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中国におけるアルファウイルスの分離及び鑑定

2012年 3月19日

梁 国棟

梁 国棟(Liang Guodong):
中国疾病予防コントロールセンター・ウイルス病予防コントロール所副所長、研究員

1951年6月生まれ。1987年、山西医科大学寄生虫学専攻、修士号取得。1992-1995年、米国ペンシルベニア大学医学大学院、米国ニュージャージー州立大学医学部でResearch Associate。1995年~現在、中国疾病予防コントロールセンター・ウイルス病予防コントロール所研究員、博士課程指導教員、副所長、ウイルス性脳炎室主任、WHO日本脳炎レファレンス研究所(JE-RRL, China)主任。1987年以降、長期にわたり中国のウイルス学研究に従事、近年は新たに発見された病原体の解析・モニタリング及びウイルスの分子生物学的研究に従事。SARS、鳥インフルエンザ、ヒト顆粒球アナプラスマ症(HGA)及びインフルエンザ(H1N1)のアウトブレイク等、新興感染症の予防・制御等に従事。1987年以降、中文・英文で300本余りの文章を発表。全国感染症標準委員会副主任委員、衛生部自然疫源性疾病専門家コンサルティング委員会副主任委員、国家バイオテロ対策専門家グループ(バイオテロ・チーム)専門家等を兼任。「中国人獣共通感染症学報」副編集長、「ウイルス学報」等、中国国内の10余りの専門誌の編集委員を担当。

共著者:李 文娟、王 志玉

 アルファウイルスとは、トガウイルス科(Togaviridae)アルファウイルス属(Alphavirus)のウイルスで、蚊等の吸血性節足動物に媒介され、人獣共通感染症を引き起こす重要な病原体である。国際ウイルス分類委員会(ICTV)が2009年に発表した報告書第9版によれば、現時点で29種のアルファウイルスが発見されており、うちl3種がヒトと動物に疾病をもたらし、少なくとも9種がヒトの間で流行したことがある。中国では、1970年以前はアルファウイルスの分離・流行の報告は存在しなかったが、1980年代以降は虫媒性ウイルス研究の発展に伴い多種のアルファウイルスが次々に分離され、中国のヒトと動物の体内にさまざまな種類の抗体が存在することも見出された。2008年にはアルファウイルスの輸入症例が多数報告された。アルファウイルス研究は、中国の虫媒性ウイルス研究の発展に伴い大きく進歩した分野である。本稿では、ここ30年間の中国におけるアルファウイルス研究の進展を総括する。

1.シンドビスウイルス(Sindbis virus,SINV )

 1987年に雲南省の発熱患者の血清標本からYN87448ウイルスが、1990年に新疆ウイグル自治区イリ地区で捕獲されたハマダラカのグループからXJ-160ウイルスが分離され、2005年には雲南省のコガタイエカからMX10ウイルスが分離された。血清学的及び分子生物学的鑑定の結果、YN87448、XJ-160、MX10ウイルスはいずれもSINVであり、系統進化の解析の結果、XJ-160ウイルスは旧北区/エチオピア区遺伝子型で独自の進化分岐を形成していることから、当該遺伝子型の新亜型であることがわかった。YN87448ウイルスはSINV南アフリカ分離株S.A.AR86のすべての非構造遺伝子ヌクレオチドとの相同性が98.8%で、構造遺伝子ヌクレオチドとの相同性は99%であったことから、両者の近縁関係は非常に近いと考えられたが、生物学的特性においては大きな違いがあった。S.A.AR86は成人マウスに神経症状を起こし死に至らしめるが、YN87448は成人マウスを死に至らしめないことから、配列解析により、YN87448は非構造遺伝子のオパール突然変異及びヌクレオチド欠失により毒性が低下した可能性があることがわかった。MX10ウイルスはSINVマレーシア分離株MRE16 E1との遺伝子ヌクレオチドの相同性が90.0%で、YN87448及びXJ-160ウイルスE1との遺伝子ヌクレオチドの相同性がそれぞれ73.1%及び72.0%であったことから、ウイルス学的な遺伝子進化解析により、MX10ウイルスはシンドビスウイルスのオーストラリア区/東洋区型ウイルスに属することが分かった。

