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宇宙から見つめる古代中国(その1)

2013年 9月30日

惠多谷雅弘

惠多谷雅弘(えたやまさひろ):
東海大学情報技術センター事務長

略歴

1976年東海大学工学部光学工学科卒。2006年同大学院工学研究科光工学専攻博士課程後期了。博士(工学)。専門は画像情報処理。1976年より宇宙考古学、地球環境調査、古文化財の調査・復 元に関する研究を中心に活動している。2003年~2004年度文部科学省科学技術学術審議会専門委員。2006年The IEEE Geoscience and Remote Sensing Society Interactive Session Prize paper Award受賞。現在、東海大学情報技術センター事務長。日本写真測量学会、日本リモートセンシング学会、日 本オリエント学会各会員。

1.衛星リモートセンシング

 人類初の人工衛星Sputnik1号が地球軌道を飛んでから半世紀以上が過ぎた。この間に多くの人工衛星が打ち上げられ、衛星データを用いたリモートセンシング技術も飛躍的に発展した。そ の背景として超大国の威信をかけた宇宙開発競争が大きく影響したことは言うまでもないが、もう一つの大きな理由として、今現在世界が直面している地球環境の問題がある。水、食料、原料などの資源と、そ れらを取り巻く自然環境の近年における急激な変化は、既に一国だけで解決できない世界共通の問題となっている。こうした人類の存亡にも関わる深刻な問題に対して、環 境の保全あるいは将来的な変動予測を行うための研究への国際的関心は非常に高く、地球の実態を知るための有効手段として、衛星リモートセンシングのデータがここ数十年間にわたって様々な形で利用されてきた。 

 地球観測技術としてのリモートセンシングが最初に実用化されたのは、1960年に打ち上げられた気象衛星TIROS1に始まる全地球の周期的観測であろう。しかしながら、こ の技術の発展を大きく加速させた要因は、米国航空宇宙局NASAがERTS(Earth Resources Technology Satellite)計 画の観測データを世界に公開したことにあるのは明らかである。1972年に打ち上げられたERTS1号は、地上約915kmの高度から185km×185kmの範囲を1シーンとして、1 8日に1度の周期で同一地域の可視・近赤外画像データの観測を可能とした。それによって得られた地表の鮮明な画像情報は、資源および環境調査におけるリモートセンシングの有用性と可能性を実証し、そ の後の世界各地におけるリモートセンシングの普及に大きく寄与した。ERTS1号は、その後Landsat1号と改名され、2 013年2月に打ち上げられたLandsat8号に至るまで継続的な地球観測を行っている(図1)。

図1

図1.Landsat1号が観測した関東地方のMSS画像

(1972年11月26日撮影、画像処理:東海大学情報技術センター©TRIC)

 近年では、地上分解能約0.5mのWorldView-2(米国)などの高分解能センサ搭載衛星、広画角・多波長の可視赤外分光放射計を搭載したTerra、Aquaなどの広域観測衛星、そしてALOS( 日本)、ERS(ESA)、RADARSAT(カナダ)などに代表されるマイクロ波センサ搭載衛星の登場や、センサの高度化、画像処理技術の向上などによって、リ モートセンシングの応用領域はさらに多様化している。

2.宇宙考古学

 衛星リモートセンシングのデータは、地球温暖化、砂漠化、森林破壊など、今日の地球を取り巻く様々な現象の解明に既に欠くことのできないツールとなっている。考古学の領域においても、衛 星が捉えた近年の地球の姿を考古学や歴史学的知見と融合させながら分析することで、遺跡の分布や古環境を広域的かつ長期的視点で理解する研究が行われている。そうした衛星データ応用の新たな学際領域を「 宇宙考古学(Space Archaeology)」という。宇宙考古学には、「未知遺跡の探査」、「古環境の推定」という互いに影響し合う2つの大きな研究の流れがあるが、未 知遺跡の探査には遺跡が形成された当時の気候、環境、歴史的背景などの理解も必要であり、古環境の推定には遺跡の分布、形態、出土物などが大きな手がかりとなることから、2 つの研究は連係させながら進めていくことが重要とされている。

 日本における宇宙考古学は、1988年に開催された「宇宙考古学について」と題する研究セミナー(主催:なら・シルクロード博記念財団)において、わ が国のリモートセンシングの第一人者である東海大学の坂田俊文教授とフランスの地理学者ジャンテル(P.Gentelle)教 授が古代研究における衛星データの有効性と可能性に関して発表したことが始まりとされる。これまでに実施された代表的研究事例として、故江上波夫・東京大学名誉教授を総隊長として、1 990年に開始されたチンギス・ハーンの陵墓探査「ゴルバンゴル計画」(日本・モンゴル合同調査チーム、読売新聞社)、多衛星データとナイル川の古環境理解による複数の古代エジプト遺跡の発見(東海大・早 大チーム)、ナスカの地上絵研究(山形大チーム)などが知られる。また、東アジアから中央アジアを横断しヨーロッパへと続く古代交通路シルクロードの調査(シルクロード学研究センター、東海大、奈良女子大など)や 、中国文明発祥地とされる黄河流域および長江流域の古環境調査(東海大・JAXA・AESTOチーム)、秦始皇帝陵などの中国古代陵墓の立地環境調査(東海大・学習院大チーム)な どでも衛星リモートセンシングのデータが活用されている。( その2へつづく)



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