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ナチュラルキラーT細胞と肝臓疾患の研究進展(その1)

2015年 6月 4日

孫露:常州解放軍102医院特診科心電図室

陳衛紅:中国疾病予防制御センター栄養・食品安全所営養・疾病室

黄暁峰:『細胞与分子免疫学雑誌』編集部 主任 教授

解説

 本稿では、ナチュラルキラーT細胞(NKT)の生物学的特性と免疫調節作用、ウイルス性肝炎と非ウイルス性肝臓疾患における研究の進展を総論し、N KT細胞の人類の疾病における研究はインバリアントNKT(iNKT)細胞を中心とし、非古典的NKT細胞の作用の研究は今後の課題となると指摘する。さ らに古典的NKT細胞の異なるサブカテゴリーの機能にも検討が待たれるとしている。ヒトの非アルコール性脂肪肝やアルコール性肝炎、自 己免疫性肝炎などの非ウイルス性肝臓疾患におけるNKT細胞の研究はまだ不足しており、非ウイルス性肝炎とりわけ早期段階におけるその作用は今後の研究の方向と重点となる。

 筆者は、患者の肝臓組織内のiNKT細胞の特徴を明らかにした上で、肝臓組織の病理学変化や臨床資料と結合し、詳細な横断研究・追跡研究を進め、iNKTの肝臓疾患における作用メカニズムを明らかにし、i NKT細胞の臨床治療における応用価値の研究を拡大することで、肝臓疾患治療の新たなターゲットを模索することを提案する。

[キーワード]NKT細胞、肝臓疾患、抗ウイルス、肝繊維化、総論

 ナチュラルキラーT細胞(natural killer T cells,NKT)とは、自然免疫と獲得免疫とを仲介する天然に存在する新型免疫調節細胞の一種で、抗 原提示細胞表面の主要組織適合複合体Ⅰ(major histocompatibilty complex, MHC-Ⅰ)様分子CD1dの提示を特異的に認識できる糖脂質抗原である。多 種のサイトカインを分泌し、生命体の免疫応答に直接的・間接的に関与することから、NKT細胞は、抗感染や抗腫瘍、自己免疫疾患や炎症性疾患の調節に重要な役割を演じる。研究によると、NKT細胞は、肝 臓固有の免疫システムの重要な一部をなし、肝臓疾患の発生と進行と大きく関係している。以下では、肝臓疾患におけるNKT研究の近年の進展を総論する。

1 NKT細胞の分布と生物学的特性

 NKT細胞は、CD1d分子が依存するナチュラルキラーT細胞であり、胸腺を由来とし、肝臓と抹消リンパ器官、末梢血に分布すると一般的に考えられている。主な分布はまず胸腺と肝臓、次が脾臓と骨髄で、リ ンパ節と皮膚粘膜、末梢血には少ない [1] 。マウスにおいては、NKT細胞が胸腺・脾臓・末梢血・骨髄リンパ細胞に占める割合は0.2%~0.5%、 肝臓リンパ細胞に占める割合は15%~35%である。ヒトにおいては、N KT細胞の出現率が低く、変化が大きいのが特徴である。NKT細胞がヒトの末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell, PBMC)に占める割合は0.001%~3%で 、胸腺における出現率も低く(リンパ細胞の0.001%~0.01%)、肝臓と網膜における出現率は比較的高くそれぞれ1%と10%である [2]

 NKT細胞は、一群の高異質性細胞であり、均一T細胞受容体(Tcell receptor,TCR)を発現するか否かに応じて古典的NKTと非古典的NKTの二種類に分かれる。タ イプの違いに応じてNKT細胞の表面マーカーは異なる。古典的NKT細胞は均一TCR(マウスのVα14-Jα18とヒトのVα24-Jα18)を主要マーカーとして発現し、一 部の古典的NKT細胞はさらにCD4とCD8、NK細胞の表面マーカー分子を発現し、α-ガラクトシルセラミド(α-galactosylceramide,α-Galcer)を識別できる。現在、広 範囲で深いレベルの研究が行われているNKT細胞である。非古典的NKT細胞はさらに幅広いTCRを発現し、α-Galcerは識別しない。

