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高い空間解像度に基づく熱汚染リモート・センシングの研究の現状

2011年 8月23日

趙冬至

趙冬至(Zhao Dongzhi):国家海洋環境監測センター研究員

1964年12月生まれ。1982-1989年、蘭州大学学部・修士課程(自然地理学科修士)。2004年、華東師範大学河口海岸国家重点実験室博士課程修了(自然地理学科博士)。1989-1996年、甘粛省科学院地質自然災害予防研究所。1996年から、国家海洋環境監測センター海洋リモート・センシング監測室主任、研究員、海洋リモート・センシング要素評価工作グループの首席専門家。大連海事大学客員教授、中国リモート・センシング協会環境リモート・センシング分会副理事長、遼寧リモート・センシング応用協会副理事長、国家自然科学基金審査員。『リモート・センシング学報』、『熱帯海洋学報』、『海洋環境科学』編集委員。
主な科学研究領域:汚染/赤潮水体のスペクトル測量技術と特徴研究、水体生物-光学計算方法研究、海洋生態環境要素の衛星リモート・センシング監視測定技術、環境災害(赤潮、石油漏れ、海岸浸食など)の衛星リモート・センシング監視測定技術、海洋-空気の二酸化炭素の衛星リモート・センシング監視測定技術、海岸生態環境(河口、浜海湿原、マングローブ、サンゴ礁など)の衛星リモート・センシング監視測定と生態評価技術、海洋エアゾール現場と衛星リモート・センシング監視測定技術、衛星海洋環境応用工学、GISと衛星リモート・センシングソフトウェア開発・赤潮分布、災害の早期警報・予測・リスク・損失評価。
国家自然科学基金、国家科学技術難関攻略計画、「863」計画など50数項目の科学研究プロジェクトを担当。100数本の論文を発表、8部の著作を出版。海洋衛星リモート・センシング監視測定国家と業界技術規程など20数件の規程を担当。国家海洋局などの省庁の科学技術成果賞10項目を獲得。新型実用特許1件、ソフトウェア著作権2件、遼寧省科学技術成果1件。

共著者:王 祥

 熱汚染とは、石炭・石油などによる工業生産に伴って発生する熱エネルギーが、大気中や海水中に放出され、気温や海水温を上昇させる現象である。沿海地区の開発と経済発展に伴い、海水の熱汚染問題はますます深刻になっている。火力発電所、原子力発電所などからの冷却水の排出、石油、化学工業、製紙のなど工業廃水にも大量の熱エネルギーが入っている。熱エネルギーが水体に排出された後、水温の上昇により、生物の異常と死亡を招く恐れがあり、生態環境に対する影響は深刻である。そのため、熱汚染に対する研究は非常に重要であり、意義のあることである。

 リモート・センシングによる海水面温度の観測は、熱汚染を監視・測定する手段の一つである。1800年、イギリス人科学者ハーシェル氏(Herschel)により赤外光が発見された。200年以上が経った現在、赤外線技術は急速な発展と進歩を遂げた。TIROS-Ⅱ気象衛星が打ち上げられた20世紀60年代から、人類は赤外線リモート・センシングで海水面温度の観測を行ってきた。今まで、AVHRR、MODISなど多くの赤外線リモート・センシングデータは海水面温度の観測に運用されている。4キロメートルの解像度のMODIS Terra/Aquaなど多くの海水面温度の観測製品が作られた。しかし、数キロメートルの解像度の設備は、海岸と陸地にある水体など狭い地区を観測するには、まだ技術力的には不十分である。赤外線リモート・センシング技術の進歩と解像度の高まりに伴い、海外にはTMの120m、ASTERの90m、ETM+の60mなどの高い空間解像度の熱赤外線リモート・センシング設備が現れた。中国において、熱赤外線技術はまだ遅れているが、CBERS-02 IRMSSの156m、HJ-1B IRSの300mなど比較的高い解像度の熱赤外線リモート・センシング設備が作られた。沿海地区の熱汚染リモート・センシングの参考となると考え、本論文は、熱汚染リモート・センシングの観測における高い空間解像度の衛星の運用の現状を紹介する。