 XJ-160ウイルスは1990年に分離されて以降、分子生物学的に深く研究された。XJ-160ウイルスの全ゲノム配列の検索及び解析の結果、当該ウイルスのゲノムは他のSINVと異なることから、XJ-160ウイルスはシンドビス様ウイルス(Sindbis-Like virus)であると判定した。また、研究の結果、XJ-160ウイルスの構造蛋白遺伝子は宿主細胞のアポトーシスを引き起こし得ることがわかった。つまり、外から導入されたsiRNAはウイルスのRNAの分解によってXJ-160ウイルスの複製を抑制し、かつ、明らかな配列特異性、位置効果、供与量効果関係がある。われわれは、XJ-160ウイルスの全ゲノムcDNAからの感染性クローンの構築に成功し、さらに感染性クローンを利用して中国独自の知的財産権を持つXJ-160ウイルスレプリコン型発現ベクターを構築した。研究の結果、XJ-160ウイルスのnsP1遺伝子565nt及び577nt(169Lys及び173Thrに対応)の2つの遺伝子座における突然変異が全ゲノムクローンの感染性に直接影響する可能性も考えられ、そのうえXJ-160ウイルスの全構造蛋白を安定的に発現するパッケージング細胞系、BHK-21E+Capsidが構築されたことから、E2タンパク、特に145-150遺伝子座のアミノ酸及びヘパラン硫酸の相互作用により、SINVが細胞に感染するプロセスに決定的な作用がもたらされることが証明された。この研究結果の一部は国際専門誌に掲載され、中国のアルファウイルス研究を世界レベルまで飛躍させた。

 血清疫学調査の結果、中国では多くの省・市でSINV抗体陽性ヒト群が存在することがわかった。雲南省の健康なヒト群及び発熱患者のいずれにもSINV抗体が存在し、現地の猟犬及び野鼠からもSINV抗体が検出された。海南省、広東省、福建省にもSINV抗体陽性ヒト群及び動物が存在し、なかでも福建省のウイルス性脳炎及び脳膜炎性レプトスピラ症患者の血清及び脳脊髄液からSINV IgG抗体が検出されたことは、SINVが中国でウイルス性脳炎を引き起こす病原体であるか、または他の病原体との合併感染の存在の可能性を示唆する。

 SINVはアルファウイルス属の代表株であり、l952年にエジプト・ナイル川三角州地域のイエカ、Culex univittatusから初めて分離された。SINVはヒトに発熱のみならず、発疹及び関節炎等の症状をもたらすうえ、慢性疾患に進展するおそれがある。当該疾患はアフリカ、北欧、アジア等地域で流行しており、特にフィンランドでは7年に1度アウトブレイクが発生し、現地の公衆衛生に深刻な影響を与えている。

2.チクングニアウイルス(Chikungunya virus, CHIKV)

 1986年に雲南省シーサンパンナ地区のコウモリの脳組織からウイルスが1株(B8635)分離され、蚊の標本から3株(M26,M80,M81)が分離された。1993年には海南省で採取されたコウモリ及びネッタイイエカから2株(HN36,HN24)が分離された。血清学的検査の結果、上記ウイルス6株の標準CHIKV抗体の中和力価はそれぞれ320、1000、6761、676、l000及び1585であり、このことからCHIKVであることが示されたが、現時点ではこれらウイルス株に対する分子生物学的鑑定は行われていない。

 血清疫学調査の結果、雲南省の健康なヒト群におけるCHIKV抗体陽性率は9.23%で、一部地域では43.78%にも達した。海南省、チベット自治区、吉林省、広東省のヒト群中からもCHIKV抗体が検出された。さまざまな野生動物や家畜からもCHIKV抗体が検出され、なかでも雲南省のデマレルーセットオオコウモリの陽性率が最も高く、49.30%に達し、鳥類がこれに次いだ(36.84%)。このことから、これら動物がウイルスの自然循環において一定の役割を果たすと推測される [21,28,31]。以上の研究により、中国のヒト群及び動物にCHIKV感染が存在することがわかる。

 現在までのところ、中国ではチクングニア熱の流行は報告されていないが、輸入症例は散発的に発生している。2008年3月には広東省広州市でスリランカからのチクングニア熱輸入症例が2例、2008年10月には広東省茂名市でマレーシアからの輸入症例が2例、2008年11月には広東省広州市でマレーシアからの輸入症例が1例見出された。RT-PCR検査の結果、上記症例5例の血清からCHIKV E2遺伝子配列が検出され、さらに4人の血清標本からはCHIKVの全ゲノム配列が得られ、系統進化の解析により、4人の全ゲノム配列はいずれもCHIKVインド洋遺伝子型の分岐内にあることがわかった。これが、中国で初めての輸入症例標本からのCHIKV分離報告である。