2 NKT細胞の免疫調節作用

 NKT 細胞は主に、CD1類のCD1d 分子の提示するいくつかの内在性または外来の糖脂質抗原を識別し、活性化後のNKT 細胞はすぐに大量のTh1型サイトカインインターフェロンγ( interferon-γ,IFN-γ)、腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α,TNF-α),Th2型サイトカインインターロイキン4(interleukin-4,IL-4)、I L-10及Th17型サイトカインIL-17、IL-22を分泌し、ナチュラルキラー(natural killer,NK)細胞、樹状細胞(dendritic cells, DC)、T細胞、B 細胞などを含むほとんどすべての免疫細胞に直接的・間接的に作用し、免疫システムネットワーク全体に影響し、自然免疫システムと獲得免疫システムを仲介する橋梁となる [3]

 iNKT細胞は、Th17細胞の発育調整の面で重要な役割を発揮し、Th17の反応のための天然の障壁となる [4] 。活性化されたiNKT細胞は、単球由来DC(monocyte-derived dendritic cells,mDC)のIL- 12p70分泌を促進し、mDCのIL-23分泌を抑制し、メ モリーCD4+ Tヘルパー細胞のIL-17産出を減少させる。IL- 12p70とIL-23のバランスの調整を通じて、IL- 12p70の仲介する免疫反応を促進し、I L-23による炎症病理反応を抑制する [5] 。またコンカナバリンA(concanavalin A, ConA)誘導によるマウスの急性肝炎モデルの研究によると、共抑制分子BTLA(B and T lymphocyte attenuator)はNKTの早期免疫反応を調節し、肝 細胞IL-33の発現レベルを上昇させ、IL-33とそのリガンドST2の相互作用の対外遮断によってConAの誘導するマウスの肝損傷を軽減できる[6-8] 。新たなそのメカニズムの研究によると、ア デノシン-A2Aのアデノシン受容体の信号ルートの調整とNKT細胞の活性化や炎症反応は密接に関係しており [9] 、この信号ルートに干渉することによってNKT細胞活性化による肝臓の炎症を防ぐことができる。 

その2へつづく)


[1] Kronenberg M, Gapin L. The unconventional lifestyle of NKT cells[J]. Nat Rev Immunol, 2002, 2(8): 557-568.

[2] Lynch L, O'Shea D, Winter DC, et al. Invariant NKT cells and CD1d+ cells amass in human omentum and are depleted in patients with cancer and obesity[J]. Eur J Immunol , 2009, 39(7): 1893-1901.

[3] 張建明,石統東.「NKT細胞のHBV感染における作用」[J]. 『免疫学雑誌』,2010,26(9):827-832.

[4] Mars, L. T,Araujo, L,Kerschen, P, et al. Invariant NKT cells inhibit development of the Th17 lineage[J]. Proc Natl Acad Sci U S A,2009, 106(15):6238-6243.

[5]. Uemura Y, Liu TY, Narita Y, et al. Cytokine-dependent modification of IL-12p70 and IL-23 balance in dendritic cells by ligand activation of Valpha24 invariant NKT cells[J]. J Immunol ,2009,183(1):201-208.

[6] Miller ML, Sun Y, Fu YX. Cutting edge. B and T lymphocyte attenuator signaling on NKT cells inhibits cytokine release and tissue injury in early immune responses[J]. J Immunol,2009, 183(1):32-36.

[7] Arshad MI, Rauch M, L'Helgoualc'h A, et al. NKT cells are required to induce high IL-33 expression in hepatocytes during ConA-induced acute hepatitis[J]. Eur J Immunol 2011,41(8):2341-2348.

[8] Chen J, Duan L, Xiong A, et al. Blockade of IL-33 ameliorates Con A-induced hepatic injury by reducing NKT cell activation and IFN-gamma production in mice[J]. J Mol Med (Berl),2012, 90(12):1505-1515.

[9] Subramanian M, Kini R.,Madasu M, et al. Extracellular adenosine controls NKT-cell-dependent hepatitis induction[J]. Eur J Immunol,2014,44(4):1119-1129.


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