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中国の次世代月探査衛星による重力測定計画に関する研究

2011年 9月 8日

鄭偉

鄭偉(Zheng Wei):中国科学院測量・地球物理研究所 副研究員、
大学院(修士課程)指導教員

1977年生まれ。2007年、華中科技大学物理学院で博士号取得。2008.02.01~2010.07.31、京都大学防災研究所でポストドクターとして研究(外国人特別研究員)。現在は衛星の精密な軌道設定、衛星重力測定による逆解析に基づく地球、月、火星重力場の理論及び方法等の研究に従事。 これまでに国家自然科学基金青年事業、中国科学院知識イノベーション事業の重要領域青年人材事業、日本学術振興会(JSPS)学術基盤形成事業、国家自然科学基金重点事業、国家863計画、中国科学院知識イノベーション事業の重要領域事業などを主宰または参画。最近3年間は筆頭執筆者として国際的に権威ある専門誌「Journal of Geodynamics」、「Planetary and Space Science」などで研究論文40編あまりを発表。このうち、SCI(Science Citation Index)に16編収録。SCIとの合同発表論文は10編あまり。現在は「Advances in Space Research」、「地球物理学報」、「宇宙航空学報」等の国内外の権威ある専門季刊誌の論文審査委員。

 月重力場は月の表層と内部物質の空間分布、運動、変化を反映するため、その精密な構造を明らかにすることは宇宙航空学や天文学、空間科学、惑星科学、地球科学、生命科学、国防建設などのニーズに応えるだけでなく、月の形状・地形と内部構造の研究、月面土壌の新エネルギーと資源の探索、月面宇宙環境の分析(電磁、微粒子、高エネルギーなど)、月と地球-月システムの起源ならびに進化史の検証などに重要かつ豊富な情報資源を全人類にもたらすものである。

 月探査衛星による重力場の逆解析とは、月探査衛星による観測データ(Doppler-VLBIによる軌道上の位置・速度、衛星間測距計による衛星間距離・速度、加速度計による非保存力、恒星センサによる衛星姿勢等)と月重力場モデルにおける重力ポテンシャル係数との関係を分析することにより、衛星の運動観測方程式を構築して解を求めることをいい、さらには月の重力ポテンシャル係数を回復させ、高精度かつ高い空間分解能を備えた月重力場の逆解析を最終目的とする。月重力場の精密な測定は世界の月探査計画における重要要素であり、月探査器の軌道設計の最適化及び有人飛行船の月面における理想的な着陸地点の的確な選択を決定づける。月探査衛星は、月重力場の作用のもと円に近い極軌道で周回するため、精密な軌道設計には精確な月重力場パラメータが必要である。逆に、衛星軌道の摂動を精確に測定するのに摂動の追跡観測データを利用すれば月重力場パラメータの精度を高めることができるため、両者は補完関係にある。月の海及び盆地には重力異常が顕著な「マスコン(mascon)」が数多く存在するため、月重力場の分布は極めて不均一である。月重力場の探査は現在もなお主に月周回衛星による軌道摂動の観測に頼っている。月は自転周期と公転周期が同じという特性を持つため、現時点では人類は月の表側の重力場異常しか直接観測することができず、月の裏側の重力場異常はコロケーションを通じて補足的に確定するよりほかない。

 国際的な月探査衛星による重力測定計画の実施と広がりは、中国にとってチャンスでもあり試練でもある。チャンスとは、海外で長期にわたり蓄積されてきた月探査衛星による重力測定の進んだ経験を中国が早急に取り入れ、将来の月探査衛星による重力測定計画の実施を積極的に推進し、中国による月重力探査衛星の独自開発を加速することにより、月探査衛星による重力測定計画の実現を通じて関係分野の発展を牽引することができることを指す。一方、試練とは、衛星搭載機器の研究開発、観測手段の研究及び観測データの処理が比較的立ち遅れている現状を指す。これに比べ、これまでに宇宙航空学、天文学などの分野で国内外の数多くの研究者が月の重力場測定について幅広く研究してきた。この目的に基づき、中国が将来、レーザ干渉による衛星間測距原理に基づく次世代の月探査衛星によって、重力測定計画を実施することを本稿は提案する。本稿の研究は、中国の今後の第二期、第三期、第四期の「嫦娥計画」及び有人月面着陸計画の成功において重要な参考となるばかりでなく、世界の将来的な月、火星及び太陽系のその他の惑星の探査計画の発展にも一定の参考価値があろう。

