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中国通信設備製造業のイノベーション能力評価(その3)

2014年11月04日  陳芳 穆栄平(中国科学院科技政策与管理科学研究所)

四、中国の通信設備製造業におけるイノベーション能力開発の政策環境

1、関連科技発展計画の発表・実施、通信設備製造業技術革新の促進

 中国政府は2006年以来、「国家中長期科学・技術発展計画綱要」「『国家中長期科学・技術発展計画綱要(2006-2020年)』実施のための若干の総合政策」及び76本にわたる「総合政策実施細則」を 発表・実施し、「近代サービス業情報サポート技術・大型アプリケーションソフト」「次世代ネットワークキー技術・サービス」「センサーネットワーク・スマート情報処理」「 デジタルメディアコンテンツプラットホーム」「コアアプリケーション向け情報セキュリティー」「都市情報プラットホーム」「国家公共安全緊急情報プラットホーム」などを優先テーマとし、「 次世代ブロードバンド無線移動通信」「核心電子部品」「ハイエンド汎用チップ・基礎ソフトウェア」を16項の重大科技特定項目に入れた。このほか、中国政府はさらに、「 自主知的財産権を有する中国情報産業のキー技術と重要製品リスト」[9]を発表・実施し、「インターネット・通信」「次世代ブロードバンド無線移動通信」「ネットワーク・情報安全」を重点技術分野として、リ ストに入れられた技術と製品の開発と産業化に対する国家科技計画と建設投資による重点支援を行うことを定め、中国の通信設備製造業の革新能力建設に制度的土台を築いた。

2、情報産業発展計画の発表・実施、通信設備製造業の革新発展の誘導

 中国政府は近年、「情報産業“十一五”計画」[10]を発表・実施し、次世代通信製品を新たな産業クラスターの重点育成対象とし、「次世代移動通信」「ブロードバンドアクセス」「先進光通信」「 農村通信製品」を重点的に発展させる方針を打ち出した。「次世代移動通信」「次世代インターネット」「ブロードバンド通信」「ネットワーク・情報安全」の重大プロジェクトの実施を通じて、産 業キー技術の研究開発能力の向上が図られた。「ハイテク産業発展“十一五”計画」[11]は、「次世代セルラー移動通信」「デジタルトランキング」「ブロードバンド無線アクセス製品」を発展させ、キ ー核心技術の研究開発と産業化を積極的に進め、ハイエンドルーターやネットワーク交換装置などの成長分野を育てることを打ち出すものだった。「ハイテク産業化“十一五”計画」[12]は、次 世代インターネット重大特定項目と次世代移動通信重大特定項目を実施することを明確に打ち出した。「電子情報産業調整・振興計画」[13]は、通 信設備製造業の発展を以下の4つの方面から促進することを打ち出した。第一に、次世代ネットワーク建設を契機として、設備製造企業と電信キャリアの相互作用を強化し、製品とサービスの融合革新を推進し、通 信設備製造業の発展をスケールメリットによって促進する。第二に、第3世代移動通信ネットワークと次世代インターネット、ブロードバンド光アクセスネットワークの建設を加速し、次 世代移動通信ネットワークの特性と移動ネットワークのニーズに適応した新たな業務とアプリケーションを開発し、システムと端末製品のアップグレードを推進する。第三に、IPTV(ネットワークテレビ放送)や 携帯テレビなどの新興サービス業の発展を支援する。第四に、コンテンツ・端末・伝送・運営企業が相互促進し、相互発展する新たな体系を構築する。

3、経済社会情報化のさらなる推進、通信設備製造業の発展スペースの開拓

 中国政府は「2006-2020年国家情報化発展戦略」[14]を発表・実施し、この中で、「国民情報技能教育研修計画」「電子コマース行動計画」「電子政務行動計画」「 ネットワークメディア情報資源開発・利用計画」「情報格差縮小計画」などの計画を制定・実施し、中国経済社会分野の情報化の応用と発展を加速し、中 国の通信設備製造業に大きな発展のスペースを作り出すことを提出した。2009年、中国の電話ユーザー・移動電話ユーザー・インターネットユーザーはそれぞれ10.61億件・7.47億件・3.84億件に達し、通 信設備製造業の発展に巨大な市場スペースを提供した[15]。同年、中国電信・中国移動・中国聯通の3社は、3Gネットワーク建設直接投資1609億元を実施し、中国の3Gユーザーの急速成長を導き、3G設備・端 末市場の発展を促した[16]。「中華人民共和国国民経済・社会発展第12次5カ年(2011-2015年)計画綱要」[17]はすでに、「次世代移動通信」「次世代インターネット」「3ネット(電信・放送・イ ンターネット)融合」「物聯網(中国版ユビキタス)」「クラウドコンピューティング」「工業情報化」「電子政務」などの分野の発展への支援を明確に打ち出しており、通 信設備産業の急速な発展を導く措置となっている。

