡散が有機体にもたらす潜在的リスクを下げることができること、もう一つは成長因子の使用量を大幅に下げることができ、治療コストを低下させ、成長因子の高効率の利用という目的を達することができることである。さらに最も重要なことは、修復治療効率を高め、再生を比較的平均して行うことができ、それによって修復後の組織の質を高めることができることである[5]。

図2

図2 成長因子と材料の方向性を定めた結合での機能性バイオ材料

 成長因子とコラーゲン材料との結合能力を高めるため、私たちは遺伝子工学の手法を採用し、成長因子上にコラーゲンと特異的に結合可能なポリペプチドTKKTLRT(コラーゲン結合ドメインCBD)を作製し、それによって成長因子に、コラーゲンとより強い特異結合ができる能力を持たせた。そのうちコラーゲン酵素中のコラーゲン結合ドメイン(CBD)の7つのペプタイドの並び方はTKKTLRTであり、それがコラーゲンとの特異な結合能力を持っている。

 異なる損傷に応じて、私たちは異なるコラーゲン材料を用意した。この種の組織損傷の修復に適する成長因子に改造を行い、それによってコラーゲン結合能力を持たせた。コラーゲンと特異な結合能力を持つ成長因子と異なるコラーゲン材料が、異なる組織損傷の修復に適する機能性コラーゲンバイオ材料を構成する。私たちは皮膚、骨、筋肉(膀胱筋肉、腹壁筋肉)、末梢神経及び中枢神経の損傷修復において機能性コラーゲンバイオ材料の作用を検証した。

3. 異なる組織の修復における機能性コラーゲンバイオ材料の作用

3.1皮膚組織損傷の修復における機能性コラーゲンバイオ材料の作用

 皮膚の損傷修復においては、コラーゲン膜(Collagen membrane,CM)が適する材料である。コラーゲン膜は傷を覆う材料として、傷をふさぎ、保湿し、止血し、吸収する等の特徴を持っている(図3)。

 PDGF-BB(血小板由来の成長因子-BB)を選んで皮膚損傷治療の活性化因子とする。PDGFは多くの細胞の活動に関与し、それには細胞の増殖、成長、移動及び生存・死亡等を含み、各種の骨髄間質細胞及び神経上皮由来の細胞にとっては潜在的な分裂促進物質である。大量の動物実験によれば、外部から加えられたPDGFは癒合過程を促進することができることが証明されている。外部由来のPDGF-BBは組織の新生、傷口の癒合を促進し、修復の質を高めることができる[6,7]。

 私たちはPDGF-BBに改造を行い、コラーゲン結合ドメイン(CBD)をPDGF-BBの中に入れ、CBDを持つPDGF-BB(CBD-PDGFと名付ける)を作製し、同時に自然のままのPDGF-BBも作製してNAT-PDGFと名付けた。体外細胞実験の結果によると、NAT-PDGFとCBD-PDGFは生物学的活性が似ており、これはCBDを加えることがCBD-PDGFの生物学的活性に影響を与えないことを示している[7]。体外コラーゲン結合実験の結果では、CBD-PDGFがコラーゲンに特異結合する能力を持ち、そのコラーゲン結合能力はNAT-BDNF[7]よりも明らかに優れていることを示している。

 その後、動物モデルを使用してコラーゲン膜結合のCBD-PDGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料を検証した。私たちが採用した皮膚損傷モデルはウサギの耳潰瘍モデルである。それを3グループに分け、PBSに浸したコラーゲン膜グループ(CM/PBS)、コラーゲン膜吸着NAT-PDGFグループ(CM/NAT-PDGF)、コラーゲン膜結合CBD-PDGFグループ(CM/CBD-PDGF)とした。私たちは異なる時間に各グループの傷口癒合率を測定し、その結果はコラーゲン膜結合CBD-PDGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料グループの癒合速度がコラーゲン膜吸着NAT-PDGFのグループと対照グループよりも明らかに速かった。手術後14日で、コラーゲン膜結合CBD-PDGFで構成された機能性バイオ材料グループの潰瘍はすでにほぼ癒合した。免疫組織化学検査では血管の新生とコラーゲンの堆積を観察した。血管の新生は傷口での血液供給を変更し、養分を運搬する。コラーゲン堆積は皮膚癒合及び再生に欠かせない過程であり、コラーゲン堆積の良否はしばしば皮膚癒合治療の優劣として反映される。この2つの指標でも、コラーゲン膜結合CBD-PDGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料グループはコラーゲン膜吸着NAT-PDGFグループと対照グループよりも明らかに高く、損傷の修復を促進し、修復の質を高める上で大きな促進作用があることを示している[7]。

