第74号
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日中大学間交流協定の調査と分析(その2)派遣・研修、学生の交流、共同研究が柱

鈴木 暁彦(中国総合研究センター フェロー)  2012年11月12日

交流協定の具体的なメニュー

 日中の大学は、具体的にどのような分野で交流をしているのだろうか。交流協定に盛り込まれたメニューを内容によって10の分野に分類したのが、表1である。

表1 日中大学間交流協定の内容分類

記号

交流協定の内容

学生の交流

教員・研究者の派遣・研修、その他の交流

事務職員の派遣・研修、その他の交流

単位の互換

ダブル・ディグリー(在籍校と留学先からそれぞれ発行される学位記)

ジョイント・ディグリー(複数の大学から発行される単一の学位記)

共同研究の実施

提携先の大学の日本拠点を学内に設置する

提携先の大学からの学生受け入れに伴う奨学金の支給

その他(学術情報・資料の交換、シンポジウムの開催など)

表2 協定の内容分類と大学設置形態別の数

記号

国立大学

公立大学

私立大学

全大学

1,337

26.0

125

28.5

1,459

30.7

2921

28.3

1,451

28.2

131

29.9

1,407

29.6

2989

28.9

402

7.8

21

4.8

342

7.2

765

7.4

531

10.3

40

9.1

431

9.1

1002

9.7

19

0.4

5

1.1

60

1.3

84

0.8

0

0.0

0

0.0

0

0.0

0

0.0

1,316

25.6

98

22.4

798

16.8

2212

21.4

11

0.2

0

0.0

22

0.5

33

0.3

21

0.4

8

1.8

180

3.8

209

2.0

55

1.1

10

2.3

55

1.2

120

1.2

5,143

100.0

438

100.0

4,754

100.0

10335

100.0

49.8%

4.2%

46.0%

100.0%

 表1の分野別の分類に沿って、日本の大学が中国の大学と締結した交流協定のメニューを分析し、集計した件数は表2の通りである。交流協定の具体的なメニューは、件数が多い順に、①(b)教員・研究者の派遣・研修、その他交流、②(a)学生の交流、③(g)共同研究、④(d)単位の互換、⑤(c)事務職員の派遣・研修、その他の交流、となっている。交流協定のメニューを分類し、グラフにしたものが、図1である。

図1 交流協定のメニュー分野ごとの比率

図1

図2 交流協定のメニュー分野ごとの数と大学設置形態別の比率

図2

(注:a=学生の交流、b=教員・研究者の派遣・研修、その他の交流、c=事務職員の派遣・研修、その他の交流、d=単位の互換、e=ダブル・ディグリー、
f=ジョイント・ディグリー、g=共同研究の実施、h=提携先の大学の日本拠点を学内に設置する、i=提携先の大学からの学生受け入れに伴う奨学金の支給、j=その他)

単位互換協定

 中国の大学と単位互換協定を締結している大学は、表3の通りである。全国で177大学が計1002の単位互換協定を締結。大学設置形態別に見ると、締結大学数では、国立大学が3割弱、私立大学が6割強だが、締結した協定では国立大学が全体の53%を占め、私立大学は43%にとどまっている。

表3 単位互換協定を締結している大学(大学設置形態別)
(注:最下段の数字は全体に占める比率)

国立大学

公立大学

私立大学

全大学

大学数

協定数

大学数

協定数

大学数

協定数

大学数

協定数

51

531

15

40

111

431

177

1,002

28.8%

53.0%

8.5%

4.0%

62.7%

43.0%

100%

100%

図3 大学設置形態別に見た大学の数と協定数の比率

図3

 中国の大学との単位互換協定に基づき、日本の大学は720人を派遣し、中国から1,544人を受け入れている。大学設置形態別にまとめたものが表4である。受入人数は派遣人数の2倍を超えている。

表4 単位互換協定に基づく派遣人数と受け入れ人数
(注:最下段の数字は全体に占める比率%)

国立大学

公立大学

私立大学

全大学

協定

派遣

受入

協定

派遣

受入

協定

派遣

受入

協定

派遣

受入

531

122

582

40

36

65

431

565

897

1,002

723

1,544

53.0

16.9

37.7

4.0

5.0

4.2

43.0

78.1

58.1

100

100

100

 表4のデータをグラフにしたものが図4である。

図4 大学設置形態別に見た単位互換協定に基づく派遣人数および受入人数の比率

図4

ダブル・ディグリー協定

 ダブル・ディグリーは、在籍している大学と、留学先の提携大学から二つの学位を取得することである。ダブル・ディグリー協定を締結している日本の大学数と協定数は表5の通りである。大学数、協定数ともに、私立大学が7割強を占め、国立大学は大学数で約4分の1、公立大学は1校にとどまっている。

表5 ダブル・ディグリー協定を締結した日本の大学数と協定数
(注:最下段は全体に占める比率)

国立大学

公立大学

私立大学

全大学

大学数

協定数

大学数

協定数

大学数

協定数

大学数

協定数

11

19

1

5

31

60

43

84

25.6

22.6

2.3

6.0

72.1

71.4

100

100

 ダブル・ディグリー協定に基づく派遣人数と受入人数は表6の通りである。派遣、受入人数とも私立大学が9割近くを占め、国立大学はいずれも1割強、公立大学からの派遣はゼロである。また、大学全体の受入人数が派遣人数の7.9倍に達している。

表6

国立大学

公立大学

私立大学

全大学

協定

受入

派遣

協定

受入

派遣

協定

受入

派遣

協定

受入

派遣

19

88

12

5

10

0

60

641

82

84

739

94

22.6

11.9

12.8

6.0

1.4

0

71.4

86.7

87.2

100

100

100

 表5をグラフにしたものが図5である。

図5 ダブル・ディグリー協定を締結した大学と協定数の大学設置形態別の比率

図5

 表6をグラフにしたものが図6である。

図6 大学設置形態別に見たダブル・ディグリー協定に基づく派遣・受入人数の比率

図6

この項つづく