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ナノ系難燃高分子材料:現状、問題及び展望

2011年11月 4日

方 征平

方 征平(Fang Zhengping):
浙江大学寧波理工学院高分子材料・工程研究所所長、教授

浙江省プラスチック・エンジニアリング学会理事長、中国プラスチック加工工業協会・エンジニアリングプラスチック専門委員会副理事長。1963年9月生まれ。1979年、復旦大学化学系に勤務。1986年、復旦大学材料科学研究所(修士号取得)、杭州大学化学系で教職。1997年、教授に昇進。1998年、浙江大学高分子複合材料研究所に勤務、長く所長を務める。2008年、浙江大学寧波理工学院高分子材料・工程研究所に勤務。多成分・多位相高分子材料の構造と性能、高分子材料の混合及び複合による改質、高分子ナノ材料の研究に長く従事。学術論文200本以上を発表、うちSCIに130本以上収録。H指数は17。教材、専門書4冊を出版。発明特許10件。

 ナノ系難燃高分子複合材料はナノ材料の重要な分枝であり、1976年にナノ系粘土による難燃性ナイロンの初めての特許が発表されて以来、ナノ系難燃技術は急速に発展し、特に1990年代以降、ナノ系難燃技術は難燃分野の研究で重要な関心事となっている。ナノ技術のたゆみない発展に伴い、次々に新しいナノ系難燃システムが登場し、かつ急速に発展している。従来型の難燃剤に比べ、ナノ系難燃システムの最も顕著な特徴は極めて少量(5%未満)のナノ系難燃剤を添加するだけで材料の燃焼性能を明らかに低減できるうえ、材料の機械特性も向上する点にある。一般の難燃剤は添加すると材料の力学的強度に大きく影響する点と異なる。

 ナノ系難燃剤は次元により3種類に分けられる。すなわち、① 一次元ナノ材料:カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes)及び各種ウィスカー。例えば、マグネシウム塩及び硫酸カルシウム・ウィスカー等。② 二次元ナノ材料:層状粘土。例えば、モンモリロナイト(Montmorillonite,MMT)、カオリン(Kaolite)、酸化黒鉛、層状複水酸化物(Layered Doubled Hydroxides,LDH)等。③ ゼロ次元ナノ材料:ナノ水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric SilSesquioxanes, POSS)、フラーレン(C60)等である。

1 層状ケイ酸塩ナノ系難燃システム

 1980年代、日本のトヨタ社の実験室が最初にナイロン6/層状粘土ナノ複合材料を合成し、極めて少量の粘土を加えるだけで材料の熱安定性能と力学性能が顕著に向上することを発見した。その後、ポリマー/層状ケイ酸塩ナノ複合材料(PLSN)が工業界及び研究界から高く注目されるようになった。1990年代、Giannelisらは有機溶剤を必要とせず、溶融ブレンドの方法でもPLSNが調製できることを発見した。これにより各種ポリマーナノ複合材料の調製、特性、メカニズムの検討とモデルの構築、そして自動車工業や難燃材料等の分野への応用研究が盛んになった。

 1976年、日本人研究者Fujiwara及びSakamotoらは、ナイロン-6のナノ複合材料の特許出願書類で初めてPLSNは難燃性能の分野で実用的潜在力があることを報告した。しかし、1990年代になって、アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology, NIST)が先頭に立ち、初めてPLSNの燃焼挙動について系統的に研究するまで、PLSNの難燃性能に関する系統的な研究は行われなかった。彼らは、PLSNはポリマーの燃焼性低下の面で他の追随を許さないことを発見した。粘土の高分子における実用により発展したPLSN材料は、難燃高分子材料に新たな道筋を切り開いたことから、次世代の高性能難燃高分子材料となる可能性があり、Gilmanらが難燃技術の革命の一翼を担った。

 PLSNの調製方法はたくさんあるが、現在汎用されている方法は主に層間複合法(intercalation compounding)である。複合のプロセスにより、この方法は層間重合法(intercalation polymerization)とポリマー層間法(polymer intercalation)の2種類に分類される。前者はモノマーで分散させ、層間に層状ケイ酸塩ラメラを挿入して層間でin situ重合を行い、かつ、ケイ酸塩ラメラを層間挿入又は剥離させてラメラとポリマー基体のナノスケールでの複合を実現する。後者はポリマー容体又は溶液と層状ケイ酸塩の混合によりケイ酸塩をナノレベルのラメラに剥離し、かつポリマー基体中に均一に分散させる。調製されたPLSNには2種類の構造があり、一つは層間型(intercalated)でもう一つは剥離型(exfoliated)である。層間型は異方性材料となるが、剥離型には一般的に顕著な強化作用がある。ポリマー容体の層間挿入は、ポリマーがその軟化温度を上回る環境下で剪断力の作用によって層間に直接挿入されることによりケイ酸塩ラメラの中間に挿入されるもので、プロセスが簡単なため、広く実用されている。

