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外科手術用ロボットの実用化及び研究の現状

2012年 2月13日

張 詩雷

張 詩雷 (Zhang Shilei):
上海交通大学医学院付属第九人民医院口腔顎顔面外科
副教授、副主任医師

1999年、上海交通大学医学院卒。修士号取得後、付属第九人民医院口腔顎顔面外科に勤務して、現在まで。2004年、上海交通大学医学院口腔医学領域で博士号を取得。2006年、ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンでFellow研究を終了。2005年、上海交通大学副教授、副主任医師。主な研究分野は、頭蓋顎顔面奇形の総合整復治療、デジタル化・3Dナビゲーション・ロボット支援による外科手術。現在、国家自然科学基金、教育部基金、市レベルの科学研究事業多数を主宰。主宰する研究グループが頭蓋顎顔面外科手術用ナビゲーションハードウェア・ソフトウェアシステムの開発に成功。このシステムは独自の知的財産権を有し、国家食品薬品監督管理局の検査を通過。中国で初めて光学ナビゲーション支援による頭蓋顎顔面外科手術を100例以上実施。現在、自由度を持つ外科手術支援小型スマート化ロボットのサンプル機の研究開発を多数主宰。国際的な学術会議による招待多数、コンピュータ支援による頭蓋顎顔面外科手術の成果を報告・指導、注目すべき成果を達成。中国語・英語による論文20本以上。特許5件を申請・獲得。

 1959年、「ロボットの父」と称されるJoe Engelbergerが世界初の工業用ロボットを開発した。その後、ロボットは半世紀にわたる発展を遂げ、現在では工業、農業、宇宙、軍事、家庭、サービス等、さまざまな分野で広く実用化され、社会的・経済的価値は大きい。外科手術における精度不足、大きすぎる切開口や多すぎる被ばく、オペの疲労等の問題を解決するために、研究者たちはロボット技術を外科手術分野に取り入れる方法を検討し始めた。ロボットやセンサ、制御装置等の技術そのものが持つ利点に力を借り、外科医療に全く新しい使用方法及びシステムを提供することで、これらの問題を解決し、手術効果の向上を目指す。

1 外科手術用ロボットのシステム構造の概説

 大多数の外科手術用ロボットのシステムの構造は、モデリング、プランニング、実行の3原則に基づく。モデリング段階で画像収集・処理・分析を行い、プランニング段階で手術計画を決定し、実行段階では手動またはオートメーション化した機械及び設備の支援を受け、医師は手術計画を実行に移す。外科手術用ロボットのシステムはスマート機材(ロボット)と自動制御技術を統合し、現像設備及びセンサ等の機材を利用して、直接または間接的に操作することで手術による傷口を小さくできる。

1.1 プランニング・手術用ナビゲーション支援サブシステム

 画像技術、コンピュータ技術等の発展に伴い、2D画像を利用して3D画像を再構築することが可能になったことから、再構築された3D画像と手術機材のトラッキング技術を結合させ、コンピュータによるプランニング・手術用ナビゲーション支援システムが構築された。このシステムは通常、術前プランニング・シミュレーション及び術中ナビゲーションに用いられる。オペに直接関与せず、安全性が非常に高いため、医師の間で受け入れられ、広く臨床に用いられている。コンピュータによるプランニング・手術用ナビゲーション支援システムは、現在主に次の2種類がある。1つ目はロボットアームによる位置表示システムであり、典型例にカナダISG社が発表したViewing Wandがあり、CT画像とロボットアームにより手術に干渉する。このシステムでは、解剖学的特徴に基づく画像空間及び手術空間の投影方法を採用し、器械のトラッキング上で専用の「デジタル式」多関節ロボットアームを開発した。通常の応用では、このシステムの典型的な精度は2~3mmであり、ステレオタクティックバイオプシーでは精度は1mmに達した。先進国では、Viewing Wandはすでに幅広く臨床的に使用され、組織生検、手術用ナビゲーション、腫瘍の定位・切除等に重要な意味を持つ。2つ目は光学位置表示装置に基づくシステムである。現在最もよく用いられているのが赤外線によるアイトラッキングシステムであり、典型例としてStryker社のStryker-Leibingerナビゲーションシステムがある。このシステムでは、マーカーに基づく画像空間及び手術空間の投影方法を採用している。マーカーは術前に患者の体の上に置かれ、器械によるトラッキングは赤外線光学トラッキングメカニズムを採用し、トラッカーは骨または手術用器械に置かれる。もう一つの重要なコンポネントは光学センサを持つカメラであり、トラッカーからの赤外線信号を受信した後に三角測量を経て、トラッカーの相対的な空間位置を得ることができる。

