トップ >第55号:中国の初・中等教育の現状と動向> 中国青少年科学技術コンテスト活動が科学教育に及ぼす影響

中国青少年科学技術コンテスト活動が科学教育に及ぼす影響

2011年 4月25日

李 暁亮

李 暁亮(Li Xiaoliang):
中国科学技術協会青少年科学技術センター主任

1955年6月生まれ。吉林大学経済学院世界経済専攻。経済学修士。中華全国青年連合会、中国科学技術館、中国科学技術協会統括室などを経て、2010年中国科学技術協会青少年科学技術センター主任、現在至る。

主な著書・論文

  • 《中国科学技術館に入る》
  • 《科学技術館短期特別展の問題について》
  • 《科学技術館建設および構築の問題について》
  • 《科学技術館の研究文選》など多数

概要

 中国青少年科学技術コンテスト活動は、30数年間絶えず成長して充実したものとなった。すでに、青少年科学技術イノベーション大会、「小さな明日の科学者」奨励活動、青少年ロボットコンテストを三大科学技術コンテストとする体系の基礎が形成されたのである。これらの科学技術コンテスト活動が発展することにより、明らかに中国の青少年の科学的資質が向上し、青少年の科学への興味関心が高まり、青少年は良好な科学的態度と価値観を持つようになった。 教育現場の第一線で科学教育活動に従事している教師の教育理念を一新し、教育方法と教育手段を改良したことも、科学技術コンテストの肯定的な効果である。さらに、青少年科学技術コンテスト活動は社会的影響力を絶えず拡大することによって、社会と多くの科学者たちの科学教育への関心を引き起こし、学校の科学教育カリキュラム改革の歩みを促す作用を生み出した。


 近年、中国の経済社会が急速に発展し、科学技術が絶えず進歩するにつれて、中国政府および中国社会は市民科学事業を強く重視するようになってきた。その中でも特に重視しているのが青少年科学教育事業である。2006年、中国政府は「全人民科学的資質行動計画綱要(2006-2010-2020年)」を公布、実施した。これは、青少年、農民、都市労働者、指導者幹部、公務員など一部の重要な人民の科学的資質によって全人民の科学的資質を牽引し、これによって全体的に向上させるという目標を提示したものであった。すなわち、「全人民科学的資質行動計画綱要(2006-2010-2020年)」は、青少年の科学への興味関心を育て、創意工夫の意識や実践能力を高め、科学的資質を伸ばすために基礎教育段階における科学教育水準を高め、青少年への科学普及活動を展開する行動対策を打ち出したのである。

 科学教育とは自然科学科目の教育を主な内容とし、基本的な科学知識を授けることを手段とする教育である。また、科学的思考の方法と科学的探究方法を身につけ、科学的精神と科学的態度を養い、完全な科学知識体系と価値観を確立させる教育である。そして、科学研究の基礎的能力を訓練して、科学技術を応用させる教育である。このような科学教育の基礎教育領域での目標は、青少年が科学の本質をつかみ、科学技術と社会との関係を理解し、科学的精神を形成して、科学的な資質を全面的に養い高めるように援助することである。青少年科学技術コンテスト活動は在校中の小学生を主な対象とし、学校の科学教育カリキュラム外で展開される、科学技術コンテストを主な形式とする科学教育活動である。この活動は、その豊富で多彩な形式と斬新な内容で、青少年の創造的な意識と実践能力を養うにあたって代替不可能な役割を果たしている。青少年科学技術コンテスト活動は、青少年科学教育の重要な構成要素であり、資質教育を実施する重要な手段となっているのである。青少年科学技術コンテスト活動の規模が絶えず拡大するにつれて、参加人数は日に日に増え、その社会的影響力も徐々に強まってきている。そして、青少年科学技術コンテスト活動と科学教育の関係は、政府、社会、そして学校の注目を日増しに集めるようになってきている。

