第58号:地震予測研究
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粒状媒質中の地震前兆探測と前兆応力-ひずみの伝播モデル

2011年 7月21日

陸 坤権

陸坤権(Lu Kunquan):中国科学院物理研究所 研究員

1964年北京大学物理学部卒業、1964-1967年中国科学物理研究所大学院生、1979-1981年アメリカワシントン大学物理学部訪問学者。中国科学院物理研究所結晶体室責任者、中国科学院物理研究所学術委員会副主任、ソフト物質物理実験室学術委員会主任などを歴任。最初結晶成長とエックス線吸収微細構造(XAFS)の研究を携わったが、1990年以降液体とソフト物質の物理研究に着手。論文発表数は240余り、著書は『ソフト物質物理学序論』など。現在主な研究分野は液体構造と性質、EF(Electrorheological Fluids) 、粒状物質。

 地震は人々の命や財産に巨大な損失をもたらす自然災害である。中国の地震被害による損失は特に重大である。昔から、人々は多大な努力をして、地震前兆情報の観測を通して、地震予報の方法を探求してきた。現在、地震予報はまだ解決されていない科学的な難問だと思われる。この難問の解決は、信頼できる地震前兆現象とその法則性が得られるかどうか、およびその物理学的な構造を見定められるかどうかによって決まる。

 本論では粒状媒質の中での地震前兆現象の探測方法を紹介し、過去の例から得られた地震前兆現象が特定の地震と対応することを説明し、模擬実験と実際に探知した結果の比較研究をする。更に、粒状物質の運動特性により、地震前兆応力-ひずみ情報の伝播モデルを提示して、探測した地震前兆現象の物理学的な本質に対して初歩的段階の分析と議論をする。

 採用した探測方法では、探知器を粒状媒質に挿入して、地殻岩石層を粒状物質として解釈しデータ処理する。粒状物質とは、普遍的に存在する一種の粒状物質体系であり、一般の固体及び流体と異なり、独特な運動特性を持っているものとして、物理学的に広くその性質が研究されているものである。地震発生と粒状物質の特性を結びつけた研究は、近年地球物理学界において重視されている。本論では、粒状物質の特性と運動法則に基づいて、地震前兆現象の探測を行い、地震前兆現象の伝播メカニズムを説明する。

1、探測方法と探知器

 岩石の中で地盤ひずみを測量する一般的な方法と異なり、ひずみセンサーを土層の砂穴に取り付けて探測し、地震発生前後の地層のひずみ変化プロセスを観測する。

 外的ノイズの少ない場所を選び、地表面の古い土層で深さおよそ4m、直径およそ2mの丸い穴を掘り、穴に厚さ3m以上の建築用の洗い砂を詰めて、底の部分では少なくとも厚さ1.5mの砂を周りの土層と密接させる。穴の底から約1mの所に探知器を三基埋めて、それらの探知器の方位特性が、それぞれ南-北、東-西と一つの対角線方向を指し示すように設置する。3基は約0.5mの間隔で直線上に、あるいは一辺1mの三角形に並べて設置する。探知器を埋めたのち、砂を強く押さえる。探知器の円筒形の外殻はステンレス製で、厚さは1-5mm、外径はおよそ0.15m、高さは0.4mである。水漏れを防ぐために外殻を密封する。円筒の応力変形を測るために、探知器の中にSW-1型の自製のひずみセンサーを取り付ける。典型的なセンサーでは、1mVの出力が2.2±0.4nmの変位に対応し、線形領域が4mmより大きく、測量感度が2nmより高い。外力による円筒の変形がセンサーの抵抗を変化させ、ブリッジ回路で電圧信号を出力する。センサーから出力した電圧信号は増幅とフィルタリングをせずに、データ収集システムによって自動的に記録される。サンプリングする時間間隔は1秒である。センサーで円筒の変形値を記録して、それによって、地層のひずみ情報を得る。ファインチューニングによってセンサーのゼロポイントを調整する。