 また、中国ではCT画像に基づく手術用3Dシミュレーションプラットフォームの構築について報告されており、2005年に上海交通大学と上海第二医科大学が共同で開発した3Dシミュレーションプラットフォームを用いて歯顎顔面の奇形の診断、術前予測及び模擬を行うことで、顎矯正外科手術の精度を高めることができる。2003年、第四軍医大学の龔振宇らはヘリカルCTデータに基づき頭蓋顔面の3Dモデルを構築し、これを基礎に整形手術へのコンピュータ支援を設計し、頭蓋顎顔面の奇形・損傷・腫瘍の診断と治療に重要な根拠を提供した。

1.2 オペ支援サブシステム

 現在、ナビゲーションシステムは臨床で広く使用されており、精度は0.3mmクラスに達しうるが、手術中の人為的及び器具操作による誤差により、実際のオペでナビゲーション効果を完全に実現するのは難しい。この種のシステムは主にこのような問題をターゲットに、操作精度が高いというロボットの特徴を利用して手術水準を向上することを目的にする。オペ支援サブシステムの代表格は関節全置換手術のロボット支援システムであり、主にプランニング支援システム、オペ支援ロボット、安全検査システムの3つの部分で構成される。オペ支援ロボットのオートメーション化レベルに基づき、外科用ロボットによるオペ支援サブシステムは次の3種類に大きく分類できる。すなわち、①自主システム:ロボットがあらかじめ設定されたプログラムによりオペを行い、またはプログラミングに基づき独立してオペを行うもの。典型例はROBODOCロボットシステムであり、入力データ及びプログラムに基づき、RoboDocオートメーション化によりプログラム実行指令が行われる。②自己操作(遠隔マニピュレータ)システム:マンマシン・インタフェースの設計により、オペシステムによる手術医へのオペ指令をロボットが支援する。典型的な代表はZEUSロボットシステムであり、マスター・スレーブアームの設計により、医師はマスターアームを操作し、かつ、制御台上のモニターで内視鏡撮影された患者の体内を観察することができる。スレーブアームはロボットアーム2つと内視鏡を操作するロボットアームにより構成される。遠隔マニピュレータシステムは手術医のオペ情報をデータ化したのちに、ネットワーク伝送を介し、ロボットの手技に対し遠隔コントロールを行う。③パッシブ型システム:オートメーション化設計されておらず、手術医の手部動作のみを伝送する。現在、一般の手術にのみ応用されている。典型例はスイスで発表されたMedvisionシステムであり、医師がこのシステムを利用して膝関節全置換手術を行う際は、術中CT等による画像的ナビゲーションを必要とせず、手術医は直視環境下でロボットアームを操作するため、柔軟性と安全性が高い。

2 外科用ロボット技術のこれまでの発展

2.1 工業用ロボットプラットフォームに基づく外科用ロボット技術

 初期の外科用ロボットシステムの大部分で、工業用ロボットプラットフォームが採用された。1985年、Kwoh YSらにより初の医療用ロボットが発表された。1989年、英国のCenter for Robotics at the Imperial Collegeは、実験室で改良した6自由度Puma型ロボットにより前立腺切除術を成功させ、従来の方法より手術時間を大幅に短縮した。CASPAR(コンピュータによる手術プランニング支援及びロボットシステム)も類似のシステムであり、Stabuli RX90工業用ロボットを採用し、腸骨または膝関節全置換手術における骨格研削及び前交叉靭帯再建術のトンネル入口の定位が可能で、研削精度は0.10mmに達する。

 中国の研究者も医療用ロボットの分野で関連研究を行っている。1995年から、北京航天航空大学と解放軍海軍総医院は共同で、シミュレーションに基づくロボット支援システムを開発して神経外科分野で支援を行い、1997年にはPuma262工業用ロボットを基礎にした脳外科手術支援ロボットによる第1世代定位システムCRASを共同で開発し、臨床上の採用にも成功し、中国の医療用ロボット研究における空白を補った。現在、このシステムは第5世代まで開発されており、手術のオートメーション化レベル、精度、安全性のいずれも著しく改善されている。このシステムは2004-2005年に神経外科用ロボットシステムの臨床許可証を取得し、北京市の医療保険診療項目に入れられた。現在、このシステムは20余りの病院に導入されており、5000例以上の神経外科の定位生検術に成功し、臨床上も、社会的にも高い成果を挙げている。2002年、ハルビン工業大学はMotoman工業用ロボットに基づく骨折手術治療ロボットの試験プラットフォームの開発に成功した。この研究と実用は、中国の医療用ロボットの確立と発展を大いに促し、外科手術の治療理念と方法を発展させた。しかし、これらの研究の殆どは工業用ロボットプラットフォームに基づくもので、ロボット設計の出発点における理念と役割の違いから、臨床応用にはまだ大きな制約があった。

