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中国におけるユーカリの育種研究の進展と戦略

2012年 5月29日

謝 耀堅

謝 耀堅 (Xie Yaojian):

1961年生まれ。国家林業局ユーカリ研究開発センター、党委書記、副主任、研究員、学術委員会主任。中国林科院博士課程指導教員、職位評価委員会委員。中国林学会ユーカリ専門委員会主任委員、湛江市政協委員。1982年、中南林学院卒。2008年、中南林業科学技術大学博士課程修了。1995年、スウェーデン農業大学客員研究員。2006年、「全国優秀林業科学技術工作者」の称号を受ける。

 ユーカリは、フトモモ科に属し、計945の樹種、亜種、変種からなる。大部分はオーストラリアに分布し、5種だけがオーストラリア以外の国・地域にある。例を挙げると、パプアニューギニア、インドネシア、フィリピンに分布するカメレレ、インドネシア原産のウロフィラユーカリがある。

 ユーカリは種類が多く、成長が速く、適応性が強い。世界の多くの地域で優良品種が導入され、現在、世界のユーカリ人工林の面積は2046万ヘクタールに達している。

 中国では1890年に初めて導入され、120年以上の歴史がある。中国の人工林の面積は360万ヘクタール余りで、ブラジルとインドに次ぎ世界第3位である。ユーカリは、中国の重要な造林樹種の一つである。

1.ユーカリの遺伝資源の収集及び保存

 中国で導入されたユーカリは300種余り。育苗・造林したことがあるものは200種余りで、国土の大部分に導入され、行政区画で言えば、17の省・直轄市・自治区に及ぶ。ユーカリは中国では外来種である。1970年代以降、ユーカリの研究を始め、国家林業局ユーカリ研究開発センターなどの機関が主導して、遺伝資源・系統試験が実施されてきた。ユーカリ研究開発センターでは、「第7次5カ年計画」及び「第8次5カ年計画」以降、とくに「第9次5カ年計画」では、国家的な重要テーマである「ユーカリの紙パルプ用材樹種の優良品種の選抜育種及び栽培技術研究」を受託。

 オーストラリアやインドネシアなどから、優良ユーカリ7種と107個の遺伝資源、1301系統を導入している。また、中国国内で、ウロフィラユーカリの優良系統150の単株種子を収集している。1995~98年の間、研究センターの試験場に、遺伝資源・系統試験林が設置され、面積は81.7hm²に達した。

 1980年代以降、中国林業科学研究院(林科院)は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)と協力し、ユーカリの導入と栽培研究事業を実施。中国のユーカリ資源収集、保存、遺伝学的改良事業は新たな段階に入った。「第7次5ヵ年計画」から「第10次5ヵ年計画」の20年間に、海外から新たにユーカリ100種余り、遺伝資源600種余りと4000余りの系統を導入した。導入されたのは、中国南方の熱帯及び亜熱帯地域で、広東、広西、福建、海南、雲南、浙江、江西、湖南、四川といった省・自治区である。

 2.ユーカリの選抜育種

 中国では1970年代初めからユーカリ遺伝資源の選抜研究を行っている。試験を実施した遺伝資源は483種で、遺伝資源試験を経てスクリーニングされた優良遺伝資源は116種である。

 優良遺伝資源の選抜指標には主に、生長量、木材特性、適応性、抵抗性、ユーカリ葉油抽出率、生産力などであり、選択目標により重きを置く選択指標が異なる。「第10次5カ年計画」では、国家ユーカリセンターと熱帯林業研究所の協力により、さまざまな生態区域で樹種、遺伝資源/系統試験を行った結果、7優良樹種、15優良遺伝資源がスクリーニングされた。このうち、5~7年生の優良系統は92種、平均樹高は13.61~17.51m、平均幹径は12.66~15.6cm、平均蓄積量は153.3~485.6 m³/hm²、年均蓄積成長量は40.0~54.6m³/hm²で、木材密度はいずれも0.5g/cm³以上であった。

 国家ユーカリセンター等の機関により実施された「耐寒性のユーカリ遺伝資源の改良と栽培技術に関する研究」事業では、49樹種、269遺伝資源の生長、耐寒性について試験研究を行い、耐寒能力が-8℃から-10℃間のE.ダニアイ、E.ベンタミイ、E.スミシー、E.グランディス等の8樹種及びその優良遺伝資源をスクリーニングし、新たに14の耐寒ユーカリスクリーニング試験ポイントを設定し、5種の耐寒性ユーカリの遺伝データの合計68遺伝資源/676系統を導入し、新たに採種園13ヶ所を建設した。

 3.ユーカリの交雑育種

 生産上、最も多く応用されているユーカリは、主にシムファイオマイルタス亜属(Subgenus symphymyrtus)の3つのグループ、即ち、Transversaraグループ、窿縁グループ、そしてE.グロブルスの各グループに属する。また、少数ではあるがCorymbia亜属に属する樹種もあり、例えばE.シトリオドラやE.トレリアーナがある。一部の観賞用ユーカリは、主にEudesmia亜属に属し、例としては橙花ユーカリ(和名不明)があり、Corymbia亜属に属するベニバナユーカリ、E.プティコカルパがある。モノカリプタス亜属に属する非常に多くのユーカリ、例えばセイタカユーカリ、E.グランディス(E.s grandis W. Hill ex Maiden)、E.パウキフロラはオーストラリアで非常に良く生育するが、気候タイプの差により、中国での導入・順化の成功は非常に難しい。

 交雑育種は伝統的で、かつ、一貫して最も有効な育種方法である。現在、中国の農業・林業生産上、応用されている品種の殆どは交雑育種法を通じて選抜育種されたものである。

 「第10次5カ年計画」で、国家林業局ユーカリセンターと中国林科院熱帯林業研究所などの機関は、累計546個の組み合わせの種間、種内の交雑育種を実施し、広東、広西で5カ所の交雑第2世代測定林を造林し、試験の結果、この中から年平均蓄積成長量が30 m³/hm²を上回る優良雑種系統を10種スクリーニングした。なかでも、最も良い交雑系統の樹齢4年時の年平均蓄積成長量は60.0 m³/hm²以上に達した。すでに優良個体128株をスクリーニングし、無性系統32種の栽培に成功しており、年平均蓄積成長量は40~54 m³/hm²で、木材密度はいずれも0.5g/cm³以上で、優良無性系統の総合遺伝的獲得量はいずれも20%を上回った。

4.中国のユーカリ育種におけるマクロ戦略

 筆者は、ユーカリ育種のマクロ戦略として、育種目標を明確にし、育種計画を設定するよう提案する。育種目標の明確化と、育種計画の設定は、まずはユーカリ栽培の方向性を定めることであり、主に工業繊維材と材木用途である。

 2006年に、国家林業局ユーカリ研究開発センターなどの提唱によって設立された「中国ユーカリ育種連盟」は、産学連携モデルであり、ユーカリの育種と栽培に従事する研究機関と企業が自発的に組織した全国的なユーカリ育種技術協力組織である。

 「連盟」は、企業の資金力と市場指向性を生かし、同時にユーカリの育種資源と研究を結びつけることで、共同で難関を突破し、自己革新と持続可能な発展を目指している。「連盟」の新たな枠組みとモデルによって、部門間の意思疎通不足や研究開発資金不足といった問題の解決に重要な役割を果たすだろう。


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