1. 月重力の衛星観測モデルの実現可能性

1.1 Doppler-VLBIシステムによる直接追跡観測モデル

 観測モデルの原理は次のとおりである。最初に、Doppler-VLBIシステムで低軌道の月重力探査衛星をリアルタイム追跡することにより、ドップラー効果により距離及び速度を測定し(経度方向の観測に敏感)、VLBI遅延時間及び遅延率(緯度方向の観測に敏感)の観測値と統合して衛星軌道位置を得る。次に、搭載加速度計により月重力探査衛星の受ける非保存力(軌道高度の姿勢制御力、月の放射圧、太陽光圧、宇宙線及び粒子圧など)を測定する。さらに、保存力モデル(太陽-地球間重力、月の固体潮汐力など)を構築する。最後に、により月重力場を確定する。目下、搭載加速度計の開発精度が向上し続けているのに伴い(たとえば、フランス国立宇宙研究センターの開発した静電支持加速度計(Electrostatically Suspended Accelerometers)の精度は10-13 m/s2/Hz1/2に達する)、非保存力の観測精度は高精度、高空間分解能での月重力場の逆解析に対するニーズを満たすようになったが、Doppler-VLBIシステムの軌道決定精度(dm級)の制約により、Doppler-VLBIシステムの直接追跡による観測モデルでは月重力場の精度を実質的に引き上げることはできない。このほか、月の自転周期と地球に対する公転周期が同じであるため、Doppler-VLBIシステムの直接追跡による観測モデルでは、遠月点まで飛行する重力探査衛星の軌道を測定することができない。つまり、Doppler-VLBIシステムの直接追跡による観測モデルは、月重力場の精密測定に対する概念実証及び技術試験でしかなく、精度及び空間分解能の上で現行の月重力場観測モデルに大きく貢献することはない。

1.2 SGG-Doppler-VLBIシステムによる観測モデル

 観測モデルの原理は次のとおりである。Doppler-VLBIシステムで低軌道の月重力探査衛星をリアルタイム追跡するのと同時に、衛星に搭載された重力傾斜計を利用して衛星軌道高度における重力ポテンシャルの微分代数を直接測定し、非保存力補償システムを通じて重力探査衛星が受ける非保存力を遮断し、最終的には上記月探査衛星の測定値を統合し、衛星の重力傾斜(SGG)原理に基づき月重力場を観測する。月探査衛星の重力傾斜計の測定精度に対する要求は比較的高いうえ、中国は現在、高精度の重力傾斜計の研究は始まったばかりでまだスタート段階にあるため、SGG-Doppler-VLBIシステムによる観測モデルは現時点では中国の国情に合わない。しかし、SGGは月重力場の特性を探査可能という特徴を持ち、構造が精密で進化過程にある新技術・新分野であるため、徐々に発展して月の重力傾斜測定の理論、方法、搭載機器及び実用について専門的に研究するための新興科学となりつつある。そのうえ、衛星に搭載される重力傾斜計が重力ポテンシャルの微分代数を直接測定できることから、月重力場の中高周波数信号の減衰効果を効果的に抑制できるため、SGG-Doppler-VLBIシステムによる観測モデルは将来的に中国で優先的に選択される、潜在性のある月探査衛星の重力測定モデルの一つとして期待される。

1.3 SST-HL/LL-Doppler-VLBIシステムによる観測モデル

 SST-HL/LL-Doppler-VLBIによる観測システムは、地上Doppler-VLBIシステム、相互に追跡し合う低軌道の月重力探査双子衛星、Doppler-VLBIシステムと低軌道双子衛星を連携する高軌動の中継衛星群(地球のGPS衛星システムに類似)により構成される。観測モデルの原理は次のとおりである。高軌動の中継衛星群による、低軌道の月重力探査双子衛星に対する精密な追跡・定位を利用し、同時に観測信号を地上のDoppler-VLBIシステム観測制御ステーションに返送し、非保存力補償システムにより月重力探査双子衛星が受ける非保存力を遮断し、姿勢・軌道制御システムを通じて双子衛星及び搭載機器の空間3D姿勢を測定する。低軌道双子衛星は同一軌道平面上で前後して互いに追跡して編隊飛行を行い、衛星間測距計を利用して高精度に衛星間距離(共軌道月重力探査双子衛星の軌道摂動差)を測定することで、月重力場を高精度かつ高い空間分解能で逆解析する。