一、改革開放以後の中国青少年科学技術コンテスト活動の発展

 1978年は中国現代史において極めて重要な年である。中国政府は社会の生産力を解放・発展させ、四つの現代化を実現させるために改革開放政策を実施し始めたのである。十年にわたる「文革」の結果、中国社会の生産力の成長は緩慢なものとなり、科学技術教育は落伍し、科学技術者は後継者不足に苦しむことになってしまった。そこで、1978年に北京で開かれた全国科学大会において、中国の著名な科学者と科学普及活動従事者たちは、科学技術後継者不足問題を解決するため、各種の青少年科学普及活動を行うことによって、科学技術後継者の養成を加速させることを計画した。その結果、1979年10月3日、中国科学技術協会、教育部、国家運動委員会、そして共産党青年団中央連合によって、第一回全国青少年科学技術作品展覧会(以下「青科展」とする)が開催された。次に、この「青科展」モデルによってもたらされた有益な経験と関連づけて、全国青少年科学技術活動のリーダーグループは「全国青少年発明創造コンテストおよび科学討論会」の組織を計画し始めた。そして、1982年8月12日、第一回全国青少年発明創造コンテストおよび科学討論会」が上海で開催され、以後二年ごとに開催されることになったのである。このコンテスト活動は、2000年には全国青少年科学技術イノベーション大会と名称変更し、2002年には毎年一回開催されることに変更された。 [1]

 青少年科学技術コンテスト活動を行う意義は、中国科学協会主席兼中国科学院院長(当時)周光召が第8回全国青少年発明創造コンテストおよび科学討論会の閉会式兼授賞式席上で語った言葉に示されている。すなわち、「幼いときから青少年の科学的想像力と技術イノベーション能力を養うこと、弁証法的唯物主義・歴史的唯物主義の科学的世界観と方法論を用いて世界を認識し、問題を解決することを学ぶこと、これらは高い思想道徳的資質と科学文化的資質を備えた科学技術戦線の後衛部隊を幅広く作り出すことにおいて、重要な意義を有している」のである。[2]

 21世紀に入り、「科学教育興国」・「人材強国」という戦略に基づいた指導により、中国青少年科学技術コンテスト活動はさらに優れた社会環境を有するにいたった。青少年科学技術コンテスト活動の勃興・発展のために、各級政府および社会各界はますます多くの支持を提供するようになったのである。また、「小さな明日の科学者」奨励活動や中国青少年ロボットコンテストなどの活動も相次いで実施され始めた。こうして、青少年科学技術コンテスト活動の類型はさらに豊富になり、形式はさらに多様になり、参加者はさらに増え、規模は絶えず拡大して、完全な青少年科学技術コンテスト活動体系の基礎が形成されたのである。その中でも、全国青少年科学技術イノベーション大会、小さな明日の科学者奨励活動、中国青少年ロボットコンテストの三つは、広範な影響力を有するブランド的活動である。

1.全国青少年科学技術イノベーション大会

 全国青少年科学技術イノベーション大会(China Adolescents Science & Technology Innovation Contest、CASTIC、以下「イノベーション大会」とする)は、中国科学技術協会、教育部、科学技術部などの9部・委員会と、省、自治区、直轄市を担当している人民政府が共同で主催するコンテスト活動であり、在校中の小中学生と科学技術指導員に対して行われる最大規模のモデル的・指導的総合科学技術コンテスト活動である。1979年に開催された第一回「青科展」がその前身であり、イノベーション大会は今日までにすでに32年の歩みを経てきている。イノベーション大会は青少年と科学技術指導員の二部門に分かれ、内容にはコンテスト活動と展示活動の二系列がある。コンテスト活動には小学生科学技術イノベーション成果コンテスト、中学生科学技術イノベーション成果コンテスト、科学技術指導員科学技術イノベーション成果コンテストがあり、展示活動には少年児童SF絵画コンテスト、青少年科学技術実践活動コンテストなどがある。イノベーション大会には広範な活動基盤がある。すなわち、基層となる学校、区県、市、省(自治区、直轄市)の各レベルのコンテストを何度も選抜されてきた青少年と科学技術指導員が、自らの科学技術イノベーション成果作品を持って全国イノベーション大会に参加し、毎年夏休みに集まって展示および交流活動をくり広げるのである。主催団体は各方面の専門家を組織し、予備審査と最終審査を経て受賞者を選ぶことになる。イノベーション大会の目的は、全国の青少年と科学技術指導員のために、科学技術イノベーション活動の成果を展示して交流する舞台を準備し、優秀な科学技術イノベーション型の若い人材を養成することにある。ここ五年で全部で延べ5000万人の青少年がさまざまなレベルの活動に参加し、2800余人の青少年科学技術愛好者と600余人の科学技術指導員の教師が奨励を受けた。イノベーション大会は青少年のイノベーション精神と実践能力の養成に特長があり、またテーマが「エネルギー資源の節約」、「生態環境の保護」、「低炭素生活」など国家経済・社会の発展と密接に関連していることに特長がある。そして、活動内容や活動形式などのさまざまな面が絶えず新しくなり、社会的影響力を高め続けている。現在、イノベーション大会はすでに全中国の小中学校に各種の優秀科学技術イノベーションの成果を展示する重要な形式となり、青少年の科学技術イノベーションの才能と姿を提示する一大イベントとなった。また、中国科学技術界と教育界が連合して優秀な青少年の才能を育てる代替不可能な重要な舞台となり、青少年の科学技術イノベーションの才能を選抜する有効な手段となった。