図3

図3 コラーゲン膜(CM)の構造:(A)コラーゲン膜(CM)実物、(B)コラーゲン膜(CM)電子顕微鏡写真

3.2 骨組織の損傷修復における機能性コラーゲンバイオ材料の作用

 脱灰骨基質(Demineral bone matrix,DBM)を選び、骨コラーゲンを骨損傷の修復を促進するサポート材料とする(図4)。DBMは骨の梁構造と有機成分(骨の主要成分)をそのまま保ち、DBMのコラーゲン構造表面にはミネラル堆積箇所があり、ミネラルの堆積に対して誘導作用を持ち、ミネラル化過程を効果的に誘導、制御し、骨の形成を促進することができるため、良好な骨充填材料となる[5,8]。

 研究ではもう一方でDBM活性化の因子を選び、私たちは骨形態発生タンパク-2(BMP-2)を骨形成誘導の活性分子とした。同様に、遺伝子工学の手法を用いてBMP-2の一端でCBDとつなげ、コラーゲンと特異結合する能力のあるCBD-BMP-2を作製した。また自然のままのBMP-2(NAT-BMP-2)も作製した。体外細胞実験では、NAT-BMP-2とCBD-BMP-2の生物学的活性には明らかな違いがないことを検証し、体外コラーゲン結合実験の結果ではCBD-BMP-2が良好なコラーゲン結合能力を持つことが示された[5]。

図4

図4 DBMの構造:(A) DBMの実物、(B) DBMの電子顕微鏡写真。

 このような機能性コラーゲンバイオ材料による骨欠損に対する修復作用を研究するため、私たちはウサギの下顎骨の欠損モデルを採用し、即ちウサギの下顎骨の部位で自身では修復不可能な12mm×5mm×4mmの欠損を作った。その後、それぞれ異なる材料で欠損部位を充填した3グループと充填しない対照グループの合計4グループに分けた。即ち材料を充填しない空白グループ、PBS浸し充填のDBMである対照グループ(DBM/PBS)、DBM吸着NAT-BMP-2グループ(DBM/NAT-BMP-2)、DBM結合CBD-BMP-2グループ(DBM/CBD-BMP-2)。各グループの癒合状況についてX線検査を行い、側面のX線画像によって傷口の癒合状況を分析した。その結果、DBM結合CBD-BMP-2で構成された機能性コラーゲンバイオ材料(DBM/CBD-BMP-2)では骨修復の能力が明らかに加速し、外周の骨が比較的成熟しているほか、材料内部での骨形成作用も非常に顕著であった[5]。

3.3 筋肉組織の損傷修復における機能性コラーゲンバイオ材料の作用

3.3.1 膀胱筋肉の損傷修復

 私たちはコラーゲン膜(CM)を、膀胱筋肉の損傷修復を促進するサポート材料とした。また人のアルカリ性線維芽細胞の成長因子bFGFを、材料活性化の因子として選んだ。bFGFは膀胱損傷後の組織再生の促進において重要な因子である。bFGFに改造を行い、コラーゲン結合ドメイン(CBD)をbFGFタンパクの中に入れ、コラーゲンと特異的に結合可能なCBD-bFGFを作製し、同時に自然のままのbFGF(NAT-bFGF)も作製した。マウスの膀胱筋肉の損傷モデルによってコラーゲン膜結合CBD-bFGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料の作用を検証した。次の4グループに分けた:偽手術グループ(sham-operated group)、PBSに浸したコラーゲン膜グループ(CM/PBS)、コラーゲン膜吸着NAT-bFGFグループ(CM/NAT-bFGF)、コラーゲン膜結合CBD-bFGFグループ(CM/CBD-bFGF)[9]。