 ナノ系難燃技術がナイロンで成功をおさめた後、PLSNは他のポリマーシステムに急速に拡大した。ナイロンのほか、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ゴム類、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエステル、ポリウレタン(PU)、エポキシ樹脂(EP)等のポリマー及びその合金/粘土ナノ複合材料のいずれの難燃性能とも多数の関連事例がある。現時点で、すでに多くのポリマー/層状ケイ酸塩ナノ複合材料の難燃性能分野に関する要約及び専門書が存在する。現在、PLSNに関する研究は主にナノ材料の調製方法、ミクロ構造、有機層間剤の処理、残留炭素構造の分析等、材料の難燃性能に対する影響に集中している。世界でもこの分野で大きな影響力を持つ研究グループが多数登場しつつあり、これにはアメリカ国立標準技術研究所(NIST)のGilman及びKashiwagiや、Marquette大学のWilkie、ニューヨーク工科大学のLewin、フランスのBourbigot、ベルギーのBayer、イタリアのCamino及びZanetti、カナダのUtracki、中国科学技術大学の胡源教授、北京理工大学の王建祺教授らが率いる研究グループがある。

 このうち、Wilkieの研究グループはスチレンを含むポリマー型又はオリゴマー型のさまざまな層間剤を合成し、剥離型のPS、PE及びPPナノ複合材料の調製に使用した。研究の結果、PS以外なら剥離型複合材料を調整できるほか、PE及びPPは基本的に層間型の複合材料しか得られず、モンモリロナイト含量が5wt%の時、PSの熱発生速度ピーク値(PHRR)は約40%減少すると同時に、さまざまな層間剤により処理されたモンモリロナイトはPPの難燃性能に大きな影響を及ぼすことが分かった。例えば、20wt%のMAPS-clayを添加するとPHRRを約60%減少させられる一方、含量が同等のLauryl-モンモリロナイトでは約40%しか減少させられなかった。しかし、粘土含量の増加につれ、複合材料の引張強さ等の力学性能に漸減の傾向が見られた。

 北京理工大学の王建琪らはX-放射線光電子分光法を採用してポリマー粘土複合材料の熱処理及び燃焼挙動を研究した結果、ナノ複合材料中の粘土が高温下で分解し、形成された酸化ケイ素のグル―プは表面遷移すると表面のケイ素、酸素原子が富化され、炭素原子の相対濃度が低下して遮断層を形成し、後にポリマー表面と外界熱源間の熱伝導を遮断することで材料の燃焼プロセスを緩和し、材料の難燃性能を向上させることがわかった。

 また、中国科学院長春応用科学研究所の唐涛らもPLSNの触媒難燃システムについて系統的な研究を行った結果、PP/clayナノ複合材料中に少量のニッケル触媒剤を加えると複合材料の難燃性能を大幅に向上できるのみならず、PPをコストパフォーマンスの高いカーボンナノチューブに変換させられることを発見し、ナノ触媒による難燃に新たな考え方を切り開いた。また、さらに分析したところ、モンモリロナイトは2種類の作用を果たすことが分かった。一つ目は熱分解を受けて固体酸(プロトン酸)を酸性化すること、二つ目はPP分解産物の拡散阻止であり、これによりニッケル触媒剤が触媒としてPP基体の分解産物をカーボンナノチューブに変換する助けになる。これを基盤に、分子篩(HZSM-5及びH-beta等)によりモンモリロナイトをニッケル触媒剤と置換してポリプロピレン複合材料を複合・調製したところ、分子篩の存在により、ニッケル触媒剤の触媒作用によるPP分解産物としてのカーボンナノチューブの生成に必要とされる固体酸が提供されるだけでなく、少量の分子篩とニッケル触媒剤がPPのPHRR(60 %~70 %)を大幅に低減させ、ポリマーの難燃性能を顕著に引き上げることを発見した。