2.2 外科用ロボット技術

 外科用ロボットは1980年代後期に登場した。1987年、米国ISS社はNeuroMateロボットシステムを発表し、ロボットアーム及び定位生検フレームにより神経外科手術中のナビゲーション定位を実現し、1999年に米国FDA認証を受けた。1988年にはUniversity of CaliforniaのDavisとMB社が共同でSCARAロボットを改良し、腸骨置換手術に利用可能なロボットを初めて開発した。1991年にはImperial College Londonで甲状腺切除に利用される初めての泌尿器科用ロボットProbotが開発され、その後、Harrisらにより改良され、甲状腺切除専用の外科用ロボットシステムが開発された。同じ年に、ISS社は世界初の骨手術ロボット、有名なROBODOCを発表した。アクティブ型のロボットシステムとして、ROBODOCは術前プランニングに使用されるコンピュータと挿入措置、掘削を行う5軸のロボットアーム、そしてロボット制御プラットフォームから構成される。Dr. Bargarは1992年7月にROBODOCを使用して米国カリフォルニア州で初の寛骨全置換手術の臨床試験を行い、腸関節置換物を設置するルートの計画に成功した。1994年、米国カリフォルニア州のComputer Motion社は、最小侵襲手術に用いる初の医療用ロボット、内視鏡自動定位システム—イソップ(AESOP)を開発し、1997年3月にベルギー・ブリュッセルのSt Pierre医院で初の腹腔鏡による胆嚢切除術に成功した。現在、すでに商業化され、FDAの認証を受けている外科手術ロボットシステムには、主にイソップ(AESOP)システム、ゼウス(ZEUs)システム、ダヴィンチ(DA VINCE)システムがあり、後者2つは遠隔マニピュレータ外科用ロボットシステムである。

 中国では、2000年に海軍総医院で初の脳外科手術用のパッシブ型ロボットの開発に成功し、実際に患者に手術が行われた。最初にターゲッティング(CTデータに基づく3D再構築による病巣ディスプレイ)を行い、次にキャリブレーション(コンピュータ上で病巣に照準を合わせ、手術プランを立て、手術空間を設定し、ロボットと模擬空間をマッチングする)を行ってから、最後に手術を行う。続く研究ではアクティブ型の脳外科用ロボットアームが次々に開発され、手術の操作性と精度の向上に効果的であった。2004年、香港中文大学において初の手術用ナビゲーション用ロボットアームのサンプルマシンが開発されて臨床で採用され、骨学手術中で最も良く行われる操作、すなわちナビゲーションのモニタリング下で穿孔してボルトをはめる操作を正確に行うことができた。このナビゲーションアームはすでに骨盤骨折の際の腸骨経皮上のボルト固定、尾てい骨のボルト固定、大腿骨頚部中空ボルト及び髄内釘遠位固定等の手術で成功を修めている。顕微鏡外科手術でさらに医師を支援するため、2006年に天津大学ではマスター・スレーブ方式による顕微鏡外科手術用ロボットシステム「妙手(MicroHand)システム」を開発した。「妙手システム」はフォースフィードバック機能を持つ商業化されたPhantom Desktopマスターアームであり、スレーブアームは顕微鏡による血管縫合外科手術のために自主開発され、設計された「妙手」スレーブアームで、顕微鏡外科手術の正確な操作を実現した。