 CHIKVは、アルファウイルス属セムリキ森林脳炎ウイルス抗原複合体遺伝子群に分類され、1953年にウガンダの発熱患者の血清標本から初めて分離された。主に発熱、関節痛、発疹、軽度の出血等の症状をヒトにもたらす。アフリカ、東南アジア地域で主に流行し、近年は東アフリカ海岸、インド洋の島々、インド、東南アジア地域でアウトブレイクが多数回発生しており、流行範囲が世界で最も広いアルファウイルスとなっている。

3.ロスリバーウイルス(Ross river virus,RRV)

 1993年、海南省三亜市で捕獲されたコウモリの脳組織からウイルスが1株(HBb17)分離された。HBb17ウイルスは実験条件下で蚊の体内で複製され、かつ、蚊に媒介されてラットに感染し、発症させ死に至らしめた。血清学的検査の結果、HBb17ウイルスはRRVとの抗原性が最も近いことがわかった。配列検索及び解析の結果、HBbl7株はロスリバーウイルス(国際標準株T48ウイルス)との3’UTR(un-translated region)ヌクレオチドにおける相同性が約99%、構造遺伝子E1のヌクレオチドの相同性が99%であった。また、系統進化の解析により、HBb17ウイルスはRRVと同一の進化分岐にあることから、HBb17ウイルス分離株はRRVであることがわかった。これが中国初のRRV分離報告である。

 血清疫学調査の結果、海南省の健康なヒト群中のRRV抗体陽性率は3.07%で、かつ、瓊中及び三亜地区に集中した。現地の発熱患者中のRRV抗体陽性率は8.70%に達するが、同じく中国南方に位置する広東省のヒト群からはRRV抗体は検出されなかった。一方、海南省では野鼠標本からもRRV抗体が検出された。HBbl7ウイルス分離株は海南省で捕獲されたコウモリ標本に由来し、かつ、海南省では健康なヒト群、発熱患者、野鼠のいずれからもRRV抗体が検出されたことから、当該ウイルスは海南省で自然循環を形成しているうえ、現地ヒト群の発熱の新たな病原因子となっている可能性も考えられるが、その後、ウイルス分離の報告はなされていない。

 RRVはアルファウイルス属セムリキ森林脳炎ウイルス抗原複合体遺伝子群に分類され、1963年にオーストラリア東部海岸の平原地区で初めて分離された。ヒトに全身性疾患をもたらし、主な症状は発熱、頭痛、関節痛、発疹、リンパ節肥大であり、主にオーストラリアと西南太平洋地域で流行する。

4.ゲタウイルス(Getah virus,GETV)

 1964年に海南省のイエカからウイルスが1株(M1)分離され、実験条件下でM1はネッタイシマカ及びネッタイイエカ中で増殖し、新生ハツカネズミが感染ネッタイシマカに咬まれると骨格筋が退化・萎縮・壊死し、炎症により筋線維に病変が生じる。分子生物学的鑑定の結果、M1はGETVであることがわかり、その後河北省でGETV2株(HB0234, HB0215)、雲南省でGETV2株(YN0540, YN0542)、上海市でGETV4株(SH05-5, SH05-15, SH05-16, SH05-17)、甘粛省でGETV1株(GS10-2)が分離された。ウイルスの核酸配列解析により、これらウイルス株は中国で分離されたGETVとの進化関係が非常に近く、相対的に独立したグループを形成することがわかった。さらなる解析により、中国のGETVには特有の配列特性があり、進化関係は分離された年代に関係することがわかった。

 血清疫学調査の結果、雲南省の健康なヒト群中のGETV抗体陽性率は3.20%で、アカゲザルにもGETV抗体が存在した。海南省の健康なヒト群及び発熱患者のGETV抗体陽性率はそれぞれ10.3%及び26.4%であり、豚、馬、羊等の家畜中のGETV抗体陽性率も非常に高かった(17.6%~37.5%)。一方、海南省の外地からの駐留軍人中のGETV抗体は現地のヒト群より明らかに低いことから、海南省にはGETVの流行が存在することが示唆された。

 GETVはアルファウイルス属セムリキ森林脳炎ウイルス抗原複合体遺伝子群に分類される。1955年、GETVはマレーシアのイエカCulex uhitmoreiから初めて分離された。東南アジア地域で広く流行し、マレーシア、インド、パキスタン、日本等の国でGETV感染が報告されている。GETVは馬に発熱、じんましん、後肢浮腫を引き起こし、妊娠中の豚は感染すると流産の恐れがある。ヒトの血清からもGETVの中和抗体が検出されているが、発症例の報告はまだない。