 PLSNの難燃性能は主にPHRRの大幅な低下、炭素層構造の緻密化・硬化、炭素生成量の増加、質量損失率の減少等に現れる。

 われわれ浙江大学の方征平が率いる研究グループは、多相・多成分ポリマーにおける、ナノ粘土と従来型難燃剤との相乗効果による難燃作用について大量の研究を行った。その結果、溶融ブレンドプロセスにおいて、ナノ粘土は基体ポリマー及び高分子難燃剤(臭素化エポキシ樹脂BER及び合成された新型・膨張型高分子難燃剤PDSPB)との間で優先的な層間挿入の挙動が存在し、ABS樹脂及びこれら高分子難燃剤との共存情况下で、モンモリロナイトは高分子難燃剤と優先的に層間挿入され、かつモンモリロナイトがABS樹脂中で形成する層間構造に対応し、ABS、高分子難燃剤、モンモリロナイトの三元難燃システム中で剥離型構造を形成した。この種の挙動はシステムの難燃效果に顕著な影響を及ぼす。PDSPBと有機モンモリロナイトのABS樹脂に対する相乗効果による難燃效果は明らかである。システム熱安定性を向上させると同時に、残留炭素量を明らかに増加させる。両者の相乗効果は、燃焼プロセスにおけるシステムの熱発生速度をさらに低下させるだけでなく、材料の燃焼プロセスにおける総放熱量、平均質量損失率、平均煙密度等の難燃性パラメータを著しく改善した。ABS/PDSPB/OMT難燃システムは熱分解プロセスにおいて、モンモリロナイトの分解により産生したAl2O3·SiO2は、PDSPBにより産生されたリン酸との相乗効果によりsilicoaluminophosphates(SAPO)を生成し、これによりシステムの抗酸化性を一層向上させた。モンモリロナイト層間の有機層間剤による熱分解では更にプロトン酸が生成され、システムの触媒架橋による炭素生成プロセスをさらに促進した。このことから、ナノ粘土と難燃剤の相乗効果は非常に複雑な物理的、化学的プロセスであることがわかる。ナノ粘土は、一般的に極性の高い難燃剤に優先的に層間挿入して剥離されたラメラ構造を形成する。この研究結果は、極性の弱いポリマー(PP、PE等)/ナノ粘土の難燃システムの構築に斬新な考え方を提供した。

2 カーボンナノチューブ難燃システム

 1991年にカーボンナノチューブ(Carbon nanotubes,CNTs)がIijimaにより発見されて以来、CNTsはその特有の力学、電気学、磁気学、光学及び熱学的性質により、物理、化学、機能性材料、ナノ電子機器、生物学等の分野で広く実用の可能性が期待されてきた。CNTsには一層又は多層のグラファイトコイルにより形成された中空の筒形構造があり、構造中の大部分の炭素原子にはsp2混成が採用され、少量のsp3混成を混合している。カーボンナノチューブは基本的に極性を持たないため、熱可塑性ポリマー、特にPP、PE等と良好な相容性があり、このことにより新世代のクリーン型・ハロゲンフリー、低煙、高性能なポリマー難燃材料に新たな道筋を提供した。

 ポリマー/カーボンナノチューブナノ複合システムの難燃性能は2002年に初めて報告された。KashiwagiらはPP/CNTナノ複合材料の難燃性能を研究したところ、カーボンナノチューブで有機改質層状ケイ酸塩を置換した後に2つの顕著な長所が現れることを見出した。すなわち、(1)分散が容易である。有機化処理の必要がない。(2)PP-g-MAH等の相溶化剤を必要としない。そのうえ、カーボンナノチューブにわずか0.5%添加した時さえも材料の熱発生速度及び質量損失率を大幅に引き下げた。有機粘土の添加はシステムの点火時間を低下させたのに比べ、ポリマー/カーボンナノチューブ複合システムの点火時間は基本的に不変であった。われわれはABS/MWNTシステムでも類似の現象を見出したため、カーボンナノチューブはPP/粘土複合システムに比べ、難燃分野において効果的であることが分かった。その後、ポリマー/カーボンナノチューブ難燃システムに関する報告が次々になされ、単層カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブに比べて難燃分野で効果があることが分かった。

