第65号:ロボット技術
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物連網の技術的思想及び応用戦略に関する研究

2012年 2月17日

朱 洪波

朱 洪波(ZHU Hongbo):
南京郵電大学 副校長、教授、博士課程指導教員

1956年2月生まれ。1996年、北京郵電大学電磁場・マイクロ波技術専攻、工学博士。1997年~1999年、南京郵電学院電子工程系教授。1999年~2005年、南京郵電大学研究生部主任、教授。2005年~2009年、南京郵電大学通信・情報工程学院院長、江蘇省無線通信重点実験室主任、教授。2008年~現在、南京郵電大学副校長、江蘇省無線通信重点実験室主任、教授。主な研究分野は無線通信、物連網技術分野の科学研究。学術論文200本以上。

1 はじめに

 物連網(IOT,internet of things)とは、ネットワークを介してすべての事物を結び

 つける仕組みを言う。現在、比較的賛同を得ている定義によれば、物連網とは「電波による個体識別」、赤外線センサ、全地球測位システム、レーザスキャナ等の情報センシング設備を介し、定められたプロトコルに従いモノをネットワークに接続させて情報の交換及び通信を行うことにより、スマート識別、ポジショニング、フォローアップ、モニタリング及び管理を実現するネットワークを指す。

 物連網のもう一つの定義とは、モノとモノ、人とモノ、人と人の相互ネットワークを実現し、現在、インターネットにより実現されている人と人の間の相互ネットワークを、センシング技術を介してモノとの相互ネットワークにまで拡大することで、すべての事物間の主動的な情報交換及び通信が実現できるという考え方である。モノの情報がインターネットを介して情報処理センターに伝達された後に、さまざまな情報サービス及び応用を実現できる。

 物連網は、ユビキタスネットワークの応用として理解できると本稿では考える。ユビキタスネットワークとはどこにでも存在するネットワークであり、個人や社会のニーズに基づき、既存及び新規のネットワークを利用して、人と人、人とモノ、モノとモノの間の情報の取得、伝達、保存、認知、意思決定、使用等の総合サービスを行うネットワークシステムである。ユビキタスネットワークには環境センシング、コンテンツ・センシング、スマート性があり、個人及び社会に対し、「どこにでも存在し、すべてを含む」情報サービスと応用を提供する。ユビキタスネットワークは、物連網より広い意味をもつ。

 センサネットワークとは、物連網の末端ネットワーク及びセンシングのためのエクステンション・ネットワークである。センサネットワークとは、多数のセンサ、データ処理ユニット、通信ユニットにより構成されるノードにより、アドホック・モードを介して構築された、範囲が制限された無線ネットワークを言う。センサネットワークは、物連網における事物の連携及び情報センシングを提供する。

2 物連網の重要技術の分析及び研究

 中国通信標準化協会のユビキタスネットワーク工作委員会は、物連網の三つの層を打ちだした。第一の層は、センシングのためのエクステンション・ネットワークであり、センサを介して事物と結びつき、情報のセンシングを行う。第二の層は、異種混合によるユビキタス通信ネットワークであり、情報の伝達及び処理を実現する。第三の層はアプリケーション及びサービスであり、さまざまな端末設備にセンシング情報及びアプリケーションサービスを提供する。

2.1 物連網の構造体系

1)センシング・エクステンション層

 物連網ではモノとモノ、人とモノとの通信を実現するため、センシング・エクステンションは必須である。センシング・エクステンション層ではモノの情報の収集、獲得、識別を実現する。センシング・エクステンション層の重要技術はセンサ、RFID、GPS、アドホックネットワーク、センサネットワーク、短距離無線通信等である。センシング・エクステンション層は消費電力の削減、低コスト化、小型化の問題を解決するとともに、感度がより高く、より全面的なセンシング能力を目標に発展する必要がある。

2)ネットワーク層

 物連網のネットワーク層では主に情報の伝達を行うため、ネットワーク層は物連網における情報のキャリアネットワークであると言える。ネットワーク層は、アクセスネットワークとコアネットワークで構成される。アクセスネットワークは物連網の端末にアクセス機能及びモバイル管理を提供するもので、これにはさまざまな有線アクセス及び無線アクセス等がある。コアネットワークはIPに基づく統一的で拡張可能な高性能のネットワークであり、異種アクセス及び端末のモバイル性を支持する。コアネットワークは既存の通信ネットワーク及びインターネットに相当程度依存する。