 SST-HL/LL-Doppler-VLBIシステムによる観測モデルの長所は次のとおりである。(1) 2組の衛星の追跡による衛星の高低(SST-HL)観測モデルを含むと同時に、差分原理をもとに2つの低軌道月重力探査衛星間の相互運動を測定するため、得られる月重力場の精度はSST-HL単独追跡モデルより少なくとも1オーダー高い。(2) 月重力場の逆解析精度は主に高精度の衛星間距離と衛星間速度に敏感であるため、軌道決定精度に対する要求を適度に緩和できる。(3) 中長波の月重力場に対する探査精度が比較的高い一方、技術要求は比較的低く実現が容易で、月重力場の測定速度が速く、代価が低く、効率も高い。(4) 高い精度で遠月点の月重力場信号を探査できるうえ、地球重力観測衛星GRACEシステム全体の貴重な経験を参考にできる。これらの理由から、中国の将来的な月観測衛星による初期段階の重力測定計画では、中国特有のSST-HL/LL-Doppler-VLBIシステムによる観測モデルの採用が比較的適切と言える。

2. 月探査衛星の重要搭載機器及び地上Doppler-VLBIシステムとの最適な組み合わせ

 中国は高精度な衛星レーザ測距装置、非保存力補償システム等の搭載機器及び地上Doppler-VLBIシステムなどの研究開発の面で世界の先進レベルとなお一定の開きがあるうえ、これら技術は海外から導入することはできず独自に解決するよりほかない。また、これら技術の実現は中国が月観測衛星による初期段階の重力測定計画で成功を収めるか否かを直接決定づけるため、中国はまず高精度の月重力探査衛星搭載機器の研究開発及び地上Doppler-VLBIシステムの構築を行う必要がある。

2.1 衛星レーザ測距装置

 SST-HL/LL-Doppler-VLBI追跡観測モデルにおいて、現在、国際的に採用されているのは一般にマイクロ波測距とレーザ測距の2つのモデルである。マイクロ波衛星間測距モデルの長所は衛星姿勢のリアルタイム制御技術と指向性精度に対する要求が比較的低い点であり、短所は衛星間距離と速度の測定精度が相対的に低い点である。衛星レーザ測距モデルが採用するレーザビームの方向性は強く、月重力探査衛星のシステム全体に対する姿勢制御の要求は比較的高いものの、衛星間距離と速度の観測精度を大幅に引き上げられる(少なくとも3オーダー)。衛星レーザ測距装置は、中国の今後の月重力探査衛星における最も重要な搭載機器であり、その測定原理は次のとおりである。衛星間測距計の測定精度を向上し、信号による遅延効果を削除するため、衛星レーザ測距装置は両側波帯測定モデルを採用する。まず、月重力探査双子衛星の衛星レーザ測距装置がそれぞれ相手側に向かって2種類の異なる周波数のレーザ信号を送信する。次に、双子衛星がそれぞれ受信したレーザ信号を地上の超高安定発振器(USO)で生じさせた対応する参考周波信号と波動混合処理(信号相乗)し、ローパスフィルタを通じて周波差信号を保留し、データ処理器に送信する。最後に、デジタル位相ロックループを利用して周波差信号を追跡して位相変化の解を得て、測定結果を地上追跡ステーションに返送して総合処理を行う。月重力探査双子衛星の軌道は非保存力の摂動を受けるほか、主に月の静態及び経時変化重力場の総合影響を受ける。共軌道の月重力探査双子衛星は異なる軌道位相で月質量システムの影響に敏感であるため、双子衛星間には微小な軌道摂動差が生じ、これが共軌道の月重力探査双子衛星の連線方向の距離、速度、加速度をリアルタイムで変化させ、月重力探査双子衛星の衛星レーザ測距装置が高い精度でこの距離変化、速度変化、加速度変化を測定できる。衛星間の距離差、速度差、加速度差の精密な測定を通じて月重力場の高周波信号は拡大されるため、月重力場の高調波要素の測定精度が効果的に引き上げられる。レーザ測距装置の研究開発と実用は、国際的にもSST-HL/LL-VLBI追跡モデルの今後の発展の主流であり、高精度、高空間分解能、かつ、全周波数域にわたる次世代の月重力場観測モデルの構築において重要な保証である。