1 関連理論

1.1 海水面温度について

 海水面温度SST(Sea Surface Temperature)とは、海洋表層の一定の深さの水体の温度のことである。深さにより、「表皮水温(Skin temperature)」と「現場水温(Bulk temperature)」に分けられている。「表皮水温」とは、海の表面の温度のことである。杜勇などの研究によると、「海面の赤外線輻射は海表面の水分子を通じて把握されるものであり、衛星リモート・センシングの観測温度は海水の表皮水温である。赤外線技術による観測は、0.1ミリメートル以内の深さの水温の観測である。中国において、「現場水温」の定義は統一されておらず、一般的には0.5~1.0mの深さの海水温度を「現場水温」と称している。海外の場合、0.5~1.5mの深さの水温を「現場水温」と称するのが一般的である。「現場水温」は接触方式の温度測定によって測定されるのが一般的である。

1.2 熱赤外バンド海水面温度の逆演繹法

 自然界において、熱力学温度(Kinetic temperature)より温度の高い物体から常に一定のエネルギーの電磁波が放射されている。その電磁波のエネルギーと波動のスペクトル密度は温度の関数となっている。温度が高くなると、電磁波のエネルギーも増大し、エネルギーの最大波長が短くなる。Planck法則によると、黒体輻射スペクトルの特性は次のようにまとめることができる。

図1

 ここで、Bλ(T)は黒体輻射スペクトルの強さ、λは波長、hはプランク定数、cは光速、kはボルツマン定数、Tは熱力学温度である。

 Planck法則から、黒体輻射スペクトルの強さ、温度、波長の定量的関係が分かる。上記の公式によると、温度が確定された後、Planck法則によってエネルギー源のスペクトル分布を明らかにすることができ、そのエネルギーのピーク時の波長を推定することが可能である。逆に、物体のエネルギー分布と輻射スペクトルの強さから、物体の実際温度を知ることもできる。これは、海水面温度が逆演繹法でわかる理論基礎となっている。リモート・センシング逆演繹法で推定した海水面温度の熱赤外バンドの波長範囲は10.4~12.5μmである。

2 衛星熱赤外SST逆演繹法

 TIROS-Ⅱが打ち上げられて以来、学者たちは衛星リモート・センシング技術とデータに基づく温度逆演繹法研究を行ってきた。リモート・センシング応用研究の深まりに伴い、放射率(emissivity)が決まっている場合、放射線輸送方程式に基づく多くの逆演繹法が運用されている。その代表的な3つの方法をここで紹介する。

2.1 単一熱赤外バンド法

 単一熱赤外バンド法とは、衛星リモート・センシングの熱赤外バンドに基づき、温度の逆演繹を行う方法であり、おもに単一バンドのリモート・センシング設備で運用されている。この方法では、大気の湿度、温度などのデータに基づき、一定の大気モデルで大気輻射と大気透過度を推定し、放射線輸送方程式によって対象の輻射光度を算出する。その体表的な例は、Wengなどによる逆演繹法、覃志豪などによる計算方法、Jimenez-Munozなどによる普遍熱赤外バンド法などがある。

2.2 「Split Window法」

 「Split Window法」は1975年にMcMillinによって発表され、もっとも早く水体表面温度の逆演繹法計算に運用された。「Split Window法」では、少なくとも2つのバンドの衛星熱赤外輻射のデータに基づき、2つのバンドにおける大気の吸収率の違いを利用し、大気の影響を排除・較正する。2つのバンドの輻射の光度の線形結合で温度を算出する。隣接する赤外線バンドによる方法がリモート・センシング設備に運用されている。「Split Window法」は次のようにまとめることができる。