3) ビジネス層及びアプリケーション層

 ビジネス層及びアプリケーション層は情報の保存、データの発掘、アプリケーションの意思決定等を実現し、最終的に情報ビジネス及びアプリケーションを提供する。ビジネス層及びアプリケーション層は大量の情報に関するスマート処理、分散コンピューティング、ミドルウェア、情報ファインダー等のさまざまな技術と関係する。ビジネス層及びアプリケーション層はデータの保存及びスマート分析を行い、ユーザーのニーズに合わせて成果を発揮する。スマート分析層においては、クラウド・コンピューティングがコアとなる。

 現在の物連網のアプリケーションはいずれも各業界で独自にシステムが構築されているため、システムと端末の具体的なアプリケーションの関係性は多様なビジネスの展開に不便で、ビジネスの変更にも不便であり、専用の業界サーバを必要とする。業界間の格差により、現時点では、物連網は規模の効果を発揮することができない。

2.2 物連網の異種混合ネットワークのプラットフォーム層

 いかなる端末ノードも、物連網ではユビキタスな相互接続が実現できるはずであり、その重要技術はネットワークリソースの共有を実現する異種ネットワーク連携プラットフォームにある。物連網は、コア層でNGN/IMSとの連携を考慮することができ、アクセス層でさまざまな異種ネットワークの連携及び相乗効果を考慮する必要がある。

 ネットワークの異種性は主に次の面に表れる。すなわち、1)さまざまな無線周波数帯特性によるスペクトルリソース使用の異種性。2)さまざまなネットワークアクセス技術で用いられるエア・インタフェース及び関連プロトコルの異種性及び非互換性。3)ビジネスの多様化。4)端末の多様化。5)各キャリアによる異なる運用管理戦略。これらいくつかの面が交錯して関係し合い、相互に影響し合うことで端末アクセスネットワークの異種性が構成される。

 ネットワーク連携の主要ポリシーとは、基礎的なネットワーク上に構築された公共通信プラットフォーム上に、各種異種ネットワークにより共有の連携と個性の協調が実現されているものと理解できる。連携とは、それぞれのネットワーク間の共通性の統合であり、具体的には各種異種ネットワークと公共通信プラットフォームとしてのモバイル通信ネットワークと基幹ネットワーク、または次世代ネットワークとの連携を指す。協調とは、それぞれのネットワーク間の個性の統合を指し、具体的には大規模ネットワーク中の各アクセス・サブネットワークが相互間の協調により共存、競争、連携を実現し、ビジネス及びアプリケーションのニーズを満たすことを言う。異なる通信ネットワークの連携は、異種通信ネットワークの協調に資するためにある。協調技術は、マルチネットワーク連携及び無線サービスにおけるユビキタス化、高速化及び敏捷化を実現するための必然の選択であり、将来の物連網におけるスペクトルリソースの共有において解決の待たれる問題である。

2.3 センサノード及び端末

 センサノードはモノそのものの情報を収集できるのみならず、モノに関連するさまざまな情報を検出、保存、処理、連携することができ、これによって物連網に対して事物の連結性及び各種関連情報を提供している。

 マイクロエレクトロニクス、組み込み技術、短距離通信技術、センサ技術、RFIDタグ技術等の発展と成熟により、センサノードはスマート技術によりモノと環境をセンシングし、かつそれらに対する通信を行い、処理・コントロールができるようになった。センサノードの重要技術には、センシングされた内容のマルチメディア化におけるセンサノード技術、センサノード組み込み化に関する重要技術、センサノードの設計及び低コスト生産、ネットワーク及び協調面におけるセンサノードのソフトウェア・ハードウェア機構等がある。RFIDは物連網における重要なセンサノードであり、商品バーコード、物流、自動配送等の分野での実用に重要である。電子製品コードEPCは、物連網におけるモノの識別コードになる可能性がある。EPC及びRFID技術は物連網の発展と実用を推進した。物連網には小型化かつスマート化され、低コストなセンシング端末が必要である。物連網ではモノ及び端末に唯一の識別アドレスが必要とされ、端末アドレスにはIPv6、モノのアドレスにはEPCが採用されるだろう。

2.4 ユビキタスセンサネットワーク

 ユビキタスセンサネットワークは、物連網の末端で採用される重要技術の一つである。ユビキタスセンサネットワークは多数のセンシングノードにより構成される分散式無線アドホックネットワークであり、モノの周囲環境の物理的パラメータに生じた変化に関する情報を感知するのに用いられ、一般にローカルエリアまたは狭い範囲内でのモノとモノの間の情報交換を提供する。センサノードにより構成された末端ネットワークは、物連網の異種混合ネットワークに接続されることでユビキタスに相互接続しうるネットワークを構成する。

