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中国の原子力レヴュー

永崎 隆雄(日中科学技術交流協会)  2013年 5月10日

1.中国原子力開発の基盤と基本方針

◆核兵器保有

 中国は1964年高濃縮ウラン・原子爆弾を完成させ、1967年には水素爆弾年を完成させ、さらに1971年、加圧水型原子炉を搭載した原子力潜水艦を完成させ、核 拡散防止条約NPTで核兵器の保有を認められ、他国への譲渡を禁じられた米、露、英、仏と並ぶ5大核兵器保有国となった。2012年時点で核弾頭を約240発、原子力潜水艦4隻(長征3,4,5,6)を それぞれ保有している。 [*1] [*2]

◆原子力平和利用開発の基本方針

 中国の原子力開発の根底には原子力平和利用による経済の発展と同時に国防核能力の維持戦略があり、現在下記のような方針が採られている。

  1. 3歩走(熱中性子炉⇒高速増殖炉・再処理プルトニウムリサイクル⇒核融合炉)
  2. 熱中性子炉は原則加圧水型炉PWRを採用
  3. 原子力発電と核燃料生産の一体発展(核燃料国産生産=国防核能力の維持)
  4. 自力更生(軍転民自主国産化)堅持、同時に積極的に海外技術を導入(引進来)し、国産化(中国の知財権化)し、国際展開(走出去)する。
    海外企業の中国企業との合弁による国内企業強化・国際化
  5. 市場競争原理の適用(核工業集団の独占開放⇒多様な原子力産業体制構築)
  6. 沿海発展地域への原発立地、13次5カ年計画(2016年)から内陸部
  7. 東電事故対応:新規(2012年以降)の原発建設は改良第3世代安全基準(下記)を適用する。
    • 炉心損傷確率CDF :10-6/炉年以下
    • 大規模初期放射性物質放出確率 LERF10-8/炉年以下

2.中国の原子力平和利用原子力発電状況 [*3]

 原子力平和利用の原子力発電は自主国産化方式と海外導入国産化方式でなされた。

 自主国産化は核工業集団公司(1998年設立)が国防核工業の軍転民を担当している。

 海外導入は電力部(省)系の会社:広東核電集団有限公司を設立し、更に香港資本を入れた広東核電合営有限公司をつくり、広東核電所に投資し、建設している。また、電力省とその系列の5大電力公司( 中国電力投資公司、華能集団、大唐集団、華電集団、国電集団)や地元電力エネルギー会社、投資会社、清華大学等も投資参入して来ている。

① 自主国産化:核工業集団

  • CNP300秦山1期30万kWを開発し、その後規模を倍増改良し、CNP600として秦山2期65万kWを建設し、普及させた。今後は、東 電事故対応を取った改良第3世代炉ACP1000と小型モジュール炉ACP100を開発中。

② 海外導入とその国産化:

中国広東核電集団有限公司(核工業集団、広東省各45%、国家電力省10%出資)

  • 仏より大亜湾発電所に2基導入し、その改良機CPR1000を普及建設中。
  • CPR1000を東電事故対応がなされた中国知財権を持った改良第3世代ACPR1000化し、輸出する計画
  • 改良第3世代炉EPR1700を導入し、建設中。

中国核工業集団公司

  • 第3世代炉(カナダCANDU6、ロシアVVER1000)を導入し、運転中。

国家核電技術公司(2004年設立:核工業集団・中国電力投資公司・広東核電・中国技術輸出入総公司が夫々10%、国務院60%出資)

  • 改良第3世代炉(米国WH社AP1000)を導入し、国産化建設中で核工業集団、中国電力投資公司が運転予定。今後は5大電力、広東核電等で普及させる。
  • 更に規模を拡大し、中国の知財権があるCAP1400やCAP1700を開発中で、2013年には重点実証プロジェクトとして着工し、2017年12月には送電網接続運転を始める計画である。

中国の原子力発電世代炉型別

図1
図2

③ 現在と将来の原子力発電規模

 現在、中国の原子力発電は、運転中、建設中およびパキスタンへの輸出のものの合計が49基4,663万kW(47GW)に達し、わが国の運転中2基、停止中48基、建設中4基合計54基5,057万kW( 51GW)に迫る規模になっている [*5] 。また、福島事故前後の2010年と2012年の原子力発電稼働率は中国が88.3%から89.2%とほぼ変動がないのに比べ、わが国は66.9%から40%と 減少している [*6] 。2011年の全電力発電量に占める原子力発電量比率 [*4] はわが国が18.1%に対して中国が1.8%と極めて低い。今後、中国は原子力比率を高める計画であり、2 020年までに原子力を運転中を58GW、建設中を30GWにし、2 030年までに運転中を200GWにし、2050年までに運転中を400GWにする計画である。 [*7]

