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嫦娥1号のレーザ測距データ及び月全球のDEMモデル

2011年 9月 12日

李春来

李 春来(Li Chunlai):中国科学院国家天文台長補佐

1965年生まれ。研究者、大学院(博士課程)指導教員。中国科学院国家天文台長補佐、月・深宇宙探査科学応用センター主任、中国月探査第3期プロジェクト副総設計師、中国月探査プロジェクト地面応用システム総設計師などを担当。 1985年に中南砿冶学院(現在の中南大学)地質系を卒業。1988年8月~2001年12月、中国科学院地球化学研究所・天体化学専攻(大学院課程終了後、研究に従事)。1993年10月~1995年10月、同所副研究員、博士課程指導教員、研究室主任。2002年1月、中国科学院国家天文台に移り現職。 長年にわたり地球化学及び天体化学の研究に従事。月探査科学及び応用課題を長く研究。現在は月探査、隕石学、空間断片、スペースデブリ、隕石衝突、惑星リモートセンシングなどを主に研究。発表論文40篇あまり、専門書の著書・共著署は4冊。

 嫦娥1号(Chang’E-1、略称CE-1)は中国初の月周回探査機である。2007年10月24日18時5分に長征3A型運搬ロケットによる宇宙への打ち上げが成功し、中国の深宇宙探査の幕が開いた。CE-1は地球を周回する軌道修正飛行を6日間行った後、10月31日に月遷移軌道に入り、11月5日に月重力場に捉えられ月周回軌道に入った。2007年11月20日16時49分、CE-1に搭載されたCCD立体カメラが作動を開始して中国初の月面画像を撮影し、11月28日2時22分にはレーザ高度計(Laser Altimeter、略称LAM)が作動を開始してCE-1から月面までの最初の測距データを取得した。2008年10月24日までにCE-1は1年間の飛行任務を計画通り終え、搭載機器のCCD立体カメラ及びレーザ高度計などの科学探査器から価値の高い探査データを大量に取得し、各科学探査任務を滞りなく終了した。2009年3月1日、CE-1が月面の「豊かの海(Mare Fecunditatis)」の予定されたエリアに落下するとともに、輝かしい「月探査の旅」は終わりを迎え、これをもって中国の月探査計画の第1期プロジェクトに幕が下りた。本稿では、主にCE-1のレーザ高度計のデータ取得状況、処理及び初歩的な探査結果を分析する。

1. レーザ高度計及びそのデータ特性

 レーザ高度計とは、レーザの発射と反射の時間差を利用して反射体との間の距離を計測する機器である。CE-1のレーザ高度計は上海技術物理研究所が開発し、CE-1から月面までの距離データの取得ならびに月面の地形測量・マッピングに用いられ、CCD立体カメラによる月面3D映像制作を補助する。CE-1搭載のレーザ高度計の主な技術性能及びパラメータは表1のとおり。

表1 レーザ高度計の主な技術性能及びパラメータ
パラメータ 数值
距離測定範囲 200km±25km
フットプリント直径 f200m未満
レーザ波長 1064nm
レーザ出力 150mJ
パルス幅 5~7ns
ビーム拡散角 0.6mrad
パルス繰り返し頻度 1Hz
受信望遠鏡口径 140mm
送信望遠鏡口径 40mm
望遠鏡焦点距離 538mm
距離識別率 1m
距離測定精度 5m

2. CE-1のレーザ高度計データの時間的・空間的特性

 レーザ高度計はCE-1が軌道飛行を行った1年余りの間、測距データを絶えず取得していたのではなく、段階別に連続して作動していた。2008年12月4日の時点で、レーザ高度計により軌道探査データ1000件余り、一次測距データ約912万件を取得し、空間データにおいては月全球を網羅した。CE-1のフットプリントは、月面において衛星直下点の方向に沿って時間ごとに連続配列される一連の点である。CE-1は極軌道及び円軌道を採用したため、探測周期全体の軌道傾斜角は約88.2°で、軌道周回周期は2 、衛星直下点軌跡は中低緯度地区では経度方向と基本的に平行で、高緯度地区では交差点が密集した。CE-1の軌道高度は約200kmで、レーザ高度計による測距繰り返し頻度は1Hzであったため、レーザ測高データの衛星直下点に沿った軌跡方向(経線方向に近似)の測距間隔は約1.4km、垂直軌道方向(緯線方向に近似)の測距間隔は約17.8kmで(嫦娥1号の衛星直下点軌道間距離は約35.5km、軌道周回周期は2 )、かつ、緯度の増減に従い、南北緯60°付近のデータ測距間隔は(緯線方向に)約3km、南北緯80°付近のデータ測距間隔は(経線方向に)900mに達する。