2.5 物連網のビジネスサポート及びスマート処理技術

 物連網ではモノとモノ、人とモノ、人と人との通信を検討し、産業、家庭、個人レベルでの応用・アクセス方式等を検討する必要がある。ビジネスシーンやニーズに対する研究に基づきビジネスの機能及び特徴の分析を行い、汎用性のあるビジネス機能を定義した後に物連網のネットワークリソースを抽象化することで、各種ビジネス及び複合合成ビジネスにビジネス機構を提供し、ビジネス分配プラットフォーム及び第三者オープンビジネスの接続プラットフォームを研究・開発し、低層の異種ネットワークと関係しないビジネス分散メカニズムを実現する。産業向け情報化サービスを主に、個人向け公共サービスを副に公共の技術及びビジネスプラットフォームを構築する。

 物連網のビジネスサポートシステムにはP2P、クラウド・コンピューティング等の分散コンピューティング技術を結合させ、データをスマート分析・処理する必要がある。オープン式の物連網環境にはクラウド・コンピューティングの採用が必須である。その理由は、第一に物連網はビジネスタイプが多様で関連産業が広範にわたり、ビジネスデータ量が膨大であるという特性があり、既存のハードウェア環境ではサポートが困難であること、第二にはキャリアは休眠中の計算能力及び保存能力を大量に蓄積していること、第三にはビジネス開発者やアプリケーション配置数の増加に伴い、物連網の計算能力に対する要求は高まる傾向にあるため、柔軟性のある計算能力を導入する必要があることである。クラウド・コンピューティングはこれら能力を有する。

2.6 物連網の総合サービス・プラットフォーム技術

 物連網は情報を総合的に分析し、よりスマートな総合サービスを提供する。物連網のアプリケーション・プラットフォームのサブセット及び共通サポートプラットフォームとの間の関係、共通サービス・プラットフォームのオープン性及び規範性は、物連網のアプリケーション配置の上で研究が必要とされる重要な問題である。

 クラウド・コンピューティングは、物連網の総合サービス・プラットフォームを構築する上で重要な技術である。「クラウド」とはリソースを提供するプラットフォームであり、クラウド・コンピューティングとはビジネス計算モデルである。ここでは、計算のミッションを大量のコンピュータによって構成されるリソースプール(プラットフォーム)上に分散し、さまざまな応用システムに必要に応じて計算能力、保存空間を獲得させる情報サービスである。クラウド・コンピューティングの応用には、エネルギーを統合し、それぞれのメンバーの共有に資すると言う思想が包含される。

 物連網のサービス・プラットフォーム技術は、上層部のアプリケーションにおいてはオープンなインタフェースを提供する一方で、下層部に対してはさまざまなアクセス方式による格差を遮断して汎用性のあるタグ、ルータ、アドレス、マネジメント、ビジネス提供、ビジネス制御及びトリガー、QoSコントロール、安全性、経費計算等の機能を提供し、これら機能はミドルウェア技術、オブジェクト名解析サービス技術、PML(physical markup language)等の重要技術により実現される。

2.7 物連網の安全技術

 物連網の端末設備数は膨大であるため、物連網には既存のネットワークの安全問題のほかに、特有の安全問題がある。物連網の各層すべてに研究を要する特有の安全問題が存在する。

 センサノードの多くは無人制御の場面に存在するため、攻撃者はたやすく破壊できる。センサネットワーク、アドホックネットワーク等の端末ネットワークノードの能力には限りがあるため、複雑な安全対策は採用できない。セルラー式のモバイルネットワークは物連網の主なアクセスネットワークであり、そのものに安全問題が存在する。コアネットワークには相対的に整った安全保護能力があるが、物連網のノード数は膨大で、かつ、クラスターとして存在することから、ネットワークの渋滞を引き起こす可能性もあり、安全機構により物連網の設備間のロジック関係が切り離される恐れもある。多様化された大量の物連網アプリケーション・プラットフォームには、強大かつ統一的な安全管理プラットフォームが必要である。このため、物連網のためにシステマティックに安全保護メカニズムを開発する必要がある。

