第74号
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日中大学間交流協定の調査と分析(その1)協定締結相手国として中国がトップ

鈴木 暁彦(中国総合研究センター フェロー)  2012年11月 5日

 日本と中国は2012年、国交正常化40周年を迎えた。中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、ジェトロによると、2011年の日中間の輸出入額は3449億ドル、日 本の貿易全体に占める中国のシェアは20.6%(米国11.9%)となった。

 外務省の資料によると、日中間の往来は、日本から毎日約1万人が訪中し、中国から毎日約5000人が来日している計算だ。航空路は、毎週約700便の旅客・貨物機が日中間を行き交う。中 国の在留邦人は約13万人(香港を含む)。日中間の友好姉妹都市は340組を超える。在日中国人数は約68万人(在日華僑を含む)に達し、在日韓国・朝鮮人を超えて、国別で1位だ。

 中国の経済力は、国内総生産(GDP)ではすでに日本を抜き、米国に次いで世界2位となった。しかし、中国は「途上国」の側面も持つ大国で、国内の格差は著しく、政 治体制や社会の習慣やルールも日本とは違い、日本から見ると、戸惑うことも少なくない。

 それでも、中国の存在は、各国にとって無視できるものではなくなった。中国の動向は日本の現在だけでなく、未来にも大きな影響を与え、それは日本の大学にとっても、同様だろう。中国は、す でに研究論文の発表件数で世界2位。研究分野によっては高水準の成果も生まれている。また、中国の大学・研究機関の数や資金力は、目を見張るものがある。中国のパワーをどう生かすか。中国の大学・研 究機関は玉石混淆で、日本側にはかなりの目利きが求められるが、中国との連携が大きな課題となってきたことは間違いない。

 本稿では、科学技術振興機構 中国総合センターが作成した調査報告「日中大学間交流協定等の調査分析結果について」(2012年10月24日付)に基づき、連載の形で概要を紹介する。調 査分析に使ったデータは、文部科学省の「海外の大学との大学間交流協定(2009年度)」(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shitu/1287263.htm)に 基づいている。

世界の大学と締結した交流協定の数

 日本の大学が全世界の大学と締結した交流協定は17,180件に達する。そのうち中国の大学との交流協定締結は3,388件で、全体の19.7%を占めている(表1参照)。こ の数は米国の大学との交流協定(約2500件)を上回り、国別で世界一である。

 大学設置形態別に見ると、世界の大学と交流協定を締結した大学のうち、私立大学は8,984件で、全体の52.3%を占め、最も多かった。次いで国立大学の7,466件(全体の43.5%)が多く、公 立大学は730件(4.2%)だった(図1、2参照)。

図1

中国の大学と交流協定を締結した大学の数

 日本の大学は全国で767校あり、大学設置形態別に見ると、私立大学604校、国立大学86校、公立大学77校で、私立大学が全体の78.7%を占めている(表2参照)。

図2
表2 中国の大学と交流協定を締結した大学の数
大学設置形態別、百分比の和は100%にならないことがある
  日本の大学数 中国の大学と交流協定を締結している大学
大学数 B/A
A 比率% B 比率%
国立大学 86 11.2 85 18.3 98.8
公立大学 77 10.0 50 10.8 64.9
私立大学 604 78.7 330 71.0 54.6
全体 767校 465校 60.6

(大学設置形態別、百分比の和は100%にならないことがある)

 中国の大学と交流協定を締結している日本の大学は国公私立合わせて465校あり、全体の60.6%が協定を結んでいる。内訳は、私立大学が330校で、協定締結大学全体の71.0%を占め、国 立大学は85校18.3%、公立大学が50校10.8%となっている。

 大学設置形態別に見ると、国立大学は86校中85校(全体の98.8%)が中国の大学と交流協定を締結している。公立大学は、77校中50校(64.9%)でおよそ3校に2校の割合、私 立大学は604校中330校(54.6%)で過半数の大学がそれぞれ交流協定を締結している。

図3

図3 日本の大学の数と大学設置形態別の比率

図4

図4 中国の大学と交流協定を締結した大学の比率(大学設置形態別)