 LAMデータの月面網羅状況の統計を取るため、われわれは月面を等間隔の規則的な格子に区分し、LAMデータ912万点の全月面における空間的網羅状況を集計した。その結果、3km格子内に1点以上の一次測高データを含む格子は51.6%を占めた。データ網羅密度から見ると、低緯度地区のデータ網羅密度は比較的低く、緯度の増加に伴い密度は漸増し、両極地区が最大となった。

3. レーザ高度計データの処理

 レーザ高度計は衛星軌道でレーザの送受信時間を計測した後に距離テータに直接変換するため、LAMの一次データは衛星の固体月面に対する測距値となる。しかし、この一次データには「標高」の概念が必要となるため、一連のデータ処理を経る必要がある。これには主に無効データの削除、システムの修正、幾何学的定位及び標高計算などがある。

3.1 無効データ及び冗長データの削除

 軌道設計及び実際の軌道測定データに基づけば、CE-1の軌道高度は200km±25kmの範囲にあり、月面地形の最大起伏は20kmであるため、レーザ高度計の合理的な測距値もこの範囲内にあるはずである。異常信号、月面のノイズ、月面地形の非平坦さ、信号対雑音比などの原因により、一部の測距値示度がこの範囲を超えるとわれわれはこれを無理数と見なし、削除する必要が生じる。このほか、測距データの精度を確保するため、毎回のレーザ測距時(レーザ送受信をもって1回とする)にLAMは必ず3回分のサンプルを取るため、毎回2点の冗長測距データを削除する必要がある。

3.2 システムの修正

 CE-1の打ち上げ前に、LAM地表実証試験により機器の測距データのシステム修正係数(水晶振動子による量的誤差)及びシステム補正係数(電子系統の遅延によるシステム誤差)が測定されていたため、一次測距データに対するシステム修正の際にこれ修正データを使用する必要がある。

3.3 LAMデータの幾何学的定位及び標高計算

 レーザ高度計の測距データは空間概念を有するデータポイントであり、その空間位置は機器、衛星及び月面測定システムのパラメータにより観測方程式を構築して計算する必要がある。LAMデータの空間定位に関係する主なパラメータには、データ取得時刻における衛星軌道データ、衛星の姿勢パラメータ、機器の幾何学的パラメータ、機器の設置データ、月の自転及び方向集中度パラメータなどがある。CE-1の軌道データには地心J2000システムを採用し、姿勢パラメータを軌道座標系とする。高度計設置に関する幾何学的パラメータには衛星本体の座標系を採用し、各座標系の測定値は月固体座標系に統一的に変換してフットプリントの空間位置を算出し、その後月面のフットプリントの月固体座標系データを大地座標系に変換し、最終的にLAMデータの月面地理座標及び標高値を得る。国際天文学連合(IAU)と国際測地学協会(IAG)の提案に基づき、月の大地測定システムは球体の月固体座標系を採用し、参考とする回転楕円体は正球体で半径は1737.4 kmを採用し、本初子午線を月正面の見かけ中心(中央の入江、Bay of the center)に設定し、経緯度方向などの定義は地球と相似の方法を採用する。これにより、CE-1のレーザ高度計データはもともとの測距データから月固体座標系下の経緯度値と半径1737.4 kmの正の月球体表面の標高値に変換される。

4. LAMデータの精度分析

 レーザ高度計データの観測方程式から、フットプリントの月面座標と標高値の精度に影響を及ぼす主な要素には、衛星からフットプリントまでの距離(機器による測距値)の精度、衛星ベクトル(軌道測定値)の精度及び機器観測方向の測定精度(姿勢測定値、機器設置パラメータにより決定)が含まれることがわかる。このほか、機器系統のノイズ、月面地形の起伏などもレーザ測距データの精度に一定の影響をもたらす。表2ではCE-1及び測定データに基づき、嫦娥1号のレーザ標高データに関する各種誤差原因及び誤差を計算した。