2.「小さな明日の科学者」奨励活動

 「小さな明日の科学者」奨励活動(Awarding Program for Future Scientists)は2000年に創立された活動であり、教育部、中国科学技術協会、そして香港の周凱旋基金会が共同で主催する中国最高レベルの青少年科学技術人材選抜・養成活動である。毎年最終審査活動によって一等賞10名、二等賞30名、三等賞60名(2010年からは一等賞と二等賞はそれぞれ5名増加され、三等賞は50名となった)を選び、一等賞の中からさらに3人を選んで「小さな明日の科学者」の称号を与えるのである。そして、受賞者には証書と相応の金額の奨学金がそれぞれ与えられる。この活動には、人間性と学校の成績がともに優れ、独立した科学研究の成果を有する全国の高校二年生が自由に申し込むことができる。そして、主催者団体は各分野の専門家を組織し、資格審査、二次審査、最終審査を経て受賞者を選抜する。すなわち、まず学生のイノベーション意識、研究能力、知識レベル、総合的な資質を何度も検討し、科学的な潜在能力と成長可能性を備えた学生たちを見出す。そして、この学生たちを著名な高等教育機関に推薦し、大学進学後に科学研究活動を継続して行えるよう経済的に援助し、自然科学研究事業に身を投じて未来の優れた科学者を目指すよう奨励するのである。第五回から第八回(2005~2009年)の授賞学生を追跡訪問調査した統計によると、50人の一等受賞者中、19人が清華大学で、17人が北京大学で、2人が香港中文大学で、1人が米国マサチューセッツ州工科大学で、1人がコロンビア大学で、10人がその他の重点大学で学んでいた。この活動は社会各界からの注目を集めて肯定的評価を受けており、モデル効果と拡散効果をもたらしている。そして、この活動は、中国科学技術イノベーションのジュニア人材養成体系における重要なブランド的活動に発展した。

3.中国青少年ロボットコンテスト

 中国青少年ロボットコンテスト(China Adolescent Robotics Competition)は、中国科学技術協会と省(自治区、直轄市)担当の人民政府が共同で主催する科学普及活動であり、知識の蓄積、技能の養成、そして探究的学習を一つに融合させた、全国の青少年を対象とする科学普及活動である。この活動の趣旨は、さまざまな形式のロボット研究プロジェクト(例えばロボットアイデアコンテスト、ロボット基本技能コンテスト、ロボットサッカーコンテスト、ロボットFLL工程挑戦コンテスト、ロボットVEX工程コンテスト)に挑戦させることによって、青少年のイノベーション精神と実践能力を養い、科学技術とロボットに応用を加える面白さをかきたて、青少年の科学的資質を幅広く高めるということにある。2001年の第一回大会以来、すでに十回まで開催されたが、この活動の形式は活気あるものであることから多くの青少年が先を争って参加しており、コンテストの規模と影響力は拡大し続けている。すなわち、2006年から2010年までの間に、全部で約6000人の青少年と2000人の指導員、2000余りのチームが全国レベルのコンテストに参加しており、各地の愛好者は数え切れないほどである。中国青少年ロボットコンテストは、今や青少年科学技術イノベーションの重要なコンテストに成長した。中国青少年ロボットコンテストは、青少年が科学を探求するための登竜門となって、幅広く青少年の支持を受けているのである。