 修復中の30日目と90日目にH&E染色で各グループの損傷修復状況を直接観察した。その結果、コラーゲン膜結合CBD-bFGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料グループの材料が移植された部位では、細胞化がその他の治療グループよりも明らかに高く、また90日目では、その損傷部位の再生組織の形態は正常な組織と似ていた。損傷部位の平滑筋細胞の免疫組織化学染色でも、機能性コラーゲンバイオ材料グループの材料を移植した部位の平滑筋細胞の陽性率がその他の治療グループよりも明らかに高く、損傷部位の筋肉損傷の修復を促進できることを示している。引き続き、私たちは尿動力学の検査を行い、各グループの膀胱機能の回復状況を観察した。その結果、機能性コラーゲンバイオ材料グループの膀胱順応性、即ち膀胱の筋肉の弾力性がその他のグループよりも明らかに高く、コラーゲン膜結合CBD-bFGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料が損傷した膀胱筋肉の再生及び膀胱機能の回復を明らかに促進したことを示している[9]。

3.3.2 腹壁筋肉の損傷修復

 私たちはマウス腹壁筋肉の欠損モデルを用い、膀胱筋肉の損傷修復に効果のあるコラーゲン膜結合CBD-bFGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料を検証した。腹壁筋肉の欠損部位を材料で覆い、次の4グループに分けた:PBSに浸したコラーゲン膜グループ(CM/PBS)、コラーゲン膜結合吸着NAT-BDNFグループ(CM/NAT-BDNF)、コラーゲン膜結合CBD-BDNFグループ(CM/CBD-BDNF)、偽手術グループ(sham)。回復90日目に、腹壁の損傷部位でH&E染色と平滑筋細胞の免疫組織化学染色を行った結果、collagen/CBD-bFGFグループの損傷部位の平滑筋細胞の陽性率はその他の治療グループよりも明らかに高かった。これはこの種のコラーゲン膜結合CBD-bFGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料が、腹壁筋肉の欠損部位の筋肉再生を促進したことを示している[10]。再生した腹壁筋肉組織の機械性を観察すれば再生した腹壁筋肉組織の機能回復が評価できるが、私たちは再生した腹壁筋肉の機械的引っ張りへの抵抗力機能を測定した。その結果、collagen/CBD-bFGFグループの最大弾力性機能はその他の治療グループよりも明らかに勝り、コラーゲン膜結合CBD-bFGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料が再生筋肉の機能回復を促進したことを示している[10]。

3.4 末梢神経の損傷修復における機能性コラーゲンバイオ材料の作用

 末梢神経の損傷修復について、私たちはコラーゲン膜(CM)をサポート材料に選んだ。同時に神経成長因子(NGF)をコラーゲン膜活性化物質とし、末梢神経の再生を促進する因子として選んだ。NGFの生物学的効果は広範で、主に神経細胞の樹状突起の発生、伸展及び生存維持を促進する作用を通じ、神経繊維の支配標的部分での密度を増し、そのうえ神経細胞の分化を促進し、有糸分裂を加速して神経細胞数を増加させ、軸索の成長方向を決定する[11]。

 NGFを改造してコラーゲン結合ドメイン(CBD)を持たせ、コラーゲンと特異的に結合可能なNGF(CBD-NGF)を作製し、同時に自然のままのNGF(NAT-NGF)を作製した。体外細胞の活性実験によれば、CBD-NGFとNAT-NGFはともに神経栄養活性を持ち、pc12細胞の軸索の成長を促進する。コラーゲン結合実験によれば、CBD-NGFにも特異のコラーゲン結合能力があることを示している。私たちはマウスの皮下埋め込み実験を採用し、コラーゲン膜結合CBD-BDNFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料が、末梢神経の再生を促進する効果を観察した。次の3グループに分けた:PBS浸しコラーゲン膜の対照グループ、コラーゲン膜吸着NAT-NGFグループ、コラーゲン膜結合CBD-NGFグループ。この3グループでは神経繊維数に明らかな差が見られる。そのうちコラーゲン膜結合CBD-NGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料グループの神経繊維数が、他の2グループよりも明らかに多い。私たちは、コラーゲン膜結合CBD-NGFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料は末梢神経の再生を効果的に促進できると結論することができる[11]。

