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火星EDLの航法、誘導、制御技術の概要及び展望

2011年 9月20日

李 爽

李 爽(Li Shuang):南京航空航天大学 副教授

工学博士。2007年、ハルビン工業大学航天学院卒(飛行機設計専攻)。2010年、江蘇省の「青藍プロジェクト」で優秀青年中核教師の育成対象に選出。主に、宇宙探査機の動力学と制御、深宇宙探査に関する教育と研究に従事。研究責任者として、国家自然基金(青年基金)、教育部博士学位授与機関基金(新教師類)、中国博士後科学基金(一等)、江蘇省博士後基金、南航創新基金で各1テーマを担当。筆頭執筆者として学術論文30編あまりを発表、うちSCIに9編、EIに20編収録。発明特許2件。国家自然基金の審査専門家。IEEE T AERO ELEC SYS、ADV SPACE RES、J INTELL ROBOT SYST、AIRCR ENG AEROSP TEC、自動化学報、航空学報、宇航学報、系統工程及び電子技術、空間科学学報などの審査専門家。

0. はじめに

 社会経済の発展と宇宙開発技術のたゆみない進歩に伴い、太陽系の他の天体を探索することで地球に対する理解と認識を深めたいという人類の望みは一層強まってきている。地球から最も近い惑星の一つである火星はさまざまな面で地球と類似しているため、人類が深宇宙探索を行う際の最初のターゲットとなっている。1962年にソ連は最初の火星探査機「マルス1号」を打ち上げ、1971年には「マルス3号」が探査機の火星着陸に初成功した。その後、米国、ヨーロッパ、日本が「バイキング号」、「マーズ・パスファインダー号」、「のぞみ号」、「マーズ・エクスプレス号」、「スピリット号」、「オポチュニティ号」、「フェニックス号」などいくつもの火星探査機を相次いで打ち上げた。火星探査活動は人類の深宇宙探査において、近年最もホットな話題となっている。

 この40年間、ソ連、米国、ヨーロッパ及び日本により合計37回の火星探査が行われたが、ミッションの3分の2が失敗に終わっている。突入、降下及び着陸(EDL;Entry, Descent, Landing)は火星探査ミッションの中で最も重要なフェーズの一つであり、なかでも航法、誘導、制御技術はEDLの難点で、ミッション全体の成否を直接決定づける。現在までの火星着陸ミッション16回のうち着陸に成功したのはわずか6回で、成功率は4割に満たない。変化の激しい地理環境(突風や砂嵐など)及び火星の大気密度の不確実性が成功を妨げる最大の障害となっている。大多数の火星の突入、降下及び着陸フェーズで現在までに採用されているのは慣性航法技術であり、軌道に対して制御を行わずエアバッグを利用して着陸時の衝撃を緩和する。従来の火星着陸で採用された慣性航法技術は装置の誤差とドリフトの影響で航法精度が低く、着陸軌道を制御しない限り着陸偏差を修正できないため(着陸誤差は楕円300km~100km)、エアバッグを利用した着陸では有効な搭載機器の質量とサイズに一定の条件が求められた。現行の火星EDLの航法、誘導、制御技術では将来の有人火星着陸またサンプルリターンにおける着陸精度及び安全性の要求を満たすことはできないため、次世代の火星EDLの航法、誘導、制御技術を発達させる必要がある。

 本稿では、過去に着陸に成功した火星探査機の航法、誘導、制御技術を典型例とし、火星EDLの航法、誘導、制御技術の歴史と現状を系統立てて概観し、既存技術の長所・短所について対照分析を行う。そして、将来の無人サンプルリターン、有人着陸及び火星探査基地ミッションを潜在的な実用目標として、次世代の高精度な火星EDLの航法、誘導、制御技術を全面的に分析し、展望する。

1. 火星EDLの概要

 一般的に火星の大気高度は125kmと考えられているため、火星EDL(Entry, Descent, Landing)フェーズは探査機が上記高度に達した時から始まり、突入(Entry Phase)、降下(Descent Phase)及び着陸(Landing Phase)を順に経るものとされる。