4.中国青少年科学技術コンテスト活動の特徴

(1)政府の強力な支援および資金援助

 中国青少年科学技術コンテスト活動は、一貫して中央および地方政府の強力な支援と資金援助を受けてきた。近年、中国政府は「全人民科学資質行動計画綱要」、「国家中長期科学・技術発展計画綱要」、「国家中長期教育改革・発展計画綱要」、「国家中長期人材発展計画綱要」などの重要な政策を立て続けに公布した。政府はこれらによって全民族の科学文化の資質を高め、科学技術イノベーションに有利な社会環境を作り出すことを明確に提示し、完全な青少年科学教育・科学普及活動行動対策を提示したのである。これは、中国政府が中国青少年科学技術コンテスト活動の発展を絶えず促進させてきたことを意味する。教育部はコンテスト活動について具体的な指導を行い、コンテストでの受賞学生を対象とした奨励政策を制定した。国家自然科学基金委員会は、活動に対して資金援助を行った。政府が青少年科学技術コンテスト活動を重視して支援したことによって、中国青少年科学技術コンテスト活動は急速に発展したのである。

(2)社会団体の計画実施

 青少年科学技術イノベーション大会、小さな明日の科学者奨励活動、青少年ロボットコンテストという三大コンテスト活動は、すべて中国科学技術協会が主催するものであり、その下部機構が具体的な計画を実施している。各省、市、県の各級科学技術協会は関連機構に各級ごとのコンテスト活動を計画実施するよう責任を負わせる。そして、各級の関連機構は優秀作品を選抜し、一つ上の級のコンテスト実行委員会に推薦して参加させるのである。このように、各科学技術協会団体は政府の指導および資金援助の下、科学普及活動の主力としての働きを十分に行ってきた。また、各科学技術協会団体は女性連合や共産主義青年団などその他の社会団体と密接に連携し、青少年の校外科学技術教育活動を長期にわたって計画実施してきた。

(3)小中学校を激励・支援

 小、中学校は各種青少年科学技術コンテスト活動の最も基盤となる組織であり、科学教育を実施し、青少年の科学的資質を高めるという重責を担っている。そこで、中国の多くの学校は、学生が積極的に科学技術コンテスト活動に参加することを奨励している。そのために、学校は科学祭を開催するなどよりよい環境と条件を作り、各種の科学クラブやサークルを結成させて、コンテスト活動に参加する学生と科学技術指導教師のために科学実験設備、施設を提供し、経験豊富な指導教師を配置するとともに専門的な研修を実施している。さらに、学校は各級ごとの科学技術コンテスト活動の費用などを負担している。このほかに、科学技術コンテスト受賞学生および指導教師に対して、学校はさらなる物質的・精神的奨励を行っている。

(4)数多くの青少年の積極的な参加

 青少年科学技術コンテスト活動は、青少年学生のイノベーション的な思考と実践能力の養成に重点を置いている。コンテスト活動の類型は豊富で、組織形式は多様である。また、コンテストの内容は斬新であり、青少年の科学的な興味を幅広くかき立て、全国各地の科学志向の青少年をひきつけて積極的に参加させるものである。このほかに、各級政府も奨励政策を実施しており、青少年と科学技術教師がコンテストに参加する積極性を一定程度以上引き出すことに成功している。現在、中国は毎年一千万人以上の青少年および科学技術教師が各級の科学技術コンテスト活動に参加しているのである。

(5)国際コンテストとの連携

 中国青少年科学技術コンテスト活動は、国際的な青少年科学技術コンテストが成功した手順や経験を十分に重視してこれを学び、手本としている。そして、自らコンテストを創立し、国際的な関連コンテスト活動と結びつけている。例えば、全国青少年科学技術イノベーション大会が選抜した優秀選手は国際学生科学フェアやEU青少年科学者コンテストなどに参加し、中国青少年ロボットコンテスト優勝学生はFLL世界ロボットコンテストやVex世界ロボットコンテストなどに参加している。中国国内の優秀な青少年が海外の青少年と同じ舞台で競技、展示、そして交流を行うことによって、国際的に科学技術の視野を広げ、科学的探究の面白さを体験し、科学的志向を固めさせるのである。これは軽視できない影響力を持ち、科学技術イノベーションにおける若い人材の成長と発達にプラスに作用している。

二、中国青少年科学技術コンテスト活動の科学教育に対する肯定的な作用と影響

 中国青少年科学技術コンテスト活動の趣旨は、若い世代の科学への情熱を育て、科学的な思想と精神を確立させ、将来の社会の市民としての科学的資質を高めることにあり、また、全国的に影響を与えて科学教育の改革と発展に肯定的な作用をもたらすことにある。以下、青少年の科学的資質、科学的興味および態度に与える影響、教師の科学教育能力に与える影響、そしてその科学教育カリキュラム改革への推進力という三つの観点から、中国青少年科学技術コンテストおよび関連活動が科学教育に与える肯定的な影響を詳述することとする。

