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高等教育段階の中外共同運営機関・プロジェクトの現状と課題

2014年 8月29日  趙晋平(科学技術振興機構 中国総合研究交流センター フェロー) 

 中外共同運営機関・プロジェクト(中国語:「中外合作弁学機構・項目」)は、他国の教育機関と中国の教育機関との共同により、中国国内で設立した中国人を主要な募集対象者とする教育機関・教育プロジェクトをいう。

 高等教育の中外共同運営を通じて、中国にとっては、高等教育の対外協力・交流の道が広がり、比較的進んだ教育資源が導入され、高等教育供給の多様性が増し、高等教育の大衆化によって高まった教育多様化の需要がある程度満たされるメリットがある。

 中国の対外開放分野の拡大と教育改革の進行に伴い、高等教育の中外共同運営は急速に発展し、2014年4月までに、中国の学部以上の中外共同運営機関・プロジェクトは総計1016件にのぼった。その内訳は、学部段階の機関・プロジェクトが810件、大学院段階の機関・プロジェクトが206件となる。これらの機関・プロジェクトには、以下の特徴が見られる。

協力相手として、英・米はリードし、日本は大きく遅れ

 中外共同運営の協力相手は29の国・地域に及んでいる。特に経済が発達し科学技術と教育が比較的進んだ国・地域が中心で、トップを占めたのは、英国(228件)、米国(189件)、オーストラリア(142件)、ロシア(112件)、カナダ(61件)となっている。一方、日本は13件で、上位国だけでなく、香港(44件)、韓国(40件)からも大きく引き離されている。13件のうち、中外共同運営機関は、2013年に立命館大学と大連理工大学によって共同で設立された大連理工大学―立命館大学国際情報・ソフトウェア学院の1件しかなかった。また、協力機関として、欧米諸国の有力大学が多く見られる一方、日本の有力大学の参入はほとんどない。

図1

図1 中外共同運営機関・プロジェクトの協力相手国・地域(単位:件)

出典:「学部(大学院)中外共同運営機関・プロジェクト名簿」より筆者が作成

地域分布が不均衡

 中外共同運営機関・プロジェクトの地域分布が不均衡であり、その多くは北京、上海、江蘇などの経済・文化の比較的発達した東部沿海地域や大都市に集中している。高等学歴教育の中外共同運営機関・プロジェクト件数が多い省(直轄市)のトップ5は、黒龍江(174件)、上海(113件)、江蘇(93件)、北京(91件)、河南(78件)となっている(図1参照)。一方、大学院では、北京(55件)、上海(40件)、浙江(15件)、広東(15件)、天津(14件)が上位で、大学院段階の総件数の約7割を占めている。

 黒龍江省は、中外共同運営の機関・プロジェクトが最も集中した省であり、全国の17%を占め、その中でもロシアとの連携が多いことが特徴として挙げられる。歴史的要因と地理的要因から、同省では、ロシアとの共同運営機関・プロジェクトが85件に達する。一方、西部地区の発展は遅く、青海、西蔵、寧夏の3省(自治区)には、学部以上の高等学歴教育の中外共同運営機関・プロジェクトはまだなく、貴州、甘粛、新疆も1、2件に留まる(図2参照)。

図2

図2 中外共同運営機関・プロジェクトの地域分布(単位:件)

出典:「学部(大学院)中外共同運営機関・プロジェクト名簿」より筆者が作成

中外共同運営機関の最高峰―中外協力大学

 中外共同運営機関の最高峰として、独立して設置された中外協力大学がある。中外協力大学には、3つのモデルがある。上海ニューヨーク大学(New York University Shanghai)、寧波ノッティンガム大学(The University of Nottingham-Nin gbo)のようなサテライトモデル、西安交通―リバプール大学(Xi'an Jiaotong-Liverpool University)のようなパートナーシップモデルと香港中文大学(深圳)のような香港の大学との協力モデルである。

 華東師範大学、ニューヨーク大学(NYU)、上海市教育委員会、浦東新区人民政府の連携で設立された上海ニューヨーク大学は、教員の1/3が世界からの招聘、1/3がニューヨーク大学からの派遣、そして1/3が中国国内からの招聘であり、教員の国際化が徹底されている。教育について、すべてのカリキュラムはNYUのカリキュラムに準拠しており、授業はすべて英語である。2013年9月に入学した一期生300人のうち、149名は世界40カ国からの学生が占めている。授業料は年間約10万元で中国で最も高額であるが、中国国内の学生が入学するには、大学統一試験で清華大学北京大学並みの点数を取らなければならない。

 2013年12月に筆者が訪問した西安交通―リバプール大学は西安交通大学とリバプール大学が共同で設立した大学で、スタッフの80%が外国籍で、非常に国際的、多様性に富んでいる。大学に入学するには、全国大学統一試験でトップの成績、そしてTOEFL6.5以上に達する英語力が必要である。授業料は年間8万元と、中国の大学では極めて高いほうであるが、卒業生の多くは、世界のトップの大学院へ進み学業を続けているため、受験生からの人気は高い。

 また、2014年3月に設立された香港中文大学(深圳)は香港中文大学と深圳大学が共同で設立した大学で、学校経営の中枢として、理事会が設けられ、合計16名の理事は8名ずつ両大学に任命され、理事長は香港中文大学学長が兼任する。大学の財政は香港中文大学と深圳大学から完全独立し、主に授業料、寄付金、深圳市政府からの補助金などにより賄われる。2014年7月、17の省から313名の高校生の入学が決定され、これらの生徒はいずれも所在地域の全国大学統一試験で上位1%の成績をおさめている。優秀な学生を獲得するため、各省で成績の上位150以内にランクインできれば、在校期間(4年間)の授業料も全額免除される。今年は少人数のスタートであるが、将来的に学生規模は11000名となる計画である。

 中国では、中外共同運営機関は今後もますます拡大傾向にある。しかし、日中間の共同運営機関、特に日本の国立大学と中国の大学との共同運営機関設立が難航し、成功事例はほとんど見当たらない。その要因究明と改善を急ぐ必要がある。


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