図2

 ここで、TSは地表温度、T4とT5はそれぞれ隣接する2つの赤外線バンドの光度温度、A0、A1、A2は大気状況による放射率の係数である。

 この「Split Window法」の改良の研究も進んでいる。たとえば、BeckerとLiは「局地におけるSplit Window法」を発表し、WanとDozierは「通用Split Window法」を打ち出し、NiclosなどはMODIS-31、32バンドのデータに基づく逆演繹法研究を行っている。

2.3 多角度法

 多角度法は単一バンドの多角度法と多バンドの多角度法からなっている。単一バンドの多角度法の場合、異なる角度から同一物体に対して観測する際、大気ルートの違いにより、大気吸収も異なり、違う角度から観測した光度の線形組み合わせで大気の影響の排除・訂正が可能となる。多バンドの多角度法はどの角度から観測しても特定な地区の地表温度は一致していることに基づいている。異なるバンド、異なる角度における大気効果の異なりによって大気の影響を排除・校正し、地表温度を逆演繹する。たとえば、ATSRセンサの11μm・12μmバンドで、0°と55°の観測角度で観測したデータに基づき、次のような多バンド多角度の方程式にまとめることができる。

図3

 ここで、TSは地表温度、Tθ11、Tθ12はそれぞれ11μm、12μmバンドの光度温度;A0,θ、A1,θ、A2,θは地表発射率と大気状態による係数である。

表1 衛星センサ熱赤外バンドの比較

表1

3 高い空間解像度衛星データSST逆演繹法

3.1 Landsat TM/ETM+ SST逆演繹法

 Landsat TM/ETM+は単一の熱赤外バンドであり、そのバンドの設定は10.4~12.5μmにされており、解像度が異なっている(表1を参照)。上述した各種の計算方法の中、単一熱赤外バンド法に適合している。

3.1.1 覃志豪による単一ウインドウ計算方法

 放射線輸送方程式における大気データの影響を排除するため、Landsat TM6に対して温度逆演繹の単一ウインドウ計算方法が覃志豪などにより発表された。その絶対誤差は0.4℃以内という。計算方法の方程式はつぎのとおりである。

図4

 ここで、TSは地表温度、a6、b6は復帰係数である。具体的には、a6=-67.35535, b6=0.458608である。ε6は地表放射率、τ6は大気透過度、T6はセンサの光度温度、Taは大気の平均温度、T0は低層気温である。

 覃志豪などは、大気中の水蒸気の含有量と低層気温に基づき、大気透過度と大気平均温度の推定方程式を発表している。(表2、表3を参照)

表2 覃志豪などによるLandsat TM6の大気透過度推定方程式
切断面 水蒸気の含有量w(g/cm2) 大気透過度推定方程式
高温切断面
低温切断面
0.4~1.6
1.6~4.0
0.4~1.6
1.6~4.0
t6=0.974290-0.08007w
t6=1.031412-0.11536w
t6=0.982007-0.09611w
t6=1.053710-0.14142w
表3 覃志豪などによるLandsat TM6の大気平均温度推定方程式
大気モデル 大気平均温度推定方程式
1976年のアメリカ標準大気 Ta=25.9396+0.88045T0
熱帯大気 Ta=17.9769+0.91715T0
中緯度夏季大気 Ta=16.0110+0.92621T0
中緯度冬季大気 Ta=19.2704+0.91118T0

3.1.2 刑前国などによる改良計算方法

 刑前国などは、覃志豪の方法に基づく計算方法の改良を発表し、Landsat TM/ETM+データを利用し海岸海水温度の逆演繹を行った。その後、Landsat5 TM通過当日、大亜湾海域において海表温度の同時測量を行った。水温は水面下0.5mの深さにおける20箇所の温度に基づいており、それぞれの実際温度は16.47℃~18.45℃であった。逆演繹によるそれぞれの温度は、実際測量温度より2.40℃低いことが分かった。Landsat7 ETM+については、同日衛星通過時のMODIS Terra TIRデータによるSST結果と比較したら、両者の違いは0.23℃±0.57℃であった。その計算方法の方程式(4)の示しているとおりである。