 探知器は外からの作用に対して方向的に敏感であるという特性を持っている。円筒の外殻の変形が小さければ、探知器の応答は線形伸縮性応答であると近似する。センサーの軸の方向に沿って外力を加えるとき、センサーは圧縮ひずみ信号を生じる。センサーの軸に垂直な方向に外力を加えたとき、探知器の外殻はセンサーに引張りひずみ信号を出じさせる。外力を除去すれば、探知器の外は砂であるために、円筒の形は元に戻りセンサーをゼロポイントに戻す。探知器の方位を変えて埋めれば、違った方向のひずみが測定できるので、地震前兆応力の方向性が判別できる。

2、地震前兆探測の実例

 前述の粒状媒質中の探測方法を用い、今まで遼寧と北京で1-2の稼動できる試験測量場を設置して、地震前兆現象を複数回捕捉できた。捕捉した現象のうち、1999年遼寧省岫岩M5.4の地震と、2004年インドネシアM8.7の地震、2008年汶川M8.0の地震などの地震前兆現象のデータが比較的完全で、法則性を持っている。その中で、1999年11月29日に岫岩で起こったM5.4の地震が探測場に近い(営口の探測場は震源地に僅か43キロ)ことから、得た前兆現象情報は確実である。2004年12月26日のインドネシアM8.7と2008年5月12日の汶川M8.0の巨大地震の場合も、震源地から数千キロ離れていたにもかかわらず、はっきりした前兆現象を検出した。

 探測したインドネシアM8.7の地震を例にして説明する。遼寧省新民(震源地からおよそ5300キロ)と北京電業中学校(震源地からおよそ4800キロ)の探測場の記録によって、得た前兆現象と起こった地震の確実な対応関係および現象の主な特徴を分析した。遼寧省新民の探測記録では、2004年1月から2004年11月中旬まで、探知器が記録した圧縮ひずみの数値はしだいに上昇してきたが、地震発生前約1ヶ月の間、低下しつつあり、12月24日に最小値に達した(地震は12月26日に起った)。北京電業中学校の探測場の記録も同様である。本論では二つの探測場で実際に記録された地震前兆現象情報図(図1)を掲載する。

 北京と新民は600キロ離れているにもかかわらず、検出された2004年12月26日インドネシアM8.7の巨大地震の前兆現象の主な特徴が一致しており、同じ地震前兆現象と確定した。北京と新民の探測場では、それぞれ南-北と東-西方向を指す探知器の信号が最も敏感なことから、探知器は地層の中のひずみ方向に対して判別機能を持っていると判明した。

3、粒状媒質中のアップロードとひずみ探測実験

 採用した方法で検出した信号の本質と地震前兆に敏感な原因を究明するために、模擬実験をした。屋外の地面の土層に直径2m、深さ2mの円形の穴を掘って、中に厚さ1.8mの建築用の洗い砂を入れる。砂粒の平均直径は0.28mmである。砂の高さ0.9mのところに指示する方向の違う探知器を3基埋めて、間隔0.5mで、方向性を45°づつ変えて直線上に並べて設置する。探知機を埋めたのち、砂を強く押さえ、各探知器のゼロポイントを調整する。液圧プレスでゆっくり鋼板を押し、砂に水平方向の力を加えて、探知器のひずみ応答を観測する。液圧プレスの作用力を力センサーで記録し、加えた作用力及び各探知器のひずみ変形応答曲線を得る。

 理論と実験の結果から、バルク係数kは粒状堆積分数fと受ける応力tの関数であり、密封されているとき、大体kµf2/3t1/3である。普通の状況では、固まっていない砂なら、kは数十MPaで、固まっている砂なら、kは数百MPaあるいはもっと高い数値に達する。

 実験では、砂は圧力を受ける状態にあり、探知器の壁の弾性、設置された位置と方位にもよっている。一定の範囲内では、力と変形は線形応答であると近似しているので、システムを弾性体として扱え、算出したシステムの当量バルク係数はkeff »1.2Gpaである。この結果から、実験及び実際の地震前兆現象探測システムの当量バルク係数keffは普通の岩石のバルク係数(典型的な数値は50GPa)よりおよそ40倍、あるいはもう少し低いと判明した。即ち、この方法で探測した応力-ひずみ応答の感度は岩石のよりずっと高い。

 以上述べた実験の結果から見ると、この探測方法で検出した信号は応力によるひずみだと分かった。同じ応力の場合では、粒状媒質の中で検出したひずみ値は岩石中のより数十倍以上高い。同時に、違う方位に探知器を設置することによって、応力の方向が区別できる。これらの特性は地震前兆現象の探測に有利である。