五、主要な結論と政策の提案

 中国の通信設備製造業の革新実力と革新効力、革新政策環境の分析を総合することによって、本稿では主に、以下の4点の結論を導き出した。

  1. 中国の通信設備製造業の革新能力は大幅に増強しているが、産業研究開発の実力の先進国との格差は依然として大きい。2006年から2010年までに、中 国の通信設備製造業の革新実力と革新効力はいずれも大きく向上し、R&D経費投入と有効発明特許数は急速に増加し、第3世代移動通信や次世代ネットワーク、光通信などの分野で重大な革新成果を実現した。中 国が提出したTD-LTE-Advanced(LTE-Advanced TDD方式)の技術プランは、4G国際標准の技術候補として採用された。しかし、中国の通信設備製造業の研究開発活動の投入規模は、先 進国とは依然として大きな格差がある。2010年、中国の通信設備製造業のR&D経費内部支出は約45億ドルで、ノキア社のR&D経費支出の約68.8%にとどまった。
  2. 中国の通信交換設備製造業の革新能力は比較的高く、すでに力強い国際競争力を備えている。中国の通信交換設備製造は、通信設備製造業の中で革新実力が最も強く、革新効力が比較的高い分野であり、革 新投入と革新産出、革新効果の面でいずれも良好な実績を示しており、“技術を導入し消化・吸収して再革新する”という発展モデルから、“カギとなる革新技術の革新と革新統合”と いう発展モデルへの転換をすでに実現している。通信端末設備・通信伝送設備製造業の革新規模は比較的小さく、通信端末設備製造業は特にその傾向が強い。移動通信・端末設備製造業の革新投入効力は最も低い。通 信端末設備製造業の革新投入効力と革新効果効力も比較的低く、通信伝送設備製造業の革新産出効力も比較的低い。
  3. 中国の通信交換設備製造リーディング企業の革新能力は際立っており、国際的な影響力も大きく増強している。中国のリーディング企業の研究開発能力は急速に向上しており、国 際的に著名なグローバル企業の水準に近付いている。2010年、中国の華為社のR&D経費支出は23.9億ドルで、2009年に比べて6.2億ドル増加し、シスコ社との格差を縮小した。同年、中 興社のR&D経費内部支出が販売純収入に占める割合は11.3%で、2007年に比べて2.1ポイント拡大し、シスコ社との格差を縮小した。中国のリーディング企業の特許創造能力は明らかに高まっている。a 2010年、中国の中興社と華為社のPCT特許出願数はそれぞれ世界2位と4位にランクインし、世界のトップレベルに躍進し、シスコ社(86件)を大きく上回った。R &D経費支出1億ドル当たりのPCT特許出願数もシスコ社を大きく上回った。
  4. 国家の革新政策と関連計画の発表・実施は、中国の通信設備製造業の革新発展に制度的土台を築いた。2006年以来、中国政府は、「国家中長期科学・技術発展計画綱要」や「『国家中長期科学・技 術発展計画綱要(2006-2020年)』実施のための若干の総合政策」及び76本の「総合政策実施細則」、さらに「自主知的財産権を有する中国情報産業のキー技術と重要製品リスト」「情報産業“十一五”計画」「 ハイテク産業発展“十一五”計画」「ハイテク産業化“十一五”計画」「電子情報産業調整・振興計画」「2006-2020年国家情報化発展戦略」「中華人民共和国国民経済・社会発展第12次5カ年( 2011-2015年)計画綱要」を次々と発表・実施し、通信設備製造業の科学技術の進歩と革新に制度的土台を築き、産業発展に巨大な発展のスペースを提供した。

 中国の通信設備製造業の革新能力をさらに高めるために、本稿は、以下の4つの問題の解決に力を入れるべきと考える。

  1. 自主革新政策の実施を強化し、ハイエンドな革新要素の企業への集合を加速し、企業による創新投入の拡大を奨励し、通信設備製造業のキー核心技術の開発と革新統合能力を向上させる。
  2. 産業革新の基礎能力の建設を強化し、「次世代移動通信」「次世代インターネット」「3ネット融合」「物聯網」「クラウドコンピューティング」などの分野のキーとなる核心技術の研究開発と普及応用を進め、産 業構造の最適化とグレードアップを促す。
  3. 技術エンジニアリングプラットホームやパイロット試験基地、産業化モデル基地の建設を強化し、次世代国家情報インフラ建設や情報化・工業化・都市化融合発展のもたらす戦略的チャンスをつかみ、産 業の革新発展を実現する。
  4. 情報産業国家ハイテク産業基地の的確な配置を進め、国際的な影響力を持つ革新型リーディング企業を育て、国際技術標准の制定の企業の参加や主導を支援し、製 造業からサービス業の分野への企業の拡大発展を推進する。

主要参考文献:

  • 1.国家統計局等編『中国高技術産業統計年鑑2010』 北京 中国統計出版社,2.2010
  • 3.国家統計局等編『中国高技術産業統計年鑑2011』 北京 中国統計出版社,4.2011
  • 5.中国科学院創新発展研究中心著『中国創新発展報告2009』 北京 科学出版社,6.2009
  • 7.中国科学院編著『2008高技術発展報告』 北京 科学出版社,8.2008
  • 9.中国科学院編著『2010高技術発展報告』 北京 科学出版社,10.2010
  • 11.中国科学院編著『2011高技術発展報告』 北京 科学出版社,12.2011
  • 13.張暁強主編『中国高技術産業発展年鑑2011』 北京 北京理工大学出版

[9] 2006年12月25日,国家信息産業部発布「我国信息産業拥有自主知識産権的関鍵技術和重要産品目録」。

[10] 2007年3月1日,国家信息産業部発布「信息産業“十一五”規劃」。

[11] 2007年7月10日,国家発展改革委発布「高技術産業発展“十一五”規劃」。

[12] 2008年1月15日,国家発展改革委発布「高技術産業化“十一五”規劃」。

[13] 2009年4月15日,国家発展改革委発布「電子信息産業調整和振興規劃」。

[14] 2006年3月19日,中共中央弁公庁、国務院弁公庁印刷発行「2006-2020年国家信息化発展戦略」(中弁発[2006] 11号)

[15] 王長勝『中国信息年鑑2010』北京:中国信息年鑑期刊社,2010年。

[16] 同上。

[17] 2011年3月16日,中華人民共和国国務院発布「中華人民共和国国民経済和社会発展第十二个五年(2011-2015年)規劃綱要」


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