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二酸化炭素(CO2)の計測法の研究

2014年11月14日  胡永飛,張海濱,張景奇 (中国海洋石油総公司省エネ・排出削減監測センター)

1 はじめに

 石炭や石油などの化石燃料の使用は大量の温室効果ガス(GHG)を生む。世界の気候には前代未聞の変化が起こり、世界経済や人類の健康は大きな脅威にさらされている。このことから、C O2の排出削減計画に一刻も早く着手する必要がある。1997年12月に採択された『京都議定書』は、2008年から2012年頃までにCO2の排出総量を1990年比で5.2%削 減することを先進国に法的に強制するものだった。また中国政府も気候変動を重視し、積極的に対応してきた。[1] 国務院は2009年11月、国内総生産(GDP)当 たりのCO2排出量を2020年までに2005年比で40%から45%削減する方針を示し、2011年初めに発表された『国民経済・社会発展第12次5カ年計画綱要』では、全 国のGDP当たりのCO2排出量を2015年までに2010年比で17%引き下げることを求めた。政府のCO2排出削減指標を正確に理解し実施するには、CO2排出を正確に算出することが土台となる。科 学的で正確な排出CO2の算出法を研究することには重要な現実的意義がある。

 現在普及しているCO2排出の算出法は「排出係数法」である。この方法では、活動のデータと排出係数、酸化係数を相乗することによってCO2の排出量を導き出す。排出係数の主な根拠は、「 気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)や米国石油協会(API)などの提供した技術資料である。[2, 3] これらの排出係数は、海外の燃料・設備・技術に基づいて研究開発されたもので、中 国の排出源に適応できるかには異論がある。よって、国内の排出源の現場計測を通じて、適切な排出係数と排出CO2の算出方法を開発する必要がある。

 本稿では、ある企業を例として、資料収集や現地視察、主要排出源の現場計測を通じて、計測法と排出係数法との優劣を比較分析し、これに基づいて、同企業に合ったCO2排出の算出方法を設計し、精 度の高いCO2排出データを算出する。国内の企業の排出CO2の正確な数値化にモデルを与え、国家の求める排出削減指標の達成に寄与する試みとなる。

2 計測法

2.1 計測機器

2.1.1 Testo 350ポータブル燃焼排ガス計

 ドイツ製のTesto 350ポータブル燃焼排ガス計は、工業・省エネ・環境保護の計測ニーズに特化して設計された計器で、手で持って操作する計測器本体と分析ケースから成っている。排 ガス計は次のように使用する。計測器の一端を分析ケースに連結し、もう一端を計測ヘッドにつなげる。計測ヘッドを計測点に差し込み、小型ポンプで気体を吸い込む。気 体はチューブを伝って計測器から分析ケースに入り、分析が可能となる。結果は計測器のディスプレイに表示され、印刷もできる。今回の測定では、データ処理に備えるため、排ガス計によって煙道内の温度や圧力、C O2濃度、一酸化炭素(CO)濃度、気体流動速度などが測られた。[4]

図1

図 1 testo 350ガス分析計

2.1.2 HyGroPalm22温湿度計

 排ガス計によって収集されたデータは湿度を含んだ気体なので、データ処理のためには気体中に含まれる水蒸気の影響を除去する必要がある。そのため計測時には、煙道の気体の湿度を測定する必要がある。今 回は、スイス・ロトロニック社製の温湿度計HyGroPalm22が用いられた。

図2

図2 HyGroPalm22温湿度計

2.2 CO2関連データの計測法

2.2.1 CO2濃度の計測

 CO2計測器のヘッドを煙道の中心付近の計測点に差し込んで計測する。

 注:燃料の不完全燃焼によって排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)は、大気中においては不安定で、最終的には酸化されてCO2となる。今回は気体中のCO含有量も計測された。

2.2.2 ガス温度の計測

 温度測定計のヘッドを煙道の中心付近の計測点に差し込んで計測する。

2.2.3 気体中の水蒸気の体積パーセンテージの計測

 温湿度計のヘッドを煙道の中心付近の計測点に差し込んで計測する。

 HyGroPalm22では「ガス中の水蒸気濃度(g/m3)」として読み込まれるため、気体中の水蒸気の体積パーセンテージは計算によって導き出す必要がある。

2.2.4 現地の気圧の計測

 気体分析計に入った気圧センサによって計測する。[5]

2.2.5 気体の静圧の計測

 今回は、S型ピトー管で計測した。計測時には片方の管だけを用い、先端をゴム管でガス分析計の差圧インタフェースに連結。S型ピトー管を煙道の中心付近に差し込み、測定する開口面を気流と同方向に向け、静 圧を測定する。

2.2.6 気体の速度の計測

 ピトー管を煙道内の各計測点に入れて測定する。

 ピトー管の全圧管の出口と静圧管の出口をゴム管でそれぞれ気体分析計の差圧インタフェースにつなぎ、ピトー管を煙道の各計測点に伸ばして、全圧測孔の開口面を気流方向と垂直になるように置き、速 度を計測する。