5.マヤロウイルス(Mayaro virus,MAYV)

 1985年、雲南省の蚊及び発熱患者からウイルス11株が分離され、うち10株は蚊から、1株は発熱患者の血清標本から分離された。酵素抗体法検査の結果、11株すべてにアルファウイルス属に対する抗体反応があり、特にMAYVへの反応が最も強いことが分かった。また、交差中和試験の結果、MAYVとの交差中和反応が見られなかったことから、これら11株はMAYVの抗原性と相関があることが分かった。1985年、海南省で採集された蚊からウイルスが2株(HN8,HN99)分離され、交差性を調べる微量中和試験の迅速判定法の結果、これら2株はアルファウイルス属とのみ抗体反応を示し、特にMAYVの抗原性と最も関係が密接であることがわかった。1995年、海南省で捕獲された蚊の標本からウイルス1株(HYM1)が分離され、交差赤血球凝集抑制試験及び交差中和試験の結果、HYM1とMAYVの抗原性は密接な関係にあることが分かった。上記ウイルス株は血清学的な基礎鑑定の結果、MAYVと見なされたが、遺伝子配列の検索及び解析に関する文献はいまだ存在せず、2000年以降はウイルス分離の報告もなされていない。

 血清疫学調査の結果、海南省の健康なヒト及びさまざまな家畜の血清からMAYV抗体が検出された一方、海南省駐留軍兵士からは検出されなかった。これは、現地のヒト群は長期間居住により感染の機会が多い一方、駐留軍兵士の多くは他省の出身で就役期間が短く、感染の機会が相対的に少ないためと考えられる。このほか、広東省及び貴州省のヒト中にもMAYV抗体が存在した。

 MAYVは、アルファウイルス属セムリキ森林脳炎ウイルス抗原複合体遺伝子群に属し、急性感染症を引き起こし、発熱、頭痛、関節痛、発疹を特徴とする。1954年、MAYVはトリニダード・ドバゴのマヤロ県の発熱患者の血液から初めて分離された。ラテンアメリカの熱帯林地域に広く分布し、トリニダード・ドバゴ、ボリビア、ブラジルでアウトブレイクが発生したことがある。

6.東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus,EEEV)

 1992年に新疆ウイグル自治区ボルタラ地区で採集されたシュルツェマダニからウイルス1株(XJ-91031)が分離された。XJ-91031ウイルスに対するEEEV抗体の中和指数は1000に達したため、XJ-91031ウイルスはEEEVと基本的に鑑定された。血清学的調査の結果、多くの省・市におけるヒト群からEEEV抗体が検出された。2000年から2002年にかけ、福建省のウイルス性脳炎15症例からEEEVのIgG抗体が検出された。

 EEEVは、1933年に米国東部の病死したウマの脳から初めて分離され、主にアメリカ大陸に分布する。EEEVは主に中枢神経系を侵し、高熱、脳炎、神経症状等を呈する]。米国で1964-2008年に報告されたヒトへのEEEV感染は257例で、ウマの感染例は数千に及ぶ。

7.西部ウマ脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus,WEEV)

 1990年に新疆ウイグル自治区烏蘇県で採集されたアカイエカからウイルス1株(XJ-90260)が分離され、1991年に新疆ウイグル自治区北部地区で採集されたシュルツェマダニからウイルス1株(XJ-91006)が分離された。分子生物学的研究の結果、XJ-90260及びXJ-91006ウイルスのNSP4、E1、3’UTRのヌクレオチドの相同性はいずれも100%であり、3’ UTRのヌクレオチド配列には典型的なWEEVの特徴があり、標準WEEV (California株)との相同性は99%に達した。血清疫学調査の結果、中国の多くの省・区におけるヒト群からXJ-90260ウイルスの抗体が検出され、総陽性率は2.71%であった。

 WEEVは1930年に米国西部の病死したウマの脳組織から初めて分離され、ウイルス感染により動物及びヒトに発熱及び中枢神経系疾患をもたらす。米国CDCの統計によれば、1964年~2005年に合計639例のヒトへのWEEV感染が報告されており、病死率は3–7%であった。主に米国、メキシコに分布し、カナダ、ブラジル等アメリカ大陸の大部分の地域で蔓延している。