 火星の大気状況には、変わりやすい気候やたびたび吹く強風、砂嵐など大きな不確実要素が存在するうえ、劣悪な空力加熱環境も探査機にとって非常に大きな試練である。火星EDLの直面する主な困難は次の5点に表れている。(1) 火星の大気は希薄で、密度は地球の約1%、表面気圧は地球のわずか0.7%しかない。EDLフェーズ全体の経過時間が短いわりに状態変化が速いため、減速性能に対する要求が高く時間も限られている。(2) 地球-火星間の通信遅延は約10分であるのに対しEDLの全フェーズは6~8分しか持続しないため、着陸探査機には自立した航法、誘導、制御技術を備える必要がある。(3) 火星の環境は複雑で変化が激しく、現時点では理解が限られ不確実要素が多いため、信頼性に対する要求が非常に高い。そのため着陸探査機の航法、誘導、制御システムには一定の適応能力が求められる。(4) 探査機のデータ処理及びメモリ容量は限られることから、一部の複雑かつ精密な航法、誘導、制御計算の実用が制約を受ける。(5) 相応するシミュレーション環境及びデータが不十分なため、実際に即した実験のしようがなく、事前の予測と仮定に頼るよりほかない。

2. 火星EDLの航法、誘導、制御技術の歴史

 火星の着陸に成功して探査活動を実施している探査機は現時点で6機あり、それぞれ「バイキング1号」(Viking 1)、「バイキング2号」(Viking 2)、「マーズ・パスファインダー号」(MPF)、「マーズ・エクスプロレーション・ローバーA」(スピリット号、MER-A)、「マーズ・エクスプロレーション・ローバーB」(オポチュニティ号、MER-B)、「フェニックス号」(Phoenix)である。

 突入フェーズ(Entry Phase)では「バイキング号」が揚力体の設計を採用したのを除き、他のミッションはすべて無揚力の弾道式突入を採用している。また、「バイキング号」を含むすべてのミッションで閉ループを用いない誘導制御システムを採用し、再突入軌道に対していかなる制御も行わなかった。「バイキング号」と「フェニックス号」は自律の姿勢制御システムを持つが他の探査機にはない。火星の過酷な空力加熱環境の制約により、従来の火星再突入で使用できる航法センサは慣性計測装置(IMU,Inertial Measurement Unit)しかなかった。初期状態に大きな不確実性が存在し、ジャイロスコープと加速度計のドリフト量は未知数であったため、外部の空力環境の激しい変化のもとではIMUに基づく推測航法では航法精度が低いうえ、閉ループを用いない軌道制御では再突入軌道が予定軌道から逸脱した後すぐに修正できないため、ミッションの着陸精度に対する要求(誤差楕円が一定の数値を下回ること)を満たすためには、再突入時の探査機の状態推測値がEDL開始前にディープスペースネットワークを通じて探査機に高精度に伝達されている必要がある。

 現在、降下フェーズ(Descent Phase)で用いられているのはディスク‐ギャップ‐バンド式超音速パラシュートで、構造的に超音速での安定性が良好だが減速効果は芳しくない。パラシュートの素材と構造上の制約により開傘時のマッハ数は大きすぎてはならず、現在の技術レベルでは開傘時はマッハ2.5を上回らないことが要求される。これにより探査機の滞空時間が短くなるうえ、突風の影響を受けやすく、機動能力がなくなりやすいことから、着陸時の楕円誤差半径が比較的大きくなってしまう。「バイキング号」と「フェニックス号」は姿勢センサと水平速度のためにドップラーレーダを搭載した。一方、「マーズ・パスファインダー号」と「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」は質量の制約からドップラーレーダを搭載しなかったが、「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」には光学航法カメラが搭載され、降下時の画像処理により水平速度を推算した。「バイキング号」と「フェニックス号」はエンジン降下による着陸を採用したため、最後の着陸フェーズで姿勢制御を行う必要があり、着陸速度はゼロに近かったが、「マーズ・パスファインダー号」と「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」が採用したのはロケットによる減速とエアバッグとの組み合わせにより着陸時の衝撃を緩和する方式で、姿勢制御を必要としなかった。これら火星ミッションの着陸機はいずれも障害検知能力と忌避能力を持たなかったため、着陸時の安全性能は低かったうえ、質量は小さく、着陸地点の海抜が低かったため、着陸誤差は非常に大きかった(数百kmオーダー)。加えて、着陸フェーズでは外部環境の影響を大きく受けることから、今後のサンプリリターンや有人火星着陸、火星基地などのミッションにおける着陸精度や安全性の要求を満たすことはできない。