2.3 小型モジュール化外科用ロボット技術

 21世紀に入ると、最小侵襲外科の影響を受けて外科用ロボットの小型化、モジュール化、ひいては人体設置の傾向が進んだ。超小型モジュール化ロボットは、まずは手術支援に採用され、従来の内視鏡検査が改良された。1999年、Darioらは半オートメーション化された超小型ロボットを用いて通常の結腸鏡検査術の改良を行った。2001年、イスラエルのMazor社は小型で並列接続の脊柱用外科手術ロボットSpine Assistを発表し、脊柱手術中の椎弓根スクリューと椎間板ヘルニア用スクリュー設置の定位精度及び安定性を著しく向上させた。このシステムはFDA認証を受けている。2002年、ドイツ人研究者により心臓手術支援ロボット—Cargo Modelが開発され、密閉胸腔内の手術空間における手術器材、組織及び血管等の手術医の望む位置への設置を実現した。2004年にはPraxim Medivision社が膝関節全置換に用いる骨格研削小型ロボットPraxitelesを開発した。これは骨格上に直接設置することもできる。同年、東京大学は5自由度の小型チェーン式ロボットを開発し、前交叉靭帯再建術中のトンネル穿孔に用いた。続いて、2005年にはWolf Aらが骨格上に設置可能な脊椎手術支援ロボット及び関節成形時の骨切削に用いるMBARS小型並列接続ロボットを開発した。同年、Pstronik NAらは心膜下に設置可能なロボットHeart Landerを開発した。最新の研究では、2008年にピッツバーグ大学でHeartLanderロボットにより拍動中の心臓に対する心外膜注射が実現し、心不全患者に対する最小侵襲細胞移植治療に重要な参考となった。

 中国国内では2002年から、北京航天航空大学がハルビン工業大学、北京積水潭医院等の機関と共同で、国家863計画の資金援助を受けて最小侵襲骨学手術システムの研究を行った。従来の方法に存在した手術精度、X線による損傷等の問題をターゲットに、小型モジュール化骨学ロボットシステムの開発に成功し、モジュール化の角度から臨床上の必要に応じ、C型アーム、画像収集、ロボット、ナビゲーションを巧みに結びつけ、並列接続構造を設計した。構造は大変緊密で、ロボットの運動も患者にいかなる傷害も与えず、臨床上の使用に非常に適している。このシステムで現在までに臨床手術が61例行われており、成功率は100%である。2003年、上海交通大学は腸腔検査に用いられる超小型内視鏡ロボットを開発し、後に改良を行い、2005年に開発したミミズ式爬行ロボットと2008年に開発した無線モジュールにより、ロボットの腔内検査及び画像伝送がよりリアルタイムで、真実に近いデータとなった。膝関節全置換手術における器具の種類が多く操作が煩雑で、大腿骨の力学性能を確定し難い等の問題を解決するために、2004年に上海交通大学と上海第二医科大学は共同で、膝関節全置換手術に適用可能な新型器具を開発した。これには、7自由度の調整可能なサポートアーム及び5自由度のサーボモータ駆動ロボットアームがあり、ボーンクランプを介して患者の患肢とロボットアームやサポートアーム等の手術器械とをしっかりと連結する。このシステムの巧みで堅牢な機械構造により、かつての支援ロボットに比べ、より柔軟で便利に手術の操作が行えるようになった。腹腔鏡の最小侵襲手術ロボットの分野では、天津大学とパリ第六大学が共同で最小侵襲手術ロボットMC2Eシステムを開発した。このシステムには4自由度であり、人体の上方に直接設置可能で、かつ、フォースフィードバック装置があり、すでに動物(ブタ)の心臓で実験が行われている。2007年から2009年にかけて、清華大学華中科技大学東南大学等は最小侵襲血管足場材のデジタル化設計及び製造を行い、心血管インターベンション用超小型器材、軟組織穿刺等の分野でも関連の研究を実施している。

2.4 バーチャル外科手術におけるロボット技術

 バーチャル外科手術は、ロボット遠隔マニピュレータ技術を基礎に発展したものであり、バーチャル外科手術におけるロボット技術とは、ロボット支援外科手術システムとバーチャルリアリティ技術とが結びついた外科支援技術である。手術は、手術医が別のところで遠隔マニピュレータシステムによって手術現場のロボットを制御して行う。1993年、イタリア・ミラノのロボット実験室で世界初の遠隔手術試験が行われた。イタリア人医師が米国JPL実験室でIBM SCARA 7565ロボット遠隔手術システムにより、イタリア・ミラノにあるブタの組織・器官に対して遠隔組織切片検査手術を行った。1996年には世界初の遠隔手術ワークステーションが誕生し、医師はマイクロ波通信によって、遠隔地から移動病院での手術を行えるようになった。現在、最も典型的なバーチャル外科手術ロボットシステムとはZEUSシステム及びDA VINCIシステムである。1997年にIntuitive Surgical社の統合手術システム(現在の直視手術)はSRI Green遠隔手術システムとしての認可を受けた。このシステムは幅広い再設計によりダヴィンチ手術システムと称されるようになり、2000年にはFDAの認証を獲得している。1998 年、米国ボルチモア市の外科医師は、「腎臓経皮穿刺( PAKY)」システムを用い、イタリアの患者に対する腎集合システム経皮穿刺手術に成功した。2007年、米国で遠隔最小侵襲外科手術ロボットシステムの研究が始まり、DA VINCIシステムを採用して米国のWalter Reed Army Medical CenterとJohns Hopkins Hospitalの間で遠隔手術研究が行われた。遠隔手術技術の発展に伴い、数千キロ離れた土地でも手術を行うことができ、また、インターネットや衛星通信技術の発展により、一部の危険な地域、あるいは通常の手術を行うのが難しいか、全く不可能な地域でも遠隔手術を行うことが徐々に可能になってきている。

