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中国地震警報システムの構築と技術研究(その1)

2015年 3月31日

李小軍

李 小軍:博士、中国地震局地球物理研究所副所長

略歴

1965年10月生まれ。1984年、湖南大学土木工学科を卒業、1993年、中国地震局工程力学研究所(地震工学専攻)修了後、博士号を取得。現在、中国地震局地球物理研究所副所長、北京工業大学客員教授(長江学者奨励計画による)、国家創新人材推進計画に参加。また、中国地震学会常務理事、アジア地区地震及び火山活動危険管理組合実行委員会委員、学術定期刊行物『国際地震動向』編集長、『震災防御技術』副編集長。主な研究分野は、複雑な地形での地震波動シミュレーション、地震マイクロゾーイングマップの作成による安全性の評価、原子炉施設の耐震テスト及び耐震解析、強震観測ネットワークの構築と観測、地震警報と震度速報など。
10以上の国家級重点科学研究プロジェクト担当し、300篇余りの学術論文、4冊の専門書を発表し、科学技術発展貢献に関連した受賞多数。

 日本では1964年の新潟地震を契機に、新幹線の地震警報システムの開発・設置が検討されるようになり、警報地震計を設置し、地震を検知すると自動的に非常ブレーキを懸けさせるという仕組みを運用することで、地震被害を最小限にさせる道が開かれた。1988年には、早期地震警報システムが初めて日本の鉄道に導入され、破壊的な地震に際し、有効な警報を発することが可能となり、地震災害を大幅に減少させることができるようになった。

 世界各地でも、地震警報システムの設置は進んでいる。メキシコでは1991年にSASシステムが、続く2003年にはSASOシステムが設置され、同じく2003年にはトルコのイスタンブール、2001年には台湾でそれぞれ設置された。さらに、アメリカでもELarmS(緊急地震速報)が、ルーマニアのブカレスト、イタリアにおいても地震警報システムが設置されている。

 中国での地震警報システムの設置は、各国と比べると若干遅れた感はあるものの、その発展のスピードは著しいものであった。90年代初頭、地震警報技術の発展段階における開発とその研究がスタートし、1994年に設置された広東大亜湾原子力発電所の地震警報システムはその先駆けである。

 1997年には、中国鉄道部が京滬(北京―上海)高速鉄道への地震警報システムの設置を前提に、技術研究を推進する正式なプロジェクトを立ち上げ、以降、実行可能性調査への段階へと入っていく。そして2005年、中国地震局は国家規模による地震警報システムの建設に着手した。

 現在、北京を中心とした首都圏と甘粛省蘭州市で地震警報システムが導入されており、首都圏の市民や地下鉄などの公共交通機関、ガスの輸送管や高速鉄道などの重点機関に対し緊急地震速報サービスを提供している。

一、国家地震警報システムの建設と発展計画

 中国では2004年、国家規模による地震警報システム、並びに地震緊急処置(震度速報システム)システムプロジェクトの計画と研究開発を始動させ、2005年には当該建設プロジェクトの初期計画プランが策定された。2009年には、中国地震局、科学技術部の支持のもと、地震警報、震度速報システムの研究と模範応用プロジェクトがスタートし、2010年、建設プロジェクトの設計が完了、建設に着手した。

 2014年末には、国家地震応急救援センターと北京、蘭州の2地域に地震警報システムが設置され、試験運用完了後、正式導入されている。国家地震応急救援センターは北京市郊外に設置されており、当該センターの地震警報システムは、北京市と蘭州市それぞれのシステムと接続され、常時データを集約している(図1参照)。

図1

図1 北京・蘭州における地震警報模範システム観測台の設置状況

 また、それぞれのシステムは、80ヶ所に設置された強震動観測台と警報情報をリアルタイムで発信・受信する警報観測ネットワーク、警報センターから成る。このシステムの適用範囲は、破壊的な地震が発生した際には、その影響が及ぶとされる北京、天津はもとより、河北省や山西省など50~300km圏内まで含まれるとされ、地震が到達する5~20秒前に各地へ警報を伝え、人的な被害を最小限に抑えようとするものである。

 加えて、当該プロジェクトの建設を通し、建設技術の指導や国家関連規定遵守のための技術支援、地震警報システムを全国のさまざまな都市に建設するための技術ノウハウや経験の提供なども、このシステムが担う役割のひとつである。

 これらの地域の地震警報模範システムの設計、建設と同時に、中国地震局は福建省と首都圏の2つの地区の地震警報試行システムの建設にも着手しており、本格稼働を見据えた地震警報模範システムを建設していくための応用技術の支援と普及を行っている。

 首都圏の特定地域及び蘭州に建設された地震警報システムでは、設計要求も満たされ、大きな技術成果も認められることから、中国地震局は、“国家地震震度速報、及び警報システムプロジェクト”の立案を進め、全国を網羅する観測点の建設と当該システム構築のための重点プロジェクトを立ち上げた。当該プロジェクトの初期プランは、すでに中央政府の承認が下りているため、近いうちに建設工事がスタートする見通しである。

 このプロジェクトでは、4つの地震観測強化地区においては平均25km間隔で強震動観測台を設置し、地震速報の基盤となる重要なデータを集約することで、地震に対する警告レベルの水準を引き上げることができる。また、県単位の行政区においては平均35km間隔で観測台を設置し、強化地区と同様に、主要なデータを取り込むことで、全国を網羅する地震震度速報を発信する能力が整う。

 すなわち、プロジェクトが取り組むべき重要かつ具体的な課題とは、観測システムや通信ネットワーク及びデータ処理システムの構築であり、緊急地震速報などの社会サービスシステムや技術サポート、保障制度を体系化することである。

二、高速鉄道地震警報システムの建設

 中国が建設した初めての高速鉄道は、北京―天津間を結ぶ京津城際鉄道である。当該鉄道は全長120kmに及び、2008年8月、正式運行がスタートした。その後、高速鉄道の建設は急速な勢いで発展し、北京―上海、北京―石家庄―武漢―広州、ハルピン―大連、北京―ハルピン、合肥―福州、合肥―蚌埠、成都―重慶間などで相次ぎ建設され、併せて、地震警報システムの設置も進められた。

 2011年の北京―天津間京津城際鉄道での地震警報システムの運用を皮切りに、北京―上海、北京―石家庄―武漢―広州、ハルピン―大連、北京―ハルピン、合肥―福州、合肥―蚌埠、成都―重慶間などの高速鉄道にも設置されている。地震警報システムが設置された高速鉄道を以下に示す。(図2参照)

図2

図2 高速鉄道における地震警報システム設置状況

 高速鉄道地震警報システムは、沿線付近(両側)に強震動観測台を設置し、地震の初期波を計測、その規模が一定レベル以上の値を示した場合に、主要動であるS波が到達する前に、走行している列車に警告を出すというものである。なお、警報の限界値は40galとしている。鉄道沿線には、強震動観測台が15-35㎞間隔で設置されており、各観測台は2ヶ所の観測ポイントを持ち、鉄道から60m離れた地点に40mの間隔を保ち置かれている。

 なお図3はハルピン―大連間高速鉄道の地震警報システム観測台の設置状況である。

図3

図3 ハルピン―大連間高速鉄道地震警報システム観測台の設置状況

その2へつづく)


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