 刑前国の計算方法は、今まで大気モデルによる大気温と水蒸気の含有量の方法を推定する方法をやめ、大気の平均温度と水蒸気の含有量を推定する通用モデルを提示した。

図5
図6

 ここで、wは水蒸気の総量、Tzは地表までz(km)のところの大気気温、ρvzは地表までz(km)のところの単位体積の水蒸気量、zは高さ(km)、ρvは海表面の水蒸気の含有量である。

3.1.3 Y.Sugaなどの計算方法

 Y.Sugaなどは日本西部広島海湾地区のLandsat7 ETM+熱赤外ハンドのデータに基づき逆演繹を行い、low/high gain状態における放射光度と温度転換の近似方程式を発表している。地面における同時観測データをもとに、逆演繹の結果が検証された。Low gain状態のデータ相関係数は0.9821~0.9994であり、high gain状態の係数は0.9653~0.9987である。夏季における温度差の変化は+0.7℃~-1.5℃、秋季は+0.4℃~-0.9℃、冬季は-1.6℃~-3.4℃、春季は+0.5℃~-0.5℃である。冬季の温度差が比較的大きく、その他の季節の温度差は0~1.5℃の間にあることが分かった。計算方法の方程式は次の通りである。

図7

 ここで、λは波長、Lλはバンドスペクトルの輻射度、hはプランク定数、kはボルツマン定数、Tは地表温度、cは光速、τλは大気透過率、ελは発射率である。

 Y.Sugaなどがlow/high gain状態における光度と温度の転換の近似方程式を発表している。

図8

3.2 CBERS-02 IRMSS SST逆演繹法

 CBERS-02 IRMSSの熱赤外輻射の特性(表1を参照)に基づき、張勇らはJimenez-Munozなどによる普遍単一バンド方法を改良し、温度逆演繹実験を行った。2004年8月17日に青海湖の野外実測データに基づく逆演繹検証によると、リモート・センシングによる逆演繹温度は実際に測った水温と0.09℃の差がある。その計算方法は次の通りである。

図9

 ここで、Lsensorはセンサの受けた熱輻射の強さ、Tsensorはセンサ光度の温度、λは有効波長である。

 C1=1.19104356×108(W•m-2•sr-1•μm-1);C2=1.4387685×104(μm•K)。

 φ1, φ2, φ3は大気にある水蒸気の含有量ωの関数であり、以下の公式によって算出される。

図10

 張勇などはIRMSSセンサの熱赤外バンドのスペクトル関数に基づき、Jimenez-MunozとSobrinoによるセンサバンド関数と水蒸気含有量関連の大気状態の方程式を発表し、CBERS-02 IRMSS TIRに通用する大気状態方程式を提示した。

図11

3.3 ASTER SST逆演繹法

 ASTER TES(Temperature/Emissivity Separation)方法は、ASTER温度製品のメーカーがよく利用している逆演繹法である。熱赤外線の高スペクトルまたは多スペクトルへの観測に基づく温度と発射率の計算法である。

 ASTER TES計算法は主に4つ部分からなっている。まず、最大発射率maxを推定し、NEM(Normalized Emissivity Method)モジュールによって目標の表面温度Tbを予測し、輻射光度Lbから大気の輻射(1-max)Sbを取り除き、目標温度の推定値と目標の輻射光度を明らかにし、反復最適化の方法で反射の環境輻射を取り除く。その次に、RAT(RATIO Algorithm)モジュールを通じて、バンド放射率bとすべてのバンドの平均値で「相対放射率b」を算出する。次に、MMD(Maximum-Minimum Difference)と最小放射率の関係を通じて最小の放射率min を確定する。最後、反射のAtmosphere Downward Radianceと放射率との偏差を確認する。研究結果によると、逆演繹温度の誤差は1.5K以内であり、放射率の誤差は0.015以内となっている。具体的には次の計算公式の示しているとおりである。