1.科学技術コンテスト活動は中国青少年の科学的資質を顕著に高めて科学的潜在能力を備えさせ、後続の優秀な青少年の科学的な仕事に就くという夢を育てた

 科学教育の目標の一つは、青少年の科学的資質を高めることにある。青少年の科学的資質とは、その精神的成熟度に合った科学的知識や科学の本質と科学―技術―社会(STS)などの内容を把握し、正しい科学的態度と情緒および価値観を確立し、社会生活状態において科学知識、技術、方法を応用して実際の問題を解決する能力を備えていることを言う。[4]青少年科学技術イノベーション大会は、小中学生科学技術イノベーション成果コンテスト、少年児童SF絵画コンテスト、青少年科学技術実践活動コンテストなどを開催することによって、青少年の科学的道徳、イノベーション精神、そして実践能力を養い、その科学的資質を高めることを目指している。ロボットコンテスト活動は、豊富で多彩なさまざまな形式のロボット探究プロジェクトを通して、知識の蓄積、技能の養成、探究学習を一つに融合させるものである。そして、ロボット技術、電子情報技術、工程技術を総合的に運用し、イノベーション的思考能力をかき立て、総合的な設計・製作能力を極限まで高めることを養成学生に学ばせるものである。「小さな明日の科学者」奨励活動は、独自の科学研究の成果が申し込まれた後、審査委員会がコンテスト参加学生にプロジェクトに関する試問を行い、総合的に資質を検討して、知識レベルを測定するなどの方式を用いる。そして、青少年のイノベーション意識、研究能力、知識レベル、総合的な資質を繰り返し検討するのである。これらのコンテスト活動の展開は、中国の青少年に科学に対する知識を蓄積させるとともに技術的研究と応用への興味をかき立て、その科学的資質を高めることに十分に肯定的な作用を発揮し、顕著な成果を収めてきた。

 2010年に中国の一部の省区の高校生に対して行われた資質測定 および関連調査の結果によると、各種科学技術コンテストに参加した学生の科学的資質は、科学技術コンテストに参加しなかった学生よりも明らかに高く、コンテストで選抜された優秀学生の科学的資質はその他の学生よりもさらに顕著に高かった。これは、科学技術コンテストが科学技術イノベーションにおける若い人材を養成・選抜するにあたって果たしている作用を反映したものである。この調査によると、科学技術コンテストは自分の科学的探究能力と科学的創造力を高めてくれたと考えている参加学生は、それぞれ81.6%、80.2%である。このデータは、中国青少年科学技術コンテストが科学技術分野における若い人材の科学知識運用能力、問題解決技術、発明創造力などを高めるのに肯定的な作用をもたらしたことを反映したものである。

 このほかに、科学技術コンテスト活動は豊富で多彩なさまざまな形式の科学的探究活動および科学技術作品展示活動を行うことによって、また、コンテスト期間中に科学技術教育フォーラム、著名な科学者との語り合い、国家重点実験室の参観、青少年科学実験協力などの活動を行うことによって、青少年の科学的興味を強めており、また青少年が正しい科学的価値観を確立する一助となっている。このようにして青少年が科学的潜在能力を備えるのを助け、後続する優秀な青少年が科学的信念をさらに固めて科学的事業に従事する夢を持つようにしているのである。湖南省常徳第一中学の楊思銘くんは2010年に「小さな明日の科学者」奨励活動に参加し、次のような感想を残している。「活動を通して、ぼくは科学の不思議さとすばらしさを体験し、科学のおもしろさを知りました。そして、科学に情熱を感じました。たくさんの専門家の人や科学院の会員の人と交流し、その人たちが崇高な科学的精神と人格的魅力を持っていると感じました。このようなことは、将来ずっとぼくの人生を前に進めてくれる大きなエネルギーになると思います。」また、第一回全国青少年科学技術イノベーション大会で高校数学小論文の一等賞を獲得した孫平川氏は、イノベーション大会に参加したときのことを思い出して次のように語っている。「コンテストに参加した友だちの風変わりな発明のおかげで、私は新しい世界を知ることができました……。あのとき私がもらった賞品は、ラジオの部品と科学技術発明の本、そして分厚い『辞海』でした。自分の手でラジオを組み立て、自分で作った最初の無線受信機から音を聞いたとき、私は自分がすごいことをしたと思いました。世界がこれまでとは違ったものに感じられたのです。この感覚はとても不思議で、このときからずっと探求と創造を続けています。コンテストに参加した経験は、将来自分がしなければならないことの最初の一歩を示してくれました。科学分野での発展ということです。」孫平川氏は後に南開大学物理学部に入り、現在は南開大学化学学部の研究員となって、国家「優秀青年科学基金」を得て、中国物理学会の「王天眷」波普賞を受賞した。

