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低空空域管理改革、空軍司令部航空管制部部長が解説

中国科技日報     2011年 9月16日

 「新しい話題で市場を活性化させる」といった風潮を受け、メーカー各社は現在「低空開放」、「開放低空領域」、「低空空域開放」等の概念を作り出し、「低空開放」は「低空放開(放開=手放す、放 っておくの意。低空領域を無条件で開放し、秩序の崩壊を招く恐れのある言い方になる)」のことであるという誤解を招いている。

  このような誤った伝え方は、国民の誤解を招くのみならず、国家の「低空空域管理改革」および「低空開放」の含意を曖昧にするものである。

 この件に関して、中央軍事委員会空軍司令部航空管制部部長、蔡軍・大校(大佐)を取材した。

 「国家の『低空空域管理改革』を、『低空放開』と簡単に解釈するならば、それは誤った概念であり、国民の間で誤解を生むだろう。社会が現在注目している『低空開放』は、国家が現在実施している『 低空空域管理改革』を指す」

 「いわゆる『低空空域開放』とは、一部の航空機のある低空空域における活動の封鎖・禁令・制限等を解除することと解釈できる」

 2007年に国家が発表した「中華人民共和国飛行基本規則」では、「飛行の実際の高度について、600〜1万2500メートルの間に、300メートル毎に高度層を設ける」と厳格に規定されている。一 般的な航空作業および飛行の際の高度は、そのほとんどが1000メートル以下の空域に集中している。

 「法律的には、国家は1000メートル以下の低空空域を閉鎖したことはなく、『開放』や『放開』という言い方は適切でない。国民が関心を寄せている『低空開放』は、国家の『低空空域管理改革』を 指すものだ。改革は、国家の領空安全、首都地区・重要軍事目標物・経済的目標物・重要なシンボル的建造物の安全を確保した上で実施されなければならない。一般航空の発展に関する異なる時期・異なる段階に基づき、一 般航空の飛行需要を満たすため、異なる地区の低空空域管理モードを対象に改革を実施する必要がある」

 「低空空域をよりよく活用するためには、よりよい管理が必要だ。よりよい管理のためには、改革が唯一の方法だ」

 「低空空域管理改革」は、低空飛行の需要を満たすため、国家が低空空域の管理面において関連の管理法規を完備し、モニタリングを強化し評価監督システムの建設を行うといった、一連の措置のことである。国 家は低空空域の管理業務を十分に重視しており、近年になり一連の政策や法規を発表し、空域の集約化管理使用を積極推進している。

 「低空空域の管理に失敗すれば、重要目標物の安全と国家主権の問題に、直接的に関わる恐れがある」

 一般航空機の飛行は低空安全に影響する主な要因である。世界の一般航空機の飛行が低空空域にもたらす安全環境を楽観視することはできず、非常に厳しい情勢と言える。

 「空の安全面から言えば、一般航空機の体積は小さく、飛行高度は比較的低く、飛行速度は遅めだ。低空でゆっくり飛行する小さな目標に対する探測・識別・防御は難しく、各国の空軍が頭を悩ましている。低 空空域の管理に失敗すれば、低空航空機や正体不明の飛行物体を把握することはできない」

 低空空域の管理に失敗すれば、重要目標物の安全と国家主権を脅かす恐れがある。西ドイツの青年マチアス・ルストは1987年5月13日、フィンランドのヘルシンキからセスナ機で離陸し、旧 ソ連の領空に低空飛行で侵入し、首都モスクワのレッドスクエア(赤の広場)に着陸した。ある米国人は2000年初頭にセスナ172型を運転し、超低空飛行で145キロメートルを飛行し、キ ューバーのレーダーを逃れて首都ハバナに侵入すると、ビラを撒いた。その後この米国人はキューバ空軍に行き先を遮られ、米国に追い返された。

 「低空飛行により、航空機の衝突の可能性が高くなる」と蔡軍・大校が語った。統計によると、中国の主要航路の付近で、気球の漂流により民間航空機の飛行に影響したという件が、2002〜2 005年の間に70件以上発生した(約20件が飛行の安全を著しく脅かした)。2003年6月5日、温州空港の付近に正体不明の気球が現れ、一部フライトの離陸に影響し、温州行の10数便が欠航となった。ま た2004年3月10日、武漢管制区の航路上に巨大な気球が出現し、4便が航路を変更した。

 これらの多くの事例は、空域管理部門の厳格な管理下で出現した安全問題である。「仮に『低空放開』を行い、好きなように飛行できるようにすれば、低空飛行は秩序無いものとなり、事故が多発するだろう。中 国にとって、空の安全、重要目標物の安全も、実現できなくなる。中国一般航空機の急速な発展に伴い、空域使用と空域管理の間の矛盾が際立つようになった。空の秩序の維持、安全飛行の確保は、必要不可欠である」 

 現在、中国の一般航空機の飛行に関して、依然として薄弱なサイクルが存在する。飛行範囲が広く、高度が低く、飛行区域の地理的条件の差異が大きい等の問題に加え、一 般航空機に搭載されている設備は最新の機器でなく、現在の位置を迅速かつ的確に報告できない。また航空管理部門は低空でゆっくり飛行する小型機に対する強制管理権限がない。従って一般航空機の成長面から、低 空空域の管理改革は極めて重要である。