8.未分類のアルファウイルス

 これら鑑定済みのウイルス以外にも、中国ではさらにいくつかのアルファウイルスの分離が報告されているが、系統的な鑑定はまだなされていない(表1参照)。1983-1988年に海南省で採集された蚊及びダニからウイルス28株が分離され、1990-1991年には新疆ウイグル自治区で採集された蚊及びダニからウイルス17株が分離された。1994年には山東省煙台市で捕獲された蚊からウイルス15株が分離され、1998年には海南省の原因不明の発熱患者の血液からウイルス2株(HF-7和HC-6)が分離された。これらウイルスは理化学的・生物学的鑑定の結果、アルファウイルスの特徴と一致し、血清学的検査の結果、アルファウイルスであることが示された。

表1 中国の最近30年間で新たに分離されたアルファウイルス
*NA: Not available
ウイルス名 分離源 分離
場所
分離年 初步鑑定 分子生物学
細胞CPE(日) 電子顕微鏡 血清学 遺伝子 GenBank
番号
C6/36 BHK-21
シンドビスウイルス YN87448 病人 雲南 1987 2 2 NA* SINV 全配列 AF103734
XJ-160 ハマダラカ 新疆 1991 2 3 58.7±2.2nm SINV 全配列 AF103728
MX10 イエカ 雲南 2005 2 1 NA SINV NA NA
チクングニアウイルス B8635 デマレルーセットオオコウモリ 雲南 1986 1.5-2 1.5-2 44.7-66.8nm CHIKV NA NA
M26 コガタイエカ 雲南 1986 NA NA NA CHIKV NA NA
M80 ヒトスジシマカ 雲南 1986 NA NA NA CHIKV NA NA
M21 ヒトスジシマカ 雲南 1986 NA NA NA CHIKV NA NA
HN24 ネッタイイエカ 海南 1993 3   50-65nm CHIKV NA NA
HN36 コウモリ 海南 1993 3   50-65nm CHIKV NA NA
ロスリバーウイルス HBb17 コウモリ 海南 1993 1.5 1.5 NA RRV ポリプロテイン遺伝子 AF268026
ゲタウイルス M1 ハマダラカ 海南 1964 2 1 NA GETV 全配列 EF011023
HB0234 コガタイエカ 河北 2002 2 1 NA アルファウイルス属 全配列 EU015062
HB0215-3 コガタイエカ 河北 2002 2 1 NA アルファウイルス属 E2遺伝子
3’UTR
C遺伝子
EU015065
EF375821
EF375824
YN0540 オオクロヤブカ 雲南 2005 2 1 NA NA 全配列 EU015063
YN0542 オオクロヤブカ 雲南 2005 2 1 NA NA E2遺伝子
3’UTR
EU015064
EU015071
SH05-6 コガタイエカ 上海 2005 2 1 NA NA E2遺伝子
3’UTR
EU015066
EU015072
SH05-15 コガタイエカ 上海 2005 2 1 NA NA E2遺伝子
3’UTR
EU015067
EU015073
SH05-16 コガタイエカ 上海 2005 2 1 NA NA E2遺伝子
3’UTR
EU015068
EU015074
SH05-17 コガタイエカ 上海 2005 2 1 NA NA E2遺伝子
3’UTR
EU015069
EU015075
GS10-2 オオクロヤブカ 甘粛 2006 2 1 NA NA E2遺伝子
3’UTR
EU015070
EU015076
マヤロウイルス 11株 蚊、病人 雲南 1985 1-2   56.10±1.38nm アルファウイルス属、MAYV NA NA
HN8 海南 1985 NA NA 50-65nm アルファウイルス属、MAYV NA NA
HN99 海南 1985 NA NA 50-65nm アルファウイルス属、MAYV NA NA
HYM1 海南 1995 NA NA NA アルファウイルス属、MAYV NA NA
東部ウマ脳炎ウイルス XJ-91031 シュルツェマダニ 新疆 1992 NA NA 70nm EEEV NA NA
西部ウマ脳炎ウイルス XJ-90260 アカイエカ 新疆 1990 NA 1.5 NA アルファウイルス属 NA NA
XJ-91006 シュルツェマダニ 新疆 1991 NA NA NA アルファウイルス属 NSP4、E1-3’UTR AF226878
AF226877
未鑑定のアルファウイルス 28株 蚊、ダニ 海南 1983-1988 3-7 NA NA アルファウイルス属 NA NA
17株 蚊、ダニ 新疆 1990-1991 3-6 1-4 57±1.5nm アルファウイルス属 NA NA
15株 山東省
煙台市
1994 2-4   55±2.3nm アルファウイルス属 NA NA
HF-7 病人 海南 1998 NA NA 40-60nm SINV、MAYV、GETV、SFV NA NA
HC-6 病人 海南 1998 NA NA NA SINV、MAYV、GETV、SFV NA NA