2.2.7 測定頻度への要求

 測定計算の精度を高めるため、これらの変数を現地で計測する際には、気圧データは毎日1回、その他のデータは毎日6回計測し、12日間にわたって計測を続けた。

3 計測データの処理法

3.1 CO2排出速度の計算

 HyGroPalm 22温湿度計によって計測されたボイラーガスの水蒸気濃度は、後続の計算のため、気体中の水蒸気の体積パーセンテージに転換する:

image

水蒸気物質モル流量は以下の計算を利用:

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公式(3-1)中の計測点の絶対圧力Pの計算方法は以下の通り:

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(3-1)から(3-3)まででボイラー煙道内の水蒸気の体積流量 V H2Oが計算できる。水蒸気の煙道内の体積パーセンテージは次の通り:

image

これらを整理して次の公式が得られる:

image

CO2とCOのガスの計測によってそれぞれの気体の体積濃度を得た後、次の式によってCO2排出速度を求める:

image

計測時間内のCO2排出量は以下のように計算できる:

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3.2 質量比法によるCO2排出量の計算

 計測時間内の設備の燃料消費量と統計期間(1カ月、半年、1年など)内の設備の燃料消費量の比によって統計期間のCO2排出量を求める:

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3.3 時間比法によるCO2排出量の計算

 計測に用いられた時間と統計期間(1カ月、半年、1年など)の比によって統計期間のCO2排出量を確定する:

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3.4 負荷法によるCO2排出量の計算

 『国家重点監視の汚染源排出口汚染物排出量計算法』における汚染物の算出法に基づけば、設備のCO2排出速度と負荷とを結びつけ、CO2排出量を計算することができる:[7]

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3.5 排出係数法によるCO2排出量の計算

 計測データを利用して計算したCO2排出量と比較するため、本稿では同時にIPCCが提供している排出係数法によって計測過程の設備のCO2排出量を計算した。計算式は以下の通りである:[8]

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本稿の計測にかかわる二種の燃料については、『IPCC国家温室ガスリスト指南(2006)』で表3-1のような参考排出係数が提示されている。

表3-1工業エネルギー固定燃焼源のデフォルト排出係数(低熱値に基づく、kG/TJ)
燃料 CO2排出係数
---- デフォルト 下限 上限
原料炭 94600 87300 101000
製油所ガス 57600 48200 69000

4 ある企業の二酸化炭素排出計測

4.1 企業の基本状況

 本稿で取り上げる企業は、電気供給・ガス供給・水供給を一体化した近代的な熱電併給の企業である。今回は、同社のボイラー「6#」「7#」「8#」「9#」「10#」「11#」「12#」を 主な計測対象とした。このうち「6#」「7#」「8#」は円形煙道、「9#」「10#」及び、「11#」「12#」は方形煙道を共有している。後者4基のボイラーの排煙は最終的に合流し、円形煙道につながる。計 測ボイラーの具体的な数値は表4-1を参照。

表4-1ボイラー設備の数値
ボイラー名称 ボイラー番号 燃料 サンプル採取点の煙道内半径(m)
循環流動床 6#、7#、8# 歴青炭 3.938
循環流動床 9#、10# 歴青炭 3.1×3.1
循環流動床 11#、12# 歴青炭 3.1×3.1

4.2 計測時の二酸化炭素排出データの分析

 計測データを利用して計算した排出量の結果とIPCC排出係数法によって計算した排出量の結果の比較は図4-1の通りである。図中のそれぞれの曲線の最後のデータは、そ れぞれの算出方法の結果の加重平均値である。本稿で使用した計測設備は、中国計量科学研究院と天津市計量監督検測科学研究院の審査を受け、計測日は鑑定結果の有効期間内であったため、計 測結果の正確性は確保されたものと考えられる。図4-1からは、国内企業がIPCC法を採用した場合、CO2排出量は多く導き出されることがわかる。

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図4-1計測時の二酸化炭素排出データの分析

4.3 計測当日の二酸化炭素排出量のデータ分析

 計測時の石炭燃焼消費量の計量に誤差があることを考慮し、本稿では、計測当日のCO2排出状況について述べる。全日の燃料消費量は、24時間内の1時間ごとの燃料消費量の和によって計算したもので、燃 料消費量を内挿で求めるといった状況はない。従って企業のコンベヤはかりに問題がなければ、全日の燃料消費量は比較的正確と考えられる。質量比法・時間比法・負荷法・I PCC排出係数法によってそれぞれ3つの煙道の当日のCO2排出量を算出した比較結果は図4-2である。