 「低空空域の安全と効率的な運航を確保するため、現段階の具体的な作業は『要点をとらえた細分化作業』である」

 低空空域管理改革の道程は険しい。低空空域の安全と効率的な運航を確保するため、現段階の具体的な作業は「要点をとらえた細分化作業」である。

 蔡軍・大校によると、「中国低空空域管理改革の改善に関する意見」において、以下の面から具体的な措置が明確化された。

  1. 安全責任の確定。航空各社は目視による飛行安全の主な責任を負い、航空管理部門はレーダーによる飛行安全のサービスを提供する。
  2. 航空管理に適した法律制度を整え、低空空域の管理に対して法律面の保障を与える。
  3. 一般航空機の乗組員の教育を強化し、操縦免許証の厳格な発行、操縦資格の厳格な審査を実施する。
  4. 低空空域の進入資格の審査を厳格に行い、低空飛行活動を厳密に組織する。
  5. 低空飛行の違反に関する罰則を設け、航空管理・公安・工商等、共同で法律を執行し、操縦免許証のランクを上回る飛行、空域範囲を超えた飛行といった空の秩序を乱す違法行為を取り締まる。
  6. 軍民航空管理部門が中心となり、低空空域飛行の突発事件の緊急処理プランをまとめ、緊急対策の枠組みを構築する。

 このようにしてこそ、低空空域の安全および効率的な運航が確保されるのだ。

 「トップダウン設計を把握し、法的整備を行う」これは低空空域管理にとって、当面の急務である。法的整備は低空空域の科学的管理を実現し、空域利用率を高め、空の安全の前提と基礎を保証する。

 「現在、低空飛行を実施するための主な法的根拠は、『中華人民共和国飛行基本規則』、『通用航空飛行管制条例』である。しかしこれらの法律には、低空空域の管理使用、お よび低空飛行活動に関する具体的規範と実施細則がなく、低空飛行および低空空域の管理の需要を満たすことはできない。ゆえに国家クラスの航空法規の整備を推進し、法律という形式により低空空域の管理使用の、全 面的・具体的な法制化を行う必要がある。これにより低空空域管理法規体系の改善を進め、低空空域の管理を法制化・科学化・基準化の道にのせることができる」

 「現在、中国の個人所有セスナ機の保管場所は個人で判断されている。地上の安全管理に大きなリスクが存在し、周辺の住民に対して予期できぬ危険をもたらす恐れがある」

 今後10年間、中国のセスナ機市場規模は、毎年20〜25%以上の速度で成長する。「2010年 胡潤(フージワーク)財富報告」によると、2009年末現在、中 国大陸部には85万5000人の1000万元長者が、5万5000人の1億元長者がいる。今後10年間で中国全土の5分の1の1億元長者がセスナ機を購入すると仮定すると、需要量は1万機を軽く突破するだろう。中 国経済の高度成長、個人財産の増加、セスナ機価格の低下に伴い、セスナ機運転により空中飛行の夢を実現する人が増加するだろう。セスナ機の保有量が増加傾向にあるが、こ の新たな変化に対していかに管理を強化するべきか。

 「飛ばすことが出来るのなら、管理することもできる」と蔡軍・大校が指摘した。

 個人用セスナ機の管理は、政府関連部門が直面している重大課題である。この問題は国家の経済発展のみならず、国家の空の安全に関わってくる。

 「現在、中国の個人所有セスナ機の保管場所は個人で判断されている。地上の安全管理に大きなリスクが存在し、周辺の住民に対して予期できぬ危険をもたらす恐れがある。ゆ えに政府の関連部門がこれらの職能を果たし、個人用セスナ機を正規ルート管理に組み込む必要がある。例えば国家はセスナ機の数量と所在位置に応じて、政府投資・民 間投資により政府の承認する一般航空サービスステーションを設立することができる。これによりセスナ機を効果的に管理できる上、セスナ機の使用により地上に危険がもたらされるのを防ぐことが可能だ。ま たセスナ機のメンテナンスを行うこともでき、所有者の安全責任を軽減できる」

 「低空空域管理改革は複雑で、さまざまな面に関わり、多くの利益関係を生む。国家の安全に関わるのみならず、各産業の発展と人々の利益に関わるのだ」と蔡軍・大校が説明した。近年、国 家空中交通管制委員会および各航空管理部門は、低空空域管理改革を極めて重視しており、改革に向けたテスト業務を行い、インフラを整備し、管理・抑制方法等の改善を積極的に行い、中 国一般航空機の発展の需要を満たしている。

 「中国低空空域管理にはまだ数多くの問題が存在している。これは前進中の問題、改革中の難題である。低空空域の管理モードを絶えず改革することにより、一般航空産業は高度成長期を迎えるだろう。一 般航空機の飛行は、安全で効果的な空間環境を得ることができるはずだ」


■名詞の説明

 低空空域とは、一般的に高度1000メートル以下の空間範囲を指し、管制空域、監視空域、報告空域の三種に分かれる。

 管制空域とは、一般的に飛行が比較的に頻繁な地区(空港の離着陸区域、空中禁区、空中危険区、空中制限区、地上の重要目標物、国境地帯等の区域の上空)を指す。監視空域とは、一 般的に管制空域の周辺を指す。報告空域とは、一般的に空中禁区、空中危険区、空中制限区、国境地帯、地上の重要目標物、飛行の集中する地区、空港管制区域等の上空を指す。

 現段階において、航空管理部門はこれらの区分に応じて、一部地区で「低空空域管理改革」のテスト業務を行っている。


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