2.2 非保存力補償システム

 月探査衛星による重力測定において、月重力探査衛星をセンサとして高精度に月重力場を観測する上での最大の弱点は、衛星高位地点における重力場の成分指数減衰である(は月の平均半径、は月探査衛星の軌道高度、は月重力ポテンシャルの球面調和関数ごとの展開レベル数を示す)。この弱点を克服して高精度に月重力場を逆解析するために、現時点で最も有効な方法は低軌道の重力探査衛星を採用することである。しかし、月独特のMascon現象の影響により、衛星軌道高度が漸減(50~1000 km)するにつれ月重力探査衛星の軌道高度と3D姿勢、衛星軌道を効果的に調整するために軌道・姿勢マイクロ推進機が頻繁にジェット噴射をすることから、不安定な衛星飛行環境が各搭載機器の観測精度に大きく影響する。同時に、月の熱容量と熱伝導率は非常に低いため、月重力探査衛星に作用する月の放射圧も徐々に増大する。このほか、月には大気圏による天然の保護障壁が欠落しているため、月重力探査衛星に対する大気阻害作用が低減されたとしても、太陽光圧と宇宙線粒子流による月重力探査衛星への影響は軽視できない。このため、衛星の受ける非保存力が高精度に排除され、月重力場の逆解析精度と空間分解能が保障される前提なら、各重要搭載機器(衛星間測距計、衛星搭載加速度計等)の研究開発の難易度は適度に低減され、不必要な労力、資源及び財力の浪費を避けることができる。月重力探査衛星の非保存力の効果的な排除方法は、一般に非保存力の後期修正技術とリアルタイム補償技術の2通りである。

 非保存力の後期修正技術の原理は次のとおりである。まず、前期の月重力場測定の過程において搭載加速度計を通じて衛星が受ける非保存力データを得る。次に、後期の月重力場の逆解析方程式において衛星が受ける非保存力の作用を外力の合計から控除する。この技術の長所は、非保存力の除去が前期測定と後期修正の2つの段階に分けて完了することである。月重力探査衛星は飛行過程で衛星の受ける非保存力についてのみ加速度計で測定すればよく、リアルタイムで補償する必要がないため、搭載機器の研究開発における難易度をある程度低減できる。一方、欠点は衛星軌道の高度の漸減に従い、月重力探査衛星に作用する非保存力(主に軌道高位における姿勢制御力、月放射圧)が急激に増大する点である。

 非保存力の補償システムは、一般に衛星搭載加速度計、軌道・姿勢マイクロ推進機及びリアルタイム制御マイクロ処理システムの組み合わせで構成され、基本原理は次のとおりである。まず、衛星搭載加速度計により衛星の受ける非保存力を測定する。次に、リアルタイム制御マイクロ処理システムが加速度計の測定した非保存力を軌道・姿勢マイクロ推進機の期待推進力及びトルクに転換する。最後に、軌道・姿勢マイクロ推進機で衛星の受ける非保存力をリアルタイムで補償する。この技術の長所は、月重力探査衛星システムと搭載機器の非保存力作用が補償システムにより効果的に遮断される点にあり、衛星システムと搭載機器に静的な作動環境を提供することで測定精度を保証すると同時に、衛星の軌道高度を効果的に低減できることから、中短波の月重力場信号の減衰を抑制できる。一方、欠点は搭載機器に非保存力補償システムを新たに追加した点であり、月重力探査衛星の開発難度をやや高めている。

 中国は将来の月探査衛星による重力測定計画で、非保存力補償システムを採用するべきだろう。長所は、衛星以外の重要な搭載機器の開発難度(動態測定範囲を適切に短縮することで測定精度を保証)と月重力探査衛星の軌道高度が効果的に低下したため、中高周波帯における月重力場の測定精度にさらなる向上が見込めることである。

2.3 地上Doppler-VLBIシステム

 月全球の規則的かつ高密度で、高精度、高空間分解能の全周波帯にわたる月重力場データを得るには、次の3つの基本原則を満たす必要がある。第一に、月重力探査衛星の3D空間要素(位置及び速度)を連続的に、かつ高精度で追跡すること。第二に、月重力探査衛星に作用する非保存力を精密に測定または補償し、精確にモデル化すること。そして第三に、衛星の軌道高度を極力下げること(50~200km)である。これら3つの基本原則のうち、月重力探査衛星の3D空間要素を連続的に、かつ高精度で追跡することは月重力場の高精度かつ高空間分解能な逆解析で必要となる前提かつ重要な基盤であり、実現にはDoppler-VLBIシステムを経る必要がある。月の重力測定では、衛星レーザ測距装置、非保存力補償システム等の重要な搭載機器の精度指標は、地上Doppler-VLBIシステムの軌道設定精度と厳格にマッチングする必要がある。もし、ある搭載機器の精度指標がその他の搭載機器より高い場合は、誤差原理に基づき知られるとおり、精度指標の高い搭載機器はそのよさを発揮できず、他の機器とマッチングする部分の精度でしか月重力場の逆解析精度に貢献しなくなる。現時点では、衛星レーザ測距装置、非保存力補償システム等の重要な搭載機器の精度指標は、いずれも将来の月重力測定計画における重要な搭載機器の各精度指標のマッチング要求を満たすことができる。しかし、Doppler-VLBI本体の動態軌道設定の精度指標(dm級)は相対的に低く、軌道設定精度が次世代の高精度かつ高空間分解能の月重力場モデル構築における主要な誤差源となっていることから、Doppler-VLBIの軌道設定精度のさらなる向上が待たれる。