 今世紀初め、中国でもロボット遠隔外科技術が研究された。2001年、解放軍海軍総医院と北京航空航天大学の協力により、ローカルエリアネットワーク下での遠隔外科手術の予備研究が行われた。2003年には「黎元BH-600」アクティブ型ロボットを利用し、北京-瀋陽間で中国初の脳外科定位生検遠隔マニピュレータ手術が行われ、ビジュアル標定、ADSLマルチ映像ネットワークにおける同時伝送、プレビュー、予測に基づく拡張現実等の技術でブレイクスルー的進展を得た。2005年5月~2006年3月、北京積水潭医院は独自に開発した、ASDL/ISDNネットワーク・プラットフォームに基づくマスター・スレーブ方式の遠隔外科用支援ロボットによる脛骨髄内のインターロッキングネイル固定手術システムによって遠隔手術操作を行い、厳格な訓練と完成されたモデル骨、死体模擬実験に基づき、脛・腓骨骨折患者7例に対し、北京-石家庄、北京-延安間の遠隔脛骨骨折閉合・整復、インターロッキングネイル固定手術を行った。その結果、独自に開発した遠隔骨学ロボット手術システムは安全かつ効果的で、全工程を間断なく行うリアルタイム手術映像伝送による遠隔操作とは異なり、ネットワーク遅延やブロードバンドによる制約が回避できることがわかり、創傷骨学における遠隔外科用ロボットの応用に向け、実用的かつ安全な技術プラットフォームを構築することができた。遠隔手術における重要技術には外科手術仮想訓練システム技術、力センシング及びフィードバック技術、遠隔マニピュレータ技術、ネットワーク応用技術があり、バーチャルリアリティ技術と緊密に結びつける必要がある。現在、盛り上がりを見せる先端医療技術として、遠隔手術システムの登場は現代の医療エンジニアリングの発展に大きく影響するであろう。また、学際的な総合技術でもあるため、この分野の発展は関連分野に対しても牽引役となるであろう。

3 まとめ及び展望

 外科手術の世界的な発展傾向は最小侵襲化の方向にあるが、外科における最小侵襲化とは、いくつかの具体的な最小侵襲手術技術だけを指すのではなく、臨床技術全体を貫く理念であり、将来の外科治療手術における指導的理念である。外科用ロボットとコンピュータ支援手術の開発は、外科手術モデルに革命的な変化をもたらした。これは現代医学、情報技術及びスマート化エンジニアリング等、多くの分野の結晶である。現在、海外におけるコンピュータ支援技術及びロボット技術の融合は、臨床上多くの領域で応用されている上、優良な効果を示している。しかし、中国では臨床応用の成功例はまだ少なく、関連研究も始まったばかりである。このため、科学技術の発展に伴い、次の領域でのさらなる研究が待たれる。

(1)バーチャルリアリティ技術の応用:医師がさらなる臨場感を感じることができ、かつ、外科医師の技術訓練に応用され得る技術。

(2)高精度な定位システムの研究:現在、ロボットアーム定位システム、または光学ナビゲーションに基づく定位システムのいずれも精度が足りず、装置の体積・重量とも過度に大きく、高価過ぎる等の問題があるため、高精度な定位システムの開発は手術レベルの向上、外科用ロボットの改良に大きな意味を持つ。

(3)外科用遠隔操作ロボットの開発:中国は国土が広大で人口が多く、都市から離れた不便な地域に住む多くの患者は適時に治療を受けるのが難しいため、遠隔マニピュレータ外科用ロボットの開発と実用化は現実の医療問題の解決に材料を提供する。

 このほか、新型の外科用ロボットシステムや新型の手術器具、スマート・センサ等の関連技術の開発も、依然として将来の外科用ロボット研究の関心事と重要な点である。科学技術の絶えざる発展に伴い、外科用ロボットは外科手術のモデルに革命をもたらすものと信じる。


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