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中国特色的インターネットの発展

2012年 8月9日

遊川 和郎(ゆかわ・かずお):亜細亜大学アジア研究所教授

 1959年広島県生まれ。81~83年上海・復旦大学留学。84年東京外国語大学中国語学科卒。1991~94年外務省専門調査員(香港)、9 4年(株)日興リサーチセンター上海駐在員事務所長、98年北海道大学言語文化部助教授、2001~03年外務省専門調査員(北京)。北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授、同教授を経て2012年4月から現職。著作(単著)に『中国を知る ビジネスのための新しい常識』(07年、日本経済新聞出版社)、『強欲社会主義 中国全球化の功罪』(09年、小学館101新書)、『中国を知る第2版 巨大経済の読み解き方』(11年、日本経済新聞出版社)。

 中国において西暦2000年の前と後で異なることが二つある。一つは経済の中における不動産の存在であり、もう一つはインターネットが人々の生活の中に存在しているかどうかである。1 999年末で890万だったネット人口は、今年6月現在5億3800万。この10年間で5億人という、それまでにはいなかった人たちが新たに出現したということである。それによって、中国社会の情報伝達、各種の利便性、人々の行動様式は大きく変化した。

 また一口でインターネットといっても、その使われ方は新サービスの登場によって数年で激変している。その発展は日本の歩みや常識とも大きく異なり、中国独自の進化を遂げているといってよい。

 中国のネット事情については、中国インターネット情報センター(CNNIC)が1997年11月以来、毎年2回、詳細な統計と分析を発表しており、この7月には30回を数えるに至っている。今回はまず、「中国特色的」(中国の特徴がある)ネットの発展の大きな流れについて、これまでの同報告を基にみてみよう。

1.ネット人口の爆発期は2007~10年

 2000年代前半、毎年1000万人台~2000万人台の増加だったネット人口が急膨張したのが、2007年から10年にかけてである。それに先立つ04年から、ブロードバンドの急激な普及が始まり、それに呼応してネット人口も急増した。07年の増加数は前年の2600万から7300万へと急拡大、一日当たり20万の新規ユーザーが生まれた勘定である。

 翌08年はさらに8800万増(過去最大)で記録ずくめの1年だった。08年6月時点のデータで、米国を抜いて世界一のネット大国(2億5300万)となり、12月には中国のネット普及率(22.6%)が、初めて世界平均(21.9%)を上回った。

 09年も8600万、10年7300万増加したが、11年は5600万、12年上半期2450万と増加のピークは越えたといえる。これは都市部の若年層、高学歴(大卒)層にほぼ行き渡ったためで、さらなる拡大は農村部、低学歴層への浸透次第となる。(図1参照)

図1

図1 ネット人口と普及率の推移

2.デスクトップからモバイルへ

 モバイル端末からのインターネット接続ユーザーは、2007年1月に初めて報告され(2006年で1700万)、そこから直近(12年6月)の3億8800万へと、わずか5年余りで急拡大した。契機となったのは09年1月開始の3Gサービスで、09年だけで1億2000万のモバイル・ネットユーザーが誕生した(うち09年後半で7800万)。

 ネットへのアクセス端末で見た場合、07年までは全ユーザーの9割以上が利用していたデスクトップPCは、直近では70.7%に下がり、モバイル端末からが同72.2%と初めて最多となった。(図2参照) 

図2

図2 インターネット接続方法別の比率の推移

 ネットを利用する場所といえば、網吧(ワンバ=ネットカフェ)をイメージする人も多いだろう。燎原の火の如く広がった網吧によって、ネットは若年層に浸透した。しかし、0 8年には4割以上が利用していた網吧も、その後モバイル端末の普及によってその役割は縮小し、直近では25.8%にまで低下している。

3. 最大の用途はIM

 以上のようなネット環境の整備やユーザー数拡大だけではなく、その用途についても中国的特色がみられる。もともと中国では、ネットを使ったメールのやり取りというのは主流ではない。携帯端末から携帯電話番号で発信する「短信(ショートメッセージ)」が一般的に使用され、PCでは「即時通信」と呼ばれるIM(インスタントメッセンジャー)でのやりとりが主流である(たとえばQQなど)。さらにモバイル端末の浸透によって、IMの利便性も飛躍的に向上し、単なるチャットのツールではなく、プラットフォームとしての役割を担うに至っている。

 2011年には、検索エンジン、音楽配信、ニュース、動画といった他の主要用途を上回り、IMがネットユーザーに最も利用されているサービスとなった。直近(今年6月)ではIMの利用者数は4億4500万で、ネットユーザー中82.8%が利用している。

4.「博客」から「微博」へ

 中国のネットの発展の中でもう一つの特筆すべき現象は博客(ボークー=ブログ)と微博(ウエイボー=マイクロ・ブログ。ミニ・ブログとも)の爆発的な普及である。博客は2002年にサービス開始後、0 4年に新浪(sina)、捜狐(sohu)といった大手ポータルサイトが参入して普及し始め、08年にはネット人口の半数を超える1億6200万人がブログページを持つに至った。

 一方、米国のTwitter(ツイッター)が2006年に誕生し、中国でも有象無象の中国版ツイッターが乱立した。しかし、09年7月のウイグル騒乱を機に、国内微博の閉鎖やSNSへのアクセス遮断が相次ぎ、その直後から新浪が微博サービスを開始し、半ば「公認微博」の地位を確立した。微博といえば一般に新浪を指すことも多い。

 新浪は2010年を「微博元年」と命名、新浪の微博登録ユーザーは10月に5000万を突破し、翌11年は前半で1億3000万増加(新浪以外の微博を含む)の大ブレイクとなり、1 1年末で2億5000万へと急拡大した。しかし、今年に入ってからは急激に落ち着き始めている。Web2.0時代の代表的存在の博客から、微博へ代替わりが起きたと言える。(図3参照)

図3

図3 ブログと「微博」利用人口の推移


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