3. 火星EDLの航法、誘導、制御技術の展望

 NASAは2011年秋に打ち上げを予定している「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL,Mars Science Laboratory)で、既存の技術をベースにいくつかの新技術を採用している。このほか、NASAやESAの今後の火星探査計画に含まれるサンプルリターンや有人火星着陸ミッションにはさらに質量の大きな着陸機が要求され、着陸海抜もさらに高くなるうえ、高精度な着陸及び自律的な障害忌避能力が要求される。これらミッションの「過酷な」要求を満たすために、高精度で自律的なEDL航法、誘導、制御技術は不可欠である。

 現行の火星EDL航法、誘導、制御技術における問題及び将来の発展について、本稿では主に次の7つの面に分けて実現可能な解決の道筋を系統立てて概観する。

3.1 新たな非線形性評価による計算法を開発し、探査機の状態推測に対する精度を高める。

 従来の火星EDLで採用した推測航法ではIMUの出力角速度と加速度情報に対して積分を行い、姿勢、位置及び速度の状態量を得たが、慣性計測装置のドリフトと偏差の影響が大きかったうえ、誤差が時間に伴い累積したため、外部からの修正がない状況下では精確な推測状態量を得るのが非常に難しかった。この難題を解決するため、IMU測定出力を外部からの測定情報として、動力学モデルにより帰納された推測状態量を修正することができる。これらの方法を用いれば従来の推測航法で誤差が時間に伴い累積し、伝播する問題を効果的に解決することができるが、精確な数式モデルが必要となる。EDLのプロセスにおいて、火星の地理環境パラメータの正確さはモデルの精確さに影響を及ぼす重要な要素の一つである。これらパラメータの不確実性は、マルチモデル適応またはニューラルネットワークを利用してパラメータを推測することにより正確さを高めることができる。現在、プロジェクトで応用されている誘導フィルタの大部分は拡張カルマンフィルタ(EKF)であるが、EKFの線形化処理ではシステムの非線形性が強い際は誤差が大きくなることがある一方、粒子フィルタ(PF)やUnscentedカルマンフィルタ(UKF)には線形化のプロセスがなく、この問題を適切に回避できるために推測精度を大幅に向上できる。しかし、PF、UKFはEKFに比べ計算の負担が大きいことから、現在の研究では、いかに計算の複雑さを減らして効率を向上し、実用に移すかに重点をおくべきである。

3.2 新たな航法の組み合わせ方を発達させることにより、相対的な航法精度を向上させる。

 火星軌道上の潜在的または既存の航法標識資源を利用し、たとえば火星の航法ネットワークまたは火星ミッションの軌道上で運行するオービタは、衛星間測定及び通信の組み合わせを通じてナビゲートすることができる。現在のところ、慣性計測に基づいた推測航法は火星の突入フェーズで採用される唯一の航法で、航法誤差は時間に伴い累積して伝播されることから、外部測定によるドリフトと偏差の修正に迫られているため、IMUに衛星間無線測定を加える組み合わせ航法は非常に良い選択肢の一つと考えられる。着陸機の耐熱シールドが投棄された後は、レーダ高度計、光学カメラ、レーザレーダなどの航法センサにより高度、画像、速度などの情報が得られるが、これら計測情報を利用していかに精確な航法情報を得るかが現在の火星EDL航法、誘導、制御技術研究の関心事の一つである。光学航法カメラ、レーザレーダ、IMUによる航法測定にはいずれも位置、速度、姿勢などの情報が含まれるため、複数のセンサによる情報融合技術を通じて、各種有用な航法測定情報を総合的に利用することで航法精度を向上させることができる。近年、航法カメラは重量が軽く、エネルギー消費が小さいなどの特徴から航空宇宙分野で広く採用されており、陸エリアの地形情報のみならず、適切な画像処理を経て得られた位置、速度、姿勢などの情報について視覚的航法[23]を実施できる。得られた情報の種類により、画像処理方法は大きく次の3種類に分けられる。一つ目は、リアルタイムで得られた降下画像と火星表層の既知の地形情報を比較し、地形照合計算法を運用して探査機の位置情報を確定すること。二つ目は、ある特定地点を追跡することで水平運動の速度情報を確定すること。三つ目は、画像中のいくつかの特定地点の相対位置により姿勢情報を確定することである。光学/視覚的航法の重要技術としての画像処理計算法には、一般的に処理量が大きいという欠点があり、これが光学/視覚的航法の普及に制約をもたらしている。視覚補助慣性航法は視覚と慣性航法の長所を統合すると同時に、単一の航法による不足を克服することで、相対的な航法精度と信頼性を高めている。