表2 CE-1のレーザ高度計による月面標高測定の誤差分析
誤差原因 測定機器 測定精度 誤差計算結果
月中心方向(標高) 平面
軌道測定誤差 USB及びVLBI
双方で測定
円弧データの測定・制御あり 20m(1σ) 179.6m(1σ)
円弧データの測定・制御なし 60m(1σ) 424m(1σ)
姿勢測定誤差 星センサ 起動座標系、0.15°(3σ)上回る <1m 129m(1σ)
時間測定誤差 星時計 5ms 1m(1σ) 8m(1σ)
設置機器の
測定誤差
コリメータ 設置誤差20” (3σ) <1m(1σ) 14m(1σ)
機器の
測距誤差
レーザ高度計 5m(1σ) 5m(1σ) 1m(1σ)

 表2の計算結果から、衛星軌道及び姿勢の測定精度がLAMデータの精度に影響を及ぼす最も重要な要素であることがわかる。誤差の伝播法則に基づくCE-1のレーザ測距データの最終計算結果は以下のとおりである。

(1) 円弧データの測定・制御がある状況下では、LAMデータの標高誤差は21m(1σ)、平面位置の誤差は224m(1σ)である。

(2) 円弧データの測定・制御がない状況下では、LAMデータの標高誤差は60m(1σ)、平面位置の誤差は445m(1σ)である。

 大多数のLAMデータは円弧データの測定・制御がない状況下で得られたため、CE-1のレーザ高度計データの誤差は円弧データの測定・制御がない状況下でのデータ制度を採用する。すなわち、標高誤差は60m(1σ)、平面位置の誤差は445m(1σ)である。

5. 月全球のDEM処理及び地形図の作成

 月面の数値標高モデル(DEM)の作成は月面形状・地形に対するデジタルモデリングの一種である。われわれは2007年11月28日から2008年12月4日までに得た約912万点のレーザ高度計による測高データを選択し、規則的な格子モデルを採用して月全球のDEMモデルを作成した。月全球のDEMモデルのデータ処理は、主にデータのフィルタリング、空間分解能の分析、補間及び作図の3つの手順を経る。

5.1 LAM標高データのフィルタリング

 機器系統のノイズ、月面地形の起伏、衛星軌道及び姿勢測定など、複数の段階のいずれにも誤差は存在するため、LAMの一次標高データは誤差を避けられない。一次データからDEM処理過程までのデータ誤差は伝播により拡大され、標高データ中に明らかな標高特異点をもたらし、著しいずれやねじれ現象が生じることさえある。

 標高散布における特異点データを効果的にフィルタリングするため、われわれは月全球の表面を南極(S60~S90°)、北極(N60~N90°)、中緯度の月の海(S70~N70°, W95~E95°)、中緯度の月の陸(S70~N70°,W180~W85°,E85~E180°)の4エリアに分割し、異なる標高閾値を採用してそれぞれにフィルタリング処置を実施した。フィルタリングプロセスは単軌道フィルタリングとエリアフィルタリングの2つのプロセスで完了する。

5.2 データの補間

 上記フィルタリングを経てレーザ測高データの特異点が削除されたことにより、標高データに対する補間処理に用いることができ、月全球の規則的な格子におけるDEMモデルが作成できる。

 われわれは各種補間計算法による内的精度、標高3次元化図、地形解剖について実験と比較を行った結果、クリギング補間による内的精度は200m以内に達し、嫦娥1号のLAMデータの応用に最も適していることが明らかになった。このため、われわれはクリギング(kriging)補間法を月全球のLAMデータ処理に採用した。

5.3 DEM格子の大きさ及びその精度分析

 CE-1レーザ測高データによる地図作成能力を分析し、月全体のDEM空間分解能を確定するため、われわれは格子の大きさが異なる状況下の標高データの測定誤差とDEMの精度について実験を行った。表3では、月全球の表層の8km、7km、6km、5km、4km、3km、2km格子における測距データの有無の確率及びDEM標高誤差を示した。この結果、格子が3kmを上回る状況では実際の測距データが存在する確率は50%を上回り、DEM標高誤差は58.6m(1σ)より優位で、高度計の標高測定の実際の誤差を60m(1σ)下回ることが分かった。このため、3kmを規則的な格子の大きさに選択して月全球のDEM製図を行えば標高測定の誤差を補うことができる。

