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中国第4軍医大、新たな腫瘍タイプを発見・命名

中国科技日報     2011年 6月13 日

 リンパ管内皮細胞由来の悪性腫瘍タイプ、つまり厳密な意味でのリンパ管肉腫が中国の第4軍医大学で初めて発見・証明された。これは世界保健機関(WHO)の リンパ管腫瘍の分類におけるリンパ管悪性腫瘍の空白を埋めるもので、腫瘍学の分類、診断、治療に重要な理論的、臨床的意義がある。

 同腫瘍は、同大基礎部病理学病理生理学教研室の王哲教授と黄高昇教授が率いる科学研究チームが発見し、「炎症性単形性未分化肉腫」と命名したもの。同成果をまとめた研究論文は、米臨床腫瘍学会誌「J. Clinical Oncology」に全文掲載された。

 同腫瘍は若い患者の骨組織と軟組織に発生し、臨床症状としては痛みを伴う腫れ物を生じる。局部の赤み、腫れ、(局部の)熱感、痛みのほか、全身の発熱、白血球の上昇を伴うなど化膿性炎症の症状が現れる。腫 瘍の形態は非常に特殊で、以下のような特徴がある。(1)細胞質が豊富な単一の上皮性細胞からなり、細胞質は好酸性で、細胞膜ははっきりとしている(2)泡状腫瘍細胞の核は大きく、円形または卵形をし、ク ロマチン(染色質)は開放型で、好酸性の巨大な細胞核を持つ(3)腫瘍の中に大量の好中性顆粒細胞浸潤と多数の微小膿瘍形成がみられる。同腫瘍は生長が速く、早期には局部の再発やリンパ節転移が起こり、多 くの化学療法が無効になる。患者はいずれも発病後4カ月以内に広範囲の転移と深刻な合併症により死亡する。腫瘍局部は穿刺(せんし)による膿汁の吸引が可能だが、微生物培養は多くが陰性で、抗 生物質治療もほとんどが無効だった。免疫組織化学や電子顕微鏡を用いても、腫瘍細胞の特異な分化は確認されなかった。

 王教授は炎症性単形性未分化肉腫について、臨床症状、病理学形態、予後特性が独特で、これまでの腫瘍とは異なり、WHO腫瘍病理学分類の中に似通ったタイプは見当たらないと説明。オ ーストラリアの病理学専門誌「Pathology」もこの新しい腫瘍タイプについて報じたという。

 同腫瘍タイプは第4軍医大学が初めて発見・命名したもので、独自の知的財産権を持つ。中国病理学界の学者が新たな腫瘍タイプを独自に発見・命名したのは初めて。