4、地震前兆応力-ひずみ情報の伝播モデル

 前に述べたように、採用した方法で検出した前兆現象情報は特定の地震と対応関係を持っていて、実験で探知したのはひずみ情報だと判明した。更に、この方法がひずみ測量に敏感である原因も説明された。しかし、この地震前兆現象探測方法を信じるにはまだ疑問点が3点残っている。1.どうして震源地からかなり離れている土層の中でひずみ前兆現象信号が検出できるのか。この信号はどのように伝わってきたのか。2.どうして岩石の中に高い感度のセンサーを取り付けても、その前兆ひずみ信号が検出できないのか。3.異なった場所に設置された粒状媒質探知器が得た前兆現象情報の形はどうして異なるのか。これら質問の本質は地震前兆応力-ひずみ情報の伝播メカニズムにある。粒状物質研究と地球物理学の既存知識により、以下のような地震前兆の応力-ひずみ伝播モデルを提示して、上に述べた疑問に答える。

 普通の見方では、浅発地震は地殻の弱い部分が外力の作用で破壊されあるいはずれて引き起されたものである。地震発生前、震源域の応力は持続的に数ヶ月、数年、ひいては数十年にわたって蓄積する。それに伴うひずみは次々に外へ広がり、地層中に圧縮変形を成しているから、一定の範囲で、ある地震前兆現象が観測できる。例えば、地下水水位の変化などである。しかし、地殻岩石層の構成は複雑で、プレート、断層と断層間の断層ガウジ(fault gouge)からなっており、大きさ、形、厚さと材質もそれぞれ違う。その中の断層ガウジは岩石の角礫などの粒子状物質で構成され、岩石に比べると比較的柔らかい部分であるので、これら粒子状物質のバルク係数は岩石よりずっと小さい。実際の地震が生じるプロセスではスケールの範囲が広い。従って、地震前兆応力-ひずみ伝播といった準静力学の問題で、地殻のプレートと断層の体系を大スケールの粒状物質体系と見なすべきであり、地殻岩石層を均一的連続的な媒質として処理できないのである。

 前兆応力―ひずみがどのように外へ広がり、伝播するのかを描くため、図1で説明する。地震の蓄積した応力が岩石を押す時、図1(a)の岩石A は 周りの摩擦力と断層ガウジの抵抗力に抗して、均一的連続的な運動とは異なるスティック・スリップ(stick-slip)移動を発生する。このスティック・スリップ変位の時間による変化関係は図1(b)のように示される。A-Bの間の断層ガウジが圧縮され、図1(c)の岩石間はスプリングが圧力を受けたときと同じである。粒子状物質からなる断層ガウジの密度と応力はますます大きくなる。バルク係数がほぼf2/3t1/3に従って一定の程度増加して、断層ガウジによって岩石Bにかかる作用が抵抗力を越える数値に達したとき、岩石Bもスティック・スリップ移動が発生する。このように、次々にそのさきの岩石にスティック・スリップ変位を発生させていく。バルク係数が大きい岩石ブロックでは剛体に似た運動となり、剪断ひずみと変位は主にブロック周辺と隙間に現れる。岩石内部の応力あるいはひずみの増量はとても小さい。多くの観測事実はすでにブロックのこういった運動の特徴と形を証明している。断層にまたがるクリープひずみ測量方法で地震前の断層間の突然変位が測定できて、中国の鮮水川断層帯のクリープひずみの観測結果、及びアメリカParkfield試験場で断層クリープひずみ測量によって得た数十日のうちに何回も起ったジャンプひずみは全てこの類の断層スティック・スリップ変位による典型的な実例である。