表3 月全球の異なる大きさの規則的な格子を用いたレーザ高度計の実際の測距データによる網羅率の統計表
  8km格子 7km格子 6km格子 5km格子 4km格子 3km格子 2km格子
測高データ網羅率(%) 90.3 86.3 81.0 73.6 64.1 51.6 34.0
DEM標高誤差(m)(1σ) 35.2 40.3 42.1 48.3 55.3 58.6 234.2

 データ網羅率のDEM空間分解能に対する影響を検査するため、われわれは南半球の高緯度地区、赤道付近、北半球の高緯度地区の3つの実験地区を選択し、30%、50%及び100%のデータ網羅率下でのそれぞれの標高測定値の相関性とデータ誤差を分析した。

 分析の結果、データ網羅率30%による標高誤差は251m(1σ)に達し、レーザ高度計の標高誤差(60m(1σ))をはるかに上回ったものの、データ網羅率50%によるDEM標高誤差は58.6m(1σ)で高度計の誤差を下回ったため、各地区におけるフットプリントのデータ網羅率が50%以上に達した際に作成されたDEMモデルの精度がレーザ高度計による月面標高の測定精度を満たすことがわかった。上記データの空間特性に対する分析結果によれば、格子間隔3kmにおける月全球のデータ網羅率は51.6%に達する。このため、CE-1のレーザ高度計データは空間分解能3kmの月全球のDEMモデルを作成できる。

6. 月の最大標高データの測定及び分析に関する比較

 CE-1のレーザ高度計DEMモデルより月面地形の最高地点、最低地点ならびにそれらの位置を分析したところ、いずれも月の裏側に位置することがわかった。最高地点はコロレフ(Korolev)とディリクレ・ジャクソン盆地(Dirichlet-Jackson)に隣接する隆起構造上にあり、エンゲリガルト(Engel’gardt)クレータの東縁に沿って位置し、経度158.656°W、緯度5.441°N、標高+10.629 kmであった。2番目に高い地点の座標は経度159.191°W、緯度6.062°N、標高+10.271kmであり、3番目に高い地点の座標は経度159.804°W、緯度6.007°N、標高+9.576kmであった。月面地形の最低地点はいずれも南極エイトケン盆地(South Pole–Aitken Basin)内の3つのクレータ底部にある。最低地点はアントニアディ(Antoniadi)クレータ底部の南縁近くの低地にあり、経度172.413°W、緯度70.368°S、標高-9.178 kmであった。2番目に低い地点はベーリングズガウゼン(Bellinsgauzen)クレータ内の東南縁にあるクレータの底部にあり(経度148.483°W、緯度61.009°S、標高-8.973km)、3番目に低い地点はルメートル(Lemaître)クレータ内のルメートルF(Lemaître F)底部にあった(経度159.804°W、緯度61.543°S、標高-8.748km)。月全球の最大標高差は19.807kmであった。

表4 月面の最高地点、最低地点、最大標高差の測定結果の比較
注:表の標高値はいずれも1737.4km正球体の表面を基準に正規化したもの。
データ出典元 月面の最高地点 月面の最低地点 最大標高差(km)
経度 緯度 標高(km) 経度 緯度 標高(km)
CE-1(本稿) 158.656°W 5.441°N 10.629 172.413°W 70.368°S -9.178 19.807
SELENE(日本) 158.64°W 5.44°N 10.75 172.58°W 70.43°S -9.06 19.81
CE-1(上海天文台) 158.625°W 5.375°N 10.44 148.625°W 61.375°S -8.63 19.07
ULCN2005 DEM 160.656°W 3.344°N 7.939 169.719°W 69.781°S -8.910 16.849

 最高地点、最低地点及びその位置の正確さを検証するため、われわれはDEMモデル及び一次測距データの再検証を行い、かつ、画像データと結合してさらに検査を実施した。最高地点のレーザ測高データは北京時間2007-12-22 T12:19:51.727に得られたもので、フィルタリング過程において当該データは有効に維持された。当該データの一次標高値は10.632kmで、補間後のDEMモデル上の対応位置における標高値は10.629kmであった。同一の衛星直下点軌跡における、当該ポイントと連続的に観測した前後2つのフットプリント標高値は順に10.345km、10.528kmならびに10.597km、10.513kmであった。最も近い(約5km)もう1本の軌道データでは、当該ポイント付近のレーザフットプリントの標高値は10.619kmであったことから、本稿で見られた最高地点はデータ特異点ではなく、月面の実際の標高測定データであることが分かる。