 調査によると、科学技術イノベーション大会と「小さな明日の科学者」奨励活動に参加した学生のそれぞれ95.0%と90.6%が、科学技術コンテストに参加した結果、科学への興味関心が高まったと明確に答えている。コンテストに参加した学生の科学的態度と科学的価値観も参加しなかった学生よりも明らかに優れており、中でも「小さな明日の科学者」奨励活動に参加した学生のそれが突出している。科学技術イノベーション大会と「小さな明日の科学者」奨励活動に参加した学生のそれぞれ85.2%と94.8%が将来科学と関係のある仕事に就きたいと答えており、また両プロジェクトに参加した学生のそれぞれ75.9%と87.7%が生涯最先端の科学研究に従事したいと答えている。科学技術コンテスト活動の展開は、中国の青少年が科学的な仕事に就く夢を持つことに対して肯定的な促進作用を果たしたのである。

2.科学技術コンテスト活動は科学教師の教育理念を一新し、教育方法および手段を改革するのに肯定的な作用を果たした

 青少年科学技術コンテスト活動は、教育の第一線で科学教育に従事している教師がその教育理念を一新するよう促す作用を果たした。長期間にわたり、中国の小中学校の科学教育の重点は「基礎的知識と基本技能」に置かれてきた。その結果、教師は往々にしてこの点に教育的な力を注ぐことになり、現代科学教育が提唱する「小中学生に科学探究活動の過程と方法を体験させることによって、良好な科学的態度、情緒、価値観を育て、初歩的な科学探究能力を発展させ、イノベーション意識と実践能力を強化させる」という教育理念は軽視されがちになってしまった。[5]しかし、青少年科学技術コンテスト活動の趣旨と現代科学教育の理念が結びつき、科学技術コンテスト活動が全国各地で普及展開したことによって、非常に多くの教師がその教育理念を一新させた。すなわち、非常に多くの教師が生徒のイノベーション的思考と科学的探究能力を育てることを重視するようになり、生徒が正しい科学的態度と価値観を確立するように導くようになったのである。

 全国青少年科学技術イノベーション大会は、2008年から科学技術指導員部門を設置し始めた。これは、科学技術指導員の科学技術イノベーション成果コンテストの実施と優秀科学技術指導員の選抜を内容とするものである。その科学技術指導員科学技術イノベーション成果コンテストというプロジェクトは、プロジェクト類型にしたがって、科学技術発明分野、科学教育製作分野、科学技術教育方案分野に分けられている。そして、これまでに合計600人以上の科学技術教師と科学技術指導員が全国大会の一、二、三等賞を獲得し、延べ数万人の教師が各レベル別の選抜活動に参加した。中国青少年科学技術イノベーション大会が科学技術指導員部門を創設した趣旨の一つは、科学教師が正しい教育理念を確立するのを助け、科学技術教師の科学教育的資質と能力を高めることである。コンテスト参加者は自らの日常的な業務と教育実践における科学技術的発明、教育器機、教具、科学教育カリキュラム案、科学教育活動方案を持って全国大会の舞台に立ち、展示を交流し、切磋琢磨して研究討論を行う。そして、その成果を実際の教育活動に持ち込み、教育理念を一新し、科学教育カリキュラムの教育方法および手段の改善を推し進めるのである。現在中国では、多くの小中学校の科学教師が科学教育カリキュラムにおいて生徒のイノベーション意識の養成と操作能力に向上に留意し、課題を設定して取り組ませ、協力探究方式を用いることを重視し、さらに、現代的な教育手段および技術を運用することに力を注いでいる。