図12-19

 ここで、R’、T’、ε’はIterative ProcessingにおけるR、T、ε計算の中間変数、C1、C2はPlanck定数、λbはバンドの中央波長、Bb(Tb)は温度Tbの黒体放射、L'bはセンサが観測した輻射の強さ、S↓bは大気のDownward Radianceである。

3.4 HJ-1B SST逆演繹法

 中国は2008年9月6日に環境観測と災害減少を目的とするHJ-1A/1B衛星を打ち上げた。そのなか、HJ-1Bの搭載している赤外マルチスペクトルカメラ(IRS)は単一の熱赤外線バンドである(表1を参照)。打ち上げ後の経過期間はまだ短いため、衛星のデータの逆演繹計算成果はまだ少ない。代表的なのは段四波などによるHJ-1B データに基づく単一バンドの計算方法である。

 段四波などは覃志豪とJimenez-Munozの計算方法を参考にし、HJ-1Bの熱赤外線のスペクトル特性に基づき、計算方法を改良した。改良された計算方法に計算方法の精度評価、指数敏感性分析、計算誤差分析などが加えられた。段四波などが温度逆演繹に使用したHJ-1B 熱赤外線リモート・センシング画像は、衛星搭載の AHSアナログデータに基づいて作られたものである。改良された覃志豪の方法で温度逆演繹を行った際、パラメーター地表放射率の誤差は0.01、大気透過率の誤差は0.02、大気平均温度の誤差は2Kであった。逆演繹による温度の範囲は299.9K~352.7Kであり、アナログ温度の範囲(301K~352K)に非常に近いことが分かった。温度の差値は-0.95Kと-1.25K近くに集中しており、逆演繹温度はアナログ温度より1.2K低いことが分かった。改良されたJimenez-Munoz計算方法で逆演繹を行った際、パラメーター地表放射率の誤差は0.01、大気水蒸気の含有量の誤差は0.2g/cm2であった。逆演繹による温度の範囲は300.0K~352.5Kであり、アナログ温度の範囲の301K~352Kに近い。温度の差は-0.65Kと-0.85K付近にあり、逆演繹温度はアナログ温度より0.8K低いことが分かった。

3.4.1 覃志豪の方法の改良

 方程式(4)の計算方法に基づき、段四波などはその計算方法を改良した。その中、係数a6、b6は次のように修正された。画像温度の変化範囲は0~30℃にある際、a6=-60.8969,b6=0.439078という。変化範囲は20~50℃の間にある場合、a6=-68.3301,b6=0.464012という。大気透過率の推定は次のように改定された。

図13

 ここで、τ6は大気の透過率、ωは水蒸気の含有量である。地面に近い大気の温度T0により大気平均温度Taを推定する方程式の改正は、表4の示しているとおりである。

表4 大気平均温度推定方程

表4

3.4.2 Jimenez-Munozなどの方法の改良

 方程式(9)の計算方法に基づき、段四波などはその計算方法を改良し、水蒸気の含有量の関数φ1,φ2,φ3を次のように改定した。

図21

 ここで,ωは水蒸気の含有量である。

3.5 逆演繹精度の影響因子

 熱赤外バンドの温度の定量逆演繹は、多くの要素の影響を受けている。

 熱赤外リモート・センシングの理論の基礎は、地表熱量の平衡である。その中、地表温度は多くの要素に左右されている。つまり、温度変化を発生させるのは、太陽輻射と大気輻射だけではなく、大気急流とUNDERLYING SURFACE'S CHARACTERISTICS などの影響をも受けている。そのため、定量温度逆演繹モデル指数はすべての影響因子を含めなければならない。

 まず、表面放射率の不確定な面である。地表放射率は、地表成分、物理状態、観測視角、波長変化などの要素と関連しているため、実験室でも野外でも連続的に放射率を測定することは困難である。

