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海洋地殻の沈み込みの断層強度に関する重要な研究成果

2014年11月17日  米山春子(中国総合研究交流センター フェロー)

 2014年8月29日、学術雑誌『Science』に、中国科学院海洋研究所 高翔博士の最新の研究成果「Strength of Stick-slip and Creeping Subduction Megathrusts from Heat Flow Observations」が掲載された。この研究は高翔博士とカナダ地質調査所太平洋地球科学センター 王克林(Kelin Wang)教授との共同研究で、地震の発生には海洋地殻を形成する地質の特性が関係しており、柔らかい地層が沈み込む場合の方が硬い地層に比べ、壊滅的な海底大地震が発生しやすいというものである。

 環太平洋の深海底には壮大な地形が存在する。それは海溝と呼ばれる海底が細長い溝状に深くなっている場所で、1つの構造プレートが他のプレートの下に沈み込ことによって作られる。こ の沈み込み帯において地震が発生するとされており、深海の断層が破壊され巨大なエネルギーを解放することで、しばしば人類にとっての壊滅的な地震や津波を引き起す。

 2004年にインドネシアで発生したマグニチュード9.2のスマトラ沖大地震、2011年に日本で発生したマグニチュード9.0の東日本大震災とそれによる津波は、ともに沈み込み帯で発生し、断 層の破壊がその要因であるとされる。

 故に、巨大地震により想定される被害の分析とその減災、事前の備えのためには、様 々な地球の物理的条件によって沈み込み帯が引き起こす巨大地震のメカニズムを解明しコントロールすることが必要となってくる。中でも、沈 み込み帯の断層の強度と地震活動との関連性については早急な解明が求められる。

 一般的に、断層の強度が強い程、発生する地震は大きいと思われがちであるが、高翔博士と王克林教授は異なる見解を示した。中 国科学院の戦略的先導科学技術特別プロジェクトとして資金援助を受け地殻熱流量を測定、そのデータから、大 地震が発生するとされる沈み込み帯の巨大断層はクリープ現象のように沈み込む断層と比べると摩擦熱が少なく、断層の強度は弱いことを初めて発表したのである。

 本プロジェクトでは、沈み込み帯の断層の強度(摩擦係数)と、いくつもの沈み込み帯でこれまでに発生した最大規模の地震との関係性を研究する。研究者は、海 洋地殻の粘性や剛性の度合いが沈み込み帯断層の強度や地震の活発化に影響を与えており、剛性が低い、すなわち「柔らかい」海洋地殻が弱い断層を形成し、より大きな地震をもたらすと考えている。

 この考えは、巨大地震が起こり得る地質条件を解明するための新しい考え方を示しており、物理的メカニズムの解明に留まらず、地震と津波の防災・減災にも大きく寄与するものである。


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