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中国のエネルギー需給とその持続可能性

2014年 9月30日  呂 正(日本エネルギー経済研究所研究員)

呂 正

呂 正(ろ せい、LU Zheng):
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所、
計量分析ユニット 需給分析・予測グループ 研究員

略歴

 1979年生まれ、中国遼寧省出身。2003年東京大学工学部システム創成学科卒業。2008年 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻博士後期課程修了、環境学博士号を取得。
2008年日本エネルギー経済研究所入所。専門分野はエネルギー経済、計量経済モデル分析、エネルギー環境政策分析。各国のエネルギー政策の調査分析、アジア及び世界のエネルギー需給予測の作成、エネルギー・環境・経済問題に関するモデル分析、日中省エネルギー政策共同研究などに従事し、政府と国際機関などの多数の研究プロジェクトに参加。

 高度成長に伴って、中国のエネルギー需要は増加し続けている。特に2002年以降、中国のエネルギー消費は急激に増加し、2002~2012年の平均増加率は年8%を超え、10年で約2.3倍に拡大した。現在、中国は世界最大のエネルギー消費国であり、IEA(International Energy Agency)統計によれば、2012年中国の一次エネルギー消費量は石油換算28.9億トンで、世界全体の約22%を占める。今後も中国では比較的に高い経済成長が見込まれ、運輸、民生を中心にエネルギー需要が引き続き拡大すると予測される。

 中国のエネルギー消費の増加はさまざまな問題をもたらしている。急増する石油、天然ガスの需要を満たすために、輸入が増えつつ、エネルギーの安全保障が懸念されると同時に、国際市場の緊張を高めている。そして、石炭をはじめ、化石エネルギー消費の拡大により、昨今世界的に注目されているPM2.5問題など大気汚染が深刻化しており、地球温暖化問題においても、二酸化炭素の最大の排出国として、中国への国際圧力が高まっている。

 ここでは、中国における石炭、石油、天然ガス、原子力、水力を含む再生可能エネルギーなどの主要エネルギーの需給現状を分析した上で、資源と環境などの視点からその持続可能性について検討してみる。

石炭

 中国は、世界最大の石炭生産・消費国であり、世界全体の約半分を消費している。中国統計局によると、2013年の石炭生産量は37億トンで、輸入量は3.27億トン、輸出量は751万トンである。

 石炭は中国の一次エネルギー消費の約7割を占めている。今後、石炭のシェアは縮小するが、基幹エネルギーであることに変わりはない。発電用を中心に石炭需要の増加が見込まれる。ただし、環境問題を緩和するために、中国政府は石炭の総消費量を抑制する方針を打ち出しており、今後、石炭需要は2000年代に見られるような急増の可能性は低く、2020年代にピークアウトする可能性も指摘されている。

 2009年以降中国の石炭輸入量が急速に拡大し、世界最大の石炭輸入国となった。その背景には国際市場の石炭の価格低下により、輸入炭の価格競争力が高まったことがある。今後も石炭輸入の増加が予想されるが、需要の大半はやはり国内産で賄わなければならない。

 WEC(World Energy Council)2013年の報告によると、中国の石炭確認可採埋蔵量は1145億トン、可採年数は31年である。しかし、WECが報告する中国の可採埋蔵量は1990年初めから同じ数値となっており、実際には石炭探査が進んでいる。2014年中国国土資源部が公表した報告では、確認可採埋蔵量が2.02兆トンである。資源の賦存量の観点から、中国の国内石炭資源は中長期的に十分にあると言える。

 石炭を直接燃やすと汚染物質の発生が多いため、環境の制約から、石炭のクリーン利用が重要となる。また、石油、天然ガスとの価格差などから、中国では石炭の液化、ガス化のプロジェクトが相次ぎ新設、計画されているが、転換時に大量の水が必要であるため、水資源の確保と有効利用が不可欠で、廃棄物の適切な処理も重要な課題となる。

石油

 中国は、米国に次ぐ世界第2位の石油消費大国であり、世界第4位の原油生産国でもある。BP統計によると、2013年中国の石油消費量は5.07億トン、生産量は2.08億トン、輸入量は3.78億トン、輸出量は0.32億トンである。