9.終わりに

1. 中国におけるアルファウイルス由来疾病の実証の強化:

 中国では現在までにさまざまなアルファウイルスが分離されており、これにはヒトに発熱及び関節炎等の症状を引き起こすシンドビスウイルスやチクングニアウイルス、ロスリバーウイルス等、ならびにヒトまたは動物に脳炎を引き起こす西部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、ゲタウイルス等がある。しかし、中国で分離されたアルファウイルスはいずれもウイルス分離の報告にとどまり(一部の文献で血清に対するわずかな疫学研究の情報があるのみ)、ウイルス由来疾病に関する報告は存在しない。これらウイルスの分離は、夏秋季に中国各地で流行する原因不明の発熱やウイルス性脳炎の解析に病原学的な糸口を提供するとは言え、アルファウイルス由来疾病が中国に存在するとはまだ断定できない。このため、中国におけるアルファウイルス由来疾病の実証作業を強化する必要がある。なかでも最も重要な対象はアルファウイルス感染による臨床症例であり、関連症例のさまざまな標本を採集して研究することである。例えば、症例の組織標本を採集して病原学的エビデンスを得るためには、急性期及び回復期の双方の血清を採集してウイルス中和試験を行い、双方の血清中のウイルス特異的抗体に4倍または4倍以上の差異があることを見出す必要がある。

 疾病の実証は系統的なプロセスであり、さまざま機関や当局の密接な協力が必要である。臨床医師はアルファウイルス由来疾病の症状を認識している必要があり、早期に患者の症状を鑑別して初めて、適時に標本を採集して実験室検査を行い、アルファウイルスと疾病との関係を確認することができる。アルファウイルス患者の早期診断は、研究機関による特異的・実用的なアルファウイルス検査法及び検査試剤の確立に依存する。迅速かつ簡便な診断法は、アルファウイルス感染の実験室診断率を高めるだけでなく、十分な臨床的・疫学的データの蓄積にもつながり、アルファウイルス感染の臨床的特徴、疾病の予後、流行状況の解析に基礎データを提供する。さらに、疾病負担を評価すれば、中国におけるアルファウイルス疾病の予防と制御に科学的根拠を提供できる。

2. 中国におけるアルファウイルスのモニタリングの強化:

 アルファウイルスは主に蚊が媒介するため「蚊媒介性ウイルス」と呼ばれる。ここ30年間、中国ではイエカ、クロヤブカ、ハマダラカ、ヤブカ標本からさまざまなアルファウイルスが分離されており、なかでもコガタイエカからの分離が最も多い。このほかコウモリ及びダニの標本、さらには病人の標本からもアルファウイルスが分離されている。このことは、中国では広範囲にアルファウイルスが存在する可能性を示唆する。しかし、中国で分離されたアルファウイルスのうち、シンドビスウイルス及びゲタウイルス以外のウイルスは分離報告がわずか1回しかないため、フォローアップ研究が困難になっている。このため、中国ではアルファウイルスのモニタリングを強化し、さまざまな媒介生物中のアルファウイルス分離及び鑑定作業、特に1回しか分離報告のないアルファウイルスについて再分離を実施し、アルファウイルス・リソースをより充実させる必要がある。また、アルファウイルス感染媒介を研究して中国におけるアルファウイルスの自然循環の法則を把握し、アルファウイルス由来疾病の予防と制御に基本的情報を提供する必要がある。

3. 中国で新たに分離されたアルファウイルスに対する分子生物学的鑑定・研究の強化:

 中国で新たに分離されたアルファウイルスの中には、ELISAまたはIFA等の血清学的方法による鑑定結果にのみ依存するものがまだ一部に存在する。しかし、アルファウイルスの間には深刻な血清学的交差反応が存在するため、ウイルス種の鑑定には交差中和試験または遺伝子配列の解析等を行う必要がある。特に、中国で分離されたアルファウイルスの全ゲノム配列の検索及び解析を行い、ウイルスのゲノム配列をもとに、中国分離株と海外分離株の分子的進化を解析する必要がある。こうすれば、分子レベルから分類学的な位置づけができるだけでなく、中国分離株と海外分離株の分子的差異と進化法則も確認できる。


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