図1 

図1 地震の蓄積した作用力による岩石ブロックのスティック・スリップ変位、土層変形と応力-ひずみ伝播図

 岩石ブロックのスティック・スリップ移動を検討するとき、岩石ブロックが受ける摩擦力とほかの抵抗力(岩石ブロックとマントルの間の摩擦力、岩石ブロックの間の摩擦力と抵抗力を含む)に言及しなければならない。地震を生み出す過程の中に、マントルそのものも大地構造力の駆動で運動している。そして、マントルは密度が岩石層より高く、流動性も強い。従って、岩石ブロックとマントルの間の摩擦力は固体よりずっと小さい、ひいては岩石ブロックに駆動の作用もある。言い換えれば、仮に岩石ブロックとマントルの間で固体間に似ている摩擦作用が起るとすれば、摩擦力はかなり強い。例えば、面積100´100 km2、厚さ10 kmの岩石ブロックに対して、もし密度を2.75´103 kg/m3、摩擦係数を0.2にしたら、克服する摩擦力は5.5´1017 Nに達する。即ち、岩石ブロックの断面で受ける応力は凡そ0.55GPaである。だが、実際の観測では、岩石中にはこんな大きな応力変化が見出されなかった。従って、岩石ブロックはおそらく水面上の密集する浮氷に似ている運動をしている。

 岩石の中で明確な地球固体潮汐(solid earth tide)ひずみが測定できる。典型的なひずみ値は2´10-8であり、岩石中の応力変化はおよそ1kPaに相当し、かなり小さい応力起伏である。固体潮汐ということは地球に天体の力で収縮と膨張変形が起り、岩石が対向と反対方向に圧力を受けるということである。しかし、地震前兆応力は岩石ブロックに全体的なスティック・スリップ変位を発生させるので、岩石内部に受ける圧力はそれほど強くない。これは岩石の中で固体潮汐ひずみは検出できるが、地震前兆ひずみ情報が容易に探知できない原因である。一方、震源に遠い所で、震源域を動力源として、動力源からrのところの応力はおよそr-1の関係で減るので、岩石の中で地震前兆を探知するのは更に難しい。

 上述した原因によって、精度が高い器械を使っても、岩石の中で信頼できる地震前兆応力あるいはひずみ変化の法則性は探知できなかった。

 図1(a)のように、地殻岩石層の上は地表土層である。岩石ブロックは変位を生じるとき、境界面の摩擦によって、土層に剪断変形作用を施して、岩石の変位方向に沿って圧縮変形を起こさせる。土層は均一ではないが、広い範囲では連続的な媒質と見なされる。土層の厚さは岩石ブロックのスケールよりずっと小さい、且つ岩石層よりずっと薄い。よって、岩石ブロックの変位は土層に著しい圧縮変形を与える。図1(c)のスプリングモデルはこの力の作用関係を表す図である。岩石層の中での水平作用は粒状物質のフォース・チェーンの伝播方式で伝播し、図1(d)はこの類の作用と変位の方向変化を表している。岩石ブロックの間も切線方向に沿ってずれ変位が起る可能性もある。従って、上の土層の中に、圧縮ひずみだけでなく、切線方向のひずみの影響もある。

 プレートと断層のスケールは数十キロ、数百キロ、ないし数千キロであり、外力の下で次第に時には遅い、時には早い全体的なスティック・スリップ移動をしている。同じブロック(ひいては幾つかのブロック)の各所の移動は同時に行われる。幾つか大きいスケールのブロックが同時に運動するという観測事実はおそらくこの移動によるものである。違うブロックの移動方向は図1(d)のようである。震源から観測場への方向と違うときもある。それは地質状況によって決まる。土層の中の砂穴に設置された探知機の方向敏感性は下の岩石ブロック移動の方向だけでなく、周りの地質関係にも関わっている。

 毎回ブロック全体のスティック・スリップ変位のスケールの大きさはmm級より小さいものからmm級まである。比較的大きな地震の前兆応力を積み重ねているブロックの移動は相当大きい場合もある。積み重ねた地表の変位はGPSで探知できるが、しかし、今の解像力ではまだ容易に毎回のスティック・スリップ変位は測定できない。ブロックの移動は必ず土層の変形を引き起こす。使った探知器は感度がおよそ2nm、即ち探測するひずみ値は1.3´10-8であるので、この前兆変化が測定できる。ある場合、実際に探知した前兆変形値は長い時間で大きさmm級まで積み重ねられて、センサーは飽和状態に達する。前に述べたように、大地震に対して、数千キロ離れた所で測定した土層のひずみ値は10-5級に届く。地質状況の違いによって、各岩石ブロック変位の大きさと方向は異なる。土層中の変形値は位置と土層の性質に関わっている。だから、各探測場で探知した前兆現象情報にも当然格差が現れる。