 中国の石油消費の中心は運輸部門と化学産業である。現在、中国はすでに世界最大の自動車市場となっている。今後も、経済成長に伴い、自動車保有台数の急増が続くと思われる。中国政府は新エネルギー自動車の普及を推進し、燃費規制を先進国並みに厳格化する対策を打ち出しているが、今後も道路部門を中心とする運輸部門が石油需要の増加を牽引する。IEAなどの予測では、中国の年間石油消費量は2030年代に8億トンを超える勢いである。

 一方、BP統計によれば、2013年末の時点で中国の石油確認埋蔵量は25億トン、R/P率(可採年数)はわずか11.9年である。中国では、主要の陸上鉱区は成熟化しており、増進回収法(EOR)などで生産の急速な衰退を防ぐと同時に、海洋鉱区の探鉱が推進され、原油の総生産量は緩やかに拡大している。

 石油需給ギャップの拡大を受けて、中国の石油輸入は近年著しく増加している。今後も石油輸入依存度の上昇は必至で、2030年代には70%を超えると思われる。中国石油企業がアフリカ、南米などの非中東産油国を中心に、積極的に石油・ガス資産に投資し、資源の権益取得、原油調達先の多様化を図っている。また、中央アジア、ロシアの東シベリアなどから国際パイプラインを通じて原油の輸入も行われている。さらに、2020年まで備蓄量5億バレル(輸入量約90日分相当)を目標に、石油備蓄基地の整備も推進されている。

天然ガス

 中国の天然ガスの需要も大きく伸びている。BP統計によれば、2013年の消費量は1620億㎥で、うち国内生産量は1170億㎥、輸入量は520億㎥で、輸出量は28億㎥である。

 石炭、石油より天然ガスは比較的クリーンであるため、大気汚染問題などを対処するために、中国では天然ガスの利用拡大が積極的に進められている。民生用のほかに、CNG車、LNG車の導入が進んでおり、沿海部などを中心に天然ガス火力発電も増加している。大方の予測では、中国の天然ガス消費量は2020年に3000億㎥を超える。また、IEAなどでは、2030年代、中国の天然ガス需要が5000億㎥に増加する見通しである。

 中国の天然ガス資源は比較的豊富で、探鉱の進展により資源量の数値は年々更新されている。BP統計によれば、2013年末時点の中国の天然ガスの確認可採埋蔵量は3.3兆㎥で、2003年時点の1.3兆㎥の約2.5倍に増加した。非在来型天然ガスのうち、現在、タイトガスとCBM(コールベッドメタン)の調査開発が比較的に進んでいる。中国工程院などによると、タイトガスの可採資源量は9~13兆㎥で、2013年末の確認可採埋蔵量は1.8兆㎥である。2000mより浅い地層のCBM 資源量は36.8 兆㎥で、2012年末での確認可採埋蔵量は2700億㎥である。タイトガス、CBMの生産量も年々増加し、2013年はそれぞれ340億㎥、29億㎥に達している。中国のシェールガス資源も非常に豊富だとされており、米国EIA(Energy Information Administration)による推定では可採資源量は36兆㎥に達するが、探鉱開発はまだ初期段階にあり、2013年の生産量はまだ2億㎥に過ぎない。中国政府は非在来型天然ガスに関して、野心的な開発目標を打ち出しており、例えば、 CBM の年間生産量を2015年に160億㎥、シェールガスの年間生産量を2015 年に65 億㎥、2020 年に600~1000㎥へと引き上げようとしている。その実現可能性が疑われるものの、今後中国の国産天然ガスの大幅な増加は必至である。

 しかし、急増する天然ガス需要に対応するために、国内産だけでは到底賄いきれないので、輸入の増加は避けられない。中央アジア、ミャンマーからのガスパイプラインはそれぞれ2009年、2013年に稼働を開始し、ロシアからのパイプライン輸入も予定されている。また、LNG輸入も2006年から始まり、沿海部に多数のLNG受入基地が相次ぎ建設、計画されている。