 そして、大気影響効果の較正は極めて複雑である。熱赤外センサによる測量値は、地表放射率、地表温度の影響を受けているだけではなく、地表とセンサ間の大気の構造の影響をも受けている。そのため、大気の影響効果を較正するのは極めて困難である。「Split Window法」においては、隣接するバンドの大気の異なる吸収率で校正できるが、単一バンド法の場合、単一のバンドのデータしかないため、その他の大気較正方法で大気の影響を排除するしかない。

 その他、熱赤外リモート・センシングの空間解像度は視光線と近赤外バンドよりはるかに低い。低い空間解像度により、複合画像が生じる。これにより、理論的な分析は困難となり、つまり異なる温度の複合画像の放射率を定義するのは困難である。それと同時に、実際的な測量と定量計算も困難となっている。実際の運用の場合、その変わりに複数の輻射率の平均値を使うのが一般的である。

 最後に、データ検証の誤差が存在している。衛星で観測しているのは海洋の「表皮温度(skin temperature)」であり、その深さは1mm以内となっている。船舶測量の「現場水温(bulk temperature)」は0~0.5mの深さの温度であり、両者の間の差は平均的には0.3K前後であり、実際には-1.4~+1.2Kに達することもある。

4 問題点と展望

 熱赤外線のリモート・センシングは複雑なシステム工学であり、地表の放射率測定と一定範囲内の放射率の推定などの困難が存在しているが、精確化・定量化は今後の研究方向である。熱赤外リモート・センシングの技術をさらに高めなければならない。

 逆演繹、地表温度、放射率を分離することは今後の課題となっている。異なる熱赤外バンドにおける大気スペクトルは、「N+1」個の未知数のN個の連立方程式を構成する。一定の仮定を通じて「N+1」個の未知数を算出することができ、つまり地表温度と放射率を同時に算出することができる。それについて研究者らの意見は一致していない。

 大気指数の逆演繹と大気影響の較正は、リモート・センシング定量化における重要な手続きである。リモート・センシング情報には、多くの大気影響要素が入っている。大気指数の測定は困難である同時に、測定値の誤差が大きいため、大気影響要素の較正はリモート・センシング定量化の焦点となっている。現在の熱赤外線定量リモート・センシングにおいて、主に2つの大気影響校正技術が運用されている。1つは「Split Window」技術であり、もう1つは逆演繹である。これらの方法はリモート・センシングに基づき、リモート・センシング設備の各バンドの情報からできるだけ多くの大気情報を収集し、大気吸収などの影響に対する較正を行っている。

 放射率の方向とその測量は今後の課題となっている。地物の輻射の方向が異なるため、大気校正の改善とつながっている。多角度、多スペクトル、多極化のリモート・センシングはより信頼できる情報を提供してくれる。地物の放射率を直接測量することによって、放射率の分布、多角度の放射率などの情報を入手することが可能となる。このような研究構想の実現は、定量的熱赤外リモート・センシング研究に大きく貢献することであろう。

 リモート・センシング施設の重要問題への取り組みも今後の課題である。リモート・センシング施設のスペクトル解像度と空間解像度がさらに改善されるため、地物スペクトルの特性と一定地区の熱汚染の研究はさらに進むことであろう。それと同時に、赤外線のレーザーライダーの開発と応用により、赤外線リモート・センシングの研究も前進すると考えられる。空間解像度と情報量など面において画期的な発展が期待できる。リモート・センシング施設の精度を高めることも重要である。設備が宇宙で運行されるため、設備老化などの原因で精度が低下することがある。設備の精度の保障ができなければ、リモート・センシングの研究もうまくできない。今後は、リモート・センシング施設の精度を高めなければならない。

 データ検証の誤差を低減させることも重要な課題である。現在、海表温度の逆演繹、船舶測定データなどの面において問題が残っており、海水温度のデータには誤差が存在している。今までのデータやArgoなど信頼できる測量データを通じて誤差を低減させるのが現在のやり方であるが、今後は逆演繹の計算方法などを通じて誤差を低減させる必要がある。


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