2.8 物連網の技術及び応用標準

 各業界及び地域の物連網にはそれぞれの標準があるため、それぞれの物連網アプリケーション事業間では互換が難しく、個々の情報の「孤島」と化している。国際標準化の分野では、ユビキタスネットワーク及びセンサネットワークの研究に関係する標準化組織には、主に欧州電気通信標準化機構M2M技術委員会(ETSIMTC)、3GPPのM2M標準、ITU-T SG16 AMSがある。しかし、統一的な標準はないため、物連網は広域的かつ全ネットワークを網羅したトータルなアプリケーションの実現が困難になっている。

3 マルチドメイン連携・共有の理念とユビキタス総合サービスの思想

 本稿で提起する、物連網の発展に関するコア技術概念は、マルチドメイン連携・共有及びユビキタス総合サービスである。

3.1 マルチドメイン連携・共有という先進的理念

 マルチドメイン連携・共有の目標とはマルチドメイン間のリソースの連携及びサービスの共有を実現することにあり、その理念の本質は将来的にすべてのネットワークを協調・連携させ、制限を受けずにさまざまな情報化ビジネスを許容し、さらに多様な連携ビジネスを創出することにあり、多数のドメインにより一つのドメインを構成することではない。マルチドメイン連携は、現代の情報技術分野が連携し発展する上での必然の趨勢であり、マルチドメイン間のリソース及びサービスの共有を実現し、低水準での建設の重複を避け、適応性が広く、保護が容易で、コストが低い高速ブロードバンドによるマルチメディアの基盤プラットフォームを構築することである。

 異種ネットワークは、ポストインターネット時代に向けての発展及び進化の過程において、各ネットワークの機能やビジネス範囲は一致の傾向にあり、ユーザーはいずれを用いても電話をしたり、インターネットに接続したり、テレビを見る等のさまざまなサービスを受けることができる。

 物連網の発展において最も重要な技術の一つが連携である。物連網は設備の連携、ネットワークの連携、プラットフォームの連携を通じてサービスの連携、ビジネスの連携、市場の連携を実現する。設備の連携とは、統合化したセンシング端末の開発を指す。ネットワークの連携とは、ユーザーがどの任意の端末からでも番号も決済方式も変えずに、特定の方式によりアクセスネットワークに接続できることを指す。プラットフォームの連携は、ユーザーデータの集中管理、公共のビジネスプラットフォーム、分類された管理プラットフォーム及びアプリケーション・プラットフォームを指し、ユーザーによるビジネスシステムを超えた相互操作をサポートし、統一的な認証システムを構築することで、1つの口座番号及びパスワードによる集中認証を実現する。サービスの連携とはサービス層で連携を実現させること、ビジネス連携とは、物連網が言語、データ、映像等の多様なビジネスを同時に提供できることにある。市場連携とは、市場メカニズムを牽引役に、各種通信・情報商品とサービスをパッケージで販売することにある。

3.2 ユビキタス総合サービスの技術的思想

 物連網の技術的思想は、「ユビキタスネットワーク」の利用による「ユビキタスサービス」の実現と定義することができる。物連網とは広範かつ深遠な未来型ネットワークの応用形態であり、本来の意図はネットワークの形式を利用して世界中のモノをすべて結びつけ、世界のあらゆるモノが自動的にネットワークに接続できるようにすることである。基本的な方法はRFID、センシング設備、全地球測位システム(GPS)又はその他の情報取得方式等の多種の革新的なセンシング技術を世界のさまざまなモノ、施設、環境に組み込み、インターネットを介して情報処理能力とスマート技術を世界の全てのモノの中に取り入れ、物質世界を最大レベルにデータ化し、生命を与えるものである。物連網は、世界のあらゆるモノを擬人化してネットワークに接続し、モノが「語り」、「考え」、「行動」できるようにすることを目標としている。

 物連網の本質とは、ネットワークのスマート化により、情報化という手段で、ネットワークを介してさまざまな事物を表現することにある。モノはRFID等のセンシング技術を利用して、人の干渉を要さずに相互にスマート的に「交流」でき、インターネットを通じてモノの自動識別と情報の互換及び共有を実現できる。物連網の特徴は、人の干渉を要さずにモノとモノが相互に繋がることで、効率を最大限高めると共に人の手による不安定性を減らすことにある。

 一つのネットワークの物理的なプラットフォーム上でさまざまなビジネスを提供することこそ、マルチドメイン・リソース及びサービスの連携における真の意味である。真のマルチドメイン連携が実現した暁には統一的なネットワークのプラットフォームが提供でき、あらゆるビジネスをこのネットワーク・プラットフォーム上で実現できる。当然、アクセス方法は多種多様であるが、ネットワークは統一的で連携したネットワークである。連携後のネットワークは、ユーザーに大きな利便性をもたらす。