3.3 軌道誘導と制御により突入状態のリアルタイム修正を実現する。

 次世代の火星探査機は基本的に「バイキング号」の揚力体構造の設計理念を受け継いでおり、重心が圧力中心から一定距離離れていることで探査機が一定の迎角(トリム迎角)で飛行し、生じる揚力により突入軌道に対して一定の制御と修正を行う。「バイキング号」は揚力体構造の設計を採用したとは言え軌道のリアルタイム制御はせず、より良好な減速効果のみを目的としていた。ロール角の制御を通じて軌道を制御することで着陸地点の分散誤差を減らし、着陸の安全性を高めることができる。火星EDL軌道の誘導・制御方法は非常に多いが、大きく次の2つに分類できる。一つ目は基準軌道を追跡する方法で、あらかじめ既知のデータにより基準軌道を設計しておき、その軌道を追跡するよう探査機を制御する。二つ目は状態推測に基づき軌道を修正する方法で、現在の状態と動力学モデルに基づき終着時の状態値を予測し、終着状態の期待値との差により現行軌道を修正する。基準軌道追跡の長所はシンプルで実現が容易であることだが、欠点は線形化に基づくため基準軌道と実際の軌道との差が大きい場合に線形化仮説が成立せず、誘導・制御誤差が拡大する点にある。また、基準軌道追跡法には固定された1本の基準軌道があるのみで、空気動力学と大気密度パラメータに大きな変化がある場合に、効果的な制御という目的を達成できない点にある。一方、状態推測に基づき軌道を修正する方法の長所は、探査機の状態や大気パラメータが変化した際に既存の予定軌道を変更して誤差を減らせ、制御システムに対する要求が低く、一定の環境適応能力がある点にある。しかし、欠点も非常に明らかで、この方法は正確な動力学モデルと大気モデルにより探査機の終着時の状態を予測しなければならない。現在の火星の地理環境に対する理解と探査機のデータ処理能力を鑑みれば、一つ目の方法が近い将来の火星EDLミッションによりふさわしいが、二つ目の方法のほうが将来性があり、次世代の火星EDLミッションにおける突入軌道誘導及び制御プランとして最初の選択肢となろう。

3.4 探査機の飛行状態や迎角、横滑り角、マッハ数、温度などの相関パラメータについてリアルタイム測定を実施する。

 「バイキング号」では動態圧力変換器を使用しており、状態精度に顕著な向上は見られなかったものの、制御システムのロバスト性[22]を大幅に向上させた。2012年に着陸予定の「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」では、熱シールドにはめこまれた温度圧力センサをEDLプロセス関連データの収集に使用する。これら測定データを通じて、火星の大気モデルを一層正確にして不確実性を減らすことができ、最終的には迎角、横滑り角、マッハ数、動態圧力、温度などのリアルタイム計測ができ、誘導・制御精度を効果的に高められる。

3.5 新型の超音速・減速パラシュートを進化させ、降下フェーズにおける軌道制御を実現し、環境などの不利益な要素による影響を減らす。

 これからの着陸探査機では質量が増加するため、従来の円型パラシュートでは素材と構造上の制約により開傘時のマッハ数が低減するうえに機動能力がないことから、将来的に要求される精確な着陸の必要を満たすことができず、新型の超音速・減速パラシュート[38]の研究に迫られている。新型のパラフォイルは適切な機動能力を提供することができ、アポジキックモータとの組み合わせで、誘導と制御により探査機の制御可能な降下を実現する。もう一つの全く新しい減速方式は膨張減速機であり、エアバッグの膨張により増大された抵抗係数により減速効果を達成する。この方法ではマッハ5のときに開傘する。素材と関係分野の発展に伴い、当該技術は将来的に超音速フェーズでも使用できる可能性がある。従来型のパラシュートに比べ、膨張減速機の空気動力学性能は安定しているためパラシュートの動揺現象が生じず、探査機と搭載機器に対する衝撃が小さく、超音速状態における減速効果も良好で滞空時間が長く、探査機のより早い段階での熱シールド投下を保証するため、より多くの航法計測情報を提供する。また、膨張減速機の制御性は良好なため、姿勢と軌道制御を行いやすい。一方、欠点は質量が減速パラシュートより大きいため、質量が比較的小さい探査機にはふさわしくない点にある。パラシュートの亜音速における減速性能が良好である特徴と合わせ、火星EDLプロセスでは超音速の膨張減速と亜音速パラシュートとを組み合わせた方式を採用することができる。火星の大気は稀薄であるため空気動力学に基づく減速効果には限りがあるが、パラシュートの代わりに逆推進ロケットを使用すれば減速性能を向上させると同時に降下制御も実現できることから、当該技術の利用を考慮してもよいが、まだ検証段階にある。従来型では最後の着陸フェーズで一般的に逆推進ロケットによる減速かエアバッグによる緩衝を採用しているが、当該着陸方法の欠点は着陸機の質量が大きくシステムが複雑で、信頼性が低い点にある。熱気球による新たな減速・着陸システムは軟着陸を実現できるのみならず、複数回の機動や他の着陸したい地点での着陸も可能である。エンジン減速による着陸と比べ、熱気球着陸システムでは探査機の質量が非常に大きくなるが、製造費は比較的安く、現時点ではロシアの探査機ですでに実験が行われている。