原子力

 2013年末まで中国では17基、計1483 万kWの原子力発電が商業運営されており、中国の発電設備容量の1.2%を占める。 

 中国は原子力の利用拡大に積極的で、2013年末時点に29基、計3057万kWが建設中にある。福島第一原発事故後、中国政府は原子力の安全対策を強化し、積極的に拡大する方針が堅持された。2012年に制定された「原子力発電中長期発展計画(2011—2020年)」では、2020年までに運営中の原発5800万kW、建設中4000万kWに拡大する目標である。

 一方、核燃料の原料であるウランについて、中国の国内生産量は年間約1500 tU、確認埋蔵量は166,100 tUと推定されているものの、原発の急激な拡大に対応しきれず、海外からのウラン輸入が増え、現在のウラン需要の大半は輸入に依存している。

再生可能エネルギー

 中国は水力、風力、太陽エネルギー資源などが豊富である。理論上の水力資源量は世界1位の6.9億kW、うち経済的開発可能な規模は4.2億kWである。地表から10メートルの高さにおける風力資源の総量は32.26億kWで、開発利用可能な陸上風力資源量は2.53億kW、近海における開発利用可能な風力資源は7.5億kWと推定される。また、中国の地表面に照射される年間の太陽エネルギーは石炭換算1.7兆トンに相当し、年間日照時間が2000時間、輻射量が5000MJ/㎡を超える地域の面積は国土の3分の2を超える。

 中国では、再生可能エネルギーの開発が重視されており、2006年より再生可能エネルギー法も施行され、2013年末での再生可能エネルギー発電設備容量は合計3.8億kW(水力2.8億kW、風力7548万kW、太陽光1479kW)に達している。第12次五カ年計画における導入目標は、2015年の再生可能エネルギーの年間消費量を石炭換算4.78億トン、エネルギー消費量に占める比率を9.5%以上としている。具体的には水力が2.6億kW、風力が1億kW、太陽エネルギー発電が2100万kWと計画されている。さらに、2020年までの目標では、水力3.5億kW、風力2億kW、太陽エネルギー発電5000万kW(1億kWに引き上げる可能性がある)としている。

まとめ

 2012年中国の一次エネルギー供給における石炭、石油、天然ガスのシェアはそれぞれ68%、16%、4.2%で、原子力、水力、風力・太陽エネルギーの比率はそれぞれ0.9%、2.6%、0.7%である。これらの主要エネルギーは中国一次エネルギー供給の9割以上を貢献している。今後も中国のエネルギー需要が引き続き拡大する中、これらのエネルギーは供給の主力であることは変わらない。

 持続可能性を考える場合、豊富な国内資源を背景に、石炭の供給力が十分ではあるが、環境の視点から石炭のクリーン利用が重要な課題となる。天然ガスの国内生産が増加し続けているものの、旺盛な需要に追いつかず、輸入の増加が避けられないが、現在では輸入ルートがある程度確保されているので、長期的に需給がバランスする可能性が高い。輸入依存度を下げるために、非在来型資源の開発が重要であるが、開発生産において環境への配慮が不可欠である。また、原油の大幅な増産が見込めない中、拡大する石油需要を満たすために、輸入に頼らざるを得ないが、安全保障の観点から輸入先の多様化などが重要となる。

 地域環境問題、地球温暖化問題の視点から、持続可能性を高めるために、化石燃料の比率を下げることが必要である。原子力発電が急速に増加している中、安全性の確保が至上の課題である。今後の水力開発は南西部の高原地帯が中心で、地域の生態環境、住民の移住、さらに下流の国々への影響などに対して、より一層の配慮が求められる。そして、風力、太陽エネルギーに関して、持続可能な利用を実現するために、電力系統の強化、経済性に見合った合理的な導入が重要である。

 持続可能なエネルギー需給を実現するために、最適なエネルギーミックスを構築する以外に、需要と供給の両方における省エネルギーの推進にも非常に大きな役割が期待される。中国政府はすでにさまざまな省エネ対策を打ち出しているが、今後、経済発展の質の向上、産業構造の調整が鍵となる。


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