3. 月探査衛星の軌道パラメータ設計の合理化

 月探査衛星の軌道パラメータ(軌道高度、衛星間距離等)設計の最適化は、中国が将来、月探査衛星による重力測定計画で成功を収めるための重要な要素及び保証である。

3.1 軌道高度

 月探査衛星の軌道高度はそれぞれ異なるレベルの重力ポテンシャルに敏感であるため、現存の月重力場探査器は特定の軌道高度エリア内でしかその優位性を発揮できず、軌道範囲の外では基本的に無力である。もし、中国の将来的な月重力探査衛星も現存の探査機の軌道高度の範囲内で設計されるなら、月重力場の逆解析精度が現存の探査機を上回らない限り測定効果は単純な重複に終始し、月重力場測定精度の向上に実質上貢献しない。このため、将来の軌道高度は現存探査機の死角を極力選択し、相補体制を構築すべきである。中国の将来的な月重力測定計画では非保存力補償システムを採用してもよいが、一定の測定精度をもつ非保存力補償システムは月重力探査衛星に作用する非保存力を完全に相殺できず、同時に軌道・姿勢マイクロ推進機の頻繁なジェット噴射も衛星搭載燃料の大幅な浪費をもたらすため、衛星の軌道高度を適切に下げることは月重力場の逆解析精度の向上に効果的であり、その代価はある程度衛星の使用寿命を犠牲にすることである。誤差理論により知られるように、観測データがn倍増加しても月重力場の測定精度は約しか向上しないため、月重力探査衛星の軌道高度を適切に下げたことによる衛星の使用寿命の短縮は、月重力場の逆解析精度に本質的な影響をもたらさない。このため、中国の将来的な月重力探査衛星の高度設計は、50~100kmが最も適切であろう。

3.2 衛星間距離

 SST-HL/LL-Doppler-VLBIモデルにおいて、衛星間距離を適切に縮めることは月重力場の高周波数帯の逆解析に役立つが、衛星間距離の設計が短すぎると双子衛星の共通の誤差を打ち消すと同時に月重力場からの信号も部分的に差分されて信号対雑音比が比較的低くなるため、短すぎる距離設計は月重力場の低周波数帯の確定に不利である。衛星間距離を適切に伸ばすと月重力場の低周波数帯の信号対雑音比に有利であるが、衛星間距離の設計が長すぎると今度は測定ノイズが急増し、衛星軌道と姿勢の測定精度に対する要求が高まるため、高周波数帯の測定に不利である。非保存力補償システム及び衛星レーザ測距装置を採用する可能性があることから、中国の将来的な月重力探査衛星の軌道高度は効果的に下げられ、中短波の月重力場の逆解析に資するだろう。このため、中国の将来的な月重力探査衛星の衛星間距離の設計は、100±50kmが適している。

4. シミュレーション研究の先行実施

 科学技術の日進月歩、特にコンピュータやマイクロエレクトロニクス、各種運動シミュレータの急速な発展につれ、衛星システムのシミュレーションも日増しに整備されてきた。シミュレーション技術を中国の月重力探査衛星の研究開発及び運行の全過程に応用することを提案する。プランの検証に始まり、システム設計、部品の研究開発、製品検査、実用、故障分析等の各段階で異なるタイプのシミュレーション実験を実施することで、研究開発の質を高め、開発期間の短縮とコストの抑制という目的が達成できる。

4.1 必要性

 真空に近い環境条件下において、全衛星状態で各分化システムの技術性能と機能の有効性をデモンストレーションすることで、月重力探査衛星の全システム設計と性能上の欠陥について打ち上げ前に検査及び修正を行うことができ、開発段階で衛星全体に対するリスクを効果的に低減し、各分化システムと全システムとの両立性及びシステムパラメータと構造の合理化を飛行前に確保し、故障の分析と対策に効果的な手段を提供できる。

4.2 実現可能性

 現代のコンピュータ技術や高水準のシミュレーションソフト(MATLAB)、並びに各種の高精度かつ信頼性の高い環境シミュレーション設備により、物質的条件は充分に提供されている。また、中国にはすでに、衛星ハードウェアの研究開発及びシミュレーション実験に従事する科学チームも存在する。


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