図5

図5 中国の大学と交流協定を締結した大学の数と大学設置形態別の比率

大学設置形態別の協定数の分析

 日本の大学が中国の大学と締結している交流協定は3,361件。これを大学設置形態別にみると、私立大学が1,704件(50.7%)を占め、次いで国立大学が1,511件(45.0%)、公 立大学が146件(4.3%)となっている(図6参照)。

図6

図6 中国の大学との交流協定数と大学設置形態別の比率

 大学一校当たりの交流協定締結数を見ると、国立大学は平均で17.8件と圧倒的に多く、私立大学は5.2件、公立大学は2.9件となっている。全大学の平均は7.2件である(図7参照)。

図7

図7 大学一校当たりの中国の大学との交流協定数(大学設置形態別)

中国の大学との交流協定数が多い大学

 中国の大学との交流協定締結数が多い大学は、1位早稲田大学(締結協定数102)、2位立命館大学(97)、3位立命館アジア太平洋大学(84)、4位東北大学(81)、5位九州大学(70)、6 位京都大学(68)、7位北海道大学(65)、8位が東京大学(59)と広島大学(59)、10位神戸大学(56)となっている。

 協定数が多い101校(91位まで)を分析すると、上位3位までは私立大学が占め、4~12位は国立大学が並んでいる。公立大学の中では、58位の高知工科大学(13)の協定数が最も多かった。

図8

図8 中国の大学との交流協定数が多い大学の大学設置形態別の比率

中国の大学との交流協定数が多い大学(計101大学)

 中国との交流協定の数が多い大学は以下の通り。

中国の大学との交流協定数が多い大学(計101大学)
順位 大学名 国公私立の別 協定数
1 早稲田大学 102
2 立命館大学 97
3 立命館アジア太平洋大学 84
4 東北大学 81
5 九州大学 70
6 京都大学 68
7 北海道大学 65
8 東京大学 59
  広島大学 59
10 神戸大学 56
11 岡山大学 52
12 大阪大学 51
13 関西外国語大学 49
14 新潟大学 43
15 富山大学 41
  愛知大学 41
17 千葉大学 40
18 筑波大学 39
19 熊本大学 33
  創価大学 33
21 山形大学 31
22 金沢大学 30
23 佐賀大学 27
24 鳥取大学 26
25 群馬大学 24
  長崎大学 24
  慶應義塾大学 24
  大阪産業大学 24
29 福井大学 22
  亜細亜大学 22
31 東京農工大学 21
  城西国際大学 21
  桜美林大学 21
34 一橋大学 20
  名城大学 20
36 北陸先端科学技術大学院大学 19
  東京経済大学 19
38 東京海洋大学 18
  愛媛大学 18
  大東文科大学 18
  中央大学 18
  日本大学 18
  明治大学 18
44 香川大学 17
  同志社大学 17
  長崎外国語大学 17
47 岩手大学 16
  信州大学 16
  三重大学 16
  徳島大学 16
51 山口大学 15
  高知大学 15
  鹿児島大学 15
  くらしき作陽大学 15
55 秋田大学 14
  岐阜大学 14
  島根大学 14
58 宇都宮大学 13
  東京学芸大学 13
  大分大学 13
  高知工科大学 13
  浜松大学 13
63 東京工業大学 12
  横浜国立大学 12
  静岡大学 12
  名古屋工業大学 12
  大阪府立大学 12
  岡山商科大学 12
  久留米大学 12
  福岡工業大学 12
  首都大学東京 11
  青山学院大学 11
  立教大学 11
  神奈川大学 11
  名古屋外国語大学 11
  相愛大学 11
  梅花女子大学 11
  関西学院大学 11
80 東京医科歯科大学 10
  会津大学 10
  電気通信大学 10
  長岡技術科学大学 10
  和歌山大学 10
  琉球大学 10
  共立女子大学 10
  杏林大学 10
  国士舘大学 10
  法政大学 10
  大阪経済大学 10
  関西国際大学 10
91 弘前大学 9
  茨城大学 9
  山梨大学 9
  大阪教育大学 9
  北九州市立大学 9
  國學院大學 9
  拓殖大学 9
  東京理科大学 9
  長野大学 9
  龍谷大学 9
  福山大学 9