 ほとんど同じ時期に、BayerらはEVA/CNT/clay三元難燃システムを調製した結果、カーボンナノチューブは層状ケイ酸塩との間に相乗的な難燃効果があり、カーボンナノチューブと有機化粘土が同時に存在するときに、炭素層表面の割れ目密度が最も小さく、かつ、熱発生速度ピーク値がより低いことが分かった。Duboisらはカーボンナノチューブの平均サイズのEVA難燃性能に対する影響を研究した結果、ボールミル後のCNTsは材料の引火時間を倍近く延長した。Duboisらは、ボールミルはCNTsの長さを短縮すると同時に、CNTs表面にフリーラジカルを産生させて点火時間を延長したものと考えた。

 浙江大学の方征平が率いる研究グループは、カーボンナノチューブと有機化モンモリロナイトの配合により、難燃ABS樹脂中の難燃剤間に存在する相乗効果について検討した。両者が単独に存在する難燃システムと比べ、カーボンナノチューブと粘土の同時存在はポリマーに優れた熱安定性能を与えるだけでなく、燃焼により形成された炭素層の致密化レベルの向上により難燃性能をさらに優れたものにした。研究の結果、有機モンモリロナイト(OMT)と多層カーボンナノチューブの同時存在によりモンモリロナイトのABS基体中の分散が改善でき、MWNTsはOMT層間に挿入でき、層間距離を拡大させて層間/剥離型構造へと変化させることができた。その上、OMTとMWNTsの同時存在はシステム残留炭素のグラファイト化レベルを促進できるため、システムの抗酸化能力及び難燃能力を一層強化できた。

 この研究グループは更に合成した膨張型難燃剤PDSPB及びPDMBPSについて、化学的方法によりカーボンナノチューブ表面にグラフトしてMWNT-PDSPB及びMWNT-PDMBPSを得た。MWNT-PDSPBはPDSPBをシェルとし、カーボンナノチューブをコアとする典型的なコア-シェル構造である。グラフト後のMWNT-PDSPBはDMF等の溶剤中で良好な溶解能力及び分散性を有し、かつ、熱を受けた際も良好な熱安定性及び炭素生成能力があった。ABSナノ系難燃システム中でカーボンナノチューブの分散は顕著に改善され、MWNT-PDSPBは含量が0.2%の際にシステム内で効果的なネットワーク構造を構築できただけでなく、もともとのMWNT含量が1%で初めて実現しうる難燃效果を得ることができた。その上、改質後のカーボンナノチューブはポリマー中での分散が良好で、かつ、ポリマーと強い界面作用があり、システムの力学性も同時に向上された。膨張型難燃剤PDMBPSもPP基体中で同様の難燃效果を示した。

 フラーレン難燃システム

 Krusicは1991年、フラーレン(C60)の極めて高いフリーラジカルの捕捉能力について初めて報告した。C60分子1つで少なくとも34個のフリーラジカルを捕捉できたため、「ラジカルスポンジ」と呼ばれた。ポリオレフィンの分解及び燃焼は、一般的にはフリーラジカル結合のβ-scission方式により行われたため、C60分子のフリーラジカルに対する高い親和性及びポリオレフィンの分解燃焼特性を考慮すれば、C60はPPの熱性能及び燃焼性能に非常に大きな影響を及ぼすことは想像に難くない。

 浙江大学の方征平が率いる研究グループは、C60のPP中での分散及びC60のPPに対する熱性能及び難燃性能の影響について、他に先んじて研究した。また、C60がPPの熱性能及び難燃性能を向上させる作用メカニズムについて深く検討した。その結果、C60は極めて低い添加量でもPPの熱安定性を向上させることができ、かつ、PPの熱酸化分解温度を大幅に引き上げ、PPの熱性能向上の面ではカーボンナノチューブ及びナノ粘土さえも上回る。C60は極めて低い添加量でPPの点火時間を延長でき、PP燃焼による熱発生速度ピーク値(PHRR)大幅に低下させた。1.0 wt%の添加量ではPHRR値は42%減少した。研究の結果、C60がPPの熱性能及び難燃性能を向上させるメカニズムは、主にC60のフリーラジカルに対する高い活性、すなわちフリーラジカル捕捉メカニズム及び高温下で架橋網状構造を構築可能であることによる。

 さらに、合成した膨張型難燃剤(PDBPP)を化学的に修飾したC60から得たC60-d-PDBPPのグラフト率は70%に達し、C60とPDBPPの間には顕著な相乗難燃效果があることを示した。PDBPPのC60に対する化学的改質により、C60のPP基体中における分散が増加しただけでなく、システムの熱安定性が向上され、かつ、システムの燃焼速度及び熱発生速度が明らかに低下した。