 従って、探知したのは地震前兆応力の伝播による土層のひずみである。探知器を直接粘土の中に入れる方法ではなく、土層のなかに砂を埋めて、探知器をその中に入れる方法を使用するのは、粘着性を持つ粘土は押された後、元に戻りにくい塑性変形が起るからである。粒状物質の分散特性は探知器の筒の伸縮性変形を、押されてから元に戻らせる。一定の範囲内で、応力とひずみは線形に近似できる応答を維持する。

 ここに述べたモデルでは、前兆応力は地表に沿って伝わるのではなく、地下岩石ブロックの剪断変位の作用を通して、探測場の地表土層まで伝播してきたことを示した。従って、地表の山、川、湖、海などの地形は探測する情報に根本的な影響を与えていない。

5、考察

 2004年インドネシアM8.7の大地震が起る前に、震源域の応力が次第に蓄積され、地殻の岩石ブロックにスティック・スリップ移動を引き起こした。このブロックの移動は応力の蓄積によって、次々に伝わっていく。蓄積された応力が一定の数値に達すると、探測場付近のブロックも移動して、剪断変位作用を通して、土層に圧縮変形が生じる。大地震に対して、それを生み出すとき生じたひずみの影響は数千キロまで届くので、遼寧と新民の探測場でも明らかな変形信号が測定でき、それに、応力の蓄積によってますます強くなる。この二箇所で記録した変形とひずみ値はそれぞれ1900nm、1.3´10-5と800nm、5.3´10-6であり、土層中のひずみが積み重ねられた度合いを示している。異なる地震の探測、あるいは異なる場所での同じ地震の探測は、地震が生じる状況と応力-ひずみが伝播するときの地質環境の影響を受ける。それに、探知器の埋設条件にも関わっている。それ以外に、探測するとき、つねにほかの地震が成長したり、地震が発生したりするので、観測した結果に干渉と信号の付加が生じる。その影響はこれら地震の大きさと距離に関わっていて、実際に探測するとき、注意しかつ区別すべきである。

 図1のモデルは探測場の位置の選択と前兆情報方向の判断に根拠を提供した。探知器をブロックの境界から少し離れた場所に埋めれば、ブロックの間の相対的な変位がかなり大きくなる可能性がある。そうであれば、土層の変形がさらに明らかで、よりよい変形情報を得るのに有利である。探知器の埋設場所は密度が比較的に高い土層のほうがいい。探測場付近の断層など地質状況と周辺の地表環境が詳細に把握できれば、異なる方位の探知器の前兆現象信号の特徴及び方向敏感性を分析するのに役に立つ。

 今まで述べた問題は応力―ひずみ伝播についてであり、言及した粒状物質の特性は二種類ある。その一、地殻岩石ブロックを粒子状体系と見なしているが、こういう場合には粒子のスケールは大きいが、粒子の数は比較的に少ない。関与するのはフォース・チェーン構造とスティック・スリップ移動である。これは地殻岩石を連続的な媒質として扱うのとは本質的な違いがあるので、異なった法則性を持っている。ブロックのフォース・チェーン構造は探測場の探測感度も決めている。フォース・チェーンが強いブロックは必ず大きなスティック・スリップ変位を引き起こす。従って、対応する土層の観測場でははっきりした前兆現象情報が得られる。その二、探測するとき、探知器を砂穴の中に埋めるため、大量の粒状物質体系に対応している。この場合、粒状物質を準連続媒質として扱っても、土層と砂は当量バルク係数が低い散逸体系であるので、周波数の低い準静的応力-ひずみは伝播しやすい。これは地震波が岩石の中で伝播する状況とも異なる。

 地殻の構造が複雑なので、地震前兆応力―ひずみの伝播と探測は地震の類別、ブロックの分布および探測環境と緊密に関連している。震源と探測場の関連する地層の地質構造を深く研究すれば、探測した前兆現象と発生した地震の対応関係を判断するのに非常に役に立つ。一方、この方法で異なる探測場で探測した前兆ひずみ情報の分析を通して、地質状態の認識にも価値ある資料を提供することができる。