3.科学技術コンテスト活動の展開が中国の基礎教育領域における科学教育カリキュラムの改革を推し進めた

 科学者は自然科学の発展の最前線に立っており、自然科学の教科の知識体系についてはほぼ全面的に把握し、科学の本質と科学的価値についても深く理解している。そこで、基礎教育における科学教育には、教育従事者、科学技術者、そして社会各界が共に参加し協力する必要があると言える。実際、青少年科学技術コンテストなどの科学普及活動への参加を通して、中国の多くの科学者や科学技術者の情熱と関心は、中国の科学教育カリキュラム改革に関連した活動に積極的に参加することにシフトしていったのである。

 2007年、教育部は国家小学科学教育カリキュラム標準の改定作業に入ったが、中国科学技術協会副首席である韋鈺科学院会員が国家小学科学教育カリキュラム標準改訂の議長として招聘された。これによって、中国科学界は小中学科学教育カリキュラム標準の改訂作業に初めて組織的に介入することになった。また、同年、科学技術コンテストの審査活動に部分的に参加したことのある科学者や科学技術者も、中学理科(物理、化学、生物など)の教育カリキュラム標準の改訂作業に参加した。さらに、2009年末、中国科学技術協会青少年科学技術センターも一部の科学者と科学技術者を組織し、「小学科学教育カリキュラム標準」の分析作業に参加した。これらの青少年科学技術コンテストに参加したことのある科学者は、青少年科学技術コンテスト活動が提唱する「学生の科学的資質の養成と実践能力の統合を重視し、学生が正しい科学的態度と価値観を身につけるよう導く」という科学的教育目標および理念を、改訂作業中の基礎教育科学教育カリキュラム標準に導入し、教育カリキュラムの目標、設置、授業方式などの面で科学教育カリキュラムに根本的な変化をもたらした。まず、今回の基礎教育カリキュラムの改革において、科学教育関連の最大の変化は教育目標の調整である。すなわち、科学教育の目標は「各学生の科学的資質の向上」であることを明らかにしたのである。次に、科学教育目標の調整にともなって、基礎教育の科学教育カリキュラムの設置にも改変が加えられた。九年の義務教育段階に総合的な科学教育カリキュラムが置かれ、普通高等学校の科学教育カリキュラムでは教科の総合性が強調されるとともに、内容の選択性が重視されたのである。また、科学教育カリキュラムの各科目には若干のモジュールが含まれるようになり、高校生は各自の興味関心、未来の職業に基づいて系列の選択を行うことができるようになった。このように学生の選択権を十分に尊重することによって学生の個性や潜在能力を十分に発展させることが可能になり、学生があまりにも早期に教科を偏らせることを防ぎ、高校生が一定水準の科学的資質に到達することを保証したのである。最後に、これまで科学の授業では、質より量、機械的訓練など授業方式の誤りが長期にわたって存在してきたが、今回の基礎教育科学教育カリキュラムの改革によって、授業方式の改変が特に強調され、探求型の授業方式が提唱された。すなわち、科学的探究によって学生の科学的興味と科学的探究能力を向上させることが目指されたのである。

三、中国青少年科学技術コンテスト活動の健全で持続可能な発展を引き続き推進する

 人材養成は国家と民族の盛衰に関わり、また一国の総合的な国力と国際的な競争力に関わるものである。ゆえに、科学技術イノベーション人材を養成し、イノベーション型国家を建設することは、現在中国が直面している長期的で、困難だが切迫している課題であると言える。我々が希望しているのは、全社会の関心と支持を受けながら長期的な探究と努力を継続することによって、コンテスト体系を絶えず完成に近づけることである。そして、青少年科学技術コンテスト活動を中国科学技術イノベーション分野における若い人材の養成において、真に重要なルートとすることである。また、コンテストの影響力と指導性を十分に発揮して、多くの青少年が科学を愛し、科学を学び、科学を用いて科学的研究活動を積極的にくり広げることを奨励し、イノベーション的意識および実践能力の養成・形成の主動力になり、その影響力でもって全人民の科学的資質の向上を促すことである。そのためには、政府の主管部門、コンテスト組織機構、そして基盤となる学校やその青少年学生のすべてがたゆまぬ努力を続け、青少年科学技術コンテスト活動の健全で持続可能な発展を推進しなければならない。