 カーボンナノチューブとC60はポリマー難燃分野でそれぞれ長所があるため、当該研究グループは3段階の化学的グラフト法によりC60をカーボンナノチューブの表面に修飾したところ、カーボンナノチューブの有機溶剤中での溶解性を向上させただけでなく、ナノ複合材料の熱発生速度をさらに低下させることができた。これは、カーボンナノチューブのネットワーク構造の遮断効果とC60によるフリーラジカル捕捉との間の相乗効果による。

3 その他のナノ系難燃システム

 上述のナノ系難燃剤のほか、難燃ポリマーに使用できるナノ粒子には多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、層状複水酸化物(LDH)、α-硫酸ジルコニウム等がある。

 多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)は新型難燃剤として近年すでに報告されている。POSSは一般に優れた熱安定性を有し、なかでもオクタメチルシルセスキオキサン(T8)は熱分解後に二酸化ケイ素となるため、優れた耐熱性を有する。CaminoらはPP/POSSナノシステムの難燃性能を研究した結果、Al基POSSだけがPPに良好な難燃性能を示す一方、純POSS及びZn基POSSには難燃效果がないことがわかった。POSSの難燃メカニズムは、POSSが難燃材料として燃焼する際にPOSSはポリマー表面に徐々に移行して一種のセラミック層を形成し、このセラミック層は外界の酸素と熱量を隔離して伝熱ポリマーに拡散することで下層のポリマー基体を効果的に保護するものと一般的に考えられている。POSS高分子モノマーはポリマーのプレポリマーとなりうるため、固化後に特定の機能を持つ高分子材料を得られるほか、共重合、グラフト等の反応により高分子の側結合又は主結合を取り入れ、シルセスキオキサンが改質されて出来た高分子材料を得られることから、POSSと他の難燃剤の組み合わせは、難燃分野で幅広い将来性があることが分かる。

 現在、ポリマー/層状複水酸化物及びポリマー/α-硫酸ジルコニウムナノ系難燃システムに関する研究も行われ始めており、層状複水酸化物(LDH)のポリマーに対する難燃作用は粘土と類似する。しかし、層状ケイ酸塩に比べ、LDHはα-ZrP層間との電荷密度が高く、層と層の間の相互作用が強いため、ナノ複合材料となりにくい。このため、さらなる研究が待たれる。

4 問題の存在及び展望

 ナノ系難燃技術は1990年代以降、基礎研究及び製品開発のいずれも顕著な進歩を遂げているが、ナノ系難燃ポリマーの研究が広く実用されるには、なお長期かつ複雑なプロセスを要する。現在、ナノ系難燃ポリマーシステムに関する研究には依然として多くの解決又は改善を要する問題が存在する。

  1. 現在、粘土の有機層間剤は依然として燃えやすい長鎖アルキルアンモニウム塩が主であり、難燃性能の向上を目的とする有機層間剤が欠乏している。その上、アルキルアンモニウム塩は燃えやすいだけでなく熱安定性も低いため、温度が高いと分解されやすく、燃焼時の点火時間が短縮され、加工温度が高い工程でのプラスチックへの実用に適さない。このため、難燃機能を有する有機層間剤を設計・合成して粘土を処理することは、難燃PLSNの重要な方向性の一つである。
  2. 現在、ナノ系難燃メカニズムには依然として系統的な説明が存在しない。粘土システム遮断層メカニズム、フリーラジカル捕捉メカニズム及びカーボンナノチューブシステムのネットワーク構造に関する大まかな説明のほか、ハイポリマーの精密構造、燃焼プロセス中のシステム粘性・弾性の変化、燃焼後の残留炭素の精密構造及びそのシステム難燃性能に対する影響などのさらなる研究が待たれる。
  3. ナノ系難燃技術は、コーン熱量計法試験で材料の熱発生速度及び質量損失率を効果的に低下できるとはいえ、例えば垂直燃焼実験(UL 94)及び極限酸素指数試験(LOI)等の従来型の難燃実験では満足な結果が得られない。このため、多種の難燃メカニズムと多種の燃焼試験方法の間の関連性を研究する必要があり、これを基礎にナノ系難燃剤と従来型の難燃剤とを配合し、長所を取り入れ短所を補うことで相乗効果による難燃実現の目的を達成する。相乗難燃効果は、現在すでにナノ系難燃システム発展の重要な方向性となっている。

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