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図4-2 計測当日のCO2排出量の算出結果の比較

 図4-2からは、質量比法・時間比法・負荷法によって算出した計測当日のCO2排出結果が近似していることがわかる。とりわけ時間比法と負荷法によって計算されたCO2排出結果は近い。だ がいずれもIPCC排出係数法の計算結果を下回り、上記の結論を重ねて検証している。国内企業が国際的に通用している計算方法を使えば、得られるCO2の排出量は多めに算出されることになる。算 出結果に対して計器が影響することを考慮し、本稿では、燃料消費量との関係が深い算出方法は推奨しない。従って質量比法は排除される。時間比法は、計測時間内のCO2の排出速度を基準とし、よ り長い期間これを単純にあてはめることによって得られる。企業の生産が安定し、設備の負荷が基本的に安定している場合はそれでもいいが、企業の顧客の需要が変化し、企業設備の負荷が増減し、燃 料消費速度に大きな増減が起こることを考慮すれば、一定のCO2排出速度によってある期間内のCO2排出量を算出することは科学的とは言えない。時間比法と比較すると、負荷法は、燃 料消費量とCO2排出速度との関係を総合的に考慮したものと言える。顧客の需要の変化によって燃料をボイラーに入れる速度の増減が起こり、運用時間は変わらない際、図 4-2での時間比法の計算結果の曲線は変わらないことになるが、負荷法の曲線はこれに応じて変わることとなる。そのため負荷法の適用性はさらに高いと言える。

4.4 通年の二酸化炭素排出量データの分析

 時間比法・負荷法・IPCC排出係数法によってそれぞれ算出された通年のCO2排出量結果は図4-3に示した通りである。図4-3からは、時 間比法の算出結果は負荷法の算出結果よりもはるかに低いことがわかる。図4-2では、時間比法と負荷法との算出結果はそれほど違わなかった。上述の現象の原因は、企 業のボイラーの計測当日の負荷は基本的にはあまり変化しないが、ボイラーの負荷の通年の変化はかなり大きく、明らかな季節性を伴っているためと考える。時間比法は、ボイラーの負荷の変化を考慮しないため、算 出結果が実際の値と大きく離れてしまう。時間比法は、負荷の変化が比較的大きい設備に対して、長期間のCO2排出量を算出するには適していない。

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図4-3 通年のCO2排出量の算出結果の比較

5 結論と提案

 本稿では、質量比法と時間比法、負荷法、IPCC排出係数法など多くの方法で企業の異なる期間のCO2排出状況を算出した。その結果として明らかになったことは、燃焼・排 出源のCO2排出量の状況を正確に知るためには、現場での計測が可能であれば現場で計測する方法によってCO2排出量を得るのが適切であるということである。質量比法とIPCC排出係数法の算出結果の精度は、燃 料計量データの精度に大きく依存しており、本稿ではこの2つの方法は推奨しない。時間比法による算出結果は質量比法よりもすぐれているが、ボイラーの長期間の燃焼状況が計測時と一致していることが前提となる。負 荷法は、ボイラーの負荷の影響を考慮したもので、その算出結果の信頼性はさらに高い。企業に対しては、計測手段を通じて、負荷法によって燃焼・排出源のCO2排出量を算出することを提案する。

 CO2の排出状況に影響する因素としては、燃焼・排出源の実際の操業状況や使用年限、メンテナンス、燃料のタイプ・成分・熱値なども含まれる。一年を通じて考えると、燃焼排出源の操業状況や燃料の成分、熱 値などの数値にはある程度の差異が生まれるため、異なる時期に計測されるCO2排出にも差異が生まれることが推定される。客観的な要素によってもたらされる排出量の不確定性をできるだけ減らし、現 場計測の方法によって算出されたCO2排出量を燃焼・排出源の実際の状況に近付けるため、現場の条件が許す限り、異なる時間、異なる操業状況を選び、複数回にわたって年度のCO2排出量を計測し、算 出することを提案する。

参考文献:

  • [1] Houghton J. 「世界気候変動」[M]. 戴暁蘇,石広玉,董敏等訳. 北京:気象出版社,2001.
  • [2] IPCC (2007): Climate Change 2007: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change[R]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA.
  • [3] API. Compendium of Greenhouse Gas Emissions Methodologies for the Oil and Natural Gas Industry[M]. USA: API, 2009.
  • [4] 国家環境保護局. GB/T 16157-1996,「固定汚染源排ガス中の顆粒物と気態汚染物のサンプル採取法」[S]. 北京:中国環境科学出版社,1996.
  • [5] 国家環境保護総局. 「空気・廃気監測分析方法」(第4版増補版) [M]. 北京:中国環境科学出版社,2002. pp 345-361.
  • [6] 国家環境保護局. HJ/T 76-2007,「固定汚染源排出ガス連続監測系統技術の要求と検測方法」[S]. 北京:中国環境科学出版社,2007.
  • [7] 環境保護部弁公庁. 「『国家重点監視の汚染源排出口汚染物排出量計算法』の発布に関する通知」[Z]. 2011-1-25.
  • [8] IPCC (2008), 2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories – A primer, Prepared by the National Greenhouse Gas Inventories Programme, Eggleston H.S., Miwa K., Srivastava N. and Tanabe K. (eds). Published: IGES, Japan.

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