1.政府の主管部門はさらに青少年科学技術コンテスト奨励政策を規格化し、コンテスト活動の健全な発展を主導する

 2010年末、中国政府教育主管部門の関連部署連合委員会は文書を配布し、青少年科学技術コンテストなど関連奨励政策の規格化をさらに一歩前進させた。これは「国家中長期教育改革および発展計画綱要(2010~2020年)」を貫徹して実施した重要な処置である。また、これは資質教育および科学教育への導入と実施に有益であり、教育の公平さと青少年の健全な成長を促すのに有益であり、青少年科学技術コンテストの健全かつ持続可能な発展を保証するのに有益である。

2.国際経験を参考にして学び、中国青少年科学技術コンテストの組織管理の科学化と規格化を進める

 中国青少年科学技術コンテストの主催機構は、引き続き国際コンテストの経験を参考にして学び、中国の基礎教育改革と資質教育の全面的実施状況に適合する青少年科学技術コンテスト活動の組織管理体系を模索、確立しなければならない。そこで、科学技術コンテストの組織管理制度を改革して完成させるためには、科学技術コンテスト活動の管理の科学化、規格化を推し進めなければならない。また、コンテストの評価・監督のメカニズムを完成させるためには、コンテストの公平さと公正さを保証、体現しなければならない。さらに、コンテスト活動の実効性を高め、観衆を拡大する戦略および方法を研究するためには、組織を中国青少年の科学技術コンテストプロジェクトにより適合したものとし、科学技術コンテストの領域とその該当分野を拡大し、より多くの青少年が参加できて利益を得られるようにしなければならない。

3.学校は研究的な学習のカリキュラムと学校中心のカリキュラムを青少年科学技術コンテスト活動に有機的に結合し、コンテスト活動の基礎を固めなければならない

 学校は科学教師を研究的な学習のカリキュラムと学校中心のカリキュラムに導き、学生が科学探究活動を行うように指導しなければならない。そして、学生が科学的問題を発見し、科学知識を用いて実際問題を解決する能力を養成するよう、また学生が研究の成果を科学技術コンテスト参加作品とし、各種の青少年科学技術コンテスト活動に積極的に参加するよう、積極的に導き、激励し、サポートするのである。さらに、学校は学生の科学技術活動の基礎設備の建設を強化しなければならない。実験室の施設設備条件を改善し、科学の普及に関する図書の種類と冊数を増やすのである。そして、科学教師の科学的資質と科学教育能力を絶えず高め、専門的技能の研修を強化し、科学教師が専門的に成長するよう促すことも行わなければならない。

4.青少年は積極的かつ主体的に科学技術コンテスト活動に参加し、自らの科学的資質を高めなければならない

 青少年の科学的資質は、中国の未来の市民の科学的資質の水準と中国の国際競争力に直接関わってくる。ゆえに、中国の多くの青少年は、科学を愛し、真理を追究し、自然を探求して、学校での学習や自然科学および社会・人文科学の基礎的知識を身につける過程において、各種の科学技術コンテスト活動に積極的に参加することが望ましい。そして、科学を探求するなかで科学の不思議さとすばらしさを体験し、科学への興味関心を強め、自らの科学的資質と総合実践能力を高めて、優れた科学的態度と価値観を形成し、将来科学に関する仕事に就く夢を持つのである。このようにすれば、中国の科学技術レベルを高め、中国が世界的な科学技術大国、人材大国に成長するのに貢献することができるであろう。


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2013/12/27更新
「中国賃金事情」

和中清の日中論壇

2014/2/3更新
「失望」に潜む米国のメッセージと日本の「積み木崩し」

田中修の中国経済分析

2014/2/7 新コーナー開設
「中央経済工作会議のポイント」

服部健治の追跡!中国動向

2014/2/27 新コーナー開設 「安倍総理の靖国神社参拝に想う(上)」

川島真の歴史と現在

気鋭の研究者が日中関係を歴史から説き起こす。幅広い視点から新しい時代の関係を探る。

科学技術トピック

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2014/3/5更新
「赤外線カメラと簡牘資料の日中共同研究」
工藤 元男

取材リポート

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日中関連、科学技術関連のシンポジウム・講演等を取材し、新鮮なリポートをお伝えします。

中国の法律事情

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2014/3/7更新
「百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末」朱根全

日中交流の過去・現在・未来

日中交流のこれまでの歩みとこれから

日中の教育最前線

日中の教育現場の今をレポート

中国国家重点大学一覧

 

中国関連書籍紹介

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2014/3/12 書評追加掲載

文化の交差点

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2014/3/18更新
「日本における中国古代絵画」朱新林

中国実感

日本人が実感した中国をレポート

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