3.5 中枢神経の損傷修復における機能性コラーゲンバイオ材料の作用

 脊髄損傷(spinal cord injury,SCI)は身体障害が残る率の高い中枢神経損傷である。そのうち比較的深刻なのは脊髄断裂損傷で、その損傷部位の神経繊維が切断され、脊髄組織の欠損にも至る。断裂後の神経再生で直面する障害は(1)損傷部位では軸索の成長を促進する因子が欠乏する(2)軸索の成長で方向性を欠き、正確な突起の接触と接続が難しくなり、神経機能が回復しにくい、である。これらの問題に対し、私たちは総合的治療策を考え、再生障害を克服する必要がある。つまり(1)良好な神経成長誘導材料を選ぶ(2)材料に修飾を行って活性成分を持たせ、軸索の成長を促進する。

 良好な軸索の成長誘導材料は損傷した軸索の成長方向を誘導でき、それによって正確な突起の接触と接続が形成され、神経の機能回復を促進する。私たちは秩序あるコラーゲンバイオ材料LOCS(図5)を採用した[12]。

図5 

図5 秩序あるコラーゲン材料LOCSの全体写真(a)-(c)と電子顕微鏡写真(d)

 次に、脳由来神経栄養因子(BDNF)を、LOCSを活性化して神経の再生を促進する因子として選んだ。BDNFは神経組織の生存と分化を促進することができ、中枢神経の損傷治療にしばしば用いられ、それにはパーキンソン病、鬱病及び脊髄損傷が含まれる[13]。私たちはBDNFに改造を行い、コラーゲン結合ドメイン(CBD)をBDNFタンパクに入れ、コラーゲン材料と特異的に結合可能なBDNF(CBD-BDNF)を作製し、同時に自然のままのBDNF(NAT-BDNF)も作製した[12]。

 私たちはマウスの脊髄の半側切断脊髄損傷モデルを用い、LOCS結合CBD-BDNFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料の作用を検証した。マウスの脊髄に長さ6mmの半側切断脊髄損傷を与え、材料を縦方向から脊髄欠損部位に移植し、次の4グループに分けた:(1)材料を移植しない対照グループ(2)LOCSグループ(3)LOCS吸着NAT-BDNFグループ(4)LOCS結合CBD-BDNFグループ。

 BBB行為学評価の結果では、LOCS結合CBD-BDNFグループの運動能力の回復は、その他のグループよりも明らかに勝っていた。免疫組織化学検査で材料移植部位の神経再生状況を観察すると、神経繊維NF染色結果では、LOCS結合CBD-BDNFグループの神経繊維の陽性率がその他のグループよりも明らかに高く、そのうえ軸索の再生方向はその他のグループよりも秩序性が高かった。これはLOCS結合CBD-BDNFで構成された機能性コラーゲンバイオ材料が神経の再生を促進するだけでなく、軸索をLOCSの方向に沿って秩序よく誘導でき、脊髄損傷のマウスの運動能力の回復を明らかに促進することを示している。

4. 結論

 機能性バイオ材料の研究の趨勢は表面での修飾にある。異なる組織の損傷に対し、私たちは異なるコラーゲン材料を再生促進のサポート材料として選んだ。即ち、コラーゲン膜(CM)を皮膚、筋肉、末梢神経の損傷修復に適用した。脱灰骨基質(DBM)を骨組織の修復に適用した。秩序あるコラーゲン材料(LOCS)を脊髄中枢神経の損傷修復に適用した。同時に、コラーゲン結合ドメインを持つ成長因子を用いてコラーゲン材料の活性化を行い、コラーゲンバイオ材料を構成し、異なる組織の損傷の再生を促進した。即ちCBD-PDGFをコラーゲン膜の活性化に用い、皮膚の損傷の再生を促進した。CBD-BMP-2を脱灰骨基質(DBM)の活性化に用い、骨の損傷の修復を促進した。CBD-bFGFをコラーゲン膜の活性化用い、筋肉の損傷の修復を促進した。CBD-NGFをコラーゲン膜の活性化に用い、末梢神経の損傷の修復に使用した。CBD-BDNFを秩序あるコラーゲン材料(LOCS)の活性化に用い、脊髄の中枢神経の損傷修復に使用した。私たちは異なる組織が損傷したマウスモデルを用い、それらの機能性バイオ材料が関係の組織損傷の修復を促進する作用を検証した。その結果、成長因子がバイオ材料上で拡散するのを制限することによって、バイオ材料による組織再生を誘導する能力を効果的に高めることが示された。

参考文献:

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