4 スマート化総合サービスの技術体系及びアプリケーションシステムの研究

 本稿ではスマート化総合サービス・プラットフォームの技術体系構造を検討し、かつ対応する実験理論を構築した。モデルにおいては、物連網の総合サービス・プラットフォームを技術体系上、7層に分けた。すなわち、第1層はモノ、第2層はモノとの接続及び情報センシング、第3層はネットワークの連携及びリソースの共有、第4層はデータの連携及びスマート処理、第5層はビジネスの連携及びスマート化サービス,第6層は統一ドメイン及び身分認証、第7層はユーザーである。

 スマート化総合サービス・プラットフォームの実験理論モデルを基礎に、将来の物連網の市場における応用、サービスのニーズ、ビジネスモデル及び産業構造に基づき、物連網ユビキタス総合サービスを実現するビジネス・アプリケーションモデルを研究し、構築した。このモデルのコア思想は、共通の連携プラットフォームを構築し、すべてのユーザーの求めるさまざまな業務に対して公共経営を行い、スマート化サービスを提供することにあるため、「スマートサービス商店」、略称「3S商店」と呼ばれる。

 3S商店のビジネス応用モデルにおいては、サービス経営の機能的要求に基づき4つのバーチャル連携プラットフォーム、すなわちリソース連携プラットフォーム、情報連携プラットフォーム、ビジネス連携プラットフォーム、端末連携プラットフォームを構築した。いかなる端末のユーザーも統一的な身分認証を用いて統一したポータルサイト商店を通じ、商店の所有するリソースを利用し、商店の所有するサービスを享受することができ、これによりリソースの連携とサービスの共有が実現される。

 これら、構築された物連網総合サービスの実現理論モデル及びビジネス応用モデルに基づき、南京郵電大学のキャンパスで実用的な「スマートキャンパス」実験システムが開発され、開発と同時に全校生徒・教員を実際のユーザーとして試験運用を開始している。スマートキャンパスというプラットフォームを基礎に、実験的な「物連網ハイテクパーク・スマートサービス商店」が開設され、オープンに経営されている。現在、すでに全国の企業数十社との共同研究がスタートしており、100種以上のさまざまなサービスがこの商店のプラットフォーム上で連携し、集中的にセンシングされ、展開されている。

5 終わりに

 元来、ポストインターネット時代はインターネットの発展による新たな歴史段階で、物連網の応用はこの段階の重要なメルクマールであり、この時代の特徴はインターネットに基づく産業的実用とスマートサービスにあると理解された。ポストインターネット時代には、情報産業には再編が必要であり、新興の情報サービス業が牽引役で、ネットワークキャリアが下支えし、ネットワーク設備製造業が補佐を担うインターネット産業構造が構成されるだろう。

 ポストインターネット時代の今後の発展の重点は、ネットワークの端末効果及びその周辺価値にあり、物連網の発展の重要性はネットワークの形式による、世界のあらゆるモノとの接続性と応用性の利用にある。物連網のコアはサービスとアプリケーションにあり、物連網の発展もアプリケーションに向けた開発でなければならない。

 ビジネスモデルの革新及び変革こそ物連網の応用・発展の焦点であり、物連網が応用されるビジネスモデルの一つでは、ネットワークの経営とサービスの経営を分離させ、全く新しい物連網のサービス商店を模索し、独立したサービス・キャリアの概念を構築する必要がある。物連網の分野では、新しい経済・ビジネスモデルの構築のために、さらなる開放及び協力が必要となる。

 ポストインターネット時代の国の産業発展戦略は、センシング技術産業の発展のスピードアップとともに、社会発展による応用ニーズを方向性とし、総合サービス業を牽引役として、ネットワークに基づく新興のスマートサービス産業を優先的に発展させることにある。

 大量の孤立した異種ネットワークでは相互接続・連携の使用がなく、大規模経済を構築できず、統一的なビジネスモデルを確立することができず、経済サービスのコストを圧縮することもできない。このため、中国全国における技術標準の統一を加速し、1つの管理メカニズムを構築することこそ、物連網の将来的な応用で直面する問題である。政府の専門部門による管理及び協調、対応する政策や法規なくしては、標準の統一及び協調はありえない。