 最低地点データは北京時間2008-07-15 T13:52:29.778に得られたもので、最高地点と同様の検査過程を経て、当該データも特異点ではなく実際の標高測定データであることがわかった。

 このほか、最高地点と最低地点のデータの信憑性についてさらに調べるために、われわれはこれらデータポイントをCE-1衛星のCCD画像上にオーバーレイしたところ、両者と月面地形特徴が一致したことから、最高地点と最低地点の位置は正確であるとわれわれは考える。

 表4の統計結果に基づけば、本稿でいう月面最高地点の位置と標高データは日本のSELENEの結果と最も近く、ULCN2005 DEMの結果から最も離れる。平勁松らのいう「最高地点」は本稿及び日本の結果と比較的近いが、「最低地点」の結果は本稿でいう3番目に低い地点に比較的近く、実際の最低地点の位置とは異なる。CE-1とSELENEはいずれも測距繰り返し頻度1Hzを採用し、測定点と軌道との間隔も近かったため(それぞれ約17.8km、15km)、両者の測距データの網羅分解能も同一であるはずだが、両者の最高地点データは標高値で121mの差があり、平面位置の差は約484mであった。CE-1のレーザ測距データの標高測定精度は60m(1σ)、平面位置誤差は445m(1σ)であることを考慮するなら、CE-1とSELENEの最高地点の標高データ差はCE-1の標高データ誤差の標準差のわずか2倍、平面データ誤差の標準差のわずか1倍でしかないため、双方のデータは弁別し難く、同一測定点のデータであるかもしれず(両者の差は測定誤差によるとも考えられる)、あるいは位置と標高の近い2つの測定点のデータであるかもしれない。

 CE-1とSELENEの最低地点の平面位置の差は約5.38kmで測定誤差をはるかに上回るため、CE-1とSELENEモデルで得られた2つの最低地点は異なる地点の測定データであるとわれわれは考える。本稿のCE-1モデルの最低地点はSELENEより118m低く、CE-1標高データ誤差の2倍の標準偏差の範囲にあるとは言え、CE-1のレーザフットプリントの位置が月面の実際の最低地点の位置により近い(あるいは全く同等である)可能性が極めて高い。

7. 結論

7.1 1年4ヶ月間の軌道飛行を経て、嫦娥1号は科学探査を成功裡に終えた。レーザ高度計は1000件あまりの軌道探査データを取得し、約912万点の有効な一次測距データが月全体の空間データを網羅した。

7.2 CE-1のレーザ高度計による月面のフットプリントにおける標高と平面位置の測定精度は、それぞれ60m(1σ)と445m(1σ)であった。

7.3 月全球の格子間隔3kmにおけるCE-1レーザ高度計による測高データの空間網羅率は51.6%に達した。DEM標高測定誤差は一次データの測定誤差を下回り、空間分解能3kmの月全球DEMモデルを独自に作成した。

7.4 データ処理において、単軌道フィルタリングには地学的統計法を、エリアフィルタリングには移動局面フィルタリング法を用い、偶発的な誤差を効果的に削除した。データ補間にはクリギング法を採用し、内的精度は200m以内に達し、一次測高値を効果的に維持した。

7.5 CE-1レーザ高度計により作成された月全球DEMモデルは、地形の細かい点まで表現レベルが明確で識別しやすく、ULCN2005 DEMモデルより明らかに優れている。SELENEモデルと並び、現時点で同種のデータの精度と分解能が最も高いデータである。

7.6 CE-1レーザ高度計によるDEMモデルから得られた月全球の最大標高差は19.807kmであった。月の最高地点はコロレフ(Korolev)とディリクレ・ジャクソン盆地(Dirichlet-Jackson)の2大衝突盆地の間の隆起構造上にあり、経緯度は158.656°W、5.441°N、で、標高は+10.629 kmであった。最低地点は南極エイトケン盆地(South Pole–Aitken Basin)内のアントニアディ(Antoniadi)クレータ底部の南縁近くの低地にあり、経緯度は172.413°W、70.368°Sで、標高は-9.178 kmであった。日本のSELENEのDEMモデルの結果と比較すると、CE-1のDEMモデルの最高地点とはわずかの差しかなく、最低地点とは標高値が同じであったが平面位置の差が5.38kmだったため、異なる最低地点と考えられる。


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