3.各国との原子力平和利用協定等の締結状況

 原子力発電所の建設は膨大な資金(大亜湾1・2号4072M$)が必要で、国際ローン(大亜湾3672M$)を活用し、技術や部品の海外輸入をする必要があるが、こ のために原子力平和利用協定を導入先と締結しなければならず、現在までにフランス、ドイツ、英国、日本、アルゼンチン、パキスタン、韓国、カナダ、ロシア、米国、豪州等25カ国と協定を締結し、わ が国の11カ国1共同体(米国、英国、カナダ、豪州、フランス、中国、欧州原子力共同体、カザフスタン、韓国、ベトナム、ヨルダン及びロシア)の2倍以上になっている。また、IAEA(1984年)に加盟し、核 兵器製造への不転用を保障する保障措置協定(1985年)、包括的核実験禁止条約CTBT(1996年)に署名し、NPT追加議定書(2002年)を締結し、原子力供給国G(NSG)(2004年)に 加盟している。

4.輸出

 これらの改良第3世代炉は導入先の仏アレバ社、日米WH社と連携し、英国や南アに、又独自にパキスタンやアルゼンチンやトルコへ売り込んでいる。

 日本は、1996年には当時世界初の第3世代改良型沸騰水型炉(国産ABWR、出力135.6万kW)東京電力柏崎刈羽6号を商業運転開始するなど、世界最先進を走り、これを台湾に輸出した。わ が国原子力製作企業は、米仏の海外メーカから技術レベルを高く評価され、三菱重工-仏アレバ社、日立-GE社、東芝-WH社など連携系列化し、インド、トルコ、サウジアラビア、イ ギリスなどに国際展開を図っている

5.原子力発電設備製造産業と国産化率

 原子力は幅広い産業分野を集約化して作るシステム産業であるが、中国は、設計と製造と運転が分離し、全体での集約工程管理が弱かった。日本の場合は三菱、日立、東 芝の3大製造メーカが総合的設計エンジニアリング部門を持ち、全体の一貫した集約工程管理がなされている。そのため、中国はこの欠点を改善するため、下 記のように原子力発電会社に所属する総合エンジニア会社を組織化し、また製造企業も各種大型設備工場を集め、設備積み出し埠頭を持つ新工場を作り、製造部門を大型システム統合化した。

設計エンジニアリング会社

  • 中国核電工程有限公司(CNPEC)核工業集団の総合エンジニアリング会社 
  • 国家核電技術公司(SNPTC)  国務院発展と改革委員会系の技術導入国産化会社
  • 中広核工程有限公司(CNPEC) 広東核電集団の総合エンジニアリング会社
  • 中国核動力研究設計院(NPIC) 核工業集団の設計院

主な原子力機器製造会社

  • 上海電気集団股份有限公司:上海臨港に集約
  • 中国東方電気集団公司:四川省德陽と武漢市と広州(重型設備工場)に集約
  • ハルビン電気集団公司:黒龍江省ハルビンと河北省秦皇島に集約
  • 中国第一重型機械集団公司:黒龍江省チチハルと大連綿花島に集約
  • 中国第二重型機械集団公司:四川省德陽と江蘇省鎮江に集約

 2013年、中国の原子力産業協会加入企業は340社で、日本の原産協会の447社に迫っている [*8] 。また、海外から中国市場に参入、核 安全局に安全設備外国企業登録をしている企業は2012年5月時点でフランス59社、米国34社、ドイツ32社、イタリア14社、日本・英国・ロシア各9社、ス ペイン・豪州・韓国各4社等192社である。 [*9]

 現在、原子力発電設備の国産化の過程で、以下のような系列化が進行している。

  • 広東核電設備国産化連合研究開発センター:中国東方電気集団主催、中広核工程公司が主体で63社参加
  • 国家核電技術公司AP1000製作設置企業連携157社(国内大型鍛造可能化)2013年完成

 国産化率(設備金額ベース)は下図のとおりである。

中国原子力発電国産化目標

図1

中国核電信息網 http://www.heneng.net.cn/


[*1]世界の核兵器の数 国別ランキング(2012年)【ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)】

[*2]091型原子力潜水艦 Wikipedia

[*3]Nuclear Power in China(Updated 21 March 2013) WNA HP

[*4]World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements 1 April 2013 WNA 

[*5]Press Kit 日本の原子力発電の概要 2013年2月13日 日本原子力産業協会

[*6]Energy Availability Factor  2010 and 2012 IAEA PRIS

[*7]原子力中長期計画

[*8]中国核能行業協会と日本原子力産業協会のホームページ

[*9]2008~2012年核安全設備登録外国企業 環境保護部核安全局 ホームページ


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