3.6 探査機は障害検知・忌避能力(AHDA)を必ず装備している必要がある。

 火星表層の地形は複雑で、岩石や勾配、渓谷などの障害物が至るところにあるため、これら潜在的な障害を自主的に検知し、忌避できるか否かは火星の安全な着陸において大変重要である。AHDAの鍵となる技術には2つの点がある。一つ目は、各種航法センサの測定情報から障害エリアと安全エリアを識別し、安全な着陸地点を選定することであり、二つ目は、探査機を自律制御して選定した安全な着陸地点まで誘導することであり、同時に最適な燃費という制約と外部環境による不利益な影響も考慮しなければならない。現時点までに打ち上げられたすべての火星探査機には自律障害検知・忌避能力は備えられていない。NASAの「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」では「スカイクレーン」(sky crane)という着陸方式を採用し、初歩的な自律障害検知・忌避能力を装備する予定である。

3.7 適応制御やニューラルネットワークなどのインテリジェントコントロールを応用して探査機制御システムの性能を高める。

 軌道制御、姿勢制御、エンジン制御などの制御に関する問題はEDLの全プロセスに共通であるため、制御システムの性能の良し悪しが探査ミッション全体の成否に直接関係する。火星EDLの3つのフェーズ(特に突入フェーズ)において探査機の状態パラメータの動態変化は急速であるうえに、動力学環境も複雑で変化が激しいことから、各種パラメータの数値に大きな変化が生じるため、高精度なEDLではシステムの反応が迅速で誤差が小さく、ロバスト性が強く、同時に燃費の最適性、ルートの最適性などの制約条件を満たすことが要求されており、従来型の制御方法ではこれらの「過酷な」要求を満たしようがない。一方、適応制御やニューラルネットワーク制御なら、外部干渉のある条件下でも比較的良好に予定の制御目標を達成することができるため、良好な環境適応能力と一定のインテリジェンスは当該問題について将来取り得る解決の道筋である。

 結論としては、探査機のデータ処理及びメモリ容量の向上と火星探査ミッションの進化につれ、火星EDLの航法、誘導、制御技術はより精確で、信頼性が高く、複雑で、よりインテリジェンスな方向を目指して進化する必要がある。

4. 終わりに

 EDLフェーズは火星ミッション全体で最も重要なフェーズであり、ミッション全体の成否を決定づける。なかでも、これと関連する航法、誘導、制御技術もまた火星EDLにける中核技術の一つであり、火星の着陸成功において他に代えられない役割を担っている。本稿では過去及び現在の火星EDLの航法、誘導、制御技術について系統的に回顧・概括し、将来の高精度な火星EDLの航法、誘導、制御技術について全面的な展望と分析を行った。

 わが国がすでに人工地球衛星と有人飛行船の帰還技術を掌握していることは、火星EDLの航法、誘導、制御技術の研究において一定の助けとなる。しかし、火星の大気と地理環境は地球と大きく異なるため、火星の高精度な突入、降下、着陸における航法、誘導、制御は依然として多くの技術的な難題に直面している。それら難題には、エア駆動減速技術や超音速開傘技術、高精度な航法技術、自律障害検知・忌避技術などがある。このため、わが国の現状と既存の技術力を結合して火星EDLの航法、誘導、制御技術について系統的かつ掘り下げた研究を行い、将来の火星探査ミッションに